ボバー=アメリカンカスタムの1ジャンル
トライアンフ ボンネビル・ボバーやモトグッチ V9ボバーなど、ここ数年、車名に『ボバー」とつくモデルがリリースされ、人気を博している。また、ヤマハ ボルトもそのデザインコンセプトは『Ultimate Purely Bobber』である。
すべてに共通しているのは、ロー&ロングスタイルのクルーザータイプだということ。だけど、わざわざ『ボバー』と名乗っているのだから、一般的なクルーザーとも違うのであろうことは想像できる。
では、ボバーとは?
もともとはアメリカで発生したカスタムのジャンルであり、その期限は1920年代とも1940年代とも言われている。そもそもカスタムにはメーカーが作るようなカタログや資料などがあるわけではなく、しかも100年近くも前の話……この辺りについてはあいまいで、諸説ありといった感じだ。
ただ、比較的はっきりしているのは、『ボバー(Bobber)』の語源。
ボブとは「短くする」という意味で、つまり、フェンダーなどの大仰なパーツを短くカットして、軽量化するということ。
アメリカでバイクといえば、思い浮かぶのはハーレー・ダビッドソン。今でもVツインエンジンの伝統こそ守ってはいるが、ウルトラリミテッドからナイトスター、ローライダーSなど、クルーザータイプでありながら、バラエティーに富んだラインナップを見せている。
しかし、当時のハーレーは重厚なフェンダーや大きなスクリーンなど、ラグジュアリーなモデルばかり。1000ccや1200ccの大排気量・高トルクエンジンながらも、車重が重くて、スポーティに走らせるのはちょっと苦手……。
そこで、前述のようにフェンダーなどをカット(ボブ)することで、より軽く、速く、レーシーにカスタムしたのが『ボバー』の起源。
こうしてカスタムされたハーレーは、ダートトラックなどの草レースで活躍したという。
また、そのカスタム手法はストリートにも反映された。重厚なハーレーが軽快なスタイルになって、当時の街中を走りまわった。つまりボバーとは、今でいうレーサーレプリカといえるだろう。
ちなみにその後、ボバーにドレスアップ要素が追加されていき、60年代に入ると『チョッパー』へと進化したのだ。
ボバーのルール
本来、ユーザーが自分の好みで愛車を仕上げる行為がカスタムなのだから、定義などはあってないようなものだが、それでも「これがボバーだ!」と言ううえで、いくつかのポイントがある。
ボブフェンダー
まず絶対なのが、ボバーの語源となった「リアフェンダーのカット」。テールランプなども軽量化かつスタイリッシュに見せるため、コンパクトなものをチョイスする。
ハンドルバー
一見するとアップハンドルに見えるが、よく見ると大きくドロップしているのがわかるはず。これは今でも旧車レーサーに使われるもので、適度な前傾姿勢を取ることができ、意外にレーシーなのだ。
フランダース製のものが“当時もの”として高い人気である。
エキゾーストマフラー
マフラーは短くカットし、抜けをよくするのが定番。時代背景として、音量なんて気にすることはなかったのであろう(笑)。
また、当時は路面状況が悪かったため、アップマフラーを装着している車両も多かった。
ベースモデル
前述のとおり、ボバーが生まれたのは1920~1940年代ごろ。リアルなボバーを作ろうと思えば、ナックルヘッドやサイドバルブが最適。写真のパンヘッドは、当時でいえば最先端! 今ならCBR1000RR-Rにさらにカスタムを施して、峠でブイブイ言わしているのと同じだ(いや、違うか!)。
旧車レースでも大活躍
もとは当時の重厚なハーレーを軽快にしてレースに臨んだのがボバーのはじまり。つまり、現代でも旧車レースを戦うには理に叶った仕様ということ(+やっぱりルックスの雰囲気も最高!)。
というわけで、旧車レースでは定番のスタイルとして、今でもサーキットに行けばリアル・ボバーを見ることができる。
ボバーが進化し、チョッパーへ
ボバーに装飾的な要素を加えていくことで、チョッパーへと進化したというのは前述の通り。最終的にはフロントフォークを長く伸ばした『ロングフォークチョッパー』の誕生へと至るのだが、ここに紹介するのは、ちょうどボバーとチョッパーの間をいくような1台。
無駄を削ぎ落とし、アップマフラーを装着したボバー的な佇まいながら、フロントフォークを少し寝かせることでチョッパーらしさも併せ持っている。
ちなみにボバーからチョッパー、ロングフォークチョッパーへと進化し、その後チョッパーとドラッグマシンを掛け合わせた『ディガー』が誕生。その後、チョッパー不遇の時代を経て、ハイテックチョッパーと呼ばれるジャンルが誕生するなど、ひとくちにアメリカンカスタムといっても、いろいろある。
機会があれば、それらも紹介していきたいなぁ。
というわけで、今回はここまで! 次回は「いま新車で買える“ボバー”」を紹介していくので、お楽しみに!
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