USBポートやグリップヒーターなどを愛車に取り付ける際に重要なのが、電源の取り出し方です。バッテリー上がりを防ぐにはイグニッションスイッチに連動して通電するアクセサリー電源から分岐するのが常套手段ですが、機種によって、特に古いバイクは分岐ポイントの見極めが難しいこともあります。
そんな時に重宝するのが、専用リレーを使って電源を複数に分岐ができるようにするパーツです。
今回はキジマ製のアクセサリーパワーユニットを使用し、1970年代のカワサキKZ900LTDにUSBポートを取り付けます。
ヒューズの数が少ない絶版車は電源取り出しポイントが難しい
一方、下の画像は、もっと古いZ1時代の配線図です。
Z1時代は20Aのメインヒューズ1本だけでした。ヘッドライトやテールランプがショートしてもメインヒューズが切れ、イグニッションコイルへの電源も断たれるので走行不能になります。これでは使い勝手が悪いため、年式が新しくなるほど電装品の回路が細分化されヒューズの数も増えました。
バイクから電源を取る方式には、用品の配線をバッテリーターミナルに直接つなぐ直結式と、イグニッションスイッチをONにした時に電気が流れるアクセサリー電源につなぐ方法があります。
バッテリー直結、いわゆる「バッ直」は取り付けこそ簡単ですが、バイクのキーを抜いても用品には電力が供給されるため、スイッチを切り忘れるとバッテリーが上がるリスクがあります。これに対してイグニッションスイッチ連動のアクセサリー電源は、キーを抜けば電気も遮断されるので、USBポートなどを取り付ける際の定番となっています。
イグニッションスイッチと連動して電気が流れる回路にはウインカーやブレーキランプ、ヘッドライトなどがあります。それらの回路に用品を追加した際に懸念されるのがヒューズ切れです。ヒューズは過電流やショートした時に回路を保護するために電気を遮断します。
USB電源やグリップヒーターなどの用品にはあらかじめヒューズが組み込まれており、異常が発生した場合は電気を遮断し、車体側のヒューズに影響を与えないようになっています。しかし瞬間的に大電流が流れると用品と車体のヒューズが同時に切れてしまうこともあるのです。
すると用品だけでなく、電源をつないだバイク自体の電装品も機能しなくなってしまいます。特に1980年代以前のバイクは電気回路がシンプルでヒューズの数が少なく、ヒューズ切れの影響が広範囲に及びがちです。
例えば先ほど説明したZ1のヒューズはたった1本です。抜け掛かったテールランプのプラスのギボシがフレームに触れてショートすると、ヒューズが切れてエンジンも止まります。それでは不便すぎると、1970年代半ばにKZ900にモデルチェンジした際には3系統に進化しましたが、それでもメイン、ヘッドライト、テールランプの3本しかありません。
万が一、こうした古い年代のバイクに取り付けた用品にトラブルが発生すると、電装品が軒並み作動しなくなってしまいます。そのリスクは電気回路が細かく分散されてヒューズの数が増えた現行モデルでも同様です。用品の電源をブレーキランプ回路から分岐しているならブレーキランプが点灯しなくなり、ウインカーリレーの電源から分岐しているならウインカーが使えなくなります。
キジマ製アクセサリーパワーユニットはPTCサーミスタ採用で防水&コンパクト
年式が古いバイクの電気回路の仕組みや特徴、また現行モデルであっても用品取り付け時には想定外のリスクがあることを理解してもらえたと思うので、本題のアクセサリーパワーユニットについて説明しましょう。
USBポートなどの用品にとって、イグニッションスイッチに連動して通電するアクセサリー電源が便利なのは確かですが、車体側ヒューズの負荷が増加するのは懸念材料です。そんな不安を「アクセサリーパワーユニット」が解消してくれます。
この製品はユニット本体をバッテリーターミナルに直結し、アクセサリー電源で作動するリレーによってユニットに接続した用品に電力を供給します。既存の配線に割り込んで分岐するのではなく、別系統の電源を新たに追加するため、用品に電気的なトラブルが発生しても車体のヒューズに影響を与えないという利点もあります。
USBポートなどの用品にヒューズがあるのは先に説明した通りですが、電源ユニットにも万が一のためヒューズが組み込まれています。一般的なユニットは過電流で切れた管ヒューズやブレードヒューズの交換が必要なのでパッケージを密封できず、ヒューズを格納するためのスペースも必要です。
一方キジマのアクセサリーパワーユニットは、過電流に対する保護をPTCサーミスタという素子によって行います。PTCサーミスタには設定値を超えた電流が流れると温度が上昇するとともに抵抗値が大きくなり電流を遮断する機能があります。
取り付けた用品に過電流が流れたり配線がショートすると、内部のPTCサーミスタによって電流が遮断され、原因を取り除けば自動的に復旧します。ヒューズ交換の必要がないので、ユニット本体は密閉式の防水仕様となっています。
そして原因が取り除かれると温度が下がって電流が回復するので、サーミスタ自体を交換する必要はありません。また既存のヒューズよりも小さいので、回路の基板も小さくまとめることができます。
このためアクセサリーパワーユニットはウインカーリレーと大差ないほどコンパクトで、交換不要のPTCサーミスタは密閉できるため防水設計が可能。場所を選ばず取り付けられるのです。
3種類のアクセサリーを安心して取り付けできる
それではカワサキKZ900LTDを題材に、実際の取り付け手順を紹介します。
キジマ製アクセサリーパワーユニットは本体から3系統の電源を取り出すことができます。汎用リレーで同様の電源ユニットを自作する場合、ひとつのリレーで一回路が普通なので、一個の本体で3種類の用品を動かせるのは設置スペース面で有利で、なおかつPTCサーミスタが内蔵されているので安全です。
許容電流は7.5Aが2系統で5.0Aが1系統となっています。電源用リレーの中には20Aや30Aまで許容するものもあるので、それらに比べて容量が小さいと感じるかも知れません。しかしバッテリー電圧を12Vとして消費電力に注目すると、5.0Aで60W、7.5Aの方は90Wまで対応できることになります。
消費電力は用品によってまちまちですが、急速暖房時のグリップヒーターが最大50W程度なので、配線ショートなどのアクシデント以外でアクセサリーパワーユニットのPTCサーミスタが作動する場面は皆無かと思います。
純正ヒューズ数が少ない絶版車の場合、ヒューズ切れで走行不能に陥ることもあります。便利な用品を安心して装着したいユーザーにとって、安全性と利便性を兼ね備えたアクセサリーパワーユニットは有効に活用したいアイテムになることでしょう。