ロープワークとは、用途に応じた「ロープの結び方」や「使用方法」の総称のこと。もやい結び、自在結び、トラッカーヒッチなど、結び方は用途ごとに多数ありますが、今回はその中から、テグス結びをご紹介します。

リアシートに大きなバッグを積みたいんだけど

 キャンプツーリングに出かける際など、リアシートに大きくて重たいバッグを積載することがありますよね。

テグス結び

 バッグを縛りつけるには、荷かけフックが車体の好位置にあるといいのですが(前側に左右2カ所、後ろ側に左右2カ所が理想)、そうでない車両も少なくありません。後ろ側はあっても、前側がない、というケースが多いようです。リアサスが2本ショックであれば、サスの取り付けボルトがそのまま荷かけフックになっていたりして都合いいのですけど、そうでない場合はどうするか。

ロープワーク

 自分で工夫するしかない。ということで、筆者は細いロープで「輪っか」を作り、シート下のフレームに巻きつけてシートの両サイドから引っ張り出す、ということをしています。

テグス結び

 この輪っかを荷かけフック代わりにして、ストレッチコード(バンジーコード、とも)を引っかければいいわけです。輪っかを作る際の結び目がほどけてしまっては困るので、ここで筆者は、引っ張れば引っ張るほどほどけなくなるという性質を持つ「テグス結び」を活用しているのです。

どんなロープを使うべきか

パラコード

 輪っかがちぎれたら困るので、ロープは強度の高いものを。写真のロープは、パラコード。正式な名称はパラシュートコードで、パラシュートから人間などの重量物を吊り下げるために作られたもの。簡単に切れたら命にも係わるのですから、丈夫さは必須条件。太さ4ミリ程度のパラコードでも、250㎏ほどの耐荷重があります。
 手前のパラコードはミリタリーショップで購入したもので、ややお高め。奥のパラコードはワークマンで購入。長さ15mで399円は格安。それでも耐荷重250㎏と記載されているので安心です。
 パラコードでなければ、アウトドア用品店で売られている、細くてカラフルなロープ「細引き」でもいいでしょう。細引きも強度があるし、太さ4ミリぐらいのものを使えば安心できると思います。

まずはロープを切る

ロープワーク

 輪っかを作るために、まずはパラコードを必要な長さで切ります。パラコードは丈夫なだけあって、なかなか切りにくい。ケガをしないよう気をつけてください。アウトドア用品店などでは、熱した刃先で切る専用カッターを使っていたりもします。

ロープワーク

 切るとこんな感じ。白い内芯を、外装が覆う構造。細い繊維がほどけたままだと都合が悪いので、ライターで焼いてナイロン繊維を溶かし、固めます。

ロープワーク

 切った部分を、火で軽くあぶる程度でOK。ヤケドしないように気をつけてください。

ロープワーク

 熱でナイロン繊維が溶け、固まります。あぶった直後はまだ熱いので、触らないように気をつけてください。

テグス結びで、輪っかを作る

テグス結び

 45センチほどの長さで切ったパラコード。まずは一方の端に結び目を作ります。

テグス結び

 結び目の中に、もう一方の端を通します。

テグス結び

 通し終えたら、結び目がほどけないよう、軽く締めます。

テグス結び

 もう一方の端も、最初の結び目と同じ構造になるようにして、結び目を作ります。

テグス結び

 ひとつめの結び目と、ふたつめの結び目を、ややキツめにしたら、輪の左右を指でつまんで外側に引っ張っていきましょう。テグス結び

 すると、ふたつの結び目が近づいてきます。

 結び目同士が、くっつきました。ふたつの結び目が、お互いのストッパーの役目を果たしています。この構造だと、引っ張られれば引っ張られるほど、結び目同士が押しつけられ、ほどけなくなります。

 裏返すと、こんな感じ。それぞれの結び目を作る際は、右回りで結ぶか、左回りで結ぶか、統一してください。そうしないと、このようにはなりません。
 テグス結び(電車結び、フィッシャーマンズ・ノットとも呼ばれる)は、そもそも2本のロープをつないで長くする際に使われる結び方ですが、このように1本のロープの両端を結んで輪っかを作るのにも適した方法なのです。

 同じものを、ふたつ作りましょう。
 ちなみに今回、パラコードは45センチの長さで切りましたが、できあがった輪っかの長さは20センチ以下です。結び目ふたつ分と折り返し部分のせいで、仕上がりサイズが半分以下になるのです。

フレームに巻きつける

 バイクのシートを外し、シート下のフレームに輪っかを巻きつけます。左右同じ位置がいいですね。
 パラコードを巻きつける際は、配線の取り回しに干渉しないこと、突起物などに触れないことを考慮してください。

 巻きつけ方は、こんな感じ。輪っかを細くして、先端をフレームに巻きつけたら、反対側の輪っかの中に通すのです。

シートを元通りにして完了

 これでストレッチコードのフックが引っかけられるようになりました。荷物がリアシートの真上に固定できるので、リアキャリアの上に固定するよりも重心が中心寄りになり、走行中、コーナーでの倒しこみや切り返しなどもラクになります。

 フックの突起が身体に当たって気になる、という場合は、こうしてください

 ストレッチコードを輪っかに通して、フックをテールランプ側に持っていくのです。
 こうするためには、輪っかはある程度、大きいほうがいい、ということになります。輪っかが小さいと、フックが中をくぐりませんので。

使わないときは?

 荷物を積まない時は、シートのへりに押し込んでおきましょう

 シートのへりに押し込んでおけば見た目もスッキリするし、パラコードが紫外線や雨で劣化するのを遅らせる効果もあります。
 押し込んだ輪っかを引っ張り出す際は、鍵の先端などで掻き出せばOK。この時、鍵の先端や車体を傷つけないように気をつけてください。
 再び使用する際は、パラコードの素材が劣化していないか、結び目がゆるんでいないか、チェックしましょう。
 また、走行中に切れると危険ですから、古くなったら新しいものと交換しましょう。使用頻度にもよりますが、筆者は1年以内に交換しています。

輪っかはいろんな箇所に使える

 輪っかを巻きつける箇所は、何もシート下のフレームに限りません。タンデムステップホルダーでも、シートレールでも、リアキャリアでもいい。
 ストレッチコードの硬いフックを直接かけると、車体側が傷ついたり、塗装が剥がれたりしますが、輪っかを利用すれば、それを防ぐことができるのです。

 説明は、以上です……え? 余ったパラコードはどうするかって? 筆者はツーリングの際、常に携帯しています。泊まった先で洗濯ものを干す際のロープにしたり、バッグに入り切らないおみやげものを縛りつけたり、キャンプ場でタープなどを張る際の補助に使ったり、用途はいろいろ。
 編み上げブーツの靴ひもが切れた、なんてときにも使えます。
 パラコードに限らず、アウトドア用の細引きでもいい。細いロープを常備しておくと、何かと安心なのです。

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