「お堅い」だけではない五刀流プレイヤー

大きく分けて5つある「骨」の役割。

多くの方が広く理解しているのは、①「身体を支える」と、②「脳や内臓などを保護する」でしょうか。

骨格のイメージイラスト

●背骨はまさに「バックボーン」として内臓とともに人間のメインハーネスとも呼べる中枢神経〜末梢神経を内包して保護。タライのような骨盤は消化&生殖に関する大切な臓器をガード!

 

頭蓋骨はヘルメットのように脳を包んでおりますし、背骨から伸びる肋骨は胸にある胸骨まで鳥かごのような形状となっていることで、大切な肺や心臓などの内臓を外部の衝撃から守っています。

蛇足ながらバイクに乗るときは胸部プロテクターも装着し、肋骨の内臓防御能力をサポートいたしましょう。

胸部プロテクターイメージカット

●多彩な胸部プロテクターを開発しているアールエスタイチ。写真はジャケットの着脱しやすさと確かな胸部の防護を両立したTRV067 | TECCELLセパレート チェストプロテクター(ボタンタイプ)価格:1万4080円(税込)

 

③「運動の起点」は意外と盲点だった人も多いはず。運動=筋肉というイメージが先行していますけれど、当然ながら骨がなければ立ち上がることすらできません。

軟体動物の代表クリオネ

●軟体動物の代表としてよく知られる「流氷の天使」ことクリオネ。愛らしい姿ですがエサを見つけると頭(に見える)部分を“寄生獣”よろしく花のように分割展開させ、その触手でパックンチョと捕食! 外殻も背骨も持たない生物は生存戦略は変わったものが多いような……

 

血液を造り、その中に含む成分まで調整

そして、④「血液の工場」、⑤「カルシウムの銀行」に関しては認識してない人も相当に多いのではないかと勝手に推察しております。少なくとも筆者にとっては直近、生理学&解剖学を学び直した結果、非常に耳新しく聞こえた内容でした。え? そうだったの?と……(忘れていただけ!?)。

愛車GSF1200Sの鉄パイプフレームからムニムニと継続的に高性能オイルや万能グリスが精製されて出てくるようなものかな?と考えてしまうと、嬉しいやら気持ち悪いやら(笑)。

GSF1200S広報写真

●嗚呼、なんて美しいんだスズキGSF1200S。油冷エンジンを取り囲む骨格たる鋼管ダブルクレードルフレームの繊細なる形状もたまりません。でも、そこから人体の骨のように大切な液体や成分がしたたってきたら……やっぱりイヤかな

 

さて、冗談はさておき、我々の身体の中にある骨は想像以上に働き者です。

①②③の解説は不要でしょうから、④の「血液の工場」から述べて行くと、以前紹介した【血液】の回でも軽く触れましたとおり、骨の中心部には「骨髄」という組織があり、そこにある造血幹細胞にて血液の生産がフルパワーで行われているのです。

骨で作られる血液イラスト

●大切な部分なので、以前紹介したイラストを再掲。つまりは血液の工場である骨がおかしくなってしまうと細胞へ活動エネルギーである酸素が適切に送られなくなり、病原体をやっつける免疫システムが立ちゆかなくなり、ケガしても血が止まりにくくなるなどの恐ろしい症状が現れてきて……怖いDEATH

 

例えば健康な人は毎日約1%弱の赤血球が新しいものに置き換えられているのですが、それに対応するため骨髄は約2000億個の赤血球を日々産生しているとか。……2000億個で、たった約1%弱ですって!? 体細胞は37兆個とか1立方ミリメートルの中に赤血球が500万個入っているとか……。本当に体内というのは想像を絶する数字のオンパレードです。

「即調整だッ!」半沢直樹もビックリな劇的展開

そして⑤は……来ました、「カルシウムの銀行」。

骨はカルシウムの塊とも言える存在ですが、そのカルシウム……原子番号20番、元素記号Ca、融点は842℃で沸点は1484℃。ミネラル(無機質)として非常に有名な栄養素は、生命を維持するため非常に重要な役割を担っているのです。

具体的には筋肉の収縮や神経の電気信号伝達、血液の凝固、正常な心拍リズムの維持、多様な酵素が正しく機能することなどなど。とにかくカルシウムがなければ筋肉も消化器も脳も心臓も全てがパーということ。つまりは死んでしまうのDEATH。 

