1日に8トン以上の血液を送り出す心臓!

我々が日々愛用している人体(笑)は、約37,000,000,000,000[37兆]個の細胞で構成されています。

細胞の構造

●「生物の最も基本的な構成単位」とされる細胞(Cell)。こちらが37兆個集まってアナタの人体が構成されている……と言われても、にわかには信じられませんよね。似たような働きの細胞が集まって「組織」を作り、それが「器官」となり、骨格系、消化器官系、神経系などの「器官系」が「個体」を形作ります。「生物」の授業をぜひ思い出してください(笑)

 

そのひとつひとつが血液の運んでくれる酸素や栄養分などを取り込んで、化学変化でエネルギーを作り出し、その過程で発生した二酸化炭素や水、アンモニアなどの不要物を排出しているのです。

ポイッと捨てられた不要物を運ぶのもまた、血液の役割。水やアンモニアなどは腎臓や肝臓ほかの臓器で、バイクのオイルフィルターや三元触媒のごとく濾過されたり浄化されたり……。

最後、二酸化炭素まみれになった血液(静脈血)は心臓へ戻されたあと、肺でガス交換されて超リフレッシュ! 酸素をたっぷり含んだ血液(動脈血)に再生されて、再び身体のすみずみへと送り出されていくのです。1回約80㏄、1日で約10万回拍動する心臓ですので、8トン以上もの血液が我々の体をグルグル巡っていることになります。凄い……。

心臓のイメージイラスト

●心臓は握りこぶし大の口腔内臓器で、体のほぼ中央、右と左に分かれている肺に包まれるような形で位置しています。この大切な臓器を肋骨が取り巻いて守っていますが、ライディング時には、さらに胸部プロテクターを装備して保護したいものです

 

ちなみに、人体を巡る血管の長さは極小の毛細血管まで含めると10万㎞(地球2周半分!)とか。そしてさらに、心臓から出た血液が、そんな長い長い距離を巡って再び帰ってくる時間はたったの約50秒間とも……。

心臓について勉強中、途方もない数値が出てくるたび「ホントかいな!?」と筆者は叫んでいましたが、上記内容は世界の研究者も認める事実らしく人体の不思議さには驚かされるばかりです。そんな壮大すぎる激務を当の本人に全く気付かせることなく、休むことなく、遂行している心臓には本当に感謝しかありません。

地球一周のイメージイラスト

●地球の一周は約4万㎞。その2.5倍になる長さの血管が我々の体の中に張り巡らされているのです。うーん、ホントに信じがたい事実です

エンジンが「圧縮漏れ」したような心臓の病気も……

タフを絵に描いたような臓器である心臓ですが、もちろん老化や病気と無縁……とはいきません。

現代日本での疾患別死亡原因としては悪性新生物(がん)に続く2位ですけれど、臓器別では堂々の1位。120歳現役ライダーを目指すためには、まずは健全な心臓であることが不可欠です。

心臓の疾患といっても多種多様なことこの上ないのですが、ライダーである自分が一番イメージしやすかったのが「心臓弁膜症」でした。

前編で「心臓には4つの弁がある」と紹介いたしましたが、まさにその弁が開きにくくなるか、閉じにくくなるかという具合に損なわれてしまう病気です。

弁のイメージイラスト

●2021年にモデルチェンジを受けたHonda フォルツァのエンジン上部、タンブル強化吸気ポートのCGイメージ。弁……バルブはしっかり開閉してこそ狙った性能が出せるのです。エンジンも心臓も……

心臓の弁

●復習として今一度,心臓の各部名称を紹介。弁膜症の原因は老化だけでなく、感染症や動脈硬化症など多岐にわたります

 

特に後者を4サイクルエンジンで言えば、まさしく弁閉時にもかかわらず、バルブシートとバルブの間に隙き間ができて圧縮が漏れてしまっている状態。圧縮抜けのエンジンがまともに動かないのと同様、心臓の弁がおかしくなると血液の逆流が起きたり、逆に流量が極端に減少したりするので体調が崩れていきます。

ほかにも、シリンダーとピストンが生み出すポンプ機能がきちんとその役割を果たせなくなった状態である「心不全」や、2つ並んだシリンダーの隔壁に穴が空いてつながったままになる子供の先天性心疾患「心房&心室中隔欠損症」などなど。

心室欠損症のイラスト

●左心室と右心室を分ける壁に穴が空いてしまう心室中隔欠損症。酸素を含んで元気いっぱいの動脈血が静脈側へと漏れ出てしまうので、体細胞が酸欠状態に陥ってしまいます

心臓を滋養する「血管」の不具合がアブナイ!

