「ジパングツーリング(休刊)」誌で90~00年代の様々なバイクに、また「モトツーリング」誌でも00年代からのバイク、主にメーカーの広報車両に乗らせてもらってきた。今回は、自分が初めて触れたバイク、乗ったことのないバイクも含めて、今ほしい絶版名車を5台セレクトした。本当はもっとたくさんあるんだけどね~。

1位 ホンダ「CBR1100XXスーパーブラックバード」

CBR1100XX1,000cc以上の大排気量でフルカウル、最高速度を競うような車体でありながらロングツーリングも余裕でこなすというメガスポーツブームの到来を予感させた96年に登場したのが「CBR1100XXスーパーブラックバード」。ホンダの技術者で数々の名車を生み出した山中勲さんが最後に開発したバイクであり、氏の集大成でもあるバイクとして知られている。その後、99年にフューエルインジェクション化した2代目が登場するも、国内仕様のラインナップはなく逆輸入車が出回るのみだったが、01年3月に満を持して国内仕様がラインナップされた。ちなみに、ホンダ関係者の中には「バツバツ」と呼んでいる人もいて、印象的だったのを覚えている。

さて、国内仕様には180km/h制限のスピードリミッターが装着されていて最高出力も100PSに抑えられたけど、自分はそんなことどうでもよくて、広報車にラインナップされた直後に速攻で借りて、東京~岐阜~和歌山のロングツーリング取材に出た。大きなサイドバッグとシートバッグを載せての旅だったけど、高速道路でも振動は少なく、モーターのようにスムーズに回るエンジンが快適で驚いた。また、山奥の3ケタ県道でバイクを右に左に寝かせている時でも接地感が高く、安心感がハンパない。装備重量が250kg以上あって、荷物も含めれば300kg近くあったと思うけど、荷物満載で曲がってて心底楽しいと思えたバイクはこれくらい。

もっとも、取り回している時の重さはえげつなかった。セパレートハンドルということもあって、動き出しはちょっと頑張らないと車輪が転がってくれない感じ。また、デジタル表示の燃料計がかなりいい加減で、ガソリンスタンドのない山奥ではドキドキしながら走っていたのを覚えてる。でも、これらを除けば、本当に楽しくてパーフェクトなツアラーだった。

中古車市場では、初代から最終型まで、逆輸入車も国内仕様も意外と豊富で、相場も30万円~と手ごろなので、ほんと、買っちゃいそうになって困る(笑)。

2位 カワサキ「KDX200SR」

KDX200SR最終エンデューロレーサーマシン「KDX200R(公道走行不可)」にウインカー等の保安部品をつけて公道走行を可能としたのが「KDX200SR」で、89年に発売。翌年にはフロントサスペンションに倒立フォークを採用して、さっそくマイナーチェンジした。当時は、ホンダ「XL200R」、ヤマハ「DT200WR」、スズキ「TS200R」と200ccクラスのオフロード(デュアルパーパス)モデルが各社からラインナップされ、250ccよりもコンパクトで扱いやすく、125ccよりもパワフルと、ライト層のエントリークラスとして人気だった。

自分が購入したのは90年式の青で、学生時代に初めて買ったバイクだった。レーサーベースなのでエンジンの始動はキックのみだけど、始動性はすこぶる良かった。パワーの出方も意外とマイルドで扱いやすく、車体の軽さもあって、コンビニからロングツーリングまで大活躍してくれた。ただし、エンジン内部にバランサーがないので、振動が車体全体を震わせて、バックミラーは常に上下に振動していて見づらかった。

また、2ストロークエンジンの宿命か、メンテナンスのスパンは短めで、排気デバイスの3WAY-KIPSは毎年のようにオーバーホールした。ちなみに、オーバーホールの手順はサービスマニュアルではよくわからず、当時のオフロード専門誌「バックオフ」に連載されていた村岡ジッタさんの丁寧な解説でやっと理解できた。その後、ジッタさんとは編集者とカメラマンという関係でお仕事をさせていただいたが、その記事の切り抜きは今でも大切に保管している。

