暑い日が続くと、涼しい場所へバイクで出かけたくなりますよね。たとえば高原。高原は標高が高いため、気温が低く、さわやかな風が吹いている。アップダウンの続くワインディングロードもあったりするから、バイクで走るとすごく楽しい。ということで今回は、岩手県北部にある筆者お気に入りの高原をひとつご紹介。そして高原の風を浴びてしっかりと涼んだら、昭和の風情たっぷりの食堂でノスタルジックなラーメン(ノスラー)をいただくというお話です。
解放感たっぷり「稲庭高原」
そこはずばり、稲庭高原。「稲庭」といえば、日本三大うどんのひとつ「稲庭うどん」を連想しちゃって、秋田県湯沢市を思い浮かべる方もいるかも知れませんが、稲庭高原は秋田県のおとなり岩手県の最北部、二戸市にある高原です。
稲庭高原は標高1,078mの稲庭岳のすそ野に広がる草原地帯で、平均標高は700mぐらい。周囲をぐるりと見渡せるほどのパノラマ風景が広がっていて、風の強い場所でもあるため、風力発電も行なわれています(現在はリニューアル工事中)。
広々とした草原は、牧野と呼ばれる放牧場。のんびりと草をはむ牛たちを眺めながらの高原ライディングは、心洗われるような清々しさがあります。空は高く、すれ違うクルマもほとんどない、ああ今この広大な風景おれひとり占め! みたいな気持ちよさ。
ここが実に素晴らしい場所だということを地元の人は当然知っているんですが、地元以外ではそんなに知られていない。稲庭高原は、まさにそうです。こうした場所、きっと日本各地にあるんでしょうね。あなたの地元にもありませんか?
有名じゃないけれど、あそこの良さを自分は実体験として知ることができた。そんなふうに思えたのなら、それはきっとツーリング・ライフの宝物です。
しみじみ旨い「一力食堂」のワンタンメン
二戸市に行ったのなら、必ず立ち寄って食べたいと個人的に熱愛しているのが「一力食堂」のワンタンメン。場所は古い町並みの浄法寺町。お店は築60年以上の木造2階建て、食堂というより古い民家のような雰囲気で、なんだか田舎の親戚の家に遊びに行った時のような気分に。
店内には4人掛けの木製テーブルが4卓。石油ストーブの上にはアルマイトの大きな両手鍋。飲み物の保冷ケースの中には小岩井のビン牛乳。なんとも懐かしい雰囲気で、昭和生まれの筆者は目頭を熱くするのです。
食べたいのはこれ。スープは塩と醤油をブレンドしたあっさり系(なんとも絶妙なコク!)、ワンタンは具のしっかり入った食べ応えのあるタイプ。自家製チャーシューは旨味ぎっしり、ゆで卵は味玉、そしてメンマと海苔がのった、昭和の王道スタイル。歴史の教科書に載せてもいいぐらいの正統派。これで550円って、お値段自体も昭和じゃないですか。
ライス(小)100円についてきたキュウリのおしんこには、当然のように最初から醤油がタラリとかかってました。いいなあ、東北の田舎あるあるに感動。
旧車がいっぱい「みちのく記念館」
実は二戸市には、バイクの旧車や名車を収集・展示している私設ミュージアム「みちのく記念館」があるのです。
平屋の古い建物は、もともと閉校した農業校の牛舎や豚舎を改築したもの。館内には往年の名車がずらり、古いバイク用品やポスターなども展示。
この昭和ノスタルジアなミュージアムを運営しているのは、二戸周辺のバイク愛好家を中心に全国約250人の会員を有している「愛隣塾」。
館内に入ると「おおっ!」「ああ……」など、驚きとため息の連続。今が令和であることを忘れます。開館期間は、4月末から10月末まで。来館する際は、事前に問い合わせが必要です。
みちのく記念館(愛輪塾)
北東北の古刹「天台寺」も
奈良時代に開山した古刹「天台寺」は、二戸観光の人気スポット。あの瀬戸内寂聴師が住職をお務めになったお寺で、境内で行なわれた「青空説法」には全国から聴衆が集まりました。
境内に植えられている無数のアジサイは、寂聴師が京都から運んで植えたのがはじまりなのだとか。アジサイの横ではかわいいお地蔵さまが、平和を願うように並んでいました。
これは二戸市内の宿泊施設に飾られていた、寂聴師直筆の色紙。ただ「生きる」のではないんですね。ひらがなの「き」一文字を足すだけで、こんなにも意味が違ってくる。この言葉、忘れずにいようと写真を撮りました。
さて、今回ご紹介した二戸の稲庭高原の近くには、高森高原や奥中山高原、イーハトーブトライアルで有名な田代平高原や安比高原など、高原がわんさかありますから、今年の夏は高原巡りツーリングなんていかがでしょうか。ではまた!
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