“ノストラダムスの大予言”は1年後、果たして的中するのかしないのか……筆者が内心ドキドキしながらモーターサイクリスト編集部で働いていた1998年4の月卓越した排ガス浄化性能をウリにしたホンダV4モデル「VFR(RC46)」がひっそり静か~に登場いたしました。公式リリースによれば国内へ向けた年間販売計画台数は500台。しかしながら、白バイ隊員も認めた自由自在な扱いやすさは極上中の極上だったのです!

1998_VFR月と

●月とスッポン……ならぬ月とVFR。引用した1998年型「VFR」カタログは上のタイトル背景に使っている表紙から、漆黒の宇宙に浮かび上がる月と赤い車両とが印象的な仕上がり。スペイシーじゃあ〜りませんか。しかし……「RVF」や「VTR」や「PCX」など長い変遷の歴史と排気量の違う兄弟車を持つブランドがポンッと排気量を外してしまうと混乱しますね。なおかつ型式名まで同じだと……(今回、後で出てきます(^^ゞ)。少々面倒ですけれど、お目当ての車両が間違いなくレッドバロンの店員さんに伝えられるよう、違いを覚えていってください。まぁ、「ツリ目のVFR!」とかでも十分伝わるとは思いますが……

 

 

VFR800Fというハイメカの貴公子【前編】はコチラ!

 

VFR800Fというハイメカの貴公子【後編】はコチラ!

 

幼少期のトラウマ期限が着々と近づいてくるなかで(汗)

 

「1999年、7の月に人類は滅亡する……」

 

 

1973年に祥伝社から発行された「ノストラダムスの大予言~迫り来る1999年7の月 人類滅亡の日~」(著:五島勉)はセンセーショナルな内容でベストセラーとなり、日本に一大オカルトブームを巻き起こしました。

ノストラダムス

ミシェル・ノストラダムス(Michel Nostradamus、1503年12月14日 - 1566年7月2日)さんはルネサンス期フランスの医師、占星術師、詩人かつ料理研究家(!)。 日本では「ノストラダムスの大予言」の名で知られる詩集を著しました。最初はアノ新書の表紙を載せようかな〜とも思ったのですけれど、ビジュアルがいまだに怖くてダメ……

 

 

いやもうテレビ、ラジオ、(スポーツ)新聞、週刊誌などあらゆるマスコミ関係が諸手を挙げて恐怖の大王とは何か!?」「1999年に何が起こるのか!?」「人類に助かるすべはあるのか!?」とさんざんやっていた記憶がございます。

 

物心もついてないセンシティブな幼少期を過ごしていた当時5歳のワタクシは、大人たちがさかんに話題にしている“1999年”“滅亡”などというキーワードに震え上がり「ボクはこれから成長していっても、30歳そこいらで死んでしまうんだ……」と悲しくなって、毎晩枕を涙で濡らしていました(いや、本当にマジな話)。

グランドクロス

●……というわけで「グランドクロス」も「惑星直列」も筆者のトラウマワードです。冗談抜きで厭世的な人生観を植え付けられましたし、精神的な苦痛に対して損害賠償裁判を起こしたいくらい(←誰に?)。まぁ、だからこそ「今しかない!」と何にでもチャレンジしてきて、イイ目も見てきたから結果的にはトントンかな

 

 

それから山口の片田舎で級友が食べきれなかった給食(牛乳含む)を日々飲み込みスクスクスクと成長し、進学して上京してアルバイトとしてモーターサイクリスト編集部に潜り込み、運良く社員になれて現在の妻とも知り合え、総じてまぁまぁ順風満帆な雰囲気で訪れた30歳の春

 

しかし心の奥底では絶えず「人類滅亡まであと1年かも、あと1年かも……」と考え続けていたりもした、そんな1998年の4月に発売されたのがホンダ「VFR(RC46前期)」だったのです。

VFR

1998年4月20日に発売されたホンダ「VFR(RC46前期)」。スーパーバイク(市販車ベースのレース)カテゴリーでの必勝を期して開発された「RVF/RC45」用エンジンをベースにストロークを2㎜延長して781㏄としたシリンダー挟み角90度の水冷4ストV型4気筒DOHC4バルブエンジンは最高出力80馬力/9500回転、最大トルク6.9㎏m/7000回転(輸出仕様は110馬力/1万500回転、最大トルク8.4㎏m/8500回転)を発揮。車両重量233㎏、シート高805㎜、燃料タンク容量21ℓ、60㎞/h定地走行燃費は27.0㎞/ℓ。税抜き当時価格は98万円。……いやいや、どうしてもこの顔を見ると白バイを思い出してしまいます。また、「NR」とも何度か間違えてしまいました(汗)