なお、中古車市場ではタマ数が少なく、完全に希少車となっている。以前、レッドバロン葛飾で見つけた時には「うぬぅごごごごぉおおお!!!」と買いそうになったけど、諸事情で我慢したことを覚えている(泣)。

3位 ホンダ「PS250」

PS25004年6月に発売されたピックアップスタイルの個性派スクーター「PS250」も購入しておくべきバイクだった。ズーマー、エイプ、バイト、ソロなど若者のライフスタイルに向けた製品を開発していたホンダの社内集団「Nプロジェクト」によるデザインで、「モトラ」とか「デカ・ズーマー」とか言われていた。エンジンなど車体のベースは、当時ホンダ250ccスクーターのラインナップで一番速いと言われていた「フォーサイト」で、トルク感のある加速も楽しかった。ただし、最高速はそれほどでもなく、100km/h以上の巡航は苦手。また、パーキングブレーキの効きも少々弱くて、荷物満載時に急坂で停める時は注意が必要だった。

ともあれ、可倒式のピリオンシートを立てれば運転者用の大型バックレストになるという機構は秀逸で、もう「走るイス」そのものだった。バックレスト使用時には、ピリオンシート部にフラットで大きな荷台が現れるというギミックも衝撃的だった。キャンプ道具満載どころか、折り畳み式のカヤックも積めたからスゴイ! いま手に入れてカスタムしたらキャンプツーリングの可能性をさらに広げてくれそうだ。

なお、中古車市場のタマ数はそこそこ。カスタム仕様も多く、価格帯は30万円台からとなっている。

4位 スズキ「RG50ガンマ」

RG50ガンマ82年12月に登場した50ccスポーツバイク「RG50ガンマ」は、我が家にやってきた初めてのバイク(兄のバイク)であり、自分が初めて跨ったバイクでもあった。当時の自分は中学生で、バイク雑誌やテレビのWGP(今のモトGP)などからもろに影響を受けていて、早くバイクの免許を取って、バイクに乗りたくて仕方がないという時分だった。

そんな時に、高校生の兄がRG50ガンマの赤(87年式?)を納車したのだ。その衝撃たるやものすごく、完全に刷り込み状態だったし、以降、自分の中で「ガンマ」というバイクは特別な存在となった。所有したことはないけど、絶版車のゼロハンスポーツを選ぶなら50ccガンマ以外には考えられない。

中古車市場だと、超希少車のようで、年式やカラーを選べる状況ではないようだ。

5位 ホンダ「CB1300SF ドリームスペシャル」

CB1300SFドリームスペシャル04年に100台限定!で発売されたとてもスペシャルなバイク。03年の鈴鹿8時間耐久レースに出場した「チームPROJECT BIG-1(ホンダ朝霞研究所のプライベーターチーム)」のためにカスタム製作されたスペシャルCBをイメージして市販化されたモデルで、価格は142万8,000円だった。カスタム内容としては、レーサーマシンをイメージした大柄なハーフカウル(バックミラーもカウルマウント)と、PIAA製HIDヘッドライト、モリワキエンジニアリング製のフルエキゾースト集合管マフラー、さらにはアルミ削り出しのセパレートハンドルなどとてもレーシーな構成だった。

元来、ハーフカウル好きなので、ホンダからリリースが届いた時の写真を見て、あまりのどんぴしゃっぷりに購入を検討したんだけど、ぐずぐずしている間に速攻で完売した記憶がある。

中古車市場では、数年に一度、出てくるかどうかの希少車。狙って買えるバイクじゃないね…。

まとめ

原付バイクからスクーター、はてはスペシャルな限定大型バイクまで、思い出補正も含めつつ5台を選んでみた。ちなみに、このラインナップから状態のいい掘り出し物を買えるのであれば、やっぱり苦労を共にしたKDX200SRを選ぶと思う。2ストの維持は何かと大変なんだけどね…。

 

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