諸先輩方のおかげで愉しい旧車ライフ

 カワサキW1SA(1971年式)を長く愛車にしているボク。もうかれこれ30年近くになりますが、その間、整備の面倒をみてくださったり、パーツ情報を教えていただいているのが、その道に深く精通する諸先輩方。みなさまの助けなしには、愉しい旧車ライフはなかったと言っても過言ではありません。

モリヒデオートに集まる「CLUB ROKU・GO・MARU」のメンバー。

▲モリヒデオートに集まる「CLUB ROKU・GO・MARU」のメンバー。

全国のダブワン乗り、旧車ファンの相談に献身的にのっているのが、森 誠さん(写真中央右)です。
この日は森さんのもとへ、「CLUB ROKU・GO・MARU」のメンバー(写真左から武山さん、熊倉さん、森さん、橋本さん)が集まっておりました。
※こちらバイク屋さんではなく、あくまでも個人の方で、営業目的のホームページ等はございません。というわけで、住所や連絡先もここでは公表いたしません。

同年代にもいるW仲間


 そこでお知り合いになり、いろいろと教えてくださっているのが橋本さん。愛車はカワサキ650RS(1973年式)、通称“W3”(ダブルスリー)です。

カワサキ650RS、通称W3(ダブルスリー)(1973年式)。

▲カワサキ650RS、通称W3(ダブルスリー)(1973年式)。

 その心臓部は、OHV2バルブのバーチカルツイン、直列2気筒エンジン。ボクのW1SA同様、始動はキックオンリーですが、ユーモアたっぷりでサービス精神旺盛なオーナー橋本さんは、足ではなく腕の力だけでエンジンを目覚めさせ、見る人をいつも驚かせてくれるのです。

キックスタートではなく、手でカワサキ650RSのエンジンを始動してしまう橋本さん。名人芸です!

▲キックスタートではなく、手でカワサキ650RSのエンジンを始動してしまう橋本さん。名人芸です!

 あまりにも容易くエンジンをさせるのですが、「点火時期やキャブレターなどがきちんと調整されていれば、Wシリーズのエンジンは誰でも簡単に始動できる」とのこと。たしかにそれはボクも同感で、始動困難でケッチンなどをくらう場合は不調をきたしている証拠。完調ならば、キックスタートに手こずることはありません。

キッカケは映画or小説!?

  
 ボクと同世代の橋本さん。自分のように片岡義男原作の『彼のオートバイ、彼女の島』(角川映画、1986年)を観て、カワサキWシリーズに興味をお持ちになったのかと伺うと、「雑誌で見た、小豆色のタンクのW3にしびれた」と教えてくれます。

とても美しいペイントですが、なんと橋本さん、ご自身で塗装したというから驚きます。素人とは思えません!

▲とても美しいペイントですが、なんと橋本さん、ご自身で塗装したというから驚きます。素人とは思えません!

『彼のオートバイ、彼女の島』ならブルーのタンクですから、なるほど合点がいきます。ボクはてっきり、同作品の主人公の名が“橋本 巧”(はしもと こう)ですから、W3→橋本さん→彼のオートバイ、彼女の島と連想して、勝手に片岡義男ファンだと決めつけてしまいました。理由はともあれ、雑誌や映画など、最初に見て一目惚れというケースはボクも含めて少なくないようです。

新車にプレミアム価格は当時では珍しい

 さて、W3こと650RSは、1966年の『W1』から連綿と続くカワサキ・バーチカルツインシリーズの最終形となります。その流れを国内仕様のみでザックリおさらいすると、シングルキャブだった『W1』をツインキャブ化してフロントホイールを18→19インチにしたのが、68年の『W1S』(W1スペシャル)。

カワサキW1SA(1971年式)。チェンジペダルは左へ、前輪ブレーキはまだ機会式ドラムだった。

▲カワサキW1SA(1971年式)。チェンジペダルは左へ、前輪ブレーキはまだ機会式ドラムだった。

 英国式の右チェンジを左チェンジにした71年の『W1SA』。そしてドラム式だったフロントブレーキをディスク式、しかもデュアル仕様にした73年の『650RS』(W3)へと続きます。

前輪ブレーキを油圧ディスク・デュアル仕様に進化させた650RS。

▲前輪ブレーキを油圧ディスク・デュアル仕様に進化させた650RS。

 W3は74年12月に生産打ち切りとなりますが、当時からそのオーソドックスすぎるメカニズムやスタイルに根強い人気があり、36万3000円だった新車に50万円超えのプレミアム価格がつくという、70年代ではたいへん珍しい現象も起きるほどでした。


 最高出力53ps/7000rpm、最大トルク5.7kg-m/5500rpm、リターン式4段変速。プライマリーチェーンケースやトランスミッションが別体式で、バルブ駆動方式はOHV。スペックやメカニズムは74年の段階で、古めかしいとしか言いようがありません。

「もう、こんなオートバイは二度とつくられない」

 そう考えたバイクファンらが、こぞって買い求めたのですね。

流行とは無縁に愛され続ける

 また、先ほども触れましたが、1977年の片岡義男小説「彼のオートバイ、彼女の島」で、主人公がW3に乗っていたこともバイクファンらには有名で、86年には映画化。そうした作品の中で強烈すぎる個性が描かれ、レーサーレプリカブーム真っ只中の時代に、流行とは逆行するオートバイらしい姿に憧れた者も少なくありません。ボクもそのうちのひとりです。

 
 最後になりましたが、橋本さんはトークも軽妙で旧車仲間たちに愛される存在。W3をわかりやすく解説してくださる動画も公開しましたので、ぜひご覧ください。今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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