2026年10月1日から首都高速の基本料金が約10%値上げされる。しかし、路面への損傷度が大きいトラックなどの中・大型車は割引制度が継続となり、路面への影響が少ないバイクまで値上げ。なぜ料金アップするのか? そもそも首都高は将来無料化するはずだったのでは……? 首都高速道路会社に直接質問してみた。

パブコメで「反対多数」も値上げされることに!

首都高速の基本料金が2026年10月1日から約10%値上げされることになった。普通車の場合で1kmあたりの通行料金は約3円アップされる。

↑二輪車と軽自動車は従来の280~1590円から280~1740円にアップ。中・大・特大車は2027年7月1日から値上げとなる。

 

これはETCを搭載している車両の料金で、非ETC搭載車は最大料金を支払う必要があるため、軽・二輪車は1740円、普通車は2130円となる。

2025年12月24日~翌年1月15日の期間に実施された意見募集=パブリックコメントには734件の意見が寄せられたが、改定を評価したのはわずか13件。残りのほとんどは「改定を見直すべき」という反対意見だった。にも関わらず、首都高速は値上げに踏み切ったのだ。

コストが大幅増! 値上げしても維持管理できるのは「5年のみ」?

まず、首都高が値上げに踏み切った背景を整理していこう。理由は大まかに二つ。まず一つ目が「維持管理費の増加」だ。

資材や人件費の高騰で道路の管理や補修に要する費用は直近の10年間で4割増えている。そのため、現行料金のまま、大口・多頻度割引を廃止せず、労務費・材料費の高騰が続いた場合、年間500億円もの資金が不足する計算という。

物価高だけに、ある程度コストが増加するのはわかるが、いきなり「年間500億円の資金が不足する」ことに驚く。コスト削減できる余地があるのでは、と思ってしまうが……?

この疑問に対し、首都高速は切々とコストを削減してきたことをパブリックコメントで訴えている。

「これまで、道路サービスの提供にあたり、昨今の社会情勢の変化に対応するため、不断のコスト縮減に取り組んできており、省電力機器の採用、メンテナンス技術開発、工事による交通規制の集約化などの1年あたり40億円のコスト縮減を行いました」。一方で「昨今の労務費・材料費の高騰により、経営努力のみによる対応が困難」となり、値上げに踏み切った。

ただし、今回の改定で維持管理費が確保できるのは「当面5年」のみ(!)。5年後の2031年3月末までに大口・多頻度割引を順次縮小し、全車で割引を最大12%に統一するとしているが、5年後に再び料金がアップする可能性が高いのだ。

↑様々な補修費用だけでなく、事故や落下物等への対応等も含めて道路サービスを行うための値上げ、と首都高は主張している。※写真は首都高速資料より

中・大型車の45%割引を、一般ユーザーが肩代わり!?

値上げの理由二つ目は、2027年3月末に期限が切れる「大口・多頻度割引」を5年間継続するため。この割引は、主に事業者向けに料金を“最大45%”と大幅割引するもので、物流業者の多くが恩恵を受けている。

利用するには条件があるものの、深夜割引など他の割引とも併用できるため、最大で普通車とほぼ同額の料金で済んでしまう。これを5年間継続させるため、料金値上げに踏み切ったことになる。

割引継続の理由について、首都高速は「国民生活・経済活動を支える物流などの支援」のため、経営判断として割引制度を継続するという。

とはいえ、大口・多頻度割引の利用者は、バスやトラックといった中・大型車が大多数。当然、バイクや普通車と比べて重量があるため、道路に与える損傷が大きく、維持管理や補修を招く要因となっている。そのため、大型車の負担を高めるなら納得だが、今回の改定では割引継続によって逆に優遇されている恰好だ。

こうした疑問に対し、首都高速から次の回答があった。

「今回の料金改定は、道路の補修だけではなく、事故や落下物等への対応等も含む維持管理コストが上昇している中で、今後も道路サービスを提供するために行うものです」(首都高速道路会社 経営企画部 広報課 ※以下同)

一方、普通車の料金と同等になることや、割引率が高すぎる点、割引が適用されない他の普通車や将来世代の利用者に債務返済の負担が伴う点などを挙げ、「受益と負担の均衡を図るという公平性の観点から見直す必要がある」と検討会で指摘されていると回答。

「検討会での指摘や社会経済情勢を踏まえ、将来の対応は引き続き検討して参ります」と締めくくった。

物流コストの増加によって国民生活が苦しくなるのは必至なだけに、確かに物流支援は必要だろう。しかし、首都高を利用する一般のライダーやドライバーが割引の肩代わりをする構図になっていることに疑問が残る。5年後と言わず、早急に検討してほしいものだ。

↑東京都心の大動脈である首都高速。国民の経済活動を支えているのは確かだが、一般利用者がこれを負担する形に?

道路への損傷が少ないバイクも値上げ。そもそも、なぜ軽自動車と同額?

