先日、スーパーカブC125に乗る旧友T君が「これ、読む?」と紙袋を手渡してきました。中に入っていたのは、10冊のコミック。漫画『スーパーカブ』1~10巻。「おもしろいの?」と聞くと、「まあまあね」と旧友T。ならばと受け取り、読み始めてみたら、おもしろいじゃないの! スーパーカブに限らず、バイクに乗る人なら誰もが共感するであろうお話でした。
そもそもは小説だった

そもそも『スーパーカブ』は、ライトノベル作家トネ・コーケン氏による小説で、角川スニーカー文庫から2017年5月~2022年4月の期間、単行本として出版されていたものらしいです。
で、それを原作として2017年12月に誕生したのが漫画『スーパーカブ』。単行本は角川コミックス・エースが2018年5月から刊行しているそう。
2021年4月にはテレビアニメにもなったというのだから、大人気作品じゃないですか。知らずにいた自分が恥ずかしいぐらい。
トネ? コーケン?

漫画『スーパーカブ』の作画は蟹丹(かにたん)氏、キャラクター原案は博(ひろ)氏、原作はトネ・コーケン氏。
原作者のペンネームからして、想像を掻き立ててくれます。「トネ」も「コーケン」も、日本の工具メーカーの名称。スナップオンやKTCは高くて手が出ないけど、トネやコーケンならばバイト代でなんとかなる。モノも悪くない。いやむしろ、車載工具しか持っていなかった初心者の自分にとっては憧れの工具といってもいいくらいでした。手に入れた時はとても嬉しく感じたもの。

小説家のトネ・コーケン氏も、そんな若者だったんじゃないかな、と想像します。がんばってお金を貯めて、トネやコーケンのスパナやラチェットレンチを買い揃え、慣れないながらも愛車の整備に奮闘する。
大切な愛車をいじる、大切な工具たち。ペンネームの由来は、そのあたりではないでしょうか。
バイクが日常を変える

山梨県北杜市に暮らす、友達も趣味もない凡庸な女子高生・小熊(こぐま)が、中古のスーパーカブを手に入れることによって、日常を大きく変えていくことになります。
バイクがあれば、それまでは考えられなかった遠い場所まで、公共交通機関に頼らず行ける。時間も関係ない。早朝でも、夜でも、思い立った瞬間に出かけられる。それも自転車なんかとは違う、驚くほどの速度で。
自由の翼を手に入れた、そう思うほどの感動。小熊も少しずつ、行動的に、積極的になっていく。
そしてバイクをきっかけに、友人ができる。バイク屋さんや、バイト先の大人たちとのコミュニケーションも生まれる。バイクに乗ることで世界が広がっていくわけです。
さらにはガス欠やパンク、メカトラブルなどの試練にも遭遇し、それを乗り越える力をつけていく。ライダーとして成長していく。
ネタバレを避けるため、説明はこれぐらいにしておきますが、『スーパーカブ』はそんなストーリー。
お話のエピソードはどれも「そうそう、そうだったなあ」と共感できるものばかり。バイクに乗り始めたころ(ずいぶん経ったなぁ)の記憶がよみがえってきて、ページをめくる指が止まりません。

漫画『スーパーカブ』は、バイクの細部までしっかり描き込まれていて、バイク好きにはたまらないはず。
第8巻ではカブのシリンダーヘッドからオイルが漏れ出してきて、結果的にシリンダーとシリンダーヘッドを取り外すことになるんだけど、描写が細かくて詳しいから勉強にもなります。女子高生がそこまでやれる!? がんばれ、小熊ちゃん! と心の中で声をかけます。
スーパーカブ以外にも

物語に登場するバイクは小熊の乗るスーパーカブ50以外に、郵政カブ、CT110(ハンターカブ)、リトルカブ、VTR250、FUSION(フュージョン)など。
第7巻にはクロスカブが登場、我が愛車でもあるので嬉しく思いましたが、小熊と友人の礼子はそのクロスカブであんな場所を走るのです。走れるの? そんなとこ!

主人公の小熊がバイクを通じて行動範囲も交友関係も広げ、成長を続け、進学のことで悩んだり、乗り越えたりしていく物語。ライダーのハートを熱くする「言葉」も散りばめられていて、読み応えたっぷり。
楽しみは他にも

漫画の本編以外にもお楽しみがあって(画像はわざとボカしています)、巻末にはトネ・コーケン氏による特別寄稿小説が掲載されていたり。
わずか数ページのショート・ストーリーではあるものの、文章ならではの表現力で漫画の世界観に深みを与えています。これはいい構成だなあ。

単行本のカバーをはがしてみると、そこにもクスクス笑えるフタコマ漫画的な作品がオマケ的に描かれていて、お得な気分に。

カブって、いいなあ。バイクっていいな。漫画『スーパーカブ』を貸してくれたC125乗りの旧友Tにも感謝。借りたのは第10巻までですが、調べてみたら2025年10月10日に第11巻が出ているそうじゃないですか。
さっそく注文しなきゃ。そして読み終わったら貸してくれたお礼にT君に渡そう。
