昔も今も人気のモータースポーツ

 こんにちは青木タカオです。平らなダート(未舗装)コースを周回する「フラットトラック」というバイク競技をご存知でしょうか。


 アメリカで古くから親しまれているモータースポーツで、1930年代にスプリングフィールド・マイルで始まり、1947年からは全米選手権がスタート。年間を通して行われるチャンピオンシップは昔も今も人気で、シリーズ戦にはマイルレース(1マイル=およそ1600メートル)をはじめ、ハーフマイル(1/2マイル)、ショートトラック(1/4マイル)などがあり、すべて左回りのみでおこなわれます。ちなみに、右コーナーやジャンプもある「TT」というレースもあります。

 コーナーでは車体を寝かし込みつつ、後輪を豪快に横滑りさせることからテールスライドしながらの接近戦となり、白熱したバトルが繰り広げられます。

AMAグランドナショナルチャンピオンシップで無敵を誇るハーレーダビッドソンXR750フラットトラックレーサー。画像提供:ハーレーダビッドソン

▲AMAグランドナショナルチャンピオンシップで無敵を誇るハーレーダビッドソンXR750フラットトラックレーサー。画像提供:ハーレーダビッドソン

 レギュレーションでフロントブレーキの装着は認められておらず、サイド・バイ・サイドやテール・トゥ・ノーズのスリリングな展開となり、シンプルながらライン取りや走行テクニックなどヒジョーに奥深いことから魅了される人が後を絶ちません。

 フレディ・スペンサーやエディ・ローソン、ケニー・ロバーツら世界グランプリで活躍したアメリカ人ライダーはフラットトラック出身で、米国モータースポーツの“国技”と呼べるほど人気を博します。

 ボクが初めてレースを見たのは、2010年のデイトナバイクウィーク(アメリカ/フロリダ)でした。何も分からぬまま、ひとりでフラットトラックを訪れたら、大先輩の“てっぺー”さんこと中尾省吾さん(有名な二輪カメラマン)がいらっしゃって、ご挨拶をするとほぼ初対面だったにも関わらず「いやぁ、よく来たね〜」と、いろいろと教えてくださったのでした。

ヨーロッパバイクウォーク(2017年/オーストリア)でおこなわれたフラットトラックレースに、ハーレーダビッドソンのストリートロッド750(改ダートラ仕様)でエントリーした青木タカオ。画像提供:ハーレーダビッドソン

▲ヨーロッパバイクウォーク(2017年/オーストリア)でおこなわれたフラットトラックレースに、ハーレーダビッドソンのストリートロッド750(改ダートラ仕様)でエントリーした青木タカオ(#5)。画像提供:ハーレーダビッドソン

 2017年のヨーロピアンバイクウィーク(オーストリア/ファーカー湖)では、ハーレーダビッドソン「XG750A ストリートロッド」にておこなわれた“各国メディア対抗”なるフラットトラックレースに参加したのも楽しい思い出です。

▲XG750Aストリートロッドのダートラ仕様。画像提供:ハーレーダビッドソン

▲XG750Aストリートロッドのダートラ仕様。画像提供:ハーレーダビッドソン

 いま振り返ると、水冷750ccVツインエンジンでダートトラックを走ったのは、たいへん貴重な経験でした。このハナシは、またいつか機会があれば詳しくします。

70年前の英国車でダートへ!

 日本でもフラットトラックを楽しむ人たちがいます。その名も「HAVE FUN!! FLAT TRACK」です。ポートメッセなごや(愛知県名古屋市港区金城ふ頭)にて4月14日(日)におこなわれた「JOINTS CUSTOM BIKE SHOW(ジョインツカスタムバイクショー)2024」に、その姿はありました。メンバーらによって、マシンが展示されていたのです。


 ジョインツカスタムバイクショーにて異彩を放ち、来場者らが足を止めて見入っていたのが「HAVE FUN!! FLAT TRACK」のダートトラックレーサーたち。“イヌチョッパー”こと田代桂さんのマシンは1954年のMATCHLESS(マチレス)AJS 18CS、なんと70年も前の車両がベースです。


 世界的に見てもたいへん稀少なMATCHLESS(マチレス)AJS 18CSは、500cc単気筒エンジンを積みます。オーナーの田代さんによるマシン解説は動画にて収録していますので、もしご興味があればご覧ください。

70年代にもあった“中免で乗れるハーレー”


 H-Dレーシングカラーであるオレンジ×黒のグラフィックスで仕上げられたのは、1970年代のアエルマッキ・ハーレーダビッドソンSX250。2ストロークシングルエンジンを心臓部とします。

“中免(普通二輪免許)で乗れるハーレー”と、いま話題となっている『X350』ですが、歴史を紐解けば1970年代以前には存在していたのですね。時代は回ります!

貴重なハーレーたちでも“HAVE FUN!”


 LOWBOYフレームに、ハーレーダビッドソン4カム750ccKHR+腰下XLH900エンジンを搭載。大洗サンドフラッツにて、力強い走りを見せました。


 HAVE FUN !! Flat Trackを主宰する大沢俊之さんのマシンは、ハーレーダビッドソンWL(1946年)がベース。クロモリ鋼のオリジナルフレームはロードバイク(自転車)などに用いられる“ロウ付け”と呼ばれる技法によるもので、情報や教わる人がいなかったため独学で徹底追求したそうです。フロントサスペンションも独自開発するなど、見どころ満載な1台でした。

関西ではSRが主役!?


 ヤマハSRもズラリ並んでいました。こちらはイエロー×黒のストロボカラー。田代さんによると、フラットトラックをエンジョイするライダーらのマシンは、関西ではSRが多く目立つとのことです。


 チェッカーフラッグ柄が外装にあしらわれたヤマハSRのフラットトラックレーサー。いずれも前輪ブレーキはなく、フロントフェンダーも省略されています。


 ショートマフラーで軽快なスタイル。なんと、燃料タンクからサイドカバー、テールカウルにかけて外装が一体化されているではありませんかっ! リヤブレーキはブレンボのキャリパーで強化されています。

ダートラ人気を物語る!? アワード獲得!!


 いま、ダートトラックがHOTであることを物語っているのではないでしょうか。大沢さんの製作したWLフラットトラックレーサーは、ジョインツカスタムショー2024にて「BEST SIDEVALVE」および「BEST TWEAK」のアワードをダブル受賞しました! おめでとうございますっ!! 

 というわけで今回も最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。ラストは大沢さんのマシン解説、動画インタビューです。どうぞお見逃しなく!!

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