RVF/RC45

●はい、こちらが1994年1月8日から税抜き当時価格200万円(500台限定)で発売されたホンダ「RVF/RC45」(翌1995年型は予約受注による期間限定生産)。新設計された749㏄のシリンダー挟み角90度・水冷4ストV型4気筒DOHC4バルブエンジンは最高出力77馬力/1万1500回転、最大トルク5.7㎏m/7000回転(輸出仕様は120馬力/1万2000回転、最大トルク7.7㎏m/1万回転)のパフォーマンス! ホンダ独自のカムギヤトレーンは従来のエンジン中央から右端へ配置が変更され、カムシャフトの長さを短くするとともに、ギヤ枚数やベアリング数を減少させることによって高剛性化とフリクションロスの低減を実現。また、ハイシリコン・アルミニウムの粉末に、耐久性を向上させるセラミックスと潤滑性を向上させるグラファイト(黒鉛)を添加し、熱間押し出し成形した“パウダーメタル・コンポジット”のシリンダースリーブを採用などなど、これらの新技術はさらに改良されたあと1998年デビューの「VFR」へと受け継がれたのです! 車両重量211㎏、燃料タンク容量18ℓ、60㎞/h定地走行燃費は22.0㎞/ℓ

 

 

とうに狂乱のバイクブームは過ぎ去っており、遠い過去の話へ。

 

1980年代、販売の中心となっていたレーサーレプリカ群が白煙と生ガスと騒音を巻き散らしながら好き勝手に走り回っていた“ツケ”を払わざるを得ない状況へ、追い込まれていくターンがやって来たのです。

騒音イメージ

●バイク好きにとってはサイコーな快音でも、一般市民の方々にとっては単なる騒音……という場合が得てしてあるもの。決められたルールは守らなければ意味がないのです

 

 

1986年に“近接騒音規制”が初導入された騒音規制はもちろん、問題は1998~1999年にかけて排気量ごとに順次国内市場へ導入されていった排出ガス規制でした。

 

ここのコラムでも何度となく述べてきましたが、「ホンダNSR250R」、「ヤマハDT230ランツァ」、「スズキRGV-Γ250SP」、「カワサキKDX220SR」ほかの2ストロークモデルや、4ストロークでもキャブレターでガンガンとエンジンを回し、ハイパワーを追求していた各車引導を渡されたり、継続できたにせよさまざまな対策を取らざるを得なかったのは、当時現役だったライダーでしたらご存じのとおり

 

 

「人類より先に国内バイク市場が滅亡するんじゃないの」とシニカルにつぶやいた先輩スタッフの冷めた笑顔が忘れられません(まぁ、本当の地獄は2006年からスタートした排出ガス規制だったのですけれど)。

地獄イラスト

●2006年からスタートした排ガス規制は、1998年版で定められた規制値よりさらに有害物質(特にCOとHC)を70〜80%減らしなさい! というもので、空冷エンジンやキャブレター仕様車の大多数がノックアウト……。国産車のラインアップが壊滅状態になった時代に“アルバム号”の担当をしていた筆者は頭を抱えて、そのまま机に突っ伏して昼寝をしました。地獄だった……(ん?)

 

 

レース必勝!の基本構成をそっくり受け継いだ強靱な心臓

 

かくいう背景のなかデビューしてきた「VFR」は、1994年1月より500台が限定発売されたゴリゴリのスーパーバイクレーサーレプリカモデル「RVF/RC45」のエンジンをベースに、ストロークを延長して排気量を781㏄までアップしたパワーユニットを……、

VFRエンジン

●2000年型「VFR」カタログより抜粋。正直1994年、鈴鹿サーキットで試乗させてもらった「RVF/RC45」は、まだフューエルインジェクションの煮詰めが甘かったのかスロットルを捻るとON! 閉じるとOFF!といったスイッチのような性格で筆者には扱いづらく感じたのですけれど、それから5年経って乗った「VFR」のスロットルレスポンスの気持ちよさといったら! 感服いたしました……m(_ _)m

