遠く去りゆく昭和を追って、香ばしいスポットをスーパーカブ110でダラダラ旅する「昭和レトロ紀行」。今回は趣を変えてブラジル人街で有名な群馬県太田市と大泉町を訪れた。しかも今回は旅のパートナーが妻! 一体どんな珍道中になるのやら……。
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実は昭和とブラジルは大いに関係があるんです!
細々と不定期に続いている昭和レトロ紀行。神奈川&山梨編に続く、今回の行き先は群馬県太田市と大泉町だ。スバルやパナソニックなどの工場があり、昔ながらの食堂や宿も多く存在する。
中でも独特なのがブラジル人街。ブラジル人が多く住み、「ブラジルタウン」「リトルブラジル」「日本のブラジル」などと呼ばれ、ブラジルの食材を扱う店や、本格的なレストランが多数存在する。
「ブラジルは昭和と関係ないじゃん……!」と思う人もおいでだろう。実はブラジル人街と昭和には深い関係がある。
昭和末期のバブル時代、人手不足に陥ったスバルなどの工場が、ブラジルからの出稼ぎ労働者を受け入れた。彼らは「じゃぱゆきさん」と呼ばれ、当時はよく耳にしたものだ。出発時点では、このように浅ーい理解だったのだけど、後に現地で想像以上に昭和と密接な関係にあることを知るのだった。
それはともかく。今回は旅のパートナーがおられる。妻だ(笑)。以前、この昭和レトロ紀行「親子栃木編」で息子を連れて行ったところ「私も連れてけ」と脅され……ではなく、お願いされたのがキッカケ。それから1年半を経て、ようやく実現した次第である。
初タンデムツーはいきなりのアクシデントと寄り道でスタート!
朝9時、妻をスーパーカブ110(JA44)の後席に乗せて、埼玉県川口市の自宅から出発。旧国道122号などを北上していく。
出かけたのは6月上旬。一泊二日の旅程だ。
結婚してから23年が経ったが、実は妻と一緒にツーリングするのは初めて。20~30分程度の近場へタンデムしたことはあったが、本格的なツーリングはしたことがなかった。妻もバイクには興味があったものの、二輪免許は所持しておらず、初の椿事となる。
なぜ妻とツーリングしなかったのか? 旅行はクルマで行っていたし、そもそも私はさほど熱心にツーリングするタイプではないし、ツーリングは一人という頭があるし……。その辺が理由だろうか。
途中で寄り道しながら、群馬県に向かって北上していく。妻にタンデムした第一印象を訊ねると「うーん、振動が凄い」。
スーパーカブ110にそんな振動があるか? と思ったが、どうやらシートが問題のようだ。椅子用の分厚いクッションをリアキャリアに無理やり取り付けていたのだけど、そのせいで振動がダイレクトに伝わってくるのかもしれない。
ただしバイクでタンデムすること自体は楽しく、2000年に解散したバンド「ブランキージェットシティ」の『ガソリンの揺れかた』を歌っていたとのこと。妻は学生時代にバンドをやっていたこともあり、ロックやジャズが好き。まぁ自由とかワイルドさを感じていると言いたいのだろう(笑)。
晴天に恵まれ、気温は30度近い。道中、埼玉県久喜市で雰囲気のある和菓子屋があったので、葛入りアイスバーなどを購入。お店の人によると、近くにラベンダーが有名な公園があるというので行ってみる。
ブラジルにワープ! スーパーには見たことない商品がたくさん!
そんな寄り道をしながら、昼前には群馬県大泉町に到着! 下道とはいえ、60kmあまりの道程だけに、のんびり走りながら2時間程度で着いた。まず訪れたのはブラジル食材のスーパーである。
さらに広い駐車場を挟んで、お隣にもブラジル食材スーパーがドーン!
最初にアソーゲタカラから攻めてみた。これは……スゴイ! 客も店員も飛び交う言葉もブラジル。売っている品物もブラジル。とても日本とは思えない。
お待ちかねのブラジル料理に挑戦も、妻の暴言が飛び出す!?
