「第12世代」バイクブームが続いている。自工会二輪車委員会により名づけられたもので、「第3回 自工会二輪車委員会メディアミーティング」の場で報道陣に説明されたものだ。

前編では第1~第4世代について紹介したが、後編では第5世代以降(1990年代~)のブームを振り返りつつ、第12世代バイクブームとそこにある課題についても紹介しよう。

第3回自工会二輪車委員会メディアミーティング(2022年10月26日)配布資料・P18より引用

1990年代、バイクはファッショナブルに街中へ!

第5・第6・第7世代バイクブーム('90年代)

●ホンダ マグナ(748cc・1993年7月7日発売)


1980年代、あらゆるフィールドで謳歌されたバイクブームも、1990年代に入るとよりストリートを意識したモデルが流行り出す(第5世代)。丸目ライトでエンジンがむき出しのネイキッドバイク、ハーレーダビッドソンのイメージを踏襲したアメリカンバイク(現在はクルーザーと呼ばれる)が、ごく普通の若者に支持されたのだ。

●ヤマハ SRX400(1990年発売)


また、1997年に大型二輪免許が解禁(大型二輪教習が開始)されると、ビッグバイクブーム(第6世代)が巻き起こり、中型二輪免許所持者がこぞって取得を目指すなど、リターンライダーブームの先駆けともなった。

●ホンダ CB1300 SUPER FOUR(1998年3月2日発売)


さらに、1990年代後半の第7世代では、TVドラマの中で木村拓哉がトラッカーバイクに乗っていたこともあり、ストリートバイクブームが巻き起こった。

時を同じくして、ストリートバイクのいちカテゴリーとしてビッグスクーターブームも重なった。街中にはファッショナブルでスタイリッシュなバイクがあふれ、タンデムを楽しむライダーも目立っていた。

●ヤマハ TW200E(1999年発売)


なお、ライダーの中でもストリート系ファッションに身を包んだユーザーは自他ともに「バイカー」と称していた。ツーリングライダーという言葉はあってもツーリングバイカーはなかった。同様に、ライダーファッションの定義はあいまいだったがバイカーファッションの定義は確立されていた。

ビッグスクーターと大型が目立った2000年代

第8・第9世代バイクブーム(’00年代)

●ホンダ フォルツァ(2000年3月18日発売)


1990年代後半から盛り上がっていた250ccクラスをメインとしたビッグスクーターブームは2000年代になっても続いており、ストリートバイクブームと合わさってカスタム市場も空前の規模となっていた。

ビッグスクーターの終焉は駐車問題!?

しかし、バイクが街中に増えていくことの弊害もあった。当時は法規上、バイク用の駐車場がほとんどなかったため、駅前や繁華街に大柄なビッグスクーターが多数置かれており、地域の課題となっていたのだ。

2006年には改正駐車場法が施行され、バイク(自動二輪車)も同法の対象となり、併せて放置駐車の民間取締り(放置車両確認事務の民間委託)も開始されたことで、放置バイクの取締りが急増した。

本来は、自動二輪車も駐車場法の対象とすることで附置義務条例を含め、バイク用駐車場を増やしていくはずだったが、施行までの猶予期間がなかった。

2006年以降、街中のビッグスクーターは目に見えて少なくなった。

'97年大型免許解禁が実を結んだリターンライダー

●スズキ GSX1100S KATANA(ファイナルエディション・2000年発売)


一方で、1997年の大型二輪免許解禁の影響が拡大を続け、2000年代後半からはリターンライダーブームが市場に強い影響を与えるようになった。かつての「逆輸入車でフルパワー」への憧れは、国内市場向けモデルの相次ぐ投入により大型バイクをより身近なものへと変えていった。

●ホンダ DN-01(2008年3月7日発売)

250ccスポーツ全盛となった2010年代

第10・第11世代バイクブーム(’10年代)

●ヤマハ YZF-R25(2018年発売・生産国インドネシア)


第10世代となる2010年代前半からは250ccに加えて150ccも加えた軽二輪や小型スクーターが人気となる。中でも2000年代後半から投入された250ccフルカウルスポーツは若年層を中心に受け入れられ、鈴鹿8耐やmotoGPといったレースカテゴリーの国内復権にも貢献した。

●カワサキ Ninja 250R(2008年4月5日発売・生産国タイ)


厳しい排出ガス規制、生産工場の海外移転の流れの中でも国内各社のラインナップが揃ったことは喜ばしいことだった。

東南アジアを中心とした海外生産モデル(グローバルモデル)の輸入は、軽二輪や原付二種のラインナップを下支えする重要な商材となった。中でも150ccクラスは高速道路を走れることもあって、都市部の郊外在住者に支持された。

