鉛バッテリーである開放バッテリーやMFバッテリーはもちろん、リチウムイオンバッテリーにも対応可能なバッテリー充電器『ROM-オプティメート4クアッド』が登場したことで、リチウムイオンバッテリーへの換装をしてみたくなった筆者。前回の記事では、エリーパワーの「HY93-C」を購入し、『ROM-オプティメート4クアッド』での補充電までをお伝えしたが、今回はいよいよWR250Rとテネレ700へ搭載。エンジン始動を試してみることにしよう!
プラスマイナス端子の向きが同じWR250Rには難なく搭載!
早速、WR250Rに積んでいたMFバッテリー「YTZ7S」を取り出してみると、筐体に関してはリチウムイオンバッテリーの「HY93-C」の方が少し小さいくらいで、右がプラスで左がマイナスという電極端子の並びも一緒。
バッテリーケースへ「HY93-C」を押し込んでみると左右の幅はほぼピッタリで、上下に若干の余裕ができる感じ。エリーパワーのスタッフによれば、“スペースが余った場合には発泡スチロールなどでガタが出ないようにしてください”とのことだったので、クッションになりそうな板状の発泡スチロールを見つけて調整することにしよう。
ちなみにバッテリーの取り外しに関して基本的なことから書けば、バッテリーを取り外す際にはまず、
①イグニッションがオフであることを確認。
②バッテリーからマイナス側の配線を取り外し(取り外し後は元のマイナス端子に触れないように注意する)。
③次にプラス側の端子を取り外す。
……という順序がある。これはフレームやエンジンがバッテリーのマイナス側の端子と直接つながっているためで、それらのパーツに外したプラス側の配線が接触すると“バチッ!”とショートしてしまうから。“車載バッテリーは必ずマイナス端子から配線を取り外す”ということを覚えておこう。
リチウムイオンバッテリーへの端子取り付けは細心の注意で!!
バッテリーの取り付けにあたっての注意のポイントは取り外しと一緒で兎にも角にもショートに気をつける。なので手順は取り外しの逆手順。
①イグニッションがオフであり、外したマイナス側の配線がしっかりバッテリー端子から離れていることを確認。
②プラス側の端子を取り付け、赤い絶縁カバーもしっかり元に戻す。
③マイナス側の配線を端子に取り付ける。
エリーパワーのスタッフのお話では“リチウムイオンバッテリーへの換装の際は特に短絡(ショート)に注意してほしい”とのこと。筆者の経験上、バイクに積んでいる程度の12V鉛バッテリーであれば少々“バチッ”っとなったところで車体のメインヒューズが切れるだけで済むことが多い。その場合もメインヒューズをスペアに交換すればその場で復帰できるのだが、リチウムイオンバッテリーが内蔵するヒューズ回路はショート一発で作動してしまうとのこと。前回の記事でも書いたが、エリーパワーの「HY93-C」はひとたびショート回路が作動してしまうと、メーカーメンテナンスに出さないと機能復帰ができない。くれぐれも着脱時のショートには気をつけて作業を行って欲しいということだった。
さてさていよいよ緊張の一瞬。イグニッションをオンにしてセルスターターボタンを押してみる。……と、WR250Rの単気筒エンジンが難なく始動。特にセルスターターの回りが弱いとか、いつもと違う音がするということもなく、MFバッテリーの時と変わらずごく普通にエンジンがかかった。そのまましばらくアイドリングで放置し、その後はブリッピングを行ってエンジン回転数を上げてみたりもしたが、特に不具合は起こらず。リチウムイオンバッテリー「HY93-C」によるWR250Rの始動はどうやらヒューズ回路が作動することなく成功した感じだ。
僕のWR250Rには、『ROM-オプティメート4クアッド』でプラグイン充電するためにバッテリー直結のアクセサリーソケットを取り付けているのだが、これもそのまま残して「HY93-C」へも充電可能か試してみる。
プラスマイナス端子の向きが逆のテネレ700は!?
さて問題はテネレ700の方だ。筐体のサイズはものすごく小さくなるものの、「YTZ10S」と「HY93-C」ではプラスマイナス端子の位置が逆。こればっかりは実際に「HY93-C」をバッテリーボックスに置いてみないと装着が可能かわからない。まぁ、テネレ700に取り付けられなかったら、すでに取り付け&始動の確認がとれているWR250Rの方で「HY93-C」を使い続けてみればいいんだけどね。個人的な話をすればWR250Rは最近MFバッテリーを交換したばかりなので、できれば購入4年目でそれなりにバッテリー劣化が進んでいるハズのテネレ700の方でリチウムイオンバッテリーを使いたいのだ。
結論から言うと、端子の向きが逆だったテネレ700のバッテリーボックスにも「HY93-C」がすんなり収まった。そもそもプラスマイナスの配線の長さに余裕があり、配線の取り回しさえ整理すれば無理なく接続が可能だったのだ。
2気筒エンジンであるテネレ700でも、始動、アイドリング、ブリッピングを難なくクリア。「HY93-C」の使用条件に“エンジンの種類が3気筒以上のオートバイであること”なんてことが取扱説明書に書いてあったなんてことに前回の記事で触れたがまずはひと安心。少なくともWR250R(2007年式)とテネレ700(2020年式)に関してはひとまず始動レベルまでは問題なさそうなことが確認できた。
テストではWR250Rでも、テネレ700でも始動が確認できたが、今後はテネレ700に「HY93-C」を積んでおき、実際に走行しながらしばらく様子を見ることにしよう。使用条件である“エンジンの種類が3気筒以上のオートバイであること”による問題は走行中に出るのか? 出ないのか? また本当にリチウムイオンバッテリーは低温下でも始動性に問題ないのか? そしてMFバッテリー比で約3倍の“10年近く使えると言うロングライフ性能”は本当なのか? 何か起きた時点で再びこの場でレポートさせてもらいま〜す!
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