「今度の休み、バイクでどこに行こうかな。もう近場はほとんど訪ねてしまったし」そうしたお悩み、よくわかります。何年も乗っていると、当然そうなります。だったら視点を変えて、「〇〇に行く」のではなく、「〇〇をたどる」というツーリングはどうですか? 例えば、川。日本には最上川、利根川、信濃川、天竜川、紀の川など、一級河川が14000近くもあります。ご自身のお住いのエリアにも、大きな川があるはず。その川の河口から源流までを、すべてたどってみるというのはどうでしょう。これが意外と面白いのです。

河口から源流まで延々とリバーサイド・ラン

四万十川

 高知県を流れる四万十(しまんと)川を、筆者は何度か旅したことがあります。全長、約200㎞のリバーサイド・ツーリングです。川沿いの道をただひたすらたどるのですから、地図もほとんど見なくて済みます。
 源流から河口までをたどるのか。逆に河口から源流までをたどるのか。これは悩ましいところ。川の流れと一緒に下っていくと、上流部では細く清らかな渓流だった川が、中流域ではいくつもの支流を集めながら徐々に太くなっていき、やがて堂々たる流れとなって河口へと達する。順を追ってたどれます。
 ただし残念ながら、川が汚れていく様子も見ることになります。上流部では美しかった川の流れが、河口へ近づくにつれ、どんどん濁っていくのです。
 それとは逆に河口をスタート地点とし、源流をゴール地点にさかのぼっていくと、川の流れは清らかになっていくんですね。
 こっちのほうが、眺めていて清々しい。気持ちまで澄んでくるような感覚でした。
 なので、川をたどるなら、下流から上流をめざすことをお勧めする次第。
 国道も県道も、関係ありません。とにかく川の近くに通っている道を、ひたすらさかのぼっていけばOK。

四万十川

 四万十川の場合、河口は高知県四万十市にあります。上のMAPでは国道441号線、国道381号線をたどっていくように赤い線で記していますが、途中途中で、より川の近くを走ることができる県道340号線や、県道19号線を使うことになります。
 最終的には県道378号線に出て、高知県高岡郡津野町の不入山(いらずやま)に到着すれば、そこが四万十川の源流。水が湧き出す源流点へは、山中の細い登山道を25分ほど歩かなければなりません。
 源流点まで行く、行かないは、お好みで。県道378号線までたどった時点で、すでに四万十川は大河ではなく澄み切った細い流れ。源流の水はすくって飲めそうなぐらいに清らかです。川というのは、どのようにして生まれ、どう成長し、どんな経路で海へと至るのか。それをつぶさに見られただけでも、リバーサイド全走破のツーリングは大満足の結果となるはず。

 

なぜ「日本最後の清流」なのか?

 四万十川は、全長196km。四国最長の川です。本流に大規模なダムが建設されておらず、上流部に大きな街などがないので下水の流れ込みが少なく、水質が保たれています。
 川がきれいですから、古くから川漁も盛ん。アユやテナガエビ、天然ウナギなどを、火振り漁や柴漬け漁などの伝統漁法で今なお獲っています。川漁を生活の糧にできるなんて、なかなかのものです。
 川沿いには田畑が広がり、自然と調和しながら生きる人々の暮らしがあり、そうしたことも含め、四万十川は「日本最後の清流」と呼ばれるようになりました(筆者の記憶では、1980年代の中頃あたりから)。
 四万十川の語源が、アイヌ語の「シ・マムタ」(はなはだ美しい、という意味)から来ているという説もあります。
 いずれにせよ四万十川は、この地域の偉大なシンボル。そんな川を眺めながらのリバーサイド・ツーリングは、面白くないはずがありません。

四万十川の代表的景観でもある「沈下橋」

 自然と調和しながら生きる、という意味では、沈下橋(ちんかばし)もそうです。

四万十川

 欄干のない、鉄筋コンクリート製のシンプルな構造は、台風などによる川の増水で橋が壊されないようにするためのもの。
 欄干があれば、濁流に橋が飲み込まれた際に流木などが激突したり、引っかかったりしますが、欄干がないため流木をやり過ごすことができます。
 荒ぶる自然と戦うのではなく、やり過ごす。これも川と生きてきた人々の、知恵と文化なのでしょう。
 四万十川流域には本流、支流を合わせて60以上の沈下橋が架けられているそうです。
 写真の沈下橋はそのうちのひとつ、岩間大橋(岩間沈下橋)。よくポスターやテレビに登場するのが、この沈下橋です。昭和41年に建設されたもので、全長は120m、幅員は3.5m。

 

バイクで沈下橋を渡ってみると

四万十川

 怖くないわけがない(笑)。
 対向車とすれ違うのは無理そう。向こうからクルマが来ていないことを確認してから渡らないといけませんね。
 沈下橋は、地元の方々の生活のためのもの。地元の観光協会によれば、行楽のクルマで混雑する観光シーズンは「車両の横断はお控えいただけると幸いです」とのこと。四万十川ツーリングは、GWやお盆休みなどのハイシーズンを避けるのが良さそうです。
 ではまた次回、いい旅を。

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