広大な牧場をつらぬく直線路

 ワインディングロードは走って楽しいものだけれど、まっすぐに伸びたストレートも気持ちいいものですよね。筆者の故郷、岩手県盛岡市周辺にも、いいストレートがあるんです。東北自動車道・盛岡ICから、国道46号線を西へ約6㎞進みましょう。「繋十文字」交差点を北へ曲がれば(右折です)、そこは岩手県道131号小岩井停車場線。そのまま北進してJR田沢湖線を越えれば、道路の名称が岩手県道219号網張温泉線へと変わります。この県道219号線は、筆者が勝手に「小岩井道路」と呼んでいる、絶景ストレートです。広大な小岩井牧場を突っ切っていく、青空ひろがる直線路。こんな感じ。

岩手県道219号網張温泉線

県のシンボル・岩手山に向かって

 この道、1992年までは「小岩井有料道路」という名の有料観光道路だったのです。なので無料化されてからは、地元の僕の仲間内では「小岩井道路」と呼んでいました。牧場の匂いを嗅ぎながらまっすぐ北上していけば、目の前に、岩手県の最高峰・岩手山(標高2038m)がドン! と現れます。ネイティブ・モリオカン(!?)にとって、岩手山は父、北上川は母のようなもの。「南部片富士」とも称される、荒々しくも美しい岩手山の姿には、ただただ圧倒されるばかり。4月下旬からは桜の花が色どりを添えて、特に美しい。
ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」(石川啄木)。この気持ち、よくわかります。

岩手山

「まきば園」で童心に帰る

小岩井農場まきば園

 小岩井農場の面積は、約3,000ヘクタール。民間の総合農場として日本一の広さを誇ります。そのうちの約40ヘクタールが、観光スポット「小岩井農場まきば園」として一般開放されています(有料)。乗馬体験や、ひつじのショー、ポニーとのふれあいコーナー、ホルスタインの見学など、観光農場的な楽しみ方がいろいろ。季節ごとのネイチャーウォーキングもガイド付きで用意されています。冬は積雪のためバイクで来られませんが、2月には雪まつりの会場にもなります。
 レストランや軽食コーナーも充実。農場産牛肉と岩手県産のマッシュルームをふんだんに使用した「小岩井ビーフストロガノフ」や、小岩井農場産のチーズをたっぷり使った「小岩井4種のチーズピザ」もおいしいですが、腹ペコのライダーにおすすめなのは断然これ。

小岩井農場ラムジンギスカン

 こちらは、まきば園の山麓館焼肉レストランでの人気No.1メニュー「ジンギスカンセット」(1,400円)。新鮮なラム肉はボリュームたっぷり、焼き立てに自家製タレをつければご飯が進むのなんの。ご飯が足りない! というダーリンは250円でライスのおかわりをどうぞ。足りないのはラムだっちゃ! という方は、ラム肉単品が1,000円で追加OK。でも絶対に忘れてほしくないのは、やっぱり小岩井牛乳。沖縄に行ったら、オリオンビールを飲むでしょ? それと同じです(キッパリ)。現地で飲むのが一番おいしい。だから、まきば園に来たなら、小岩井牛乳は飲まなきゃ。でないと地元の方に「おめはん、こごサ何(なぬ)しに来た?」と言われそう。

「まきば園」ではD51にも会える

小岩井農場のSL

 まきば園には、懐かしのD51形式蒸気機関車が現存しています。だいぶ老朽化していますが、この車両は昭和12年に山口県の日立製作所で製造され、それから38年間で317万km(地球を約79周)を走ったツワモノ。うしろに連結されているのは寝台車で、2008年までは実際に宿泊施設「SLホテル」として利用されていました。地元出身の筆者は泊まった経験がありませんが、小岩井農場の周辺は民家もなく、夜は星がきれいですから、宿泊客はきっと宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を想いながら、夜空を見上げたことでしょう。
 ということで、小岩井道路。岩手山の眺めとラムジンギスカンとD51見学も含めて、大いに楽しんでくださいね!

 
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