だからこそ、血液の中には適切な濃度のカルシウムが常に含まれていなくてはならないものの、正常とされる範囲はとてもピンポイントで狭いというのがシビれるところ。

排気デバイスがない2ストロークバイクのパワーバンドか! とのツッコミも入れたくなってしまいます。

RZ250カタログ

●いやもう何もかもがカッコいいヤマハRZ250。水冷化はされたものの、YPVSはまだ付いていない1980年デビューのバイク。狭いパワーバンドを維持しつつ、気持ちよく走らせることができれば峠のヒーローになれました。さすがにもう見なくなってきたのは非常に寂しいですね

 

バイクならそこを外れてもボコついたり力がなくなったりするだけですが、体の血中カルシウム濃度は最適ゾーンから少しでも外れてしまうとすぐに死の足音が近づいてくるのですからたまったものではありません。

ゆえにカルシウム濃度は体内でとても敏感にチェックされており、薄くなったとたんに骨を溶かして血中へカルシウムを放出し、出し過ぎて濃くなりすぎるやいなやせっせと回収して骨に戻したりと大騒ぎ……。

骨を丈夫にするサイクルイラスト

●骨を強くするには適切な運動とカルシウムの摂取が必要。さらに日光を浴びると皮膚でカルシウムの吸収率を高めるビタミンDが作られるので効果も増大! 本当にさまざまな内臓が連動していることにも注目です。なお、頑丈な骨を作ったら100km/hで地面に叩きつけられても平気というわけではありませんので、安全運転の励行もお忘れなく

 

本当の銀行なら手数料だけでばく大なものになりそうです(笑)。

骨は数年単位ですべてが入れ替わっていく!

てんやわんやの窓口業務を横目に見つつ、大掛かりな建て替え工事も着実に行っているところが“BORN BANK”の面白いところ。

何も変化していなさそうな骨でも数ヶ月から数年というロングスパンで入れ替え作業が行われているのです。これが骨のリモデリング(骨の代謝)。

主役は「破骨(はこつ)細胞」と「骨芽(こつが)細胞」という2つの細胞で、破骨細胞が古くなった骨の表面に付着して骨を溶かし、骨芽細胞がタンパク質、カルシウム、リンといった骨の成分を分泌して新しい骨を形成していくのです。

この2つの細胞がうまく協調して作業していれば問題はないのですけれど、運動不足やカルシウム不足、さらにホルモンバランスが崩れたりすると骨芽細胞の再生能力以上に破骨細胞が骨を壊しすぎてしまい、結果として骨自体がスカスカになってしまうことも……。これが皆さんよくご存じの「骨粗しょう症」という病気ですね。

骨代謝のイラスト

●女性ホルモンの分泌が減ると骨密度が低下しがちになるため、骨粗しょう症は女性の患者が多いのですが、加齢をきっかけにする違う原因でも骨はもろくなっていきます。男性だからといって安心せず、骨を健やかにする生活を続けていきましょう

 

バイクで骨身を削るのは避けましょう

あと、ライダーなら体験する可能性も高いのが「骨折」。

正直言ってライディング中に不注意や事故で転倒を喫してしまうと、たとえ速度は低くても骨折してしまう可能性があります。

筆者もほんの数㎞/hで握りゴケをしてしまい、GSFと地面の間に挟まれた左足の腓骨を折った経験が……。軽傷の部類だったにもかかわらず、痛いわ松葉杖は不便だわで半年以上苦しみました。

バイクのフレームも損傷が大きければ全損扱いとなってしまいます。

フレームイメージ写真

●アルミ製ツインスパーフレームを採用する現行KATANA。スイングアームには2016年式GSX-R1000と同じパーツを使用することで卓越した操縦安定性を実現している。フレームでバイクを語り出したら、もう後戻りできない領域にいることを自覚したほうがいいです!?

バイクライフの“骨折り損”だけは絶対に避けていきましょう。(骨編:おわり)

 

骨に効くツボ太谿

●「太谿(たいけい)」は内くるぶしとアキレス腱との間にあるツボ。骨と深い関係にある足の少陰腎経へ属する名穴で、免疫力を高めるとともに婦人科疾患にも効果的。ほとんどの人は押してみると痛みを感じるはずですので、まずはやさしく揉んで、セルフ灸なども試してみてください

 

> 120歳まで乗り続けるために〈第18話〉「体のメインフレーム:骨(前編)

> 120歳まで乗り続けるために〈第20話〉「体のショックユニット:筋肉(前編)」

> 120歳まで乗り続けるために〈第21話〉「体のショックユニット:筋肉(後編)」

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