 

 

新設計されたアルミ製ピボットレス・ツインチューブフレーム”へと搭載したオールニューなモデル。

VFRシャシー

●2000年型「VFR」カタログより抜粋。“ピボット”とはフレームとスイングアームを結ぶ点のこと。スイングアーム(VFRなら片持ちのプロアームですね)は、通常ここを支点にして上下の回転運動を行ない、サスペンションとしての役割を果たすのですけれど、そこをあえて省き、エンジンのクランクケースにプロアームを締結するというピボットレスな方式を採用。なんとフレームだけで従来型より3.5㎏軽くなったのですからスゴイ! 「CBR900RR(929と954)」でも“セミ”ピボットレスフレームは採用されましたがレース参戦を意識した「CBR1000RR(SC57)」以降は通常のフレームへ……。しかしレースユースを考えなくてもいい「VFR(800)」シリーズは、一般公道での軽快なハンドリングに寄与する“ピボットレスフレーム”を2022年の最終型まで踏襲していきました

 

 

制動装置にも「CBR1100XXスーパーブラックバード」に装着されていた“デュアルコンバインドブレーキシステム”をさらに熟成した仕様が導入されており、流麗かつ機能的なフルフェアリングボディと相まって新時代の「V4スーパースポーツツアラー」を名乗るに相応しい“ハイテク・リアルスポーツ・マシン”が爆誕したのです。

VFRラジエター

●2000年型「VFR」カタログより抜粋。事前に「ファイアーストーム(VTR1000F)」へ採用されてノウハウを積んだデュアルサイドラジエターが「VFR」へ装備されました。いや本当にエンジンを冷却した熱風がサイドカウルから吹き飛んでいくので、ライダーが蒸し焼きになるシチュエーションが激減します(筆者は「ファイアーストーム」で実感!)。ただやはり本来の目的であるエンジン冷却という面ではネガがあったのか、2014年4月に登場した「VFR800F」からは、一般的なレイアウトであるエンジンの前へラジエターの位置が変更を受けました……

 

 

リリースにも高らかに謳われているとおり、「1999年10月より新たに国内へ導入される小型二輪自動車(250㏄を超える排気量)の排出ガス規制に適合した」パワーユニットは、新開発のPGM-FI(電子制御燃料噴射装置)とエキゾーストエアインジェクションシステム(二次空気導入装置)を採用。

二次空気システム

「VFR」用に新開発されたソレノイド制御のエアインジェクションシステムは、エアクリーナーからの空気を排気ポートの脈動負圧によって、リードバルブを介し排気ポートに送り込む機構。酸素を燃焼チャンバー内の排ガスとを結合させ排気ポート以降の排ガスの酸化を促進(燃え残りを燃やす)することで、より完全な燃焼を促進……未燃焼ガスのHCとCOの排出量低減を図りました。この別名「二次空気導入システム」は複雑なものから簡素なものまで構成はさまざまでしたが、数多くのモデルに採用されてましたね〜(図版は1998年4月「VFR FACT BOOK」より)

 

 

厳密に規制される有害物質……CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)を効果的に低減させることを実現しつつ80馬力/6.9kgmのパフォーマンスを発揮して、爽快な走りと環境性能を見事に両立してきました。

 

最新技術を全身に注入された、まさに“ハイメカニズムの貴公子”

 

実際、走らせてみても驚くくらい軽快なハンドリングで思わずヘルメットの中で笑ってしまうほど

 

倒し込みがスッとうまくいき、スロットルをパーシャルにしたコーナリング中は鬼安定

VFRハイテク図解

●1998年型「VFR」カタログより抜粋。フロントカウルとスクリーンの間に設けられたエアインテークから風を導入し、上方へ吹き上げることによって高速巡航時にライダーへ走行風の圧力がかかることを大幅に低減。大型のフロントフェンダーは「CBR1100XXスーパーブラックバード」のノウハウが注ぎ込まれたエアロダイナミックデザインで空気抵抗を軽減し、高速時の軽快で反応性に優れたハンドリング特性まで実現……などなどスーパースポーツツアラーに相応しいエアマネージメントデザインが与えられていました。あ、ヘッドライトはまだLEDではなく、ハロゲンのマルチリフレフタータイプでしたね〜

 

 

出口に差し掛かって右手を捻った瞬間にはヒュン!と車体が起き上がりドリュリュリュリュリュ~~~という個性的な排気音とともに快感度が満点なフル加速へ移行! 

