ツーリング中のライダーの身体を守ってくれる、ライディングウェア。
「普段着っぽいカジュアルなデザインと、トラブル時も破れない強靭さ。このふたつを両立できるライディングパンツはないのかな?」なんて思っていたら…発見しちゃいました!
それが、イタリア製の上質なデニム生地と、防弾ベストにも使用される強靭な素材『TWARON®(トワロン)』で作られた、『PMJ』のライディングパンツです。
PMJのパンツは業界でも指折りの耐久性能を持つという噂ですが、本当でしょうか? 体を張って検証してみたいと思います!!
PMJ『フロリダ』
今回お借りしたのは、『フロリダ』という女性用のライディングパンツです。
パッと見では普通のジーパンなのですが、万が一の転倒などの際、ライダーの身体を守るための機能と耐久性を備えているライディングパンツなのです。
耐久性の秘密は、パラ系アラミド繊維『TWARON®(トワロン)』を使用していること。トワロンはなんと、スチールの5倍の強度と、約500度の熱にも溶けない耐熱性を持っているのだそう!
この通りトワロン生地を引き裂こうと力を込めても、人間の力ではビクともしません。防弾ベストにも使用をされるほどの強靭な素材なのです。
フロリダの場合、転倒などの際に特にダメージを受けやすい大腿側部・膝・お尻が、表地・トワロン・裏地の3層構造になっています。(写真は表地を取り除いてわかりやすくした状態です。トワロンの使用部位は製品の種類によって異なります)
トワロン自体はガサガサした硬い質感なのですが、裏地に肌触りのよい生地が使用されているため、履き心地はサラッとしていて快適なのです。
ほふく前進で耐久性を検証しよう!
CE規格の摩耗耐久テストにて約8秒間の実績を持つというフロリダ。
頑丈そうな印象を受けますが、あくまでスペック上の話。実際に人間が履いてアスファルト上を引きずられた場合、どれほどの距離まで破れず身体を守ってくれるのでしょうか?
気になったら実験してみるしかありません! よ~し、引きずられちゃうぞぉ~っ!!
今回の実験方法は以下の通りです。
・フロリダを履いたままアスファルト上でほふく前進を行う(ただし足は動かさず、引きずるだけとする)
・車庫4個分(12m)を5回移動し、合計60mで検証
・ただし怪我の可能性が出た場合、テストは途中で中止とする
果たしてどこまで破れずに耐えられるのでしょうか。フロリダの耐久力、見せてもらおうじゃないか~~っ!!
1回目(12m)
カメラマンの「よ~い、ドン!」の掛け声と同時に、勢いよくスタートを切った筆者。上体を起こしたまま左右の腕に交互に力を込め、ズルズルと下半身を引きずりながら進み始めました。
さっそく膝からは、アスファルトと生地が擦れ合う「バリバリバリッ」という音と振動が伝わってきます。
本当に破れず耐えられるのでしょうか? 正直、結構ダメージを受けているような感覚があるのですが…。
さて、ガレージ2個分(6m)ほどを進んだ頃でしょうか。筆者は早くも、あることに気が付きました。
「身体って…めちゃくちゃ重くない!?」
それもそのはず、筆者の体重は約56kgと若干ヘビー。さらにはアスファルトによる摩擦の影響も大きく、それを腕2本で引っ張っているのだから当然のように苦しいワケなのです。(もちろん日頃の運動不足も原因ですが…)
「うおぉぉっ! こんな企画考えたヤツ、誰じゃ~っ!? …私自身じゃぁぁ~~~っ!!!!」
自分で「60mはテストしなきゃインパクトないよね」なんて決めたのだから、1回目でヘタるわけにはいきません。
髪を振り乱しながらも、気合でゴールです!
果たしてフロリダの状態は…?
ジャジャンッ! 表地のデニムに小さな穴が空いただけでした!!(中に見える黄色い生地がトワロンです)
すごいっ! さすがトワロン、さすがフロリダ!! 12mではビクともせず、見事に膝を守ってくれました。
デニム生地の表地が破れていることから考えると、もしもこれが普段着用のジーパンだったとしたら、早くも膝を擦りむいて怪我をしてしまっていたはず。1回目にして頑丈なライディングパンツを履く重要性がわかったのではないでしょうか。
2回目(24m)
休憩は挟まず、勢いで2回目(24m)に挑戦です。一気に進めることで「身体が疲労に気付く前にテストを終わらせてしまおう!」という作戦なのです。
…なんて言っても、勢いがいいのは最初だけ。
半分を過ぎるころには息が切れ、顔じゅうの毛穴から汗が噴き出てくるのです。
「普段からもっとランニングと筋トレをしておくべきだった!」「12mがこんなに長いのか!」なんて叫びながらも、2回目をゴールです!
