既存のホンダ・CRF250L、CRF250ラリーだけでなく、2024年末にはカワサキからKLX230、KLX230シェルパが登場し、スズキからも久々の400ccクラストレールのDR-Z4Sが発表されるなど、にわかに盛り上がりつつあるバイクのジャンルがオフロードだ。ただこのオフロードバイク、いざ始めようとするとちょっとばかし特殊でエントリーユーザーにはわかりにくいことも多い。そこでオフロードバイク遊びをするためのハウツーを毎回少しずつ紹介していく本企画。今回は湿式エアクリーナーフィルターの2回目、湿式ならではのクリーニングの方法をご紹介。

湿式エアクリーナーフィルターのクリーニングで用意するのは、専用のフィルタークリーナーに、エアフィルターオイル。食品用保存袋数枚、それからバケツと大量のぬるま湯。またフィルタークリーニングはクリーニング液にしろ、エアフィルターオイルの塗布にしろ、アイテムによっては結構ケミカル臭がする。蛇足だが、湿式エアクリーナーフィルターのクリーニングは屋外で行うのが我が家のルール。また、ご近所への配慮から多くの家が戸締り&洗濯物は干さないであろう雨天に行うようにしている。
湿式エアクリーナーフィルターのクリーニングは食品用保存袋がキーアイテム!?

新品の湿式エアクリーナーフィルター(右)と使用後(左)。使用後の湿式エアクリーナーフィルターには、染み込ませたエアフィルターオイルが砂やホコリ、植物のタネ、羽虫といった空気中の異物を絡め取っている。
前回、湿式フィルターは、粘性の高いオイルをフィルターに染み込ませて、空気中のホコリや砂などをこし取っている……なんて話をした。つまり湿式エアクリーナーフィルターは基本的にギトギトの油まみれであり、まずはこの油と一緒に砂やホコリを落としてやる必要がある。
使うのは食品用保存袋と湿式エアクリーナーフィルター専用のクリーナー。昔は灯油や洗油などを使って湿式エアクリーナーフィルターを洗浄するのが普通だったが、現代ではそんな廃液を下水道にたれ流すのはNG。エンジンオイルの交換同様、ユーザーレベルでは洗浄したあとの灯油や洗油は処理に困るのだ。

使うのは食品用保存袋(使い捨てするので安物でOK)と湿式エアクリーナーフィルター専用のクリーナー。フィルタークリーナーは生分解性が明記されているものを選ぼう。“BIO Degradable”とは“生分解性”、つまり微生物などが分解可能な環境に負荷の少ない成分という意味だ。
廃油の処理ができるバイクショップならいざ知らず、個人宅で湿式エアクリーナーフィルターを洗う場合には、環境面へ配慮した生分解性合成洗剤のエアクリーナーフィルタークリーナーを使いたい。この生分解性のエアクリーナーフィルタークリーナーであればすすぎに使った水などを生活排水として下水へ流すことができるからだ。

汚れた湿式エアクリーナーフィルターを入れた食品用保存袋にクリーナーを注いでもみ洗い。食品用保存袋を使うと手を汚さなくて済むうえに使用済みのクリーナー液やウエスなどを密閉して袋ごと捨てられるので後始末がとても簡単になるのだ。

クリーナーとフィルターオイルがしっかり混ざって溶けたら、たっぷりのぬるま湯ですすぎ洗い。泥や異物などの汚れがなくなり、フィルターオイルが“だいたい”落ちていればOK。あまりしつこく揉んでいるとフィルターがヘタってしまうので注意しよう。

しっかりすすいだら、ウエスでプレスするなどして水気を取り、陰干でじっくり乾かす。経験上、完全に乾かすためには3日はそのまま放置することになるので湿式エアクリーナーフィルターはスペアを用意しておくと作業効率がいい。

湿式エアクリーナーフィルターは消耗品。エンジン内部への異物混入防止がエアクリーナーフィルターの役目であるのに、ぼろぼろになったフィルターのカスがシリンダーに送られてしまっては意味がない。明らかにスポンジフォームがヘタってきたり、生地の劣化を見つけたら交換しよう。
フィルターオイルを塗布でも食品用保存袋がやっぱり便利!

用意するのはよく乾かしたキレイな湿式エアクリーナーフィルターとフィルターオイル、そしてまたまた食品用保存袋。ただし、フィルターオイル塗布の工程で使う食品用保存袋は耐油性が高く冷凍保存にも対応しているような頑丈なものが望ましい。
湿式エアクリーナーフィルターがしっかり乾いたことを確認したらフィルターオイルを塗布する。フィルターオイルには、液体タイプやスプレータイプがある。バイクが趣味レベルでたまにしかフィルターの清掃を行わないのであれば、どぶ浸けして使う液体タイプのフィルターオイルよりスプレータイプの方が便利。スプレータイプは液体タイプのフィルターオイルより割高にはなるが、使用量が調整しやすく空気に触れないので保管が楽なのだ。

食品用保存袋に湿式エアクリーナーフィルターを入れてフィルターオイルを吹き付ける。液体タイプの場合も要領は一緒で食品用保存袋を使うとフィルターオイルの無駄が少なくて済み、周囲への無駄な拡散も少ない。

本来、フィルターオイルはどぶ漬けして軽く絞るくらい塗布するものなので、スプレー式の場合もケチらずしっかり塗布しよう。

フィルターオイルの塗布具合は、その粘性にもよるが“表面だけでなくスポンジ全体にオイルが行き渡り、かつフィルターからタレない程度”が目安。食品用保存袋に入れたまま放置して滴り落ちないか確かめたり、軽く絞って油量を調整しよう。耐油性があり冷凍保存にも対応したの食品用保存袋であれば、フィルターオイルを塗布した状態でスペアとして持ち運ぶことができる。

前回の記事でも書かせてもらったが、フィルターオイルの塗布具合でフィルターの吸気抵抗が変わり、エンジンが吹け上がるスピードが変わる。またフィルターそのものやオイルの粘度でもエンジンのフィーリングが変わるので色々試してみるのも面白い。
湿式エアクリーナーフィルターのクリーニングとは、言ってみれば①洗って、②乾かして、③フィルターオイルを塗る…だけ。道具さえあれば誰にでもできる簡単なメンテナンスなので愛車のエアクリーナーフィルターが湿式なら挑戦してみよう。ちなみに僻地へのロングツーリングなど、フィルタークリーニングための道具が揃えられない状況では洗油や灯油がクリーナーの代わりとなり、フィルターオイルはエンジンオイルで代用が可能なことを知識として覚えておこう。
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