いよいよ始まった「サイドカーライディングスクール」での実走行。左右で(ほぼ)対称なバイクのどちらかに、しっかりとした構造と重量を持つ“側車”を取り付けるわけですから、何かしらの変化が起きることは簡単に想像できます。が! それをいざ実際に体験してみるとなかなかのインパクト!! 感嘆符が途切れない濃厚な時間が続いていきます……。
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ナメたらアカン! バイク歴36年の自信が瓦解する瞬間
基礎練習がスタートし、筆者が最初に運転したのはヒョースンのGV250サイドカー。
見た目も可愛いコンパクトな250㏄モデルを使い、操縦イロハのイとして発進&加速を行います。
当然ながら操作ロジックはバイクと同一ですので、エンジンを掛け、ニュートラルからクラッチを切ってギヤをローに入れ、スロットルを少し吹かしながらクラッチを締結していけば問題なく前へ進む……はずでした。
が! プスン、プスン、と盛大に何度もエンストを喫してしまう体たらく。
しょぼいながらもサイドカーならではの洗礼、ファーストインパクト?を食らってしまいました。ウソォ……。
「側車が付いている分、車両の総重量は重たく(このタイプでも+50㎏ほど)なっていますので、一般的なバイクを運転する感覚より少し高めのエンジン回転数で、クラッチもゆっくりつないでください」とインストラクター。
考えてみれば当たり前のことですね。さらには0.1トンの我が身も乗っかっているのですから(涙)。
この動きってナンダ? 真っ直ぐ加減速したいだけなのに
改めて細心の注意を払いつつジワリジワリと左レバーを操作すると、ようやくスムーズにサイドカーが動き始めました。しかし、セカンドインパクトはその直後に訪れたのです。
「おおおおおおっ? 加速すると車両が勝手に左へ左へズレていくぞ!?」
座学で教わっていたことを慌てて思い出し、切れていこうとするハンドルの左グリップを手のひらで軽く押し、腕をつっかえ棒のようにして挙動に対抗していきます。
アッという間に練習コースの端っこまできたので減速しようとブレーキをかけると、今度は車両が右へ右へとズレていくではありませんか!!!
まさかのポルターガイスト現象ッッ!?
……ではなく、そう、これが非常に名高い(?)“サイドカーの特性”というヤツなのでした。
呪いでも魔法でもない単純明快な物理法則が、初心者なら必ず面食らう不思議な挙動を生み出しているのです。
タネを明かせば簡単そのもの。
本車、つまりベースとなっているバイクの後輪が回転して前へ進もうとしても、駆動力の働かない側車(カー)側は置いてきぼり状態に。
締結されているフレームやロッドを介して推進力は本車から側車へと伝わっていきますが、側車が本車と同じ速度になるまでは、まぁ、ず~っとブレーキの役割をしているというわけです。
すると、減速時には……。気付いてしまいましたね?
そう、お察しのとおり、減速時はこの逆の現象が起こるということ!
リアルなブレーキによる制動はもちろん、スロットルを戻したときに発生するエンジンブレーキでも、本車が減速しようとしているのにカー側は“慣性の法則”に従って前へ進もうとするため、グイグイと本車へ圧をかけまくり(笑)、結果的に車両が右へ右へと行こうとするのです。
ちなみにこの動きは左カー、つまり側車(カー)が本車(バイク)の左側に付いている場合でのもの。
反対となる“右カー”では起きる挙動も反対ということですね。
対処方法はすでに長い年月こなれてきたもの……
「え~!? 何だよソレ気持ち悪い。勝手に起こる動きってイヤだし、怖いんだけれど……」
確かにこのサイドカースクールを経験した人の何%かは、かくいう挙動などが趣向に合わず「二度と乗らない!」となってしまうのだとか(インストラクター談)。
しかし、それはそれで自分に合う、合わないをしっかり確認できたとも言えるわけで、スクールに参加してみる意味は確実にあるのです。
さてさて、筆者も面食らったサイドカー独特の挙動ですが、それを抑え込むための方法はここまで何度も書いてきたとおり確立されています。
つまり、①しっかりニーグリップをして ②ヒジもワキに付けて ③グリップは握らず両方の手のひらでハンドルを前方に押す感覚で……。
これらを意識して確実に励行するだけで、発進からスロットルによる加減速までおっかなびっくり感は激減。
そしてブレーキによる制動もリア側をメインとして早め早めに操作することで、普段のバイク感覚でフロントブレーキを先行させてしまっていたときより、段違いの安定感を得ることができるようになったのです。
ちなみにサイドカーは本車のリヤブレーキと側車側ブレーキとが連動しており、運転中の意識としてはフロント2割にリア8割でブレーキを掛けるのがベターとのこと。
バイクとサイドカーでは守るべき運転の“キホン”が全く異なるのですね。
そのことを忘れずに反復練習をしていたら、面白さがドンドン増していきました。
まぁ、直後のコーナリング練習でサードインパクトを食らうのですけれど……。
そちらについてはまた次回に! (つづく)
【参加者インタビュー②】村井清孝さん 66歳
【参加者インタビュー③】石山貴由希さん 42歳