 

 

後日、白バイ車両として“VFRのポリス仕様”大量に配備されたときは、「あ、もう無理(←何が?)絶望感を味わったもの。

 

さらにさらに後日も後日、2010年頃に白バイ隊員の皆さんを取材させていただいたときには、すでに後継機たる最新マシンCB1300のポリス仕様「CB1300P」が導入されつつあったにも関わらず、多くの隊員が「VFR(800P)のほうがいい」と口をそろえていたものです。

白バイ

●いらすとやさんをチェックしてみると……嗚呼、すでに「VFR800P」は退役しており(?)あるのは上の「CB1300P」を彷彿させるイラストばかり……。しかし、トミカではまだまだ現役でした! 現行ラインアップにあるうち、是非収集しておきましょう!?

 

 

理由を聞いてみると「まず軽い、(V型エンジンは幅が狭いので)バンク角が深い、(並列4気筒よりV4はクランクが短いから)ジャイロ効果が弱めなので(!)素早く切り返しやすい」などなど。

 

 

時を経ても高い定評は変わらないのだな……と深く納得いたしました。

 

登場タイミングがイマイチなのは、ホンダV4の宿命……!?

 

嗚呼、そんな高すぎる完成度を誇った車両なのに、なぜ「VFR」は販売的に低空飛行が続いてしまったのか!?

 

1996年に運転免許制度が大きく変わり、大型自動二輪免許が教習所でも取得できるようになったがゆえのビッグバイクブームが巻き起こっていたのいうのに……。

1999_VFR

●2000年型「VFR」カタログより。ど〜ですか、お客さん! この“高精度なパーツ群がムチムチッと透き間なく詰まったドネルケバブのような最新技術の塊感”がたまらないでしょう〜。ホンダ開発陣も造形に自信を持っていたのか、国内仕様の「VFR(RC46前期)」は1998年型=赤、2000年型=写真の銀、2001年型=色調の違う銀(後述)と、各年式のモデルごと1色のみで勝負しておりゴテゴテしたグラフィックも一切排除……。「インターセプターカラーでテコ入れしても良かったんじゃないの!?」と当時は脳天気に思っていましたが、今じっくり見返してみるとこのシンプルさがとんでもなくカッコイイんですよね……

 

 

残念ながら当時の大排気量バイクシーンは“ビッグネイキッド”とZZ-RやCBR-XXといった“メガスポーツ”“ハーレーダビッドソン”に絶大なる人気が集中しており、いわゆる中間排気量の“通(つう)”なバイクは見過ごされがち

 

さらにタイミングの悪いことにビッグネイキッド市場を牽引してきた人気車、ホンダの“スーパーフォア”が(当時)クラス最大の1300㏄水冷エンジンを引っさげて「VFR」デビューの約1ヵ月前となる1998年3月に「CB1300 SUPER FOUR」として登場してきたとあっては……バイク雑誌屋稼業としてもそちらにフォーカスせざるを得ませんでした。

●1998年3月2日に発売されたホンダ「CB1300 SUPER FOUR(SC40)」。ヤマハ「XJR1300」、スズキ「イナズマ1200」、カワサキ「ZRX1100」&「ゼファー1100」シリーズといったライバルたちとガチンコ勝負を繰り広げていた時期だけに、ホンダの開発陣も広告&宣伝セクションも気合いの入り方がハンパなかったですね〜。1284㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは100馬力/12.2㎏mの実力を発揮。シート高は790㎜、車両重量は273㎏とちょいと(?)重め。リリースに記載された年間販売計画台数は4500台で税抜き当時価格は94万円と「VFR」より4万円も安かった……。当然のごとく1998年、1999年と2年連続してビッグバイククラスでベストセラーの座を獲得いたしました!

