8月25日(木)に開催された「第10回 BIKE LOVE FORUM in大分・日田(以降、BLF)」でのシンポジウム内容について紹介する3回目。後編ではパネルディスカッションの模様についてお届けする。

【関連記事】
バイクラブフォーラムが3年ぶりにリアル開催! テーマは「バイクに乗り続けてもらうには?」<前編>

バイクラブフォーラムが3年ぶりにリアル開催! テーマは「バイクに乗り続けてもらうには?」<中編>

大テーマ「いまバイクが好調な理由、なぜ若者や女性に人気なのか。」

バイクラブフォーラムの最後のプログラムであるパネルディスカッションは上記のテーマについて行われた。パネリストは以下の6人だ。

・岡田 彰さん(現代文化研究所 上席主任研究員)
・伴 千広さん(自工会 MOTOINFO編集長)
・埜邑博道さん(二輪ジャーナリスト ※元二輪専門誌編集長)
・大村直幸さん(全国オートバイ協同組合連合会 会長)
・松原 弘さん(全国二輪車用品連合会 代表理事)
・福田 博介さん(日本二輪車オークション協会 会長)

「二輪車市場動向調査」の結果説明

ディスカッションの前に、まず自工会「2021年度二輪車市場動向調査」を担当したマーケターの岡田さんからここ数年の新車購入ユーザーに起きている変化について調査結果の説明があった。

密を避けられる有用性、コロナ禍でのワークライフバランスの充実に適した趣味としての評価により新車販売台数は増加傾向にある

●新車購入ユーザーの平均年齢は54.2歳で、前回(2年前)調査より0.5歳若返った

●購入の情報源としてはメーカーのWEBサイトが高い、また女性では販売店の店員の話が高い

●楽しみ方の情報源についてはバイク専門誌のほか、20代男性ではバイク仲間との話やSNSである

市場調査で毎回掲載されている二輪車利用時の課題(バイクで困っていること)については、定番の「暑さ」「寒さ」のほか「駐車場が足りない」、特に「東京23区で足りていない」こと、さらに解決が期待される点においては「高速道路の利用料金」が挙げられた。
「今後もバイクに乗り続けるか」といった継続意向については、40代以降で高いものの60代以上では「10年以内」「あと数年」といった回答が多かった。理由としては「駐車スペースがなくなった時」「経済的余裕がなくなった時」だった。

さらに、トピック調査として、コロナ禍におけるユーザーの意識変化も紹介された。密を避けて移動できる点やオンロード・小型二輪については「ライフスタイルを再考する機会になった」「自粛下でも楽しめる」といった意見が上位だった。

また、若年・女性ユーザーの二輪車新規購入理由について20代男性は「趣味として楽しむ」が高い一方で、20代女性だと「行動範囲が広がる」などが上位だった。

なお、バイク購入時の推薦者については、10代男性および10~20代女性においては、「親」がかなり強い影響を与えており、30~40代女性においては配偶者や恋人が上位だった。

それでは、小テーマごとにかいつまんで議論の内容や方向性をお伝えしよう。

小テーマ① 若者や女性がバイクに目を向けた理由

大村さん:若者や女性の場合は、バイク関係の情報ではないところから情報を得ている。バイクのことはよく知らずに「楽しそう」ということで飛び込んでくる方が多いという印象です。何かのきっかけがあればポテンシャルはあるんだと思います。

埜邑さん:肌感覚だとコロナ禍よりもっと前から注目されていたと思っています。それまであまりバイクに乗っていると言わなかった芸能人やバイク芸人なんかがテレビやメディアで言うようになった。それで「乗っていいものなんだな」とみんなが思うようになった。そこにコロナ禍が来て、手段として乗る人が増えて、いろんな人の目に触れるようになって、それに拍車がかかった。

世の中の人は「バイクは見るな」と育っているので、それが見えるようになった瞬間にこういうふうに変わってきた。目を向けたというよりも「見えるようになった」と感じます。

小テーマ② コロナ影響によるライフスタイル、バイクの価値感変化

松原さん:キャンプブームですが、バイクとキャンプというのは元々あった。それが逆に今はキャンプを趣味とする人がキャンプ場でバイクを見て「いいな」と思ってバイクの免許を取ってバイクに乗っている。ウェアのほうも見た目はアウトドアだけどプロテクションが入っているというように変わってきた。用品店でも若い方、男女のカップルがあきらかに増えていると実感しています。業界にとってはありがたい傾向です。