今回の料金引き上げは、道路の補修など維持管理コストの高騰が一因。以前から疑問視されている問題だが、軽量かつタイヤが二つのバイクは、四輪車より道路損傷の度合いが少ないにもかかわらず、軽自動車と同額の割高な料金を徴収されてきた。そもそもの料金設定がおかしい上に、今回一律に二輪車も値上げされたことに疑問を感じる。

これに対する首都高速の回答は次のとおり。

「今回の料金改定は、現行の車種区分を維持したまま行います。現行の車種区分は、首都圏における管理主体(首都高とNEXCO)を超えたシームレスな料金体系とするため、基本的に各道路において車種区分及び車種間比率を5車種区分に整理・統一しております。

また、高速道路料金の車種区分は、車種間の負担の公平を図りつつさまざまな要素から総合的に決定されております。

この車種区分の考え方については、国土交通省HPに記載があります。(https://www.mlit.go.jp/road/soudan/soudan_02b_02.html
一方、国の社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会において、高速道路の車種区分について議論が行われていることは承知しており、会社としては、このような議論や国等の関係機関の動きについて引き続き注視して参ります」

回答に「車種間の負担の公平を図りつつさまざまな要素から総合的に決定」とあるが、やはりバイクが軽自動車と同額かつ値上げとなるのは納得できない人も多いだろう。

なお、首都高速の全交通量に対する「二輪車のみの利用率」を訊ねると「約0.5%」(出典:首都高速道路交通起終点調査(2023年10・11月)※最新の調査結果)との回答。この利用率の低さと、道路への影響を合わせて考えれば、やはりバイクの料金は割高と感じられる。とはいえ、回答で車種区分見直しについて言及しているのは明るい材料だ。

↑軽い上にタイヤが二つのバイクは、四輪より道路に与える影響が少ない。それでも軽自動車と同額。しかも値上げされるのは理不尽では?

あくまで返済が優先、無料化するために値上げするという矛盾 

そもそもの前提として、将来的に首都高速は無料化するはずだったが、なぜ値上げするのか? 

当初は債務の返済を2050年までに終え、無料化する計画だった。首都高速が民営化された2005年の未償還債務は42.5兆円。その後、2024年4月時点で30.4兆円と順調に返済は推移している。しかしながら、当初の債務返済計画に道路施設の大規模更新・修繕の費用を盛り込んでいなかったのだ(!)。

現行の首都高速道路の料金徴収満了日は2074年3月20日。これまでに返済を完了する計画を立てなければならない。とはいえ、修繕しながら50年で債務を返済する「償還主義」はもはや夢物語だろう。そこで、もう少し柔軟に考え、債務返済へ充てる割合を少し下げれば、値上げ前の収入でも維持管理費などの不足分を捻出できるのではないだろうか?

この疑問をぶつけたところ、首都高速から次の回答があった。

「計画管理費及び貸付料を料金徴収期間内に料金収入で賄えるように、首都高の通行料金を設定しており、通行料金を変更せず貸付料を下げた場合は、現行の料金徴収期間内での返済が困難になります。債務返済額(貸付料)は、計画料金収入から計画管理費(維持、修繕その他の管理に要する費用)を除いた額であり、計画料金収入に対する割合により設定しているものではございません」

つまり、料金収入から管理費を差し引いた残りを返済に充てる仕組みなので、返済額だけを下げることはできない。そして、あくまでも期限日までに返済して無料化を目指す「償還主義」を優先するということだ。

この償還主義という原則に固執するため、無料化に向けて値上げするのは“矛盾”ではないだろうか? また、当初の債務返済計画に大規模修繕の費用を盛り込んでいない、という見通しの甘さも原因と言えるだろう。

↑値上げによって当面5年間の維持管理費を確保できるが、年間約1900億円の債務返済は今後も変わらない。※注……収支には物流対策の割引拡充(約300億円)が表記されていない

【まとめ】他の高速道路も値上げか? 二輪専用料金の新設を待ちたい

今回の首都高料金の値上げは、他の高速道路への影響も大きいと予想される。首都高速は厳密には高速道路ではなく、「自動車専用道路」だが、東日本、中日本、西日本のNEXCO3社などが管轄する高速道路も追随し、「値上げ」する可能性が十分ある。

修繕費や維持管理などコストが増しているのは首都高速だけではない。首都高が値上げする理由は、そのまま他の高速道路にもあてはまるからだ。

今回の値上げで問われているのは、単純な「10%の値上げ」だけではない。道路を維持するための費用を誰がどのように負担するのか、そして二輪車の負担は本当に現在の車種区分のままで公平なのか――という問題だ。新たに二輪専用料金が設定され、値下げされればライダーとしては一番望ましいのだが……そんな朗報を待ちたい。

↑本記事では取り上げなかったものの、バイクにとって「首都高のETC専用化」も大きな問題。バイクは車載機の搭載スペースが限られ、費用が高いため、四輪より普及していない。ETC車載機がなければ問答無用で最大料金が取られるし、将来的に料金所にも入れなくなるのだ!

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