ようこそ奥深きマニアックな世界
こんにちは青木タカオです。前回は普段ではなかなか見ることのできないハードコアなカスタムの世界を紹介させていただきました。
ポートメッセなごや(愛知県名古屋市港区金城ふ頭)にて4月14日(日)におこなわれた「JOINTS CUSTOM BIKE SHOW(ジョインツカスタムバイクショー)2024」で見た、エイジング塗装のパンヘッドチョッパーをピックアップしました。
パンヘッドといえば1948〜66年のハーレーで、なんせ60〜70年以上も前のモデル。“サビだらけ”であるのも頷けるところですが、イベントに展示されていたのは「エイジング加工」と呼ばれる模型などでも広く使われる特殊技法が用いられ、塗装のひび割れなどもリアルに再現されていたのでした。
まさに奥深きマニアックな世界であり、普段、街乗りやツーリングなどをしていたら、なかなか見かけませんし、たとえもし見る機会があっても、それがこのような非常に手の込んだ高度な技術からつくり上げられているとは気が付かないのではないでしょうか。
ジョインツカスタムバイクショーは、そんなディープなカスタムバイクたちであふれかえっているのですから、前回だけで終わるはずがありません。
今回ご紹介させていただくチョッパーカスタムは、まさに“ヘンタイ”。ボクも仕事柄いろいろなバイクを拝見させていただいておりますが、とびっきりの変わり種と言えます!
「世界一細いバイク」です!!
横幅は最大でも46センチしかなく、これはエンジン・クランクケースの横幅になりますから、もうコレ以上はどうしたってナローにはできません。オートバイの全てのパーツが、エンジンの全幅内に収まってしまっているのですから驚きます。
ボク(青木タカオ)は取材時、良い意味で(!?)オーナーの山口芳水さんに、それとなく「“ヘンタイ”ですね」と言ってみたのですが、「ありがとうございます。最高の褒め言葉です」と満面の笑みで答えてくださいました。自他ともに認める“ヘンタイ”チョッパーなのです!
ちなみに、山口さんは著名な書道家。本場アメリカのナローなチョッパーにインスパイアされ、ヴィンテージハーレーをベースにチョッパーを手掛ける「DEEP DIG」(佐賀県唐津市)と共同で、5年をかけてこのバイクをつくりあげました。車体の細さで、ギネス世界記録に申請することも計画しています。
ツイストブレーキで極狭
フロントの先端からテールエンドまで、上からじーっと見ていきます。冷静に考えると、バイクでもっとも横幅をとるのはハンドルバー&レバー、そしてミラーでありウインカーやステップもそうでしょう。
しかしハンドルは極端に短く、右手で操作するアクセルグリップは握ってひねるのではなく“摘む”。レバーは左右どちらにも一切なく、フロントブレーキはハンドル左側のグリップで機械式ドラムブレーキのワイヤーをやはり“摘んで引っ張る”のです。山口さんはこれを「ツイストブレーキ」と呼びます。
クラッチはオールドハーレーがそうだったように、チョッパーカスタムにはよく見られるフットクラッチ式にされており、シフトチェンジは“ジョッキーシフト”とも呼ばれるハンドシフト方式。もちろんすべての機構をエンジン幅の内側に収めて、張り出しは一切ありません。
燃料&オイルはどこだ!?
気になるのはメインフレームのバックボーンがむき出しで、燃料タンクが従来の場所に見当たらないこと。一体どこへ?
聞けば、V型2気筒のフロントシリンダー前方斜め上、ダウンチューブ右にマウントした筒状のタンクにガソリンが1リットル程度入るとのこと。もちろん、これもまたクランクケースの張り出しより内側に配置されています。
なるほど、燃料の所在はわかりました。では、エンジンを潤滑するために重要なオイルはどこにあるのでしょうか……!? ハーレーの空冷Vツインはドライサンプ方式で、オイルタンクを持つはず。1966年から1984年までのショベルヘッドエンジンも例外ではありません。
これがスゴイ! シート下のリヤフェンダーをオイルタンクにしているのだ!! そのおかげで、エンジン後方、タンクが本来あるべき場所はスッカスカ。極限までスリムであり、とことん何もないことにこだわっているのです。
驚愕のライポジ!!
またがってライディングポジションをとると、これがまためちゃくちゃコンパクト! まるで体操座りのようにして身をかがめて、前方へ視線を送ります。
非常に短いハンドルは、路面から衝撃を受けても抑えが効きにくく、乗るのも一筋縄ではいきません。しかし、一切の無駄のない造形は、アートともいえるもので書道家の山口さんの創作活動の一環でもあるのです。
いかがでしょうか、超マニアックなカスタムワールド。山口さんの世界一細いバイクは、新聞にも取り上げられ話題になっています。最後に乗った姿はどうなのか? 気になるライディングポジションも収録したインタビュー動画をぜひご覧ください。山口さんがキラキラとした少年のような目で、いろいろとボクに教えてくださいました。カスタムバイクにかける熱き情熱をボクは同じバイク好きとしてしっかりと感じ、その想いに感服しました。