四国の最西端「佐田(さだ)岬」は、日本一細長い半島として知られている「佐田岬半島」の先端にあります。全国各地、はじっこまで行ってみるのが大好きなツーリングライダーならば、一度は訪ねてみたい場所でしょう。佐田岬は景色も道も素晴らしいので、いったいどんなところなのかは近々このForRでもご紹介しますが(2022年9月を予定)、佐田岬に行く途中にも、おすすめのスポットはあるのです。今回は佐田岬ツーリングに行く際に立ち寄ってみてほしい場所として、かつて「日本一海に近い駅」と呼ばれていた下灘(しもなだ)駅をご紹介します。
ロケ地としても人気の無人駅「下灘駅」
佐田岬まで、とにかく一刻も早くたどり着きたいというのであれば、四国に渡ってからは高速道路の松山自動車道を利用するのがいいでしょう。けれども、せっかく四国まで来たんです。景色も楽しみたいし、あちこち立ち寄りたい、というのなら、愛媛県伊予市あたりから国道378号線を使って瀬戸内海(伊予灘)を眺めながら西へ進むのが得策というもの。
JR予讃線の無人駅、下灘駅は、その途中にあります。
ホームには、古びた上屋と青いベンチ。その向こうは瀬戸内海。
シンプルイズベストというか、ノスタルジックというか、「こんな光景、ホントにあるんだな」筆者はそう感じました。
なぜか心を打つ、眺め。やわらかな海風が吹き渡ります。
駅と海のあいだには、今は片側1車線の国道が通っていますが、この道は海岸を埋め立てて作られたものだそうで、それ以前は駅と海が接していたのだとか。だから「日本一海に近い駅」と呼ばれていたんですね。
また、下灘駅は、ロケ地としても有名。青春18きっぷのポスターや、映画『男はつらいよ』シリーズの第19作にも登場しました。ベンチで眠っていた主人公の寅さんが、駅員さんから「列車が来ますよ」と声をかけられるシーンは、筆者にも記憶があります。
その他、木村拓哉さんが主人公を演じた2006年のTVドラマ『HERO 特別編』や、藤原竜也さんが主役の2017年のTVドラマ『リバース』でもロケ地に使われました。
なので下灘駅は鉄道ファンのみならず、映画・ドラマのファンにも人気。この駅に行きたい! という理由だけでわざわざやってくる方もたくさんいるのだそうです。
無人駅ですが、駅舎の中は掃除や片づけが行き届いていました。地元の方々にも愛されている証拠でしょう。駅舎の外には花も植えられていました。
ホームにあった、不思議な形のベンチ。「らぶらぶベンチ」だそうです。ふたり並んで座ると、座面の傾斜によってふたりがくっつく仕組み?
ホームにたたずんでいると、宇和島行きの列車がやってきました。カメラを手にした鉄ちゃんらしき乗客が列車からホームに飛び出してきて、嬉しそうな顔で撮影を始めます。その気持ち、共感するなあ、うんうん。
鉄道旅行を楽しんでいる撮り鉄さんも、ツーリングを楽しんでいる僕らライダーも、どこかに行きたい! という気持ちは同じですからね。
夕やけこやけラインで、次なる目的地へ!
下灘駅と海のあいだを通っている国道378号線は、とりわけ夕陽がきれいなことから「夕やけこやけライン」という愛称がつけられています。
気持ちのいいシーサイド・クルージング。伊予灘を横目に、夕やけこやけラインを西へ向かいましょう。
ちなみに走行車線の横に描かれている青い線は、サイクリストをわかりやすく誘導するための案内ラインで、ブルーラインと呼ばれるもの。愛媛県は、「しまなみ海道を中心に全県域を誰もが自転車に親しみ、誰もが自転車を楽しめる『愛媛マルゴト自転車道』を展開」中なのです。夕やけこやけラインは、愛媛県が選定した28コースのサイクリングコースの中の「伊予灘・佐田岬せとかぜ海道」でもあるのです。
鉄ちゃんも、サイクリストも、僕らライダーも、旅への想いは一緒。ともに楽しみましょうね。
次回はここから12㎞西にある、日本最古の道路可動橋(開閉橋)のお話です。橋が跳ね上がる!? 佐田岬ツーリングは、見どころたくさん! なのであります。
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