画像は2010年のヤングマシン誌より。これらのモデルは初年度登録の時期によって2023年から重課税に。
EV普及のために減税/免税しておき普及が見えてきたら増税して取り返そうという政府のやり口は、方向性そのものの善悪は置いておいても、説明不足なのは明らかです。現状でまかり通っている、愛車に長く乗ろうとすると損になるという構造も日本独特のもの。税金の使い方の透明化が先なのでは?
●文:Nom(埜邑博道)
二輪車の平均車齢は16.13年。なのに13年目から重課税とは納得がいかない!
一般社団法人 自動車検査登録情報協会(自検協)が2022年10月に発表した「令和4年版わが国の自動車保有動向」によると、2022年3月現在においてナンバープレートを付けている自動車/小型二輪(以下二輪車)が初度登録してからの経過年数を表す「平均車齢」(人の平均寿命に相当)が、二輪車は16.13年となり、前年よりも0.08年延びているそうです。
この平均車齢は、新車販売台数が減少して、二輪車や自動車が長く使われるようになると平均値が上がる=高齢化が進むとされていて、二輪車の場合、20年連続で高齢化が進んでいるそうです。
簡単に言うと、初度登録してから廃車にしてスクラップにするか、あるいは海外輸出されるまでの二輪車の寿命が、現在は16.13年ということ。
ちなみに乗用車の平均車齢は9.03年ですから、二輪車のほうが1台の寿命が長い、つまり長く乗られているということです。
この長寿化(?)の原因は多々あると思います。
大きいものでは、長く給料が上がらない状況が続いているここ日本においては、一度、新車(もちろん中古車も)を購入したら、なかなか買い替えることができないため。とくに、このデータは車検のある小型二輪車を対象にしているので、それなりに車両価格が高いということも挙げられるでしょう。
そしてもうひとつ考えられる大きな要因が、バイクの性能が大きく向上していて、故障が少なくなっていたり、メンテナンスのインターバルが長くなってきていること。
例を挙げると、昔はこまめなメンテナンスが必要で、所有するにはその覚悟も最低限必要だと言われていたドゥカティでさえも、最近は(特にアウディ傘下になってからは)どんどんメンテナンスのインターバルが長くなっています。複雑なデスモドローミックシステムのバルブクリアランスの点検も、一昔前に比べると、8000km~1万km毎が1万4000km~3万km毎と3倍ほど長くなっています。
まあ、ドゥカティの例はあまり一般的ではないかもしれませんが、他メーカーの車種もメンテナンス性能はどんどん向上していて、長く所有するのも難しいことではなくなっています。
筆者が長年乗っていた初代ドウカティ・ムルティストラーダ1000。まだ現役なら車齢は19年(歳)で、重課税額は2500円になる。
ボクが以前所有していて知人に譲ったドゥカティのムルティストラーダ1000は、2003年の登場ですから車齢は19年。おそらくその知人は、いまでもそのムルティを元気に走らせているはずです。
二輪車の長寿化は別に悪いことではなく、大切な愛車に長く大切に乗ることはSDGsが叫ばれるいまの時代にも合っているのではと思います(CO2排出量はさておいてですが……)。
しかし、ここで問題になるのが、初度登録から13年以上経過した二輪車は税金(重量税)が重課税になること。車検のある小型二輪の場合は1900円が2300円になり、さらに18年以上が経過すると2500円に税額がアップします。このコラムでも詳しく解説していますのでそちらも参照願います。
せっかく大事に、そして大切に乗っているのに、年月が経過したからとまるで罰ゲームのように税金が高くなるのはやはり納得がいきません。
海外では製造から一定年数が経過した車両に対する減税処置があるほどなのに対し、この国(政治)は古いバイク/クルマに乗ることはまるで罪悪のようにとらえられているのです。
今回、いまから12~14年前にあたる2008年~2010年の本誌のバイクカタログを見返してみましたが、多くのバイクがまだまだ現役で走っていて、街中やツーリングエリアでよく見かけるモデルばかり。