 

 

他意のない偶然だと思いたいのですけれど、「VFR1200F」デビュー時の「CB1100」かぶせっぷりといい、並列4気筒の“CB”とV型4気筒の“VF”とでは、相容れぬ宿命めいたものがあるのでしょうか、しらんけど(苦笑)。

2000_VFRデビュー赤横

●1998年型「VFR」は情熱的な“イタリアンレッド”にて勝負! サイドカウルの上部エアアウトレットから生まれる段差のラインが、うまく燃料タンクのエッジへと連なっているのですね……。その下、大きな開口部からチラリとのぞくサイドラジエターも目を引く部分でした〜

 

 

ともあれ、派手な動きこそなかったものの、その高い価値を認めた人たちが着実に支持していった「VFR(RC46前期)」は、2000年の1月20日に先進の三元触媒システム(HECS3)を採用するなど、より一層環境性能を高めるマイナーチェンジを敢行。

2000_VFR触媒

●2000年1月20日から発売されたマイチェン版「VFR」。HECS3(Honda Evolutional Catalyzing System 3)は小型で軽量な円筒型の触媒と精密な空燃比制御によって浄化性能を高める「O2センサー」を組み合わせることで高度な浄化性能を実現(現在の主流となっている排ガス浄化方式ですね)。上の1998年型と見比べると、センタースタンド奥にある黒いチャンバーがちょいと肥大化していることが分かります。盗難防止に効果的な強化ハンドルロック機構、強化キーシリンダーの採用と相まって、車両重量は2㎏増の235㎏となりました。車体色は精悍な“スパークリングシルバーメタリック”! あ、そうそう。結局、1999年7の月に恐怖の大王なんて全くやって来ず……それで安心して1999年9月に結婚いたしました(笑)

 

 

同2000年の10月19日には2001年モデルとして、RC46前期最後のカラーチェンジを受けています。

2000_VFR新色銀

●2001年型「VFR]は、「正確な、精密な」というaccurateを含む“アキュレートシルバー”で勝負。青みがかったイイ色ですね〜! ホイールの色も従来の黒色からグレーへと変更し、トータルコーディネートも完璧。まぁ、リリースによると年間販売計画は200台と大幅に減らされてしまいましたが(現在所有されている方! 非常にレアものですので大切に……)。あ、そうそうノストラダムスの大予言に引き続き、マスコミが大騒ぎしていた「西暦2000年問題」も特に大パニックを引き起こすことなく終わりました(1999年の大晦日、山口の実家で家族そろってゆく年くる年を観ているなか、「何か起こるかも……」とひとり懐中電灯を握りしめていたことはナイショです)

 

 

かくいう流れのなか、「VFR(RC46前期)」は一貫して消費税抜き当時価格が98万円のままだったという事実も「オヌシ、地味ながらなかなかやるのう……」と思わせてくれた点です(三元触媒って白金、ロジウム、パラジウムなどの貴金属を使っているので高いのですよ!)。

 

全身を整形してセクシーボディに大変身(でも心は……♡)

 

「地味なままで埋没していくのはイヤッ!」

 

 

と、思春期の地方都市中学生みたいなことをVFRちゃん(くん?)が言い出したワケではないのでしょうけれど、夏休み明けデビューを果たした幼馴染みのように、アッと驚くイメージ一新を成功させて登場したのが2002年1月から発売がスタートした「VFR」なのでした。

2002_VFR

●4年ぶりのモデルチェンジを受け、2002年1月22日から発売されたホンダ「VFR(RC46後期)」。V4エンジン初の『V4 VTEC』を搭載したエンジンは最高出力80馬力/9500回転こそ不変ながら、最大トルクは0.1㎏m増えた7.0㎏mを7500回転で発生(輸出仕様は111馬力/1万500回転、最大トルク8.2㎏m/8750回転)。車両重量243㎏、シート高805㎜、燃料タンク容量22ℓ、60㎞/h定地走行燃費は26.5㎞/ℓ。税抜き当時価格は105万円と従来型から7万円アップ……って、これだけ大変更されて“七諭吉”(2024年7月ころを目途に渋沢栄一さんへ変わる予定ですね、1万円のデザイン)しか違わないというのもスゴイことだと思いました

 

 

顔……いや、フロントフェイスは大胆過ぎるほどに激変し、キリッとしたツリ目に!

2002_VFR顔と説明

目のイッたフクロウが何匹もこっちを睨んでいるようなフロントフェイスデザインにはビックリさせられました。顔全体で「V」を主張しているのだとか。V4だからライトバルブも4つ……なんですかね(笑)。エンジン重量は約3㎏軽減され、各種パーツの見直しによりトータル騒音も約1.0dB低減、HECS3に採用している三元触媒も従来型の100セル仕様から300セル仕様とし触媒面積を大幅に増加させ世界最高水準の環境性能を達成するなど、ハイテクの貴公子ぶりにさらなる磨きがかけられました

 

 

サイドカウルやタンクにもシュッとしたエッジが立てられ、お尻……いや、テールに至っては「NR」もかくやのデュアルセンターアップマフラーへと激変しているではありませんかッ!! 

