レース観戦も楽しいモトクロス


 こんにちは、青木タカオです。ホンダ『CRF250L』をレッドバロンで買い、あっちこっちへ行くのが愉しみなボクですが、先日は『全日本モトクロス選手権シリーズ2023 第8戦』を観戦しに、オフロードビレッジ(埼玉県川越市)へ参りました。

モトクロスの国内最高峰クラス「IA-1」で、レースデビューから表彰台に立ったホンダの『CR ELECTRIC PROTO』と元AMAモトクロスチャンピオンであるトレイ・カナード選手(写真左)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲モトクロスの国内最高峰クラス「IA1」で、レースデビューから表彰台に立ったホンダの『CR ELECTRIC PROTO』と元AMAモトクロスチャンピオンであるトレイ・カナード選手(写真左)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 衝撃だったのは、スポット参戦するホンダ初の電動レーサー『CRエレクトリック プロト』が、ヒート1でいきなりの2位入賞。国内モトクロス最高峰『IA1』クラスにて、ガソリンエンジン搭載マシンたちとの混走の中、高い戦闘力を見せつけたのでした。

 というのが、前回までのハナシ。今回はその続き、後編となります。こうして長々とレポートを書くのは、全日本モトクロスは魅力にあふれ、見どころは決して電動モトクロッサーの参戦だけではないということが言いたいからです。

激しいレース展開になるモトクロス。ゼッケン5は「IA-2」クラスの横澤拓夢選手(TKM motor sports いわて)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲激しいレース展開になるモトクロス。ゼッケン5は「IA2」クラスの横澤拓夢選手(TKM motor sports いわて)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 モトクロスは、広大なサーキットでおこなわれるロードレースより、コースを疾走するマシンが観客からより近く、飛んだり跳ねたり、滑ったりと暴れるマシンの動きを操るライダーたちの様子を間近で観戦でき、ファンを魅了してやみません。

 スタートは横一線に並び、1コーナーへなだれ込んでいく姿は迫力満点です。体力的にも非常にハードなスポーツで、ラインが交錯しマシンや身体がぶつかり合うことも珍しくありません。接近バトルはじつに見応えがあります。

迫力のスタートシーン。「IA-2」クラスのゼッケン4は、中島漱也選手(bLU cRU レーシングチーム鷹)。表彰台は逃したものの6位/4位/7位で、総合6位となりました。画像提供:ヤマハ発動機

▲迫力のスタートシーン。「IA2」クラス、ゼッケン4は中島漱也選手(bLU cRU レーシングチーム鷹)です。今回、表彰台は逃したものの6位/4位/7位で、総合6位となりました。画像提供:ヤマハ発動機

 また、レース会場でのパドックエリアではライダーたちが気さくにファン対応してくれ、フレンドリーに接してもらえる機会もあるかもしれません。お気に入りのライダーを見つけて、応援するのも楽しみのひとつでしょう。

 間近でマシンを見ることができるオープンな環境は、バイクファンにとっては嬉しいかぎり。ファンサービスのほか、フードやドリンクなどの販売も充実していて、観戦の仕方は人それぞれです。 

チャンピオン争いが熾烈なIA2クラス

 今回、電動モトクロッサー『CRエレクトリック プロト』が走る最高峰クラス『IA1』は主に4ストローク450ccのマシン、『IA2』は主に4ストローク250cc、レディースクラスは4ストローク150ccあるいは2ストローク85ccのマシンが使用されています。

「IA-2」クラスでヒート1優勝、ヒート3で2位を獲得。チャンピオンに王手をかけたゼッケン58、ビクトル・アロンソ選手(Auto Brothers)。画像提供:ヤマハ発動機

▲「IA2」クラスでヒート1優勝、ヒート3で2位を獲得。チャンピオンに王手をかけたゼッケン58、ビクトル・アロンソ選手(Auto Brothers)。画像提供:ヤマハ発動機

 今シーズン、終盤まで熾烈なタイトル争いが繰り広げられているのが『IA2』クラスです。ランキングトップはヤマハYZ250Fを駆るビクトル・アロンソ選手(Auto Brothers)で、CRF250Rに乗る横澤拓夢選手(TKM motor sports いわて)が2位、3位にヤマハYZ250Fの中島漱也選手(bLU cRU レーシングチーム鷹)が続きます。

 レースは『3ヒート制』(15分+1周)でおこなわれ、ヒート1はアロンソ選手、ヒート2は鈴村英喜選手(TEAM HAMMER)、ヒート3はブライアン・スー選手(Team YAMAMOTO)がそれぞれ勝利。全ヒートでウイナーが異なっていることからも、いかにこのクラスが激戦区であるかを物語っていると思います。

 決勝『トリプルヒート』は「見る人を飽きさせない」と始まったもので、ラウンドやクラスによって異なり、第8戦オフロードビレッジ(埼玉)では『IA1』『IA2』いずれも15分+1周のレースが3回おこなれました。

