冬場のツーリング。どんどん行き場がなくなってきますよね。雪の降る地域、道路が凍ってしまう地域には行けませんから。そんなとき、関東圏のライダーだったら南房総や伊豆半島の海岸沿いあたりをめざすのでしょうが、筆者はけっこう浜名湖に向かいます。浜名湖がある遠州灘沿いは冬でも比較的暖かく、お天気に恵まれるケースも多いのです。しかも浜名湖まで行けば、筆者が愛してやまないノスタルジックな食堂の、暖簾をくぐることもできるのです。

バイクのふるさと浜松

 浜名湖は、静岡県の浜松市と湖西市にまたがる湖。浜松といえば、スズキやホンダ、ヤマハの創業地です。戦後の復興期から、地元・遠州人の「やらまいか」精神(やってやろうじゃないか)で、世界的なバイクメーカーが3社も誕生したんですから、浜松が「バイクのふるさと」を名乗るのも当然のこと。
 当時、浜松にはこの3メーカー以外にも中小いくつかのバイクメーカーが存在したそうですが、試作車のテスト走行をするために使われた道のひとつが、浜名湖の湖畔の道。そのルックスから“赤トンボ”の愛称で呼ばれた1955年発売のヤマハYA-1が、1万キロの耐久走行テストをしたのも浜名湖の湖畔だとか。

浜名湖

 そんな歴史を持つ湖畔の道路をバイクで走るのは楽しいものだし、今では写真の浜名湖大橋のように、弧を描いて湖を超えていく巨大な橋もあります。浜名湖は、ツーリングの目的地として大いに価値がある。
 で、筆者は冬場、何度も足を運んでいるのですが、回数を重ねるうちに、しょっちゅう顔を出す“お気に入りの店”というのも、できてきます。

ザ・昭和の食堂「汐見茶屋」

汐見茶屋

 それが、ここ。遠州灘に面した潮見バイパスの北側、国道42号線の潮見坂にある「汐見茶屋」。地元の方々はもちろん、営業車や運送会社のドライバーにも愛されてきた大衆食堂。
 瓦屋根を乗せた古い木造家屋が、その長い歴史を物語るようです。筆者はこの食堂の大ファンで、浜名湖ツーリングの際はかなりの頻度で立ち寄っているのです。

汐見茶屋

 創業70年を超える老舗。ヘルメット片手に藍染めの暖簾をくぐれば、店内は昭和のまま。

汐見茶屋

 店に入って右手はテーブル席。店の奥には立派な神棚。ガラスのショーケースにはなぜか狸のはく製も飾られています。なんとも庶民的で、心温まる空間です。

ドンブリいっぱいの貝汁がウマイ!

 さてと、席について注文しましょうか。メニューを見てみます?

※メニュー表は2020年12月に撮影したものです

 メニューがいっぱいあって、いつも悩むのですが、この日はこれだな。笑顔の優しい割烹着姿のお母さんに声をかけます。お母さんが厨房にその注文を告げると、奥からお父さんの「はいよ!」という元気な声が。

汐見茶屋

 テーブルに運ばれてきました! いかいため定食。いかもたっぷりだけど、大きなドンブリに入った貝汁がすごいでしょう? アサリが30個ほども入った貝汁は、この店の定食メニューの名物。これに胃袋をつかまれた客は多いはず。
 北風に凍えたライダーの五臓六腑に、貝汁の滋味深い味わいが染みること、沁みること。昭和の食堂でいただく、愛情いっぱいの定食に、身も心も温まるのです。

コタツでいただくから、なお温まる

 汐見茶屋

 筆者が好んで座る席は、畳敷きの小上がり。いや、奥に部屋が続いているから、小上がりと呼ぶには広すぎますね。和室と呼んでもいい。こっちは嬉しいことに、冬はコタツなのです。ありがたいですよね。バイクですから、特にヒザと足先が冷えるじゃないですか。
 食べ終わったらそのままコタツに潜り込んで、昼寝したいほど気持ちがいい。

汐見茶屋

 それにしても「昭和」だなあと店を見回すと、目が留まったのは、壁に飾られた一枚の古い写真。
 写っている道路は、店の前の潮見坂だそうです。バイパスができるまでは、この道が国道1号線、日本の大動脈の東海道だったんですね。
 よく見ると、2台のバイクが坂を下りていくのが分かります。浜名湖での耐久走行テストを終えた、当時のメーカーのライダーだったら面白い。
 そんなわけで冬の浜名湖、身体が冷えたらぜひ汐見茶屋で、お昼をいただいてみてください。

 

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