伊豆市がライダー誘致を始めたという今回のお話だが、まずは「伊豆半島って何?」というところから話そうと思う。伊豆半島は、首都圏のライダーにとって無くてはならないツーリングエリアであり、聖地とも呼ばれている。漫画・アニメ・ドラマと大人気の「ゆるキャン△」でも半島内の各地がジオ的観点から紹介されていたが、まさしく、伊豆半島はその全域が魅力的なのだ。
絶景道に温泉にグルメ! 聖地にふさわしい伊豆半島
ところで、伊豆半島の最大の特徴と言えば、日本で唯一、フィリピン海プレートに乗っているというところ。半島の地質が、海底火山時代の地層と陸上火山時代の地層に分かれていることから、起伏に富んだ地形を成しており、絶景スポットや多種多様な温泉、そして豊かな農産物や海産物にも事欠かない。海から山まで豊かな土地なのだ。
●伊豆半島ジオパークミュージアム「ジオリア(伊豆市修善寺)」での展示
●「道の駅 伊豆月ヶ瀬」で提供されている伊豆市の名物「ズガニ(モクズガニ)料理」
●伊豆最古の温泉場である修善寺(しゅぜんじ)の立ち寄り温泉施設「筥湯(はこゆ)/大人350円」半島の東側に延びる「伊豆スカイライン(有料)」と西側に延びる「西伊豆スカイライン(無料・県道127号線 ※下写真)」はどちらも連山の稜線を縫うように延びており絶景を楽しめる。憧れのワインディングとしてその人気は全国的なものだ。また、山々から海(東は相模湾、西は駿河湾)に駆け降りるような道も走りごたえがあって楽しませてくれる。
さらに、伊豆半島のちょっと良いところは、オフロードバイクで走れるような林道が残されているということ。不法投棄や災害などの影響で、走れる林道が減ってきたとは言え、現在でも林道をハシゴできるフィールドというのは貴重なのだ。
このように、ライダーにとって、とても魅力的な伊豆半島だが、これまでは「おらが村にライダーを呼び込もう ※伊豆半島に村はない」なんていう取り組みはほとんどなかった。そんな呼び込みをしなくても「ライダーは勝手に来てくれる」というエリアなので、確かに不思議ではない。
しかし、昨今の観光施策はお金と時間に余裕のできた50~60代をどう呼び込むかがポイントであり、そうした年齢層へのアンケートでも「バイク・クルマ」は常にベスト3に入ってくる「やりたい趣味」のひとつなのだ。ここ数年は、地方自治体がライダーを呼び込もうとバイク関連イベントを開催したり、ツーリング用ガイドマップを作ったりという流れが広がっている。
首都圏に近いからとあぐらをかいていては、伊豆半島も周辺の自治体エリアにライダーを奪われる可能性もある。
最も大きな伊豆市がライダー誘致を始めた!
そんな思惑があってかどうかはさておき、いま伊豆市が元気だ。伊豆市と言えば、平成の大合併(2004年)で、修善寺町・土肥町・天城湯ヶ島町・中伊豆町が合併して誕生した自治体だ。伊豆半島で最大の面積となっており、海、山、川と豊かな自然に恵まれている。
その伊豆市の菊地 豊市長が、周辺地域のクラブ活動である「原動機研究部」とタッグを組み、様々な施策を展開しているのだ。ライダー視点による伊豆市の良いところ、走って楽しいところ、ライダーが求めている設備やイベントなどに注目し施策を動かそうとしている。
例えば、伊豆縦貫道・無料区間の終点に位置する「道の駅 伊豆月ヶ瀬」や清水港~土肥港を行き来する駿河湾フェリーの土肥港にバイク用の駐車区画を整備するといったことがすでに行われている。
●「道の駅 伊豆月ヶ瀬」のバイク用駐車場
炎天下などで、サイドスタンドが地面にめり込んでバイクが倒れないように、バイクの駐車区画だけにコンクリート床材が使われている。横並びで数十台は停められるので、マスツーリングの休憩スポットにもオススメだ。
●土肥港駐車場のバイク用スペース
駿河湾に面する土肥港に整備された「土肥港駐車場」内のバイク用スペース。ここにバイクを停めて「体一つでフェリーに乗って清水へ」なんて旅もできる。駿河湾フェリーの航路は海の上の道路、県道223(フジサン)号線に指定されていて、全国的にも珍しく、船内での地域グルメや駿河湾と富士山の絶景も楽しめる。遊覧感覚で乗船するのもオススメなのだ。
菊地市長を先頭に市内の名所をツーリング!
2020年11月には、菊地豊市長(下写真右)と原動機研究部により、安全運転の啓発と伊豆市の魅力を探すことを目的にツーリングを実施。ツーリングには波多野靖明市議会議員(下写真左)も参加し、原動機研究部が主体となって行うライダー誘致プロジェクトの門出を応援している。ツーリングは、伊豆市役所での運行前点検、安全運転指導員や大仁警察署による交通安全講習と講話を終えたのち開始され、道の駅 伊豆月ヶ瀬や浄蓮の滝、修善寺虹の郷などを巡りながら、伊豆市の魅力をライダー視点からPRした。
浄蓮の滝では、天城地域の特産物である「わさび田」も見学した。
菊地市長のもと、ライダー誘致に動き出した伊豆市では、ライダー参加型のイベントなど様々な企画を準備しているとのこと。今後も注目してほしい。