公道で役立つ様々な技術を学べる「那須MSLライディングスクール」もいよいよ後半戦。
1時間の昼休みを挟んで、13時から午後の部がスタートだ。目標地点に前輪を止める「目標制動」のほか、「回避制動」を学んだ後はコースの半分を使って、効率的な「ライン取り」を学習した!

目標地点にピタリ止まる、ブレーキングの正確な速度感と距離感を養う

午後の部でまず体験したのは、40km/hで走行し、指定された地点に前輪を合わせて止める「目標制動」。午前の練習では、主にリアブレーキを使い「曲がるため」の制動力コントロールを学習した。ここでは、しっかり「止まるため」のフロントブレーキをメインに練習するのだ。

開始前に「ブレーキングが得意という人は挙手してください」と参加者に呼びかける中井さん。誰も手を挙げない。
「皆さんがブレーキングが苦手なのは当然です。バイクの構造上、スロットルを開けて駆動力をかけている時は安定しますが、ブレーキをかけている時は不安定になるからです。それにブレーキは練習する機会も少ないですからね」

しっかり止まるには前後ブレーキの配分が大事。フロントブレーキをメインに、リアを補助的に使う。
また、一度ブレーキングを始めたら「一定の効力をキープする」ことがポイントだ。ブレーキは速度が高いほど効きにくく、速度が低くなるほど強く効く特性がある。

こうした物理法則を体感して、自分のものにできれば、自由に減速&狙った場所に停止ができる。自分も、途中からレバーを握り足したり、弱めたりしてギクシャクした経験は多いが、一定の効力をキープすればスムーズにブレーキングできそうだ。

↑スタート地点から40km/hまで加速。ギアは1~2速だとエンジンブレーキがかかって止まりやすくなるので、敢えて3速ぐらいまで上げる。

 

↑ブレーキレバー&ペダルは一定で入力。既にレクチャーを受けたとおりブレーキング時は下半身ホールドで上体を起こし、腕をフリーにする。

 

↑パイロンの位置に前輪の先端が合うように停止する。

 

パイロンの位置を見ながら、「速度感、距離感、操作感」という3つの感覚を正確にアジャストしていくカンジ。パイロンをオーバーしそうになったからと、途中で強くレバーを握るとタイヤがロックする場合があるので、行きすぎてしまってもOKだ。その場合、次はもう少し早めにブレーキングするよう意識すればいい。

「手前で止まるのはまだしも、止まるポイントをオーバーした人はブレーキのタイミングが遅れています。そういう人は、コーナーに入る際、オーバーぺースになったり、強くブレーキングしてタイヤがロックするケースがあります。練習の結果を見て注意してください」と中井さん。

私、この種目は意外にも得意(?)だったようで、3回目にはほぼピッタリの位置に停止できた。

40km/hに慣れたら、速度を50km/hに上げて同じく目標制動。10km/h上がっただけなのに、やや手前で止まってしまう。が、これも間もなくアジャストできた。

突然振られた旗と「逆」側に回避する理由は?

続いては「回避制動」だ。これは、走行中に旗の振られた方向と「逆」側に回避して停車するというもの。反射的に旗が振られた方向に行くのはやさしいが、「逆」に向かうのがミソだ。

考えてみてほしい。公道では飛び出してきた人やクルマの「逆」に回避する必要がある。回避制動は、その練習になるのだ。

ちなみに朝、みんなで準備運動をした際、ジャンケンもやった。講師が出したグーチョキパーに対し、わざと負ける「脳トレ」のようなジャンケンをしたのだけど、これも回避制動の考え方に通じていたとのこと。実に綿密なカリキュラムだ。

↑40km/hまで速度を上げて走行。コース中央に立つインストラクターが右か左の旗を上げるのだけど、ギリギリまでどちらかはわからない!

 

↑旗を上げた方と逆に回避して停止。回避しながらのブレーキ操作は転倒の元なので、避けてから止まる。


やってみると……意外と戸惑う! やはり旗が上がった方に曲がろうとするクセがあるのだ。でも、何とかクリアできたので一安心。自身のこうした習性がわかったのは大きな収穫だと思う。

「大きく入って小さく回る」は峠道でも有効!

お次は、大詰めのライン取りとコース走行だ。

最初にインストラクターの2人がデモ走行を披露してくれた。詳細は動画を見て欲しいのだけど、悪い例は、イン側に寄せ始める「アプローチポイント」が手前なので、早くインについてしまい、コーナーの立ち上がりでふくらんでオーバーランしている。
もし、これが公道だったら反対車線に飛び出しており、対向車が来ていたらあわや正面衝突! という場面だ。

一方、良い例では、アプローチポイントを奥にしてコーナーへ大きく入り、小さく回るラインを取っている。おかげでコーナーの立ち上がりで車体が起き、スロットルを大きく開けて直線的に加速できている。
悪い例は先行していたのに、結果的には良い例の方が速いのだ。

また、良い例はバイクが起きている時間が長いため、雨などの滑りやすい路面でも安心感が高い。さらに、コーナー出口でイン側にもアウト側にも好きな場所に向かえるため、危険回避の余裕も十分。ワインディングも安心して走れるのだ。

※後日開催された「那須MSLライディングカレッジ」の模様だが、内容は同様だ(撮影:山内潤也)。

↑青パイロン=アプローチポイントの手前からA(悪い例)は既にイン側に寄り、B(良い例)はアプローチポイントから倒し込みを開始。

 

↑Aは最もインに寄るクリッピングポイントがコーナーの手前。これに対してBはクリッピングをコーナーの奥に取った。Aは車体が外側を向き、アウト側へ大きくはらんでいる。

 

↑コーナー立ち上がりの場面。先行していたAはダラダラとバンクしたまま。Bは直線的に立ち上がることができ、結果的にAを逆転している。


これは、まさに午前中の8の字やスラロームでやった「大きく入って小さく回る」走り方と同じ! この走りは速い上に安全なので、サーキットはもちろん、公道における実際のコーナリングでも有効なのだ。

次回は、ついに完結編。ライン取りの実践とお待ちかねのフルコース走行、そして中井直道講師のインタビューをお届けします!

これまでのおさらいはコチラ!

 全ての基礎、ライポジは直立→ジワジワで作れ!【ライテクUP 講座1】

大きく入って小さく回る。これぞ走りの極意!【ライテクUP講座 2】

 

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