同じような六角穴に見えても、キャップボルトとヘクサロビュラボルトでは使用する工具が異なる

キャップボルト=六角穴付きボルトを回すための工具はヘキサゴンレンチ、ヘックスレンチと呼ばれることもある軸部が六角のレンチ。誤ってボルトの六角穴のサイズ(対辺の寸法)に対して小さいサイズを選択すると六角穴の中で空回りするため、六角ボルトよりもなめづらいとされています。しかしレンチの頂点とボルトの六角穴の頂点の接触部分に強く力が加わることで、六角穴が広がる場合も。そうしたトラブルを避けるため、六角穴の頂点との接触を避けるよう設計された六角レンチも販売されています。

 

六角星形と言ってもそれぞれの頂点は尖っておらず、曲線でつながれているのがヘクスビュラボルト用のレンチです。商標登録ながら一般名詞化しているトルクスボルトを回すレンチなので、トルクスレンチの方が広く通用しているかも知れません。六角レンチとキャップボルトの接触部分は線状なのに対して、トルクスレンチとトルクスボルトは面で当たるためなめづらいのが特長です。中心部分に穴が開いているのはいじり止めボルト用特有の形状です。また、六角レンチの二面幅にはインチとミリのサイズ違いがありますが、トルクスにはそうした違いはありません。

 

PBスイスツールズはドライバーや六角レンチで有名なブランドです。L字形レンチは早回しに便利な長軸と、強いトルクを加えてもしなりづらい短軸の組み合わせで、長軸はボルトに対して軸が傾いた状態で回せるボールポイントを採用するのが一般的です。ボールポイントは先端部分がくびれているため、強いトルクで回さないようにしましょう。カラフルな色分けは必要なサイズを見分けやすく、工具と部品がごった返す作業場での識別を容易にしています。


ボルトの頭が六角形ではなく、円筒状の中に六角形の穴が開いているのがキャップボルトです。日本工業規格(JIS)では「六角穴付きボルト」の名称で規定されていますが、これは一般的な頭の外側が六角形のボルトを「六角ボルト」と呼ぶことから、見た目の違いで命名されたものと考えられています。


キャップボルトがバイクで多く使われ始めたのは1980年代になってからで、そこにはいくつかの理由、すなわちキャップボルトならではの利点があります。


まず第一に、機械を設計する際の自由度が上がります。具体的には、穴の奥に六角ボルトを取り付けた場合、その時点でスパナやメガネレンチでは回せません。ディープソケットやT型レンチを使えば良いと思うかも知れませんが、ソケットの肉厚と穴径の関係によっては使えない場合があります。対してキャップボルトは、ボルト頭部の円筒形の内側に工具を掛けるので、頭部が通りさえすればどんな小さな穴の奥にあっても着脱が可能です。


次にキャップボルトは六角ボルトやナットに比べてなめづらいのも特長です。六角頭のボルトをなめる原因に、スパナの掛かりが浅いまま回してしまうことがあります。キャップボルトの場合、六角穴に六角レンチが入らなければ回せないので、作業工程上なめづらくなります。


ただしレンチと六角穴の仕上げ寸法によっては、見かけ上のサイズが合っていてもガタが大きくなることもあり、そうした場合は六角穴の角部が摩耗してなめてしまうこともあります。特に化粧ボルトによく見られる六角穴が浅いタイプのボルトは注意が必要です。
パッと見は六角穴付きのキャップボルトのようで、少し特殊なデザインなのがヘクサロビュラボルトと呼ばれる六角星形ボルトです。この形状を開発した会社の商標登録である「トルクス」の呼び名の方が広く認知されているヘクサロビュラとは、6つの頂点を持つ星のような形状をしています。ポピュラーな六角レンチと六角穴付きボルトの接触部分は6つの「線」ですが、このボルトを回す専用のトルクスレンチとボルトは6つの「面」で接触します。この構造によって同じトルクを加えた際にヘクサロビュラの方が接触部分に発生する圧力を下げられるためボルトがなめづらく、その結果締め付けトルクを大きくできるのも特長です。キャップボルトとヘクサロビュラボルトは頭部の円筒形状こそ似ていますが、工具をセットする穴部分には互換性はないため、それぞれ専用のレンチでなければ回すことはできません。


