ライダーの聖地「ラピュタの道」の現在と復興の難しさ

熊本県・阿蘇を代表する絶景スポットだったミルクロード(県道339号線)の「ラピュタの道」は2016年4月に発生した熊本地震(最大震度7)で31か所が崩落し、以降、立ち入り禁止の状態が続いている。

阿蘇カルデラを見下ろすミルクロード沿いの絶景スポット「ラピュタの道」の往時の姿

 

道路の復旧には100億円以上が必要とされ、激甚災害指定を受けて国から補助があったとしても自治体としてはまだ数十億円を負担することになり、工法・技術的な難しさもあって、阿蘇市では復興に目途がつかない状況が続いている。

現在のラピュタの道は、崩落部は岩盤や地盤が露出した状態であり、アスファルト上にも雑草が生い茂るなど荒れた状態。再び大きな地震が起こればさらなる崩落を起こし地形の維持すら難しくなる可能性もある。

「道の駅 阿蘇 ASO田園空間博物館」サイト/コルナゴ部長レポート”ラピュタの道復活の第一歩”ページより写真引用

ラピュタの道(阿蘇市道狩尾幹線・延長5.8km)はもともとは放牧のための牛や資材を運ぶための道だが、サイクリストやライダーなど観光客が訪れることで“聖地”として有名になった。広くクラウドファンディングなどを行えば、そこそこの資金は集まるのではないかとも思えるが、いかんせん100億円ではその範疇を超えており、国が動かない限り復興は難しいだろう。

外輪山の尾根に延びるミルクロードからの絶景も素晴らしい

高岳の支尾根から阿蘇カルデラを見下ろす「仙酔峡道路」

仙酔峡に自生するミヤマキリシマは5月に咲き誇る

 

ラピュタの道は阿蘇カルデラを見下ろし、その先の阿蘇五岳を遠望できる絶景が魅力だった。外輪山から空に突き出たような枝尾根は眼下に雲海が出ると、まさしく“天空の城”のように見え、さらにはその突端に道が延びていたからサイクリストやライダーにとって絶景のツーリングロードとして人気が沸騰した。

前述したように、残念ながらラピュタの道はしばらくは復興の目途さえ立たないと思われるが、阿蘇カルデラを見下ろせる場所は他にもたくさんある。今回はそのうちのひとつ、“天空の城”を思わせることも可能なのでは?というラピュタの後継者的道路・スポットを紹介したい。

仙酔峡道路から望む溶岩流のうねりと阿蘇カルデラ

 

それが、阿蘇中岳と高岳の北麓に伸びている渓谷「仙酔峡(せんすいきょう)」だ。溶岩流がつくり出した渓谷に約5万本のミヤマキリシマが自生し、咲き誇る5月には多くの観光客が訪れるほか、季節を問わず登山客が訪れている。

阿蘇カルデラから仙酔峡に向かうには仙酔峡道路の一本道。終着点には広大な駐車場とインフォメーションセンターがあり、その少し手前には真っ白な仏舎利塔が建っているので、麓からでも位置が確認しやすい。

阿蘇カルデラから見上げる仙酔峡。白い仏舎利塔が目立つので位置がわかりやすい

 

仙酔峡道路は溶岩流で形成された荒々しい山肌を上っていく。無数にうねる緑の渓谷はこれだけでも見る価値のある絶景だが、終着点のほど近く、標高800mほどのところにあるヘアピンカーブの景色が「ラピュタっぽい」のだ。

ガスが出ていなければカルデラをはさんだ外輪山まで見えるのだが…

 

仙酔峡道路が終わろうという時に少し急激に標高を上げるためにヘアピンカーブが設けられたのだろう

 

眼下にはカルデラ上の街並みが広がっている。道幅はクルマ2台が離合できる程度の広さがある

 

仏舎利塔から眺めるとヘアピンカーブが空に突き出しているように見える!

 

荒々しい阿蘇の山肌を間近に体験できる道路だ

 

終着点には自動販売機やトイレもあるので安心

仙酔峡道路の終着点には登山者向けの広大な駐車場がある

 

さて、仙酔峡道路の終点は広い駐車場だ。登山者向けの仙酔峡インフォメーションセンターでは登山ルートの案内掲示のほか自動販売機も設置されていてありがたい。また、立派なトイレもあるのでツーリングの休憩スポットとしてもオススメできる。

登山道のスタート地点。造りはとても立派で、案内掲示も詳細だ

 

仙酔峡インフォメーションセンターの外観。センターが閉まっていても自動販売機やトイレは使えるのでご安心を

 

観光スポットや絶景スポットが居並ぶ阿蘇の中では少し穴場的なスポットになるが、ハイシーズンの週末は登山者のクルマで駐車場がいっぱいになる。今回は秋に訪れたが、次回はぜひミヤマキリシマの季節、5月に訪れたい。

【ご注意】ラピュタの道にも苦情やクレームがあった

取材当日はガスが多かったけど仏舎利塔の上にうっすらと虹が出ていた!

 

取材時はガスが多くて残念だったが、ヘアピンカーブの先の絶景を紹介した。仙酔峡道路も熊本地震で崩落するなどしたが、現在は復興済み。ぜひ多くのツーリングライダーに訪れてほしいスポットだ。

ただし、ラピュタの道が聖地ともてはやされる過程でそうだったように、カーブの中にバイクを停めたり早朝に爆音を響かせて訪れたりといった危険・迷惑行為だけはしないよう気をつけてほしい。

 

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