コロナ禍にあって中古車価格が高騰している代表的なバイクであるカワサキ・ゼファーシリーズも、400が登場したのが1989年、750が90年、1100が92年ですからもはや30年選手。にもかかわらず、新車当時価格の倍ほどである100万円以上(750、1100だと150万円以上)も出して購入したいというライダーが多数いるのですから、バイクに対する価値観は新しい・古いではなく、それこそ人ぞれぞれのもの。なのに、ひとくくりに13年以上、18年以上で区別(差別)するのはいかがなものでしょう。
平均車齢が16.13年というデータを見て、あらためて重課税の理不尽さを思い出した次第です。
再び飛び出したEVへの課税強化論
そして、みなさんも注視していると思いますが、いま防衛費の増額を巡る財源問題で政治が紛糾しています。
多くの報道でさまざまな情報が出ていますから、ここでは詳しく触れませんけれど、岸田政権になってからのさまざまな事柄の「唐突さ」が紛糾の大きな要因に違いありません。
つい先日も、突然提起された「走行距離課税」、「道路通行税」の新設がありましたが、これはあまりの世間の反発に、岸田総理はなかったことのような言い方で幕引きを図ったものでした。
ところが、今回の防衛費増額の財源を議論しているさなかに、今度は政府・与党からEVが普及した時代を見据えた税制の枠組みを3年後に示す方向で調整に入ったという報道がありました。
走行距離課税のときと同様に、ガソリン車の利用者が払うガソリン税や軽油取引税などの燃料課税収入が、燃費の向上やEVの普及で減少が続くことが予想されるために、新たな課税方法を検討するというものです。
日産サクラが登場した際の記事でも取り上げたように、令和3年度補正予算と、令和4年度予算になって軽自動車とPHEVの補助金が2倍以上になっているのが分かる。とくに、軽EVはEV車普及促進のキーになると経産省も思っているらしく、やたら手厚くされているのだ。
そもそもの話、CO2削減のために燃費のいいクルマに対してはエコカー減税を行うなどして、普及を促進していたと思ったら、今度は燃料課税収入が減少してしまうから別の手段で課税するというのは非常に身勝手な話です。
2050年に国が掲げるカーボンニュートラル(以下CN)を目指すうえでの大切な手段がバイク/クルマを含むモビリティーのCN化であることは明らかで、だからこそ国や自治体が多額の購入補助金を出してまでEVを普及させようと躍起になっていたのではないでしょうか。
なのにEVはガソリン税/軽油引取税を払っていない(ついでに書くと、EVは新車登録時の重量税が免税です)から、新たな調整方法を考えてEVユーザーにも税金を負担してもらうというのはあまりにも先を見据えてこなかったことを白状しているようなことで、そのツケを国民/ユーザーに押し付けようとしているのです。
今回の新たな税制の議論の中で出てきているのが、EVは車両重量が重いので道路に対する攻撃性が高い、という考え。2018年度に道路の整備などにかかった歳出は7.8兆円で、自動車関連の歳入6.2兆円を上回っているため、道路に負荷をかけて走るEVにその不足分を支払ってもらうことにすればいいという意図が見え見えです。
車重うんぬんと聞くと、思い出されるのが二輪車の高速道路料金改正の議論の中で出ていた、二輪車は重量が軽いから道路への負担は少ないのに、二輪車の数倍も重い軽自動車と同じ料金は不合理だという二輪業界側の意見。
この意見を道路会社(親方日の丸です)は一切聞き入れませんでしたが、今回の話は逆で、重いから課税するということですよね。
報道によると週内(16ないし17日まで)にまとめる2023年度与党税制改正大綱に今後の課題として盛り込むとのことですが、「走行距離税」や「道路通行税」ではない、どれだけ多くの国民/ユーザーが納得して課税を受け入れられる素晴らしい案が出てくるのか、楽しみに待ちたい気持ちです。
ひとつだけ付け加えるなら、もし道路関係税/自動車関係税を改正するなら、ただでさえ諸外国に比べて加重で複雑な税制を抜本的に改正してからだと思います。
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