今年も恒例のレッドバロン・メディア向け試乗会にお誘いいただいた。毎年、さまざまな絶版車に乗ることができる企画で、とても楽しみにしているのだが……今回、そのラインナップに気になるモデルがあった。

 

Honda CBR1100XX(国内仕様)
●全長×全幅×全高:2160×720×1200(mm)●軸間距離:1490mm ●シート高:810mm ●車両重量:256kg ●エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒 ●排気量:1137cc ●内径×行程:79.0×58.9(mm)●圧縮比:11.0:1 ●最高出力:74kW(100PS)/8500rpm ●最大トルク:98Nm/6500rpm ●燃料供給装置:PGM-FI ●燃料タンク容量:24L ●タイヤサイズ:F 120/700-17 / R 180/55-17 ●ブレーキ形式:F 油圧式ダブルディスク / R 油圧式ディスク ●当時新車価格:110万円(税抜)

 

メディア向け試乗会で21年ぶりの再会

それはホンダ CBR1100XX、通称『スーパーブラックバード』。

当時、市販車世界最速を謳ったカワサキ ZZ-R1100のライバルとしてホンダが送り込んだメガツアラーで、1997年にヨーロッパで発売された。

そして2001年3月、CBR1100XXは国内仕様としても販売を開始。今回の試乗会で用意されたのは、まさしくその国内仕様モデルである。

 

エンジンはホンダの技術の集大成・水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒1137cc。国内仕様として、最高出力は100PSに抑えられている。しかしトルクフルでコントロール性が高く、ツアラーとして扱いやすい特性となっている。

 

あの時の悪夢が甦る!?

さて、どうしてCBR1100XXが気になるのか? その答えは……まぁ、この記事のタイトルにある通りです(笑)。

僕が『単車倶楽部』や『モトモト』、『ダートスポーツ』を発行する(株)造形社に入社したのは2000年初夏のこと。ストリートカスタムバイク雑誌『カスタムバーニング』編集部に配属され、バイクに囲まれる夢のような毎日を過ごしていた。

そして、入社から10ヶ月ほどが経った2001年春、CBR1100XX・国内仕様のメディア向け試乗会が開催されるということで、僕も編集長のお供として同行することになったのだ。

 

中央にアナログ式タコメーター、右側にデジタル式スピードメーターを装備したスポーティなインパネデザイン。クリップオンハンドルは高めに設定されているため、ライディングポジションは比較的ラク(ただし、タンクが長いのでハンドルはやや遠め)。


「ストリートバイク雑誌なのにCBR1100XX?」と思った読者もいるだろうが、バイク雑誌編集部なんて基本はただのバイク好きの集まり……呼ばれりゃどんなバイクでも顔を出すのが当たり前。

国内仕様で出力はマイルドになっているとはいえ、“世界最高速”に乗れるのだ。行かないわけがないのである。

というわけで、今でも覚えている晴天の河口湖畔で開催されたホンダ主催のメディア向け試乗会(「覚えている」と書いたが、もしかしたら河口湖ではないかも・苦笑。もし覚えている業界の方がいればご指摘ください)。我らがカスタムバーニング編集部が割り当てられたのはシルバーのCBR1100XXだ(これははっきり覚えている!)。

そう、今回の試乗会と同じシルバーである。

 

ブレーキには当時先進のデュアル・コンバインド・ブレーキ・システム(CBS)を採用。前・後輪のブレーキそれぞれに連動機構をもたせている。

 

なぜかライダーは僕!

今思えば不思議なのだが、当日、プロライダーではなく、なぜか僕がCBR1100XXに乗ることに。ライダーが体調不良で来れなくなったのか、新人目線で記事を書いてみろと言われたのか、よく覚えていないのだが、とにかく僕がCBR1100XXに乗ることになったのだ。

さて、読者のみなさんは、雑誌やウェブメディアなどでインプレッションの走行シーンをよく見ると思うのだが、一般的な撮影方法は、カメラマン(もしくは編集者)が「ここだ!」と思うところに陣取り、カメラを構える。そしてライダーはその道を行ったり来たりをくりかえし、ベストショットが撮れるまで、何度も往復するのだ。

もちろん、Uターンポイントは安全な場所で、慎重におこなうことが鉄則だ。

しかも僕なんて、当時は新人のペーペーだし、身長161cmでつま先しかつかないのだ。慎重にならないわけがないではないか!

 

世界最速のツアラーと聞くと身構えてしまうが、いざ乗るとハンドリングは素直で、エンジンも暴力的な特性はまったくない。ツーリングに使えて、スポーティな走りも楽しめるオールマイティーなモデルだ。


というわけで、撮影開始。

小柄な僕にはCBR1100XXはけっこう大きく感じるが、それでも当時のホンダが最高峰の技術を注ぎ込んで作ったモデルだけに、乗りやすい! じつに乗りやすい!!

何度も往復しているうちに、「お、けっこう乗れてるんじゃね?」と油断が生じた……とは思いたくはないのだが、結果として油断していたのだろう。

カメラマンさんの前を走り抜け、そのままUターンポイントまで走っていく。Uターンポイントは撮影ポイントから少し走ったところで、途中にカーブもあって、カメラマンさんと編集長からは見えない。

Uターンポイントでは路肩に寄せて停止。周りの安全を確認してから、クルッと回る。何度も往復しているから、もうすっかり余裕だ。

さて、路肩に寄せて、停止するべく左足を出す……と、ズルっ!!

 

車体の大きさを考えると、足つきは決して悪くはない。そう、悪くはないはずなのに……(ライダーの身長は161cm)。

 

滑り出したら止まらない

路肩の砂利に足を取られて、ズルズルと滑っていく。車体からどんどん離れる左足。なんとか踏ん張ろうとしても滑る。CBR1100XXの車両重量は256kgあり、とてもじゃないが支えきれない。

ガシャ!

絵に描いたような立ちゴケ。フルカウルの車体は砂利のなかに横倒し。

慌てて車体を引き起こすが、当然ながら後の祭りで、車体左側のカウルはひび割れ、さらに左側のマフラーにも大きなキズが入っていた。


サイドスタンドを立て、バキバキになったCBR1100XXを見て、茫然自失となる。

あぁ、どうしよう。(続く。現在執筆中!)

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