写真で見ると嘘っぽいのですが、ゴールの瞬間は本当にバッタリと動く気力がなくなってしまいます。よい子はマネをしないでくださいね。
さて、フロリダの様子は…
膝部分の穴が大きくなっていましたが、トワロンは無事!
ただし膝と腿(もも)の接続部分、トワロンが入っていない部分が破れてしまい、肌が露出してしまいました。
今回のほふく前進ではゆっくりとアスファルトに擦り付けながら前進するため、徐々にパンツがずり下がってしまい、想定されていない部分への摩擦が起きてしまったのかもしれません。
3&4回目(36&48m)
3回目(36m)。腕の力だけで進むことに限界を感じたため、腹筋も使いながらシャクトリ虫のように進む、名付けて『シャクトリ前進』をスタート。
「うんとこしょ、どっこいしょ…」
結果は…徐々にジーンズ生地のダメージが広がっているものの、トワロンに穴はナシ!
4回目(48m)。
体中の毛穴という毛穴から汗が吹き出し、今にも背中から湯気が立ちそうです。
さすがに4回目となると、膝からは「ブチブチブチ…」という布が千切れるような音が聞こえているような気がします。
「いくらなんでも、48mも引きずったら破れちゃうんじゃないかな?」
そう心配をしていたのですが、ゴール後立ち上がって確認したところ、よい意味で裏切られました。
トワロンの中心部が毛羽立っていますが、いまだ穴はナシ。また2回目で破れた膝と腿の接続部分に関しても、その後は広がっていないようです。
すでにライディングパンツとして十分な耐久性をクリアしているような気もしますが、ラスト1回(12m)にいってみましょう!
果たして、フロリダは最後まで破れずにいられるのでしょうか!?
5回目(60m)
最後の力を振り絞って、5回目(60m)です!
「よーい、スタート!」
前半の勢いはどこへやら。ズリズリと体を引きずりながらゆっくりと、しかし確実に前へと進んでいきます。
腕に力が入らなくなってきているためか、膝以外にもお腹や前腿、靴の先など、いたるところがアスファルトに擦り付けられているのがわかります。
それでもケガをせず、全身どこも痛くならないのは、ライディングジャケットとパンツが皮膚への傷を防ぎ、プロテクターが関節のクッションになっているから。
「うぐぐっ…バイク専用品は大事っ……みんなもちゃんと耐久性のあるアイテムを使って、自分の身体を守って…!」
ゼェゼェと肩で息をしながらも、ついに60mほふく前進テストのゴールです!
「フロリダは? 膝はどうなってる??」
カメラマンに聞かれても立ち上がる気力が残っておらず、ゴロン。
60mのほふく前進を終えたフロリダは、力尽きた筆者と同様、ついに膝に小さな穴が空いていたのでした。
一瞬「残念!」と感じましたが、実を言うと、この結果は筆者の事前予想を大きく上回っていました。
というのも今回のテストの場合、上体を起こして足を引きずるという状況上、両膝だけに体重が集中してしまうという事情がありました。
おそらくメーカーが想定する以上にダメージが膝へ集中してしまうため、1往復(24m)もすれば穴が空くだろうというのがテスト前の予想だったのです。
それがまさか、最後まで穴が空かなかったなんて。
「惜しかったけど、期待していた以上の耐久性がありました!」
業界でも指折りというPMJライディングパンツの実力は、本物であると確信したのでした。
スタイルアップにはストレッチタイプもおすすめ
今回テストに使用した『フロリダ』は、比較的ゆったりとしたシルエットが特徴です。
ストレッチ性がそれほどない代わりに、ダメージを受けやすい部位が表地・トワロン・裏地の3層構造になっていて、テストで証明した通り耐久性は抜群。安全を重視したい方におすすめのパンツです。
しかしライダーの中には、「スタイルがキレイに見えるスキニータイプのパンツが欲しい」「動きやすさを重視してストレッチジーンズが欲しい」と思う方もいますよね。
そんな方におすすめなのが、デニムとトワロンを織り交ぜた生地を使用した『サラ』と『ニューライダー』。
股上が深いデザインがサラで、浅いデザインがニューライダーです。
耐久性という意味では3層構造のフロリダに劣りますが(CE規格の摩耗耐久テストで2.1秒)、ストレッチ性の高いデニム×トワロンの生地1枚で仕立てられているため通気性も高く、私服と組み合わせても違和感がなさそうなほどスタイリッシュですよ!
ちなみに…今回のテストで使用した『フロリダ』は、現在こちらのページにて半額セールを実施中なのだそう(2024年7月5日現在)。
「安全性が高くてカッコいいライディングパンツが欲しい」というライダーは、是非チェックしてみてくださいね!
取材協力
・株式会社ヒルズトレーディング(MOTOSALON)
・株式会社トップス