それら、心臓そのものの病気も大事ですけれど、ベテランライダーが一番気をつけなければならないのが【心臓に直結した血管の病気】です。エンジンで言えばオイルライン、でしょうか。

心臓イラスト

●心臓自体に酸素と栄養を与えている非常に重要な血管が「冠状動脈」。上大動脈から分かれた大きな枝が心臓を取り囲むように包み込みます。この枝が詰まってしまうと、その先の心筋(心臓の筋肉)が壊死してしまうのです

 

バリバリ働く心臓の細胞へ酸素と栄養を絶えず補給する文字通りの生命線……大きく太い血管が、コレステロールや血の塊で詰まってしまったり(「心筋梗塞」「大動脈瘤」など)、血管自体の内径が細くなってしまったり(「狭心症」)、あるいは裂けたり、破裂を起こしてしまったり(「大動脈解離」など)という恐ろしい事態! 

エンジン内を常に循環し、潤滑・密封・冷却・洗浄(防錆)作用を行っているオイルが突然供給されなくなってしまったら、機関がダメージを受けてそのうち止まってしまうのと同じようなものです。

エンジンオイルの比較

●「オイルはエンジンの血液」とはよく言われていますが、数千㎞を走っただけで左の状態になってしまうほど、内部を保護&洗浄etcしていることがよく分かります。この大切な液体が突然届かなくなってしまったら……

 

心臓病の兆候は息切れや疲れやすさといった、「年のせいだからしょうがないか」と納得してしまいがちな症状から始まります。可能ならば念のため、これらの状態が気になったときにお医者さんに相談をしておきましょう(多くの人はスルーして後に後悔するそうです)。

病気が進行していくと呼吸が困難になったり、胸痛や胸部不快感、動悸、むくみ、失神などが起こってくるとされています。

心臓疾患イメージイラスト

●胸が痛い、呼吸しづらいなどの症状が出たとき、安静にしていると苦しさが落ち着くことも。しかしそれは治癒したわけではありません。猶予がもらえたと考えて、急いで病院へ……!

 

ちなみに加藤茶さん、石原裕次郎さんらも襲われた大動脈解離(かいり)では胸や背中を突然刃物で切りつけられたような激痛が走り、かくいう痛みは意識を失ったり、ショック死まで起こしかねないレベルだとか。そうなると事態は一刻を争います。

暴飲暴食、喫煙、ストレスは心臓の大敵です……

発症に深く関わるのは、やはり生活習慣病。

食習慣や運動習慣、喫煙、飲酒、休養&睡眠やストレスの状態などが複合的に組み合わさって、悪い習慣を放置すればするほど大病発症へのステージがドンドンとアップしていくのです。

喫煙者のイメージ

●ニコチン、タール、一酸化炭素の三大有害物質だけでなく、200種類以上の有害物質、50種類以上の発がん性物質が含まれているとされるタバコ。120歳 現役ライダーを目指すなら遠ざけたほうがよさそうです……!?

 

オーバーホールができない心臓に元気かつ長く働いてもらうには、生活を改めるという大がかりな人生のメンテナンスも不可欠なのですね! (心臓編:終わり)

内関のツボ

●内関はてのひら側で手首のシワから指3本分(2寸)、肘に向かって進んだところで2つの腱の間にあります。慢性心臓疾患や精神的不安定、動揺、乗り物酔いなどに有効なツボなので気が向いたときにマッサージをしたり、セルフ灸を行ってみましょう

 

> 120歳まで乗り続けるために〈第12話〉 「体のエンジン:心臓(前編)」

> 120歳まで乗り続けるために〈第14話〉「体のエンジンオイル!?:血液(前編)」(執筆中)

> 120歳まで乗り続けるために〈第15話〉「体のエンジンオイル!?:血液(後編)」(執筆中)

 

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