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夏はまだ終わっていない!
こんにちは青木タカオです。これを読んでいただいている皆さんは、オートバイで目的や行き場所も決めず、ふらっと出かけたくなることってありませんか?
ボクは年がら年中いつもそんな気持ちですが、仕事が忙しくてなかなかそんなことはできません。夏の間も、ずっと「バイクでどこかへ行きたいなぁ〜」と思いつつ、原稿の執筆や取材に追われていました。バイクには頻繁に乗るものの、“あてもなくブラブラ”という贅沢な時間は過ごせませんでした。
夏になると、頭の中を埋め尽くすのが、大好きな片岡義男小説のフレーズ。『彼のオートバイ、彼女の島』(角川文庫)のカバーにて綴られた「夏は単なる季節ではない。それは心の状態だ。」というコピーはファンの間ではあまりにも有名ですし、『限りなき夏 1』や『夏から秋にかけての短編』(角川文庫)、『夏と少年の短篇』(ハヤカワ文庫JA)などタイトルにも使われるなど、“夏”は特別な季節です。
『WITHHARLEY(ウィズハーレー)Vol.16』(内外出版社/9月13日発売)の締め切りが終わったのは、9月上旬のことでした。睡眠不足が続き、精神面も含め疲労困憊(こんぱい)。徹夜明けで仮眠を少しだけ取り、お昼ごろに目を覚ますと、ボクは居ても立っても居られない状態となったのでした。
「夏は単なる季節ではない。それは心の状態だ。」
そう、ボクの夏はまだ終わっていないっ!
カワサキ『W1SA』(1971年式)のキックペダルを踏み降ろし、バーチカルツインエンジンを目覚めさせ、ボクはあてもなく走り出したのです。
仕事とは関係なく乗りたいボクのダブワン
バイクライターであり、ハーレー専門誌編集長でもあるボク。メーカーやジャンル、新旧にも関わらずバイクには仕事で毎日のように乗りますが、自分の愛車に乗る時間は正直なところあまりありません。
特に『W1SA』は完全プライベートでしか乗らないと決めています。なぜなら、取材や撮影などの待ち合わせなど、決められた時間に間に合わすために急かされて乗ると面白くないからです。
早く家を出ればいいじゃん……。
そう言われてしまえば、それまでですが、ボクの大好きなダブワン。仕事とはまったく関係のないところで愉しみたいのです。
折り返すキッカケは道の駅
というわけで、自宅から1時間か2時間かワカリマセンが、気がつけば国道4号線沿いにある『道の駅 ごか』(茨城県猿島郡五霞町ごかみらい)のバイク駐車スペースにボクはおりました。
ずっと国道を走ってきたのではなく、昔から東京の東に住むボクは江戸川沿いを北上するのが好きで、ノンビリ走りつつ「どこかに立ち寄ろう」と、いつも心の中で思いつきでバイクを停めるのが、この道の駅なのです。
あるときは深夜、またあるときは早朝であったり、自宅へ折り返す“キッカケ”とでも言いましょうか、早いハナシ、どこでも良いのです。
ただし、今日に限っては「引き返したくない。もっと走りたい!」と思うボク。すぐに出発します。再び、あてもなく走り出します。
北の大地じゃなくてもあったセイコーマート
急ぐ必要もないし、どこか決められた目的地にたどり着く必要もない。ただ、カワサキのバーチカルツインの鼓動を感じ、マフラーが奏でる音を聴きながら、さまようようにして走れば、なんて心地良いのでしょうか。至福のひとときです。
ボクは自由だ!
な〜んて、昭和の青春ドラマのような言葉を噛み締めつつ、スマホのナビアプリも時計さえも見ないで気ままに走り続け、次に停まってみようと思ったのが『セイコーマート』(古河駒羽根店)でした。
ライダーの聖地、ツーリングで人気の北海道で広く支持されているコンビニエンスストアであることは、これを読んでいる皆さんならよくご存知でしょう。
北海道へ行ったら、ボクは必ず『セイコーマート』で買い物をしたくなりますし、北海道のローカルコンビニというイメージです。
しかし、なぜか遠く離れた茨城県、そして埼玉県にも少しあり、北海道から直送される牛乳や道南で愛される豚の“やきとり”などが売られています。
大洗港から苫小牧へのフェリーが往復しているからとか、いろいろとその理由が考察されていますが、調べによると、茨城県の地場コンビニ『マミーチェーン』が、『セイコーマート』ブランドに切り替えたというのが本当のところのようです。とにもかくにも、茨城にはセイコーマートが多いのです。
ボンヤリ決まった目的地
国道4号線をそのまま走り続ければ、宇都宮や日光、那須へと、それこそ引き返すタイミングを失いそうだったので、適当に交差点を曲がってウロウロしていたら見つかったのが『セイコーマート古河駒羽根店』(茨城県古河市駒羽根)でした。
“茨城の小京都”と呼ばれ、古くは万葉集にも登場。江戸時代から徳川譜代大名の城下町で、日光奥州街道の要地として栄えた歴史ある宿場町です。渡良瀬川の渡し場として賑わってきました。
大学は地理学科で、“地理&歴史オタク”でもあるボクはこういう情報の引き出しを頭の中にいっぱいしまっていまして、すぐにボクは東国一円の重要拠点であった古河の古い町並みを見たくなりました。
マニアックすぎる美術館へ
たどり着いたのが、茨城県古河市中央町にある『篆刻(てんこく)美術館』です。下調べもしないで行ったので、ココが美術館であることなど知らずにダブワンを停めました。ただ、風情ある建物に惹かれたのでした。
建物の前のスペースは自転車が置けるようになっています。見学の間だけ、ダブワンを駐めさせていただきました。
「篆刻」は“てんこく”と読み、篆書体(てんしょたい)の文字をハンコとして刻む書道芸術のひとつで、起原は中国にあります。材料に象牙や石、ツゲなどが用いられます。中学生のとき、美術の時間にボクも彫ったことを思い出しました。
日本で初めての篆刻専門の美術館として、1991年春に開館。ボクは興味津々。入ってみました。
館内は撮影禁止。旧城下町の石町通りに面し、展示室は当時の雰囲気を色濃く残しています。ムードが良く、入ってよかったと思いました。興味がある人は、ぜひ足を運んでみてください。
次回後編は新たな目的地へ
おっと! ダブワン絡みのネタとなると長文になりがち。今回の古河ツーリングは、前編としてココまでとしておきましょう。
今回も最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。後編もどうぞお楽しみにしてください!