サイドカー最高か!【その1】はコチラ

いよいよ始まった「サイドカーライディングスクール」での実走行。左右で(ほぼ)対称なバイクのどちらかに、しっかりとした構造と重量を持つ“側車”を取り付けるわけですから、何かしらの変化が起きることは簡単に想像できます。が! それをいざ実際に体験してみるとなかなかのインパクト!! 感嘆符が途切れない濃厚な時間が続いていきます……。

サイドカー教本

●サイドカーライディングスクールの参加者にはもれなく「サイドカー運転の手引き」という小冊子が配られます。講習を受ける運転の方法だけでなく、サイドカーに関する諸注意や関連する法律、ちょっとしたアドバイスに至るまで、こと細かく有用な情報が詰まった内容で筆者も感服いたしました。サイドカーオーナー必携の書と言えますね!

ナメたらアカン! バイク歴36年の自信が瓦解する瞬間

基礎練習がスタートし、筆者が最初に運転したのはヒョースンのGV250サイドカー

ヒョースンGV250サイドカー

●正式名称は「ヒョースン GV250イオタサイドカー」。HYOSUNG社製のクルーザーバイクにサクマエンジニアリングさんの側車(イオタ)を取り付けた仕様で、全幅145㎝というコンパクトさがとても魅力的なのです!

ヒョースンリヤビュー

●乗車定員は3人で側車の後方部にはトランクスペースがあり、そのフタの上には便利なキャリアが標準装備されています

 

見た目も可愛いコンパクトな250㏄モデルを使い、操縦イロハのイとして発進&加速を行います。

当然ながら操作ロジックはバイクと同一ですので、エンジンを掛け、ニュートラルからクラッチを切ってギヤをローに入れ、スロットルを少し吹かしながらクラッチを締結していけば問題なく前へ進む……はずでした

が! プスン、プスン、と盛大に何度もエンストを喫してしまう体たらく。

しょぼいながらもサイドカーならではの洗礼、ファーストインパクト?を食らってしまいました。ウソォ……。

走行中

●エンストを繰り返し、座学であれほどインストラクター諸氏が口を酸っぱくして述べていた諸注意がスポポポポ〜ンと頭から抜け落ちていたころの筆者。嫌な汗が華厳ノ滝のようにウエア内を流れ落ちていってましたね

 

「側車が付いている分、車両の総重量は重たく(このタイプでも+50㎏ほど)なっていますので、一般的なバイクを運転する感覚より少し高めのエンジン回転数で、クラッチもゆっくりつないでください」とインストラクター。

考えてみれば当たり前のことですね。さらには0.1トンの我が身も乗っかっているのですから(涙)。

この動きってナンダ? 真っ直ぐ加減速したいだけなのに

改めて細心の注意を払いつつジワリジワリと左レバーを操作すると、ようやくスムーズにサイドカーが動き始めました。しかし、セカンドインパクトはその直後に訪れたのです。

「おおおおおおっ? 加速すると車両が勝手に左へ左へズレていくぞ!?」

座学で教わっていたことを慌てて思い出し、切れていこうとするハンドルの左グリップを手のひらで軽く押し、腕をつっかえ棒のようにして挙動に対抗していきます。

つっかえ棒

●こちらは座学でのカット。極端な例ではありますが、このくらいの意識を持って発進時、左側に切れ込もうとするハンドルを左手とつっかえ棒のようにした左腕で支えるとスムーズな発進加速が可能になるのです

 

アッという間に練習コースの端っこまできたので減速しようとブレーキをかけると、今度は車両が右へ右へとズレていくではありませんか!!! 

まさかのポルターガイスト現象ッッ!?

ポルターガイスト

●ポルターガイストとはドイツ語で「騒霊」の意味で、通常では説明不能な物理的現象が繰り返し起こること……ちょいとココで使うには違うような気もしますが、まぁ、いいか (^0^)

 

……ではなく、そう、これが非常に名高い(?)“サイドカーの特性”というヤツなのでした。

呪いでも魔法でもない単純明快な物理法則が、初心者なら必ず面食らう不思議な挙動を生み出しているのです。

タネを明かせば簡単そのもの。

本車、つまりベースとなっているバイクの後輪が回転して前へ進もうとしても、駆動力の働かない側車(カー)側は置いてきぼり状態に。

左カーの挙動 加速時

●小冊子「サイドカー運転の手引き」より転載。高校物理で教わった(はずの)「慣性の法則(運動の第一法則)」を思い出してくださいね〜。“止まっている物体に力を加えなければ、そのまま止まり続ける。動き続けている物体に力を加えなければ、そのまま動き続ける”というアレです

 

締結されているフレームやロッドを介して推進力は本車から側車へと伝わっていきますが、側車が本車と同じ速度になるまでは、まぁ、ず~っとブレーキの役割をしているというわけです。

すると、減速時には……。気付いてしまいましたね? 

そう、お察しのとおり、減速時はこの逆の現象が起こるということ! 

