2022年4月16日、新東名高速道路の伊勢原大山IC~新秦野IC間が開通した(約13km)。秦野(はだの)という言葉は聞いたことがなくても、丹沢(たんざわ)、大山(おおやま)という言葉を聞いたことがある人はいるんじゃないだろうか(特に山好きな皆さん)。実はこのあたり、神奈川県西部の貴重な林道生存エリアでもあることから、連載形式で紹介する。

【掲載林道 一覧】
1. 林道 戸川線(とがわせん)
2. 林道 春岳線(はるたけせん)
3. 林道 戸川2号線(とがわにごうせん)+周辺情報

【林道走行について】林道は、その所有者の如何に関わらず、そこで生活する地域の方のための道路です。林道で飛ばしたり、林道から外れた所を走ったり、焚き火やキャンプをするなどの行為は警察に通報され罰せられることもあります。また、林道の通行止めの要因にもなり、そうしたフィールドがまたひとつ失われることになります。マナーを意識した走行と振る舞いに気を付けましょう(^_-)-☆
【通行の可否】舗装工事、災害復旧工事などにより、取材当時と道路状況が大きく変化している可能性があります。実際に行かれる際には森林事務所等への通行可否の確認をお願いします

1. 林道 戸川線(とがわせん)

【DATA】●延長距離:約5km ●ダート区間:約4.5km ●通過時間:片道20分~ ●走りやすさ:★★★★★ ●絶景度:★★★☆☆
【概要】開通したばかりの新東名高速道路「表丹沢スマートインターチェンジ」は戸川線起・終点のすぐ近くに位置している。バイクにETCがあればインターを出てから数分で林道入口に到達できるという好立地だ。戸川線は丹沢登山道へのアクセス路として維持されていて管理は行き届いており、観光林道的な側面もあるからクルマの往来もあるし登山客やハイカーも歩いている。

終点には登山者向けの駐車場(広場)があり、そこからも丹沢山ほか周辺の山々への登山道が延びている。ピストン林道で展望はほとんどないが、路面はフラットで走りやすく林道ビギナーにもオススメだ。ちなみに、林道戸川線の正式名称は秦野市道52号線だったりする。
戸川線の起・終点は県立秦野戸川公園にある。表丹沢スマートインターチェンジに隣接していてアクセスがよく、公園内には様々な施設があって自動販売機も設置されている。これから林道で山奥に向かうという暗くてジメッとした印象はなく、カラっと明るい雰囲気だ。
さて、公園内の「風の吊橋」(デカいっ!)をくぐり抜けていくと、滝沢園キャンプ場との分岐点となり、そこがダートの始まりだ。路面は硬く締まっているが、砂利が浮いている所もある。こぶし大の落石は少なく、ガレ場もない。
ただ、路面排水がうまくできていない箇所が多くて、雨が降った後だと道路の至る所でちょろちょろと細い川ができる。基本的に管理されている林道なので、タイヤを取られるような大きな溝はないが、雨天の翌日には注意したい。
しばらく走ると、左手にけっこう大きな人工物が見えてくる。モニュメントと案内板がひとつになったもので、けっこう立派。観光地の幹線道路などではよく見かけるが、林道内でこうしたモニュメントは珍しい。丹沢大山(たんざわおおやま)国定公園という文字と、その英語表記が大きく書いてあって、ちょっとアメリカの国立公園のような雰囲気を醸し出している。ここはフォトスポットかも。
その後、すぐ右手に見えてくるのが名水スポットの「竜神の泉」だ。なんでも上流に竜の形をした岩があり、竜神が宿るという言い伝えからこの名がついたらしい。きれいな湧き水だがそのまま飲むのはNGみたいで「煮沸消毒してから飲んで」と書いてある。ちと残念だが、コーヒー用などに持ち帰るのもいいだろう。
戸川線は、水無川(川の名前)に沿うように丹沢の山奥へと延びている。ゆるやかに上り続けていくが、下っている区間はほぼない。眼下に水無川が流れているから、道路の左側には木々の隙間から景色がのぞける所もあるが、基本的にすこーんと抜けているような場所は少ない。
ここもそうしたスポットで、木々の隙間から箱根の神山と駒ヶ岳が見えていたが、目の前の道路に集中して走っていたらまず気づかないだろう。
さらに林道を進むと、新芽荘(閉業?)、作治小屋(土・日のみ営業)という山小屋も現れる。関東では珍しいが、さすがに登山者のための林道だなと感じる。なお、作治小屋では素泊まりや食事もできるそうだ。
作治小屋を過ぎれば、終点もすぐそこだ。最後の分岐では、右側が本線。ただし、この狭い上り坂は少しガレているので転倒には注意しよう。分岐を左側に進んだところには有料の戸沢の出合駐車場があり、登山客がクルマを停めている。
本線を行くと、すぐ左手に戸沢休憩所がある。ここはトイレと屋根付きの休憩スペースがあって心地よい。そして、そのすぐ先の洗い越しを渡った所にはちょっとした広場(県立戸沢休憩所駐車場)があり、ここが戸川線の終点となっている。
広場の上には戸沢バンガローも建てられていて丹沢登山の拠点になっているようだ。水無川がすぐそばを流れているが、源流に近いこともあって、とても澄んでいる。
清涼感たっぷりで、まさにヒーリングスポット。ピストン林道ながら、何度でも来たくなる理由のひとつでもある。戸川線は個人的にも好きな林道で、毎年1度は訪れている。癒しの空間をぜひ堪能してほしい。

【起・終点】戸川公園はとにかく広大で水無川の両岸に広がっており、単純に戸川公園を目指してしまうと、林道の反対側(川の西側)に出ることもある。戸川線の起・終点は川の東側なので、ナビ設定時には注意しよう。滝沢園キャンプ場を設定すれば間違うことはない。

【ハイライト動画:約4分】起点から終点へ(2022年5月末当時)

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