●ホンダ PCX150(2012年6月7日発売)


ただ一方で、オフロードやアメリカンといったカテゴリーでは名車の生産終了が相次ぎ、各カテゴリーで「排気量を選べない時代」ともなった。

また、2018年のAT小型限定免許の解禁により125ccクラスの原付二種が市場に相次いで投入され、右肩下がりが止まらない原付一種からの乗り換えが進んだ。

●ホンダ スーパーカブ C125(2018年9月14日発売)

第12世代は「ライフスタイル」が主役のブーム

第12世代バイクブーム(現在)

●ホンダ Rebel 250 S Edition(2020年3月19日発売)


さて、いよいよ現在のバイクブームである第12世代のお話。それ以前のバイクブームではレプリカだとかネイキッドだとか「バイクが主役」だったのに対して、第12世代は「ライフスタイルが主役」のバイクブームであると定義している。

第3回自工会二輪車委員会メディアミーティング(2022年10月26日)配布資料・P19より引用


どういう事かというと、若者や女性が、自分の趣味にバイクを結び付けて楽しんでいるということらしい。

例えば、キャンプに関心のあった若者が「ゆるキャン△」(芳文社)のアニメを見て、志摩リンのように「バイクでキャンプに行くのもいいかも」と思い、免許を取ってバイクを買うといったふうだ。

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コトを豊かにするためのバイクが選ばれている

モノからブームが始まっていたこれまでのバイクブームとは違い、第12世代バイクブームでは、個人が嗜好するコト(ライフスタイル)をより充実させるためのバイクが選ばれている。

ボリューム的にはまだまだ多くないが、これまでバイクに目を向けなかった層にリーチできていることは、将来市場への希望でもある。量から質へ。メーカー各社のマーケティングにもずいぶんと変化が見られているのだ。

様々な要因が合わさって第12世代を構築

●ホンダ CT125・ハンターカブ(2020年6月26日発売)


これまでのバイクブームと比べると、ずいぶん毛色の違う第12世代だが、きっかけ自体はずいぶん前から始まっていたらしい。

●AT小型限定免許解禁(2018年)とメーカー・販社によるプロモーション
●125ccを中心にカテゴリーラインナップを増強
●バイクウェアのデザイン性を向上、アウトドア感やトレンドの取り入れ
●新型コロナ禍でのバイクの価値感の転換
●著名人が地上波テレビなどでお茶の間にバイク情報を発信


こうした様々なアプローチが合わさって、若者や女性に「(自分の趣味・個性・感性的に)いいかも。乗ってみたい」と思わせているのだ。

速度規制や二段階右折がなく、2人乗りもできるなど使い勝手のよい125ccバイクの充実、街中でもオシャレ感のあるアウトドアデザインの採用など、バイクが市民生活に再び浸透し始めたと言ってよいだろう。

また、2020年初頭から影響が出始めた新型コロナウィルスによるパンデミックも「密にならない」移動手段・趣味としてバイクに目を向けさせるきっかけになった。

さらに、地上波テレビにおいてバイク芸人やバイク女子らの番組が放映されるなど、お茶の間にバイクの魅力を届けられるようになった。ひと昔前はバイク禁止の芸能事務所が当たり前だったことを思えば、ずいぶん時代が変わったものだ。

SNSの台頭に合わせた情報発信

第12世代をうまく誘引できた理由のひとつに、SNSの台頭がある。二輪専門メディアなどの限られた情報発信だけでなく、バイクに興味のない無関心層のタイムラインにも自然にバイクの情報が流れてくる時代なのだ。

その情報がストレートに「バイクはいいよ」「バイクに乗ろうよ」ではなくて「ゆるキャン△」といったバイク以外の趣味、漫画やアニメといった物語の中で自然にバイクが目に触れるという環境は理想的だろう。

自工会も大学生のアンバサダーによる情報発信を続けるなど、若年層にリーチさせるための手段を活用している。SNSのタイムラインは「ビギナーがビギナーを生む」という好循環を生み出している。

マナーやモラル、安全運転の啓発が重要

一方で、かつて街中にバイクがあふれ、放置駐車違反が社会問題化したことの反省も踏まえ、実地的かつライダー目線によるマナーやモラルも第12世代に啓発すべきだろう。

また、バイクには転倒や事故といったリスクも伴うので、せっかく入ってきた第12世代がバイクを降りないような、初心者向けの情報発信や安全意識啓発ツールの開発、初心者講習会の開催などに尽力する必要もある。

こうした点をフォローしつつ、第12世代の周辺にいる無関心層に向けて、さらなるアプローチを続けるべきだろう。

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