夏の風物詩でもありながら、ときには火災や事故などの被害をもたらす雷。ライダーにとっては予測が難しい脅威のひとつだ。突然の雷を安全にやりすごす方法を知っておこう。

大好きなバイク、知ってるつもり、乗れてるつもりでも、ミスやトラブルはつきものだ。ライダーがやらかしがちな「バイクあるあるトラブル」と、その対策を知っておこう。
バイクじゃ雷を防げない

落雷の予兆をつかむのは難しい。まずは空模様に注目しよう。(滋賀県大津市)
小林一茶の俳句にこんなものがある。
雷の ごろつく中を 行々し(かみなりの/ごろつくなかを/ぎょうぎょうし)
パワフルで巨大な雷鳴の中、鳴き騒ぐ小さな行々子(オオヨシキリ)の姿をコントラスト鮮やかに描いたユーモアあふれる作品だ。が、ライダーにとって雷は、ユーモアどころか深刻なリスク。金属の箱ともいえる四輪車なら雷を防ぐシェルターになるが、バイクは雷に対してまったく無力だ。バイクへの落雷事故も現実に起きている。
そもそも雷ってなに?
雷は積乱雲(いわゆる入道雲)の中で起きる強大な静電気。その放電でビカビカ光るのを稲妻と呼び、ゴロゴロ鳴るのを雷鳴と呼ぶ。地面との間で放電が起きるのが、事故や火災を引き起こすあの落雷の正体だ。
雷はとてつもないエネルギーをもっている。その電圧は、ときに10億V(ボルト)にも達する。家庭用コンセントの1000万倍もの高電圧だ。ライディング中に雷撃を受ければ、受傷や死亡などの深刻な事態に陥ることは誰にでも想像できるだろう。

大規模変電所に接続される「超高圧系統」と呼ばれる送電線。それでも公称電圧は27万5000Vにとどまる。(埼玉県狭山市)
避難は正しい知識が勝負!
どのタイミングで逃げる?
「ときどき空が光ってる」「ゴロゴロ音がする」「近くに雷が落ち始めた」など、音や光で雷の接近を知り、落雷に備える人は多い。だが、接近を知ってから避難を始めたのでは遅すぎることをまず知っておこう。空が光ったり、遠い雷鳴が聞こえはじめたときには、すでにそのエリアは落雷リスクにさらされている。「落雷は体感よりずっと早く起きる」と肝に銘じておきたい。
さらにバイクには、雷の感知を難しくする特有の弱点がある。走行中のバイクのエンジン音は雷鳴を聞き逃す原因になるし、路面に神経をとがらせて走っていると、上空で一瞬光る稲妻は見逃されやすい。
じゃあもうどうしようもないよね……という声が聞こえてきそうだが、それであきらめざるを得なかったのは昔の話。ネットの情報を活用すれば、早い段階でリスクを知り、備えられる。空模様が怪しいと感じたら、まず気象庁の「雷ナウキャスト」を利用しよう。雷の活動レベルを4段階に分けて地図上に示していて、これから落雷する可能性がある地域も一目でわかる。少しでも早く情報をつかみ、ただちに避難行動をとってほしい。
WEB:気象庁【雷ナウキャスト】

ミラーに映る積乱雲。発達した雲だと判断したら、すぐ雷雨に警戒を。
どこにどう逃げる?
安全な建物があれば、一刻も早く逃げ込むのが鉄則。多くの雷は短時間で通り過ぎる。道の駅やショッピングモールなどで休憩がてら買い物をしてもいいし、レストランで食事をしてもいい。レッドバロン各店舗も、ライダーの安全を最優先し、一時退避のための来店を歓迎してくれる。
問題は、周囲に安全な建物がない場合だ。山間部や林道では、避難できる建物がないのがむしろ普通。つい木の下で雨宿りしたくなるが、それは危険なので避けよう。落雷事故では、人体への直撃以上に、落雷した木などから人体へ飛び火のように放電する「側撃雷」のほうが被害件数が多いといわれている。

豪雨になれば雨宿りしたくなるが、雨がかからない場所が雷撃が来ない場所だとは限らない。(ホンダ PCX)
安全な建物がない場合は、避難の第一歩として、まずバイクから離れることがかんじんだ。ひらけた場所や高い場所にとどまってはいけない。窪地や谷すじなど、平地より低い場所に避難しよう。ただし谷すじは雨で川が増水すると危険だ。雷だけでなく水への警戒を忘れてはいけない。やむを得ず鉄塔などのかげに入る場合は、4m以上離れて側撃雷に備え、先端から45度以内の保護範囲に入って身をかがめよう。姿勢を低くするときも、寝転んだり座ったりしないこと。地面との接触部で感電するリスクが高まる。(イラスト参照)

雷が過ぎたら
雷鳴が鳴りやんだら、すぐバイクにまたがり、ツーリング再開! といきたい気持ちはわかるが、動き出すのはまだ早い。気象庁は、雷の収束後も20分程度は落雷のリスクがあるため避難を続けるようアナウンスしている。20分急げば20分早く目的地に着けるのはたしかだが、命がけで急ぐ必要はない。雷を見送ったらゆっくり身じたくを整え、先のルートを再確認し、一曲くらいは鼻歌をうたってから走り出そう。大自然の脅威の前には、それくらいの心構えがちょうどいい。
【関連記事】
NEXT→ 公開までお待ちください
←PREV バイクあるあるトラブル ⑬ どうする自転車?!