福田さん:オークション業界の視点からですと、やはりコロナ禍で補助金が出た時に10万円くらいのスクーターの取引が非常に動きました。また、メーカーで売れている車種に人気が集中して供給不足になっていて、新車以上の値段で取引されています。業界にとっては健全な状態ではないですが、バロメーターのひとつだと感じています。
また、レンタルバイクのサブスクリプションもやっているんですが、いま借りている方の60%が30代以下男性、女性は10%くらいしかないです。借りている人に「なんで買わないんですか」と聞くと「借りているほうが気楽に乗り換えられる」という声がある。買った方が安いけど、若者はサブスク払いに慣れていて抵抗感のないユーザー層があります。コロナ禍というきっかけとZ世代の思考が如実に出ているなと感じます。

伴さん:昔に比べて若者のライフスタイルが多様化、細分化していると感じます。ファッションにも大きなトレンドがなく、スタイルは分散し、若者は自分らしさを大切にしています。SNSにより自分の好きなものの情報だけを集めています。
スニーカーと古着がいま若者に流行っていますが、流行は20年ごとにまたやってきます。20年前にあったストリートバイクブームがあって、またいまブームが起きている。20年前はファッションに牽引されて、現在はキャンプやアニメに牽引されている形です。常に若者の中で何かに牽引されていると思います。他の趣味と掛け合わせたイメージ戦略で今後より一層生活の一部として捉えてもらえるようになると考えます。

小テーマ③ 若者、潜在ユーザーが興味を持つ情報やイベント

埜邑さん:個々人が受け取りたいメディアが多様化しているので、ありとあらゆるものから発信していくことが重要です。大事なことは「バイクを見えるようにする」ことです。以前のフォーラムで「毎週末、代々木公園で4メーカー合同で試乗会をやってください」とお願いしましたが、ライダーが集まるところでイベントをするのではなく、人がいる所にバイクが飛びこんでいかないといけないと思っています。バイクを見えない人たちの所に「こちらから行く」ことが重要なんです。

伴さん:
モトインフォではソフトな情報を中心にバイクの楽しさが伝わるような記事づくりをしてきました。多様化、細分化の中でユーザーが欲しがっている情報を細かく発信していく必要があると考えます。キャンプ好きにバイクが刺さったように、ファッションや音楽やeスポーツなど異なる趣味の人にバイクの魅力が伝わるようなアプローチをしていきたいです。

小テーマ④ さらなるバイク普及のための課題と利用環境改善活動

大村さん:普及のための課題についてですが、いまバイクが欲しい人に届いていないという課題があります。コロナ禍であったり世界情勢だったり理由はいろいろありますが。今もし50ccの適正な価格のバイクがあれば、このブームの売れ行きが倍くらいになっていても不思議ではない状況があります。

原付一種に乗っている人がまだ500万人くらいいて、代替えしたいなと思っているのにできていないということに立ち向かわないといけない。そして、利用する際に必ず出てくる駐車場の問題を自治体等と解決していくことが、このブームをさらに拡大させることにつながると思います。
福田さん:せっかく盛り上がったブームですので、不正流通車はなくさないといけません。メーターの巻き戻しがないように、また盗難車両のチェックもしています。

松原さん:JMCAでは、安全のためにプロテクターと適正マフラーの普及を推進しています。認証マフラーによって「うるさい」はほとんど聞かれなくなりましたが、「危険」はまだつきまとっています。峠の暴走行為ではなく、免許取立ての普通の方がカーブを曲がり切れずに転倒事故で亡くなっている。免許取り立て、バイク買い立ての方をちゃんとフォローして安全に楽しんでいただくことを業界はやっていかないといけないと思います。

特に女性ライダーには怖くて公道デビューできない方がたくさんいると聞いています。レンタルバイクのキズキさんがやっている公道デビューサポートツーリングのようなことを業界を挙げてやっていかないといけません。

ヘルメットのあごひも着用、胸部プロテクターの普及も重要ですし、我々からの情報発信が届きにくい通勤通学のバイク利用者への啓発も死亡事故という観点で大きなウェイトを占めているので、別の切り口で業界を挙げてやっていきたいです。

埜邑さん:通勤通学で若い人は85%くらいで任意保険に入っているが、50~60代のおじさんは加入率が低い。若い人のほうが社会性があるわけですが、駐車場がないとかバイク通行禁止の道路があるとか高速道路料金が不当に高いとか、彼らが納得できない、妥当じゃないことがまかり通っている世界だなと嫌気がささないうちに利用環境改善を本当にしっかりやらないといけません。

まとめ:今のうちに、安全運転と利用環境の改善を

パネルディスカッションは、これまでのバイクラブフォーラムと比べても内容の濃いものだった。ただし、せっかく入ってきているユーザーに乗り続けてもらうためには、安全運転の推進を趣味でバイクに乗るユーザーのみならず、通勤・通学でのバイク利用者にも広く普及推進すること、さらに駐車や通行規制など利用環境の改善を今のうちに効果的な手段で推進する必要があると感じられた。

次回の静岡県では、実質的に学校現場に残っている三ない運動にどう取り組むのかについて活発な議論を期待したい。

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事