いま南箱根の「バイカーズパラダイス」では「片岡義男とオートバイ〜80年代バイクブームを彩ったマシンたち」という企画展示を行っている。これはわたくしカワニシがプロデュースを担当したもの。先日発行した雑誌『片岡義男を旅する一冊』と連動したイベントである。
展示されているバイクはまず片岡義男作品に登場する車両。ファンなら真っ先にアタマに浮かぶのは『彼のオートバイ、彼女の島』で主人公の“コオ”の愛車として登場した「W3」ことカワサキ650RSだろう。この展示でもメイン級の扱いで置かれているのだけど、じつはこれはカワニシの愛車であります。昨年手に入れた1973年式のダブサン。ちなみに片岡さん自身は、かつてこのダブサンの前身である「W1SA」を所有されていたと、ご自身のエッセイなどで書かれている。
片岡作品に登場するもう1台はヤマハRD250。これも人気作品である『ボビーに首ったけ』で、主人公の“ボビー”の愛車として登場している。高校生のボビーがブルーのRD250で湘南や房総を駆けめぐる青春!なストーリーなのだが、なんとも衝撃的な結末を迎える……。それがなんとも片岡作品らしい、とも言えるのだけど。RD250は空冷2ストロークの250cc並列2気筒エンジンを積むスポーツバイクとして73年に登場。後継となった水冷エンジン搭載の「RZ250」があまりに有名になったためかなり影が薄いが、それだけにかなり希少なモデルであり、これが見られるのはかなり貴重かもしれない。
片岡作品に登場する3台目はヤマハのXS-1。それまで2ストロークモデルのみをつくっていたヤマハが1970年、初めて発表した4ストロークモデルだ。650ccのバーチカルツインを積んだスリムでコンパクトな車体が売りで、キャンディグリーンのイメージカラーと洗練された外装も「デザインのヤマハ」らしい。『愛してるなんてとても言えない』の中で「650cc二気筒にしてはスリム」「淡いきれいなグリーン」と表現されていて、じつははっきりXS-1とは書かれていないのだが、その特徴からして間違いのないところ。
じつは今回の展示テーマは「片岡義男とオートバイ」を軸にしながら、80年代のバイクブームを牽引したマンガや映画などのカルチャーを紹介しようというものでもある。そうなると欠かすことのできないのがマンガ『バリバリ伝説』だろう。会場には主人公である巨摩郡の愛車、ホンダCB750Fも展示している。しかもグンが“CB子ちゃん”と呼んで乗りまわしていた81年発売の「FB」型である。このバイクで「カメっ!」と叫びながら峠を駆け抜けたライダーが当時、どれだけいたことか……。
そしてその“バリ伝”と双璧をなしていたのが『あいつとララバイ」だ。レースをテーマとしたバリ伝に対して、“ララバイ”はちょっとナンパな青春ストーリー(物語の後半はかなり硬派になるのだが……)。会場にはその主人公、菱木研二の愛車として登場したカワサキ750RS(Z2)も展示している。愛車ゼッツーを手足のように操り、ヨコハマの街を駆け巡る高校生、研二のキャラクターは、当時のライダーにとっての憧れだった。
80年代の名車たちを展示するいっぽう、今回はこのバイカーズパラダイスで「読書の秋」を楽しんでもらおう、というのもテーマのひとつ。そこで片岡義男さんの文庫本(これもわたくしの蔵書を使ってもらってます)をはじめ、バリ伝やララバイも全巻揃え、ちょっとした「ライダー図書館」という感じになっている。
先日9月26日はここでトークショーやアコースティックライブも行い、とても盛況だった。この企画展示は11月7日まで行われているので、もしよければぜひいちど訪れてみてください!