広々とした店内をさらに見て回ると教習所の案内所(?)が。外国での免許取得はタイヘンだと思われるので、これは安心でしょう。
スパイスを買って、お隣のキオスケ・シブラジルへ。店舗面積はアソーゲタカラより相当コンパクトで、コンビニを少し大きくしたようなカンジだ。昼時なのでメシにしよう。どちらのスーパーにもレストランが併設されているのだけど、アソーゲはハンバーガー、キオスケはブラジル料理を供しているので、キオスケで食べることにした。
注文したのは、フェイジョアーダ(1500円)と牛イチボステーキ(1600円)。下調べしたところ、フェイジョアーダはブラジルの郷土料理らしい。
炭酸入りのガラナは、適度な甘みがグッド。暑い本日にはちょうどいい。ちなみに北海道生まれの妻にとってガラナは身近なので、あまり驚きがないとのこと。
待つこと20分ほどで料理が到着! ブラジルの方らしきおじいさん店員が運んでくれる。ん、牛イチボステーキはフツーに美味そうだが、フェイジョアーダは見慣れない色だ!
フェイジョアーダは豚肉と黒豆、ソーセージなどの煮込み。豚のシッポなどと豆が浮いている。恐る恐る口に運ぶと、肉はトロトロに煮込まれており、柔らかい。味は塩と豆、わずかにニンニクの風味もある。濃厚な深みがあるけど、見た目ほどのドギツサはなく、豆の風味が勝ってむしろ優しい。そう、味付け自体は優しいのだ。
美味しいのは美味しい。しかし食べても食べても全然減らない!? 妻も一口食べて「美味しい」と言った後、二口三口食べて手をつけない。訊いてみると「一口でお腹がいっぱいになった」と言う。私より大食漢の妻が弱音を吐くとは珍しい。
肉も入っているのだけど、どうやらシッポやら皮付近の肉のため、全体が脂でコッテリしている。そこにモサモサとした豆が組み合わさることで、すぐに膨満感がやってくるのだ。妻は「これは料理ではない、脂だ」と暴言を吐く始末……(笑)。
これは自分が何とかせねばと食べ進めていくが、やはり食べても食べても減らない。
一方の牛イチボステーキは素直にウマい。イチボはモモ外側の肉で、赤身がメイン。旨味のある肉と、酸味のあるソースが絡んで、ガンガン食べられる。
妙に納得、ブラジルならではの食があの文化をつくっているのだ!?
ほぼ牛イチボを妻が担当し、私はひたすらにフェイジョアーダ! フェイジョアーダ! ……頑張ったのだけど完食はできなかった(スミマセン)。
店を後にして「“ブラジル”って味がした」と妻。「こういうのを食べているからこそ、ラテンでパワフルなんじゃないの?」と続ける。
確かに、食べ物は人の根幹をつくるモノ。ハイカロリーでハイテンション(?)な食べ物を幼少から口にしているから、陽気で濃いブラジルの文化ができ上がったのではないか。
食は当然、体に影響する。そして、体は思考や嗜好にも影響するはずだ。私はブラジルにそこまで詳しいわけではないけど、日本とブラジルの文化は大きく違う。アッサリした日本食は、ブラジルの料理とまさに正反対。日本の盆踊りとブラジルのサンバカーニバルは、ソウルフードが味噌汁とフェイジョアーダという違いがあるからだ(!?)。
もちろん大ざっぱな分類であって、何でも一括りにするのはキケンだけど、いずれにせよ食文化が人間に密接に関わっているのは確かだろう。
胃もたれした腹を抱えながら、妻とそんなことを話した。久喜市で食べた葛アイスやまんじゅうというアッサリサッパリした食べ物が思わず恋しくなったのは、私がやはり日本人だからだろう笑。
――次回は日本では買えないモノが売っている「ハードオフ」、そして超絶スゴイ宿へ・・・・・・。乞うご期待!