2002_VFR

●2002年型「VFR」カタログ。……表紙にリヤから撮影したカットを持ってくる手法というのは非常に斬新で筆者、他の例を思い出せません。それだけデュアルアップマフラーとプロアームを訴求したかったということなのでしょう。サイレンサーエンドの配置が「V」の字になっており、開口部は4つ……ということで、こちらでもV4であることを訴求しております。あ、RC46後期の車体色はRC46前期と同様、情熱の“イタリアンレッド”からスタートいたしました。なお、リリースに記載されていた年間販売計画台数は400台……

 

 

いやはやサイバーというかパンクというか、韓国や米国の美容整形番組で劇的なビフォーアフターを見せつけられたような気分にさえなったものです(汗)。

メイクアップ

ついつい観てしまうアノ手の番組。メイクアップどころの騒ぎではなく、頬や顎の骨まで削っていくレベルになると一瞬引きますが、出演者の目指す理想像への飽くなき執念にまた感動してしまうという……(^^ゞ

 

 

……と、スタイリングだけを眺めてみれば、もはや手の届かないところまで羽ばたいていってしまったあのコ、といった印象ですけれど、ハート……いや、エンジンはカムギヤトレインからサイレントカムチェーンへと変更(ついでにHYPER VTEC化!)されて静粛性が増し、従来型で高い定評を得た骨格(フレーム)と脚(サスペンション)と足底さばき(最新のDual CBS化)はさらなる進化

2002_VFRカタログ

●1999年に「CB400SF/SB」が“HYPER VTEC”と銘打って採用していたシステムとほぼ同様の『V4 VTEC』を新採用。6400回転を境に低速側では2バルブ、高速側では4バルブとなる機構により低中速トルクの向上と高速巡航時の燃費アップ、さらには2バルブ域での走行騒音低減といった数々のメリットがもたらされました。バルブ制御の作動・休止の切り替えはバルブリフター内のスライドピンを油圧でストロークさせることで行っているのです。フレームは基本骨格を踏襲しつつヘッドパイプとメインパイプの接合部の強化や、ステアリングヘッドのねじり剛性強化などキメ細かいモディファイを実施してトータル性能をアップ! Dual CBSはフロントブレーキでもリヤブレーキでもどちらか一方を操作すれば、前・後輪のブレーキが適切な制動配分で作動するというシステムへとグレードアップが果たされました。

 

 

タンデムライダーに優しい大型のグラブバーだけでなく、何かと便利なセンタースタンドまでちゃんと残されており、優しさや気さくさはそのままではありませんか!

 

リリースには「フルモデルチェンジ」と謳われていますが型式名は“RC46”と変わっておらず、驚くほど垢抜けたものの本質はそのまま、豊かな包容力でどこまでも一緒に走ってくれるパートナーであることは不変でした。

 

堅実&着実に商品力を維持向上させ、一定以上の人気を獲得!

 

そんな「VFR(RC46後期)」は、毎年のようにマイナーチェンジやカラーチェンジが積み重ねられ、

2004_VFRマイチェン

●2004年1月23日から発売されたマイチェン版「VFR」。新色の“デジタルシルバーメタリック”が採用され、ホイールカラーと車体ロゴも変更(立体エンブレム化されたのがなんともイイですね〜)。あとキースイッチにハザード専用ポジションを追加し、エンジン停止時にヘッドライトの消灯状態でハザードランプの作動ができるようになりました。税抜き当時価格は105万円と変わらず

 

2004_VFR

●2004年11月13日には新色“ウイニングレッド”が追加発売され、なんと“デジタルシルバーメタリック”との2色展開に……。税抜き当時価格は105万円で不変でありました。ちなみに消費税5%を乗じた価格は110万2500円となります、今さらですが

 