狭い隙間に取り付けられたキャップボルトを落下させず拾い上げる工夫

六角穴のサイズに合わせた六角棒の先端を丸くすることで、軸が傾いた状態でも回せるボールポイントはボルトの周辺に干渉物があるような場面での作業性向上に役立ちます。中間のホールドリングが六角穴の内側に接触して抵抗となり、雌ねじから抜けた後も落下せず回収できるので、手が届きづらい場所に取り付けられたキャップボルトに対して有効です。

 

ボールポイント部全周ではなく、鋼球とスプリングで六角穴に抵抗を与える製品もあります。各メーカーとも作業時に違和感がないよう工夫をしていますが、六角ボルトへの着脱時に抵抗が生じるので、作業内容によってボルト保持機能付きのレンチと保持機能無しのレンチを使い分けるとよいでしょう。

 

六角穴と鋼球の接触抵抗によって、下向きにしてもボルトは外れません。隙間が狭い場所にボルトを締める際、レンチの先端にボルトをつけた状態でナット位置まで運べるのはとても便利です。こうした機能がない場合、ボールポイント部分に小さく切ったマスキングテープを貼ってフリクションロスを増したり、六角穴にグリスを塗ってレンチに貼り付けるといった手段もあります。


ボルトナットにも通じることですが、穴の奥や指先が届かない場所に取り付けられたキャップボルトを着脱する際、六角レンチの先端からボルトが落下すると面倒なことになります。そうした場面で確実にボルトをキャッチできるレンチがあります。


ここで紹介するのはホールドリングを使用する製品と金属製のボールを埋め込んだ製品の2種類で、どちらもキャップボルトの六角穴の内側で抵抗となり脱落を防止します。ソケット工具の中には、ソケットの奥に仕込んだ磁石でボルトナットを吸着できる物もあります。しかし六角レンチは先端部分をボルトの六角穴に挿入するため、先端に磁石を設置できません。そこで抵抗=フリクションによってキャップボルトをキャッチするアイデアが実用化されました。また磁力に頼らないことでアルミボルトなど非磁性の素材にも使えるメリットが生まれ,同様のフリクション方式はソケットにも利用されています。

ラチェットハンドルやT字形ハンドルで作業スピードの向上も可能

ハンドルを左右にスライドすればL字形としても使えるT字形レンチは早回し作業で威力を発揮します。ハンドルを引き抜くと、長軸の後端にラチェットハンドルが差し込めるよう四角穴加工が施された製品もあります。

 

先端が六角でもヘクスビュラでもビットソケットを用意しておけば、ラチェットハンドル、エクステンションバー、ユニバーサルジョイントなどソケット工具の資産をすべて活用できます。


一般的なL字形の六角レンチは一方の軸が長く他方が短く、レンチを傾けた状態で回せるよう長い軸の先端が球状になっています。締まっているボルトを緩める時や締め作業の最後は短い軸をボルトに差し込み、長い軸をハンドルにしてトルクを加えますが、締め途中と緩め途中は長い軸をボルトに差し込んで鉛筆のように握ることで早回しが可能です。そしてさらに速く回したいときには、L字形以外のレンチもあります。


まずはT字形レンチタイプのヘックスレンチです。ここで紹介する製品はスライドする短めのハンドルの端部もレンチとして使えるタイプで、ハンドルを使ってクルクルと早回しした後にハンドルをキャップボルトに差し込み、長軸で回すことでボルトを強いトルクで締めることができます。ボルトが太くなり六角穴のサイズが大きくなるにつれて締め付けトルクも大きくなります。その際に通常のハンドルだと大きなトルクを加えられるよう幅が広くなり、工具箱の中でかさばりがちになります。しかしこのレンチならT字形で早回し、L字形で強く締め付けという2種類の使い方ができます。


そしてもう一つはビットソケットです。ここではラチェットハンドルの差し込み角が3/8インチのトルクスビットのソケットを掲載していますが、六角レンチのヘックスビットもありますし、差し込み部分がスリムな1/4ラチェット用のビットソケットも数多く販売されています。ラチェットハンドルやエクステンションバーを所有しているライダーなら、ビットソケットの追加により作業効率を大幅に向上させることも可能です。

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