 2ヒート制(25分or30分)ももちろんありますし、第5戦北海道大会ではヒート1は30分、ヒート2では15分にし、これまた見応えあるレースになるよう主催者も工夫をこらしているのです。

写真はヒート2を制した鈴村英喜選手(TEAM HAMMER)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲写真はヒート2を制した鈴村英喜選手(TEAM HAMMER)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 おっと! レースレポートは専門メディアにお任せしましょう。これを読んでいる皆さまは、もっと“ウラ側”みたいなところが知りたいですよね。

ライダーの素顔トークも間近で聴ける

 ホンダ応援席で観戦していると、レディースクラスにフル参戦するライダーたちが、決勝レース直前に「応援よろしくお願いします!」と、トークショーに駆けつけてくれました。嬉しいではありませんか。

ホンダ応援席でレースへの意気込みをハナシてくれる川井麻央選手(T.E.SPORT)。

▲ホンダ応援席でレースへの意気込みをハナシてくれる川井麻央選手(T.E.SPORT)。

 コチラは川井麻央選手(T.E.SPORT)。レース前の時点でポイントランキング2位につけており、トップの本田七海選手(bLU cRU TEAM KOH-Z LUTZ with 秀光ビルド)とは2ポイント差です。

 もし今回のレースで優勝すれば、首位に立つことができ、年間チャンピオン獲得へ向け、残る1戦(最終戦)を有利な立場で迎えることができます。

 シーズン終盤ならではのポイントランキング争い。そんな状況を選手自らがレース直前に観客席でハナシてくれるのですから、応援にも力が入ります。

川井選手と本田選手のバトルが見どころ!

 そんなふうに、たとえ全日本モトクロスに初めて足を運んだとしても、わかるのです!

白熱のレディースクラス

 そしてレースがはじまりました。スタート直後は濵村いぶき選手(T.E.SPORT)を先頭に、瀬尾柚姫選手(TEAM HAMMER)、箕浦未夢選手(TEAM ITOMO)、そして川井麻央選手(T.E.SPORT)が続き、ホンダ勢が好スタートをきったので『ホンダ応援席』が湧きます。

 あっ、言い忘れておりましたが、オフロードヴィレッジにて開催される第2戦と今回の第8戦では、ホンダのPRブースと観戦席を一体化させた構成で、オフロードレースの魅力や楽しさを感じながらホンダ参戦チームとライダーを応援するスペースとした『ホンダ応援席』が設置されました。

コースサイドに設置されたホンダ応援席。ゼッケン6はヒート3で2位の好成績を残した大倉由揮選手(Honda Dream Racing Bells)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲コースサイドに設置されたホンダ応援席。ゼッケン6はヒート3で2位の好成績を残した大倉由揮選手(Honda Dream Racing Bells)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 観戦チケットと『HondaGO RIDE』アプリがあれば、無料で入場できちゃうのが魅力です。応援フラッグなどももらえて、利用価値大であったことを報告しておきましょう。来シーズンの設置も期待しますし、他メーカーさんもぜひつくってください!!

女王は誰に!?

 ハナシをレースに戻しますと、さすがは川井選手。スタート直後こそ4番手でしたが、すぐに追い上げ1周目をトップでクリアしていきます。

 2位に上がってきたのは、やはり本田選手でした。レース中盤まで、両選手の差は2~3秒でしたが、バックマーカー(周回遅れ)の影響で7周目前半に川井選手がタイムロスし、本田選手がいよいよ迫ります。

 そこからはもう、手に汗握るバトル!

 しかし、コーナーで両車が接触し、本田選手が転倒してしまいます。リードを広げた川井選手が9周でチェッカーを受けて優勝しました。

レディースクラスのチャンピオン獲得を目指す川井麻央選手(T.E.SPORT)。今季4勝目を挙げました。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲レディースクラスのチャンピオン獲得を目指す川井麻央選手(T.E.SPORT)。今季4勝目を挙げました。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 レース前にご本人がハナシていたように、これでポイントランキングで逆転しトップに立ちました。最終戦『MFJ-GP モトクロス大会』は11月11-12日にスポーツランドSUGO(宮城県)でおこなわれますので、ぜひ興味を持った人はチャンピオンの行方はどうなるのか、観に行ってくださいね。

まさに有言実行。レディースクラスで優勝し、年間ポイントランキングでも首位に立った川井麻央選手(T.E.SPORT)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲まさに有言実行。レディースクラスで優勝し、年間ポイントランキングでも首位に立った川井麻央選手(T.E.SPORT)。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

レディースクラス2位となり、シーズンポイントランキング首位を明け渡した本田七海選手(bLU cRU TEAM KOH-Z LUTZ with 秀光ビルド)。最終戦で再逆転し、チャンピオンを狙う。画像提供:ヤマハ発動機

▲レディースクラス2位となり、シーズンポイントランキング首位を明け渡す形となった本田七海選手(bLU cRU TEAM KOH-Z LUTZ with 秀光ビルド)。最終戦で再逆転し、チャンピオンを狙います。画像提供:ヤマハ発動機

電動モトクロッサー『CRエレクトリック プロト』はどうなった!?