2006_VFR

●2006年2月27日から発売されたのが、新たにABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を標準装備した仕様で、同時にリヤサスペンションにはプリロードアジャスター、ウインカーレンズにはスモーククリアレンズが採用されました。新色の“パールコスミックブラック”と定番化した“デジタルシルバーメタリック”との2色展開で、その完成度がオトナなライダーたちへ再発見されたのか、ジワリジワリと人気は上昇傾向に……! 税抜き当時価格は112万円とまたまた“七諭吉”分上昇(消費税5%込み価格は117万6000円)

 

2006VFR走り写真

●2006年型「VFR」カタログより。ホンダアクセスの純正アクセサリー「ナローパニアケース」と「ハイウインドシールド」を装着した車体での走り写真……いやぁ、イケてます。VFRのイメージそのものですなぁ。新採用のCombined ABSは、フロントブレーキでもリヤブレーキでもどちらか一方を操作すれば、前・後輪のブレーキが適切な制動配分で作動するという従来のDual CBSにABSを組み合わせたもの。長距離を一気に走る苛酷なツーリング取材でも絶大なる安心感を与えてくれました〜

 

 

2006年の12月に限定発売が行われたトリコロールカラーでフィニッシュ!

VFRスペシャル

●2006年12月8日に「VFR・スペシャル」として200台が限定発売されたトリコロール……いやもう“ワカッテル”人なら全員が全員“インターセプターカラー”(【前編】参照のこと)と呼ぶに決まっている仕様。実際、リヤシート下のカウル側面には「INTERCEPTOR」とロゴも入っていますしね(笑)。メインフレームをブラックアウトし、さらにアクセサリーのリヤシングルシートカウルまで付属品といたしまして、税抜き当時価格は117万円(消費税5%込み価格は122万8500円)ナリ! こちらは確か、ソッコーで完売したはず……

 

 

あとはより一層排気量とハイテク度を増した「VFR1200F」(2010年3月デビュー)へ移行してもらいまして、引き続きV4スーパースポーツツアラーの世界をお楽しみください……との腹づもりがホンダ側にあったのかどうかは不明ですが、2008年をもって「VFR(RC46後期)」の国内販売は終了

VFR1200F RED

●「VFR1200F」……う〜ん、やはりどう見ても800「VFR」との関連性は薄いですよねぇ。しかも、スポーツツアラーを名乗りながら燃料タンク容量が18ℓ(後期は19ℓ)で、さらに初期型の60㎞/h定地走行燃費が20.5㎞/ℓと悪かったものですから(DCTのみならずSTDも後期は燃費が向上)、スタートダッシュをキメるべきときイメージ的に大きく損をしてしまった……という点では不運でした

 

 

後を継いだ「VFR1200F/DCT」の想定外に短かった旅路はコチラから確認していただくとして、筆者も正直「まさか……」と思った“ミドルVFRの大復活”が2014年4月18日に果たされ、その名も「VFR800F」として販売開始されることとなったのです。

2018_ラストVFR800F

●すみません、これは上本文中にある2014年モデルではなく、最終型も最終型の「VFR800F」で2019年3月8日に追加された新色です(詳細は次回にて)。RC46版「INTERCEPTOR」カラー&グラフィックの違いを比較してもらうためココへ画像を埋め込みました。約13年間の開きがあると思えば趣きが深いし、甲乙も付けがたいでしょっ!?

 

 

同2014年末となる12月12日にはアドベンチャースタイルの「VFR800X」も登場し、結果的にこの2台が2022年10月の生産終了によって、ホンダV4の(現時点では)幕引きを果たしたモデルと相成りました。

VFR800X

●こちらは2014年12月12日に発売された「VFR800X」です。いっそのことペットネームの“クロスランナー”も車名に連ねておけば(車体にロゴがデカデカと入っていますし)、分かりづらさも少なかったのではないか……と写真を見るたび考えてしまいます

 

 

次回はいよいよその、ホンダV4大団円(?)までの道のりを描いてまいりましょう!

 

 

あ、というわけで、排気量表記なき「VFR」シリーズは知る人ぞ知る“超”が付く名車だと言っても過言ではない仕上がり。最終の「VFR800F/X」に至るまで踏襲された基本設計の高さは折り紙付きなのです。レッドバロンの上質な中古車に在庫があるのならハイテクメカのメンテナンスアクシデント遭遇時の補修に何ら心配はいりません。まずはお近くの店舗まで足を運んで車両検索やあらゆる疑問に対する質問をしてくださいませ〜!

 

 

VFR800Fというハイメカの貴公子【後編】はコチラ!

 

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