サイドカーの挙動 静止編

●小冊子「サイドカー運転の手引き」より転載。まさにコレなのですよ。側車に人や荷物を乗せて重たくなればなるほど“動き出しにくく止まりづらい”という慣性の法則は強化されていくのですから大変ですね。物理法則と実際の挙動が直結していることを理屈ではなく体で経験できる“サイドカーの学び場”は、本当に必要です……

 

リアルなブレーキによる制動はもちろん、スロットルを戻したときに発生するエンジンブレーキでも、本車が減速しようとしているのにカー側は“慣性の法則”に従って前へ進もうとするため、グイグイと本車へ圧をかけまくり(笑)、結果的に車両が右へ右へと行こうとするのです。

ちなみにこの動きは左カー、つまり側車(カー)が本車(バイク)の左側に付いている場合でのもの。

反対となる“右カー”では起きる挙動も反対ということですね。

右カーのサイドカー

●欧米メーカー製のサイドカーに多く見られる右側に側車が付いた車両は、単なる挙動の話なら「左カーとは逆」で済むのですけれど、左側通行である日本の公道を走るときには注意が必要です。右カー車は本車がうっかりセンターラインに近づいてしまうと側車が対向車線にはみ出しかねません。さらに、前走車を追い抜きや追い越しをするときも右カー車は左カー車より死角が大きいことを忘れずに

道路の傾斜

●小冊子「サイドカー運転の手引き」より転載。あと、日本の道路の多くは降雨時の排水性を考えて外側(左側)が低く傾斜していることがほとんどなので、右カー車は側車側が浮きやすくなる傾向もあるのです(イラスト内は左カー車ですね)。そのあたりもご注意のほどを……

対処方法はすでに長い年月こなれてきたもの……

「え~!? 何だよソレ気持ち悪い。勝手に起こる動きってイヤだし、怖いんだけれど……」

確かにこのサイドカースクールを経験した人の何%かは、かくいう挙動などが趣向に合わず「二度と乗らない!」となってしまうのだとか(インストラクター談)。

アンチなイラスト

●何事も体験してみなければ分かりません。実際にサイドカーを走らせてみて、アンチ派になるのなら致し方なし。ただ、最初は印象最悪でもコツをつかんだとたん「サイドカー最高!」になった人もいたのだとか(笑)

 

しかし、それはそれで自分に合う、合わないをしっかり確認できたとも言えるわけで、スクールに参加してみる意味は確実にあるのです。

さてさて、筆者も面食らったサイドカー独特の挙動ですが、それを抑え込むための方法はここまで何度も書いてきたとおり確立されています。

つまり、①しっかりニーグリップをして ②ヒジもワキに付けて ③グリップは握らず両方の手のひらでハンドルを前方に押す感覚で……。

これらを意識して確実に励行するだけで、発進からスロットルによる加減速までおっかなびっくり感は激減

そしてブレーキによる制動もリア側をメインとして早め早めに操作することで、普段のバイク感覚でフロントブレーキを先行させてしまっていたときより、段違いの安定感を得ることができるようになったのです。

ちなみにサイドカーは本車のリヤブレーキと側車側ブレーキとが連動しており、運転中の意識としてはフロント2割にリア8割でブレーキを掛けるのがベターとのこと。

W400サイドカー

●写真はカワサキW400サイドカーですが、側車側のホイール中央にドラムブレーキがちゃんとあることが分かりますね。本車側リヤブレーキレバーに加えられた力をどのくらいの比率で側車側ブレーキに伝えるかなどにも、深いノウハウがあるとか

 

バイクとサイドカーでは守るべき運転の“キホン”が全く異なるのですね。

そのことを忘れずに反復練習をしていたら、面白さがドンドン増していきました。

まぁ、直後のコーナリング練習でサードインパクトを食らうのですけれど……。

そちらについてはまた次回に!   (つづく)

【参加者インタビュー②】村井清孝さん 66歳

村井さん走り

●参加は2回目だという村井さん。「実は70歳にになったらサイドカーを買う予定。ホントは今乗っているホンダCB1100に側車を取り付けたいのですけれど、予算的に厳しいものがあるので中古車購入も含めて検討中です」とのこと。ゴールドウイングサイドカーの良さも分かるけれど、少々大きすぎるのがね……とも。「かといって250や400じゃ小さすぎるかな。ベストはCB750くらいのモデルですね」

村井さん顔

●すでにネットなどでサイドカーの中古車を熱心にチェックされているとか。機が熟したころ、レッドバロンの在庫も探してみてくださいね!

 

【参加者インタビュー③】石山貴由希さん 42歳

石山走り

●「すでに4回以上このイベントには参加しているのですけど、今回も来て大正解でした!」とは千葉県から来場された石山さん。「左カーや右カー、排気量も250㏄から1800㏄までバラエティに富んだ車種を格安で乗り比べられるのですから、申し込まない理由がない! 特に車幅の違いには参加するたびハッとさせられますね。将来乗るならゴールドウイングかヒョースンかな。すでにカスタム全開の中古車を探そうと思っています!」

石山さん顔

●現在の愛車はレッドバロンで購入したホンダNSR250RとスズキRGV-Γ250SP(ラッキーストライク仕様)という石山さん。「2台とも今はめちゃくちゃ値上がってますね。驚くしかありません……」

 

【サイドカー最高か!】その3はコチラ

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