3台のカブで房総半島横断120kmのツーリング
ピコーン。「カブでツーリング行きませんか?」 と、S村さんからのお誘いメール。
はい、行きます行きます! と二つ返事で返す。先月愛車のハンターカブで南房総トコトコツーリングをしてから、また行きたいと思っていたところなのでまさに“渡りに船”のお誘いである。
しかもこんどはただのツーリングではない。“カブ主”ツーリングなのである。ご存知のとおりスーパーカブ乗りは“カブ主”と呼ばれ、カブ乗りの集まりは“カブ主総会”とも言われる。どうやらこの“カブ主”ツーリング、そうとうに楽しいらしいのだ。
S村さんのカブはスーパーカブ90(改)。そしてもう一人のカブ主はクロスカブ(110cc)に乗るカメラマンの米倉さん。つまりタイプも排気量もビミョーに違う3台のカブによるツーリング。それもまた楽しそうである。
S村さんと米倉さんがトランポにカブを積んで南房総の僕の家にやって来て、そこから3台で南房総を走ろうということになった。そして11月某日、はじめての“カブ主”ツーリングが行われたのだった。
まずは家から2kmほどの内房・岩井海岸に向かう。内房を出発して、外房の御宿海岸でランチ、そしてまた内房に戻ってくるという南房総半島横断コース、約120kmが今回のルートである。
房総は日本の酪農発祥の地!?
幸いにもこの日は快晴。だが岩井海岸に着くと、ふだん穏やかな内房の海が荒れている! かなり風が強いのだ。軽量バイクのツーリングだけに“風”は気になるが、いっぽう風が雲を吹き飛ばしてくれるおかげで、1日お天気はよさそうだ。岩井海岸を後にすると、まずはガソリンスタンドにて給油。
燃料系の目盛りが残り1コだった僕のハンターカブは4.5リッターを給油。タンク容量は5.3リッターだ。ちなみにカタログ燃費は61km/L(!)なので、満タンで300kmは走れる計算。ということは少なくとも今日のツーリングではまったく給油の心配をしなくていいということだ。なるほど、カブ主ツーリングが楽しい理由その1、給油やガス欠のことを考えなくていい!
道の駅「富楽里とみやま」の横を通り、鴨川富山線こと県道89号線で内陸へ。房総半島の真ん中を背骨のように走る国道410号線を左に折れる。と、すぐに現れるのが「千葉県酪農のさと」。
え? 千葉県に酪農発祥の地が? 酪農といえば北海道じゃないの? という疑問を抱く方もいるだろう(私もそう思った)。だが調べてみると、日本の酪農は江戸時代、八代将軍吉宗がインド産といわれる乳牛を飼育し、その乳を疲労回復の強壮剤や風邪などの薬として用いていたことから始まったとされる。その牛を飼育していたのが安房の国・嶺岡(現在の南房総市大井)なのである。
この「酪農のさと」は今も牧場として牛が飼育されていたりヤギが放牧されており、家族連れで訪れるにはぴったりの場所なのだが、カブ主おやじ3人のツーリングなので、看板で記念撮影をするに留め先を急ぐことに。ここから数km先に「無印良品」と地域(鴨川市)がコラボした施設「みんなみの里」があるので、ここでコーヒーブレイク(早いけど)の予定なのだ。
「みんなみの里」は道の駅とMUJIが合体したような施設で、地元農産物などの販売所、MUJI CAFE、無印良品のストアなどがある。無印良品のお店の入口にコーヒーのサーバーがあり、100円で美味しいコーヒーを飲むことができるので、ちょっとひと息。
房総の山道は最高のカブ・ロード!
思わず買いものをしたいところだったが、まだ目的地まで半分も走っていない(1/4ぐらいかな……)のでガマン。次に来るときはハンターカブのキャリアにでっかい箱を括り付けてこよう。みんなみの里を出てひとつめの信号を右折。内房と外房を結ぶ長狭街道に入り、鴨川の海岸を目指す。
それにしても房総の山道をカブで走るのは、想像以上に楽しい! 交通量が少なく、信号もほとんどないので、カブにとって快適な速度で延々走り続けられる。おしなべて道幅は狭いのだが、それこそカブの身軽さが利点となる。また房総半島には高い山がないので(千葉県の平均標高は47都道府県中最下位、平べったい県なのだ……)、山道とはいえ急峻な道はなく、適度なアップダウンが続く。
まだツーリングは序盤だが、すでに僕はひとつの結論に達していた。
房総半島はカブで走るのにぴったりの条件を備えている。南房総は“カブ天国”である!
そして鴨川の海に到着。ひとまず内房から外房へ、房総半島横断に成功(というほどじゃないが)。こうして細かく目的地をつないでいく感じが、カブツーリングの楽しみなんじゃないかな、と思う。さてここからは外房の海岸線沿いに走る国道128号線を北上し、今日のランチスポットである「カイザーベルク御宿・月の沙漠」を目指す。ここはツーリングライダーのための会員制リゾート施設だ。
果たしてこの先には、さらなる“カブ天国”が待っているのか? ちょっと長くなりましたので、続きは後編にて……。