高い戦闘力を見せつけたホンダの『CR ELECTRIC PROTO』。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲高い戦闘力を見せつけたホンダの『CR ELECTRIC PROTO』。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 はいっ、お待たせしました。国内最高峰クラスである『IA1』に、『Team HRC(ホンダ・レーシング)』の電動モトクロッサー『CRエレクトリック プロト』はエントリー。前回お伝えしました通りヒート1で2位につけたトレイ・カナード選手でしたが、「もしかすると、トップもあり得るのでは……!?」と、そんな期待が寄せられていました。


2023年シーズン、全ヒートで優勝を重ねてきたヤマハのジェイ・ウィルソン選手(YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM)。画像提供:ヤマハ発動機

▲2023年シーズン、全ヒートで優勝を重ねてきたヤマハファクトリーチームのジェイ・ウィルソン選手。画像提供:ヤマハ発動機

 ヒート1でトップだったのは、今季全戦勝利という圧倒的強さで、前回の第7戦HSR九州大会にて2023年シーズンのチャンピオンを早々に決めたジェイ・ウィルソン選手(YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM)。まさに敵なし、破竹の勢いのジェイ選手に勝ったら、ものすごいことなのです。

 さぁ、いよいよヒート2。15分+1周のレースは『CRエレクトリック プロト』に乗るカナード選手がホールショットです! ジェイ選手と僅差のトップ争いを繰り広げ、ボクを含め観客たちはみなさん2台のマシンに目が釘付けなのは言うまでもありません!!

ホンダ『CR ELECTRIC PROTO』。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲ホンダ『CR ELECTRIC PROTO』。画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 しかし、2周目に入った最初のコーナーで接触し、カナード選手が転倒してしまいます。再スタートできずにリタイヤとなりました。ジェイ選手もこれで大きく後退。連続優勝記録が19でストップします。

ホールショット連発!!


 実際のタイムスケジュール的にも最後、つまり“大トリ”をつとめるのが『IA1』クラスのヒート3です。さぁ、勝負の行方はどうなるのでしょうか。

 大注目のレースは、またしても『CRエレクトリック プロト』が先頭に立ちました! 再び熾烈なバトルが繰り広げられるのです。

今度こそ!?

歴史的勝利か

大きな一歩へ

 いろいろなコトバが頭の中を駆け巡ります。隣で見ているのはヤングマシン編集長。彼もまたレース後すぐに、WEBニュースとして速報記事を配信しておりました。

衝撃の瞬間が目の前で起きる!

 カナード選手の乗る『CRエレクトリック プロト』を、王者ジェイ選手がテール・トゥ・ノーズで追う展開はヒート2と同じです。

 そして、またしても2周目にショッキングなことが起きました。カナード選手が転倒してしまいます。今回も再スタートできず、レースを終えてしまったのでした。


 それはボクが観ていたホンダ応援席の、まさに目の前で起きたのでした。ヒート3の手に汗握る様子は動画で録っていましたので、ぜひご覧ください。最後に貼り付けておきましょう。

IA-1クラスの連勝記録は途絶えたものの、ヒート3では今季20勝目を獲得したジェイ・ウィルソン選手(YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM)。画像提供:ヤマハ発動機

▲IA1クラスの連勝記録は途絶えたものの、ヒート3で今季20勝目を獲得したジェイ・ウィルソン選手(YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM)。画像提供:ヤマハ発動機

『CRエレクトリック プロト』の歴史的レースデビュー。実戦初投入は成功だった部分もあれば、結果的には振るわなかったところもあります。開発チームとしては、少しでも長い時間を走ってデータをしっかり取りたいという思惑もあったはずでしょう。

 しかし、日本最高峰のガチンコ勝負のレースに挑んだホンダをボクは称えたいですし、前回も書いたようにスポット参戦を承認したMFJ(一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会)も英断だったと思います。

 そんなこんなで、大いに盛り上がった『全日本モトクロス選手権シリーズ2023 第8戦』でした。


 帰りはホンダ『CRF250L』のエンジン音を聴きながら、ゆっくり安全運転で帰宅したのは言うまでもありません。今回も最後までお付きいただき、ありがとうございました。

CRエレクトリック プロト白熱のバトルシーン(動画)

 ヒート3での『CRエレクトリック プロト』の1周プラスアルファを動画で収めることができました。ホールショットからトップをキープしますが、転倒してしまいます。再スタートできず、そのままリタイヤ。ぜひ、ご覧ください。

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