そもそもシエラカップって、なに?
アウトドア用品の専門店だけでなく、大型ホームセンターのアウトドア用品売り場でも見かけるシエラカップ。お皿にしては小さいし、コップにしては平たいし、フタがないので鍋でもなさそうだし……。予備知識のない方が見たら、何のためのものなのか、よくわからないかも知れません。
でも一度使ってみたら、「これは便利!」とわかるはず。シエラカップは小さなお皿にもお椀にもなる食器であり、平たいコップであり、火にかける鍋のようにも使える、万能クッカーなのだということを。
シエラカップの素材は、丈夫で扱いやすいステンレスや、軽くて耐食性の高いチタンが主流。そうした素材の縁の部分を丸く折り曲げ、ハンドルとなる太いステンレスワイヤーを巻き込むようにしてガッチリと成型されています。シンプルな構造で、極めて頑丈。だからアウトドアで使うのに最適とされているのですね。
ルーツは自然保護団体のシエラクラブにあり
シエラカップの形状は、複数個をコンパクトに重ねることができる点も、高評価。マグカップみたいな形状のコップだったら、こうは行きません。こんな便利なもの、いったい誰が世に送り出したのかというと、1892年にアメリカ・サンフランシスコ市に誕生した自然保護団体「SIERRA CLUB(シエラクラブ)」です。シエラカップは、そのシエラクラブが団体の会員証がわりに配布していたもの(シエラクラブカップ)が、ルーツとされています。
このカップはその後、シエラクラブの活動資金集めのために市販されるようになり、やがて多くのメーカーが類似品を製造・販売するように。現在は「シェラカップ」と呼ばれることが多いですが、ルーツであるシエラクラブに敬意を表する意味で、「シエラカップ」と呼ぶ方も少なくありません(筆者もその一人)。
大きな鍋で作った料理を、みんなでシエラカップに取り分けて食べたり、シエラカップに飲み物を入れてそのまま火にかけて加熱したり。シエラカップはアウトドアで大活躍してくれます。
フタがあると、さらに便利に
多くのキャンパーが愛用している、シエラカップ。焚き火を前にしながら、これにお酒を注いで飲んでいると、いかにもアウトドア! という気分になります。ただし、フタがないという点で、ちょっと困ったことも。虫の多い夏など、テーブルに飲み物入りのシエラカップを置いていると、ランタンの灯りに引き寄せられた蛾や大きな蚊などが、カップに飛び込んでしまったりするんですね。
何か対策はないものかと考えていて、気づいたのがシリコン製のフタ。ご飯茶碗や汁椀のフタ用にと、100円ショップで売られているやつ。あれの12㎝お椀用が、直径120mmサイズのシエラカップに、ぴったりじゃないですか。
専用開発のフタがあれば炊飯もできる
シエラカップ用のフタを製造・販売しているメーカーもあります。筆者が使っているのは、新潟県三条市のメーカー、株式会社ベルモントの製品。「BM-076 チタンシェラカップリッドM」です。
ベルモントのチタンシェラカップリッドMは、その名の通りチタン製で、サイズは約Φ121×134mm、重量は約26g。本体価格1,150円。フタとして使うだけでなく、小さなお皿にもなります。チーズやサラミなどのおつまみを置いておくのに、ちょうどいい。縁が盛り上がっているので、お醤油皿なんかにも使えます。ちなみに、100均のセリアで2021年に販売が開始されたシェラカップリッドはステンレス製。税込110円とは驚きの安さですね!
フタのつまみ部分に穴があけられていますが、そこに箸の先を差し込めば、ホラこの通り。火にかけて熱くなったフタを、直接さわらずに開けることができます。
フタがあれば、シエラカップに盛った料理が冷めにくくなるし、シエラカップを鍋代わりにしてご飯を炊くこともできます。
通常サイズのシエラカップは、容量が300ml程度ですから、これだと0.5合は炊けます。お米にしっかり水を浸み込ませてから(夏なら30分以上、冬なら1時間以上)、フタをして火にかけます。今回はエスビットのポケットストーブ(固形燃料を使用するドイツ製の携帯簡易コンロ)を使って炊飯してみました。さて、どうなるか!
ちょっと水の量が多かったようですが、芯の残らない、おいしいご飯が炊けました。
コメが食べたいならキャンプ場に行く前に、コンビニでおにぎりでも買えば済む話とはいえ(笑)、いざとなればこんなことだってできるという意味で、シエラカップ。キャンプで持つべきアイテムとしては「基本のキ」かも知れません。
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