人生最高! 物心ついたときから「カルピスこども劇場」や、「みなしごハッチ」、「海のトリトン」、「天才バカボン」などの良作に囲まれ、小学1年で「宇宙戦艦ヤマト」と出会ってしまい森雪のワープシーンが原体験となった50年来のアニメ好き。そこにバイクが加わって作中に出てくる二輪車にはちょいとうるさい(面倒臭い)オヤジとなった筆者も太鼓判を16連打できるのがこの作品!
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観客動員数1000万人、興行収入140億円を突破!
どうもこんにちは。『ターミネーター2』でジョン・コナー少年の駆るホンダXR100Rの排気音が、何度聞いても2ストロークサウンドであることに憤りを覚える同志はいませんか?
いませんか、そうですか。
そんなわけで『天気の子』です。
2023年1月現在、『すずめの戸締まり』が大ヒットロングランをカッ飛ばしている新海誠監督の前作ですね。
『天気の子』は2019年7月19日に封切られ、同年の興行収入1位を記録した話題作であることは説明の必要もないでしょう。
今をときめく森七菜さんが声をあてた天野陽菜、可愛かったですね。
NHK大河ドラマで刃向かう者たちをやたらめったら葬りまくった小栗旬さんも、おちゃらけに見えて締めるところは締めるイイ役(須賀圭介)で出演されております。
我らがカブが走る、曲がる、飛んでいく〜!?
しかし、何と言ってもこの映画の主役はホンダ・スーパーカブ110だと断言してしまいましょう!
本当に偶然の結果らしいのですけれど、その名もホンダウイング……いや本田翼さんが声優を務めた須賀夏美(これがまた中年男のピュアなハートを突き破る容姿と性格の持ち主)によって、雨が降り続く東京を自由奔放に駆け回るピンクカブのいとおしさよ……。
後半、作中で重大な意味を持つ、主人公・森嶋穂高をタンデムシートに乗せてのカーチェイス&ド派手なアクションシーンにも思わず手に汗を握ってしまいました。
実は新海誠監督本人や周囲のスタッフ、プロデューサーらも“カブ好き”が多いとかで、2007年公開の『秒速5センチメートル』、2016年公開『君の名は。』、天気の子を挟んで『すずめの戸締まり』でも大切なバイプレーヤーとしてスーパーカブが登場していることは有名な話。
壮大な虚構を成立させる徹底した細部の作り込み
アニメというフィクションだからこそ“リアル”にこだわる制作陣は、効果音ひとつとってもゆるがせにしません。
『天気の子』ではスーパーカブ110のリアルな排気音再現は当然ながら、同じく作中に出てくるホンダのクルマ「N-ONE」のワイパー作動音もわざわざ実車を借り出して録音をしたのだそうです。
そんなこだわりが詰まったフィルムを観て驚きと感動を得たHonda側が、今度は「新海監督やスタッフの方々に恩返ししたい」とばかりに、ノリノリでワンオフ製作をしたのが、“夏美スペシャルカブ”でした。
本格的に話がスタートしてから、実にたったの3週間で作り上げられた世界で1台だけしかない夏美の愛車。
最大の特徴であるピンク色の調合や車体全体の細かな仕上げに関しては、公式な情報をできる限り収集しつつ、妄想も大いに膨らませて仕上げられていったのだとか(笑)。
ワンオフで終わるはずの桃カブは評判が評判を呼び……
めでたく完成した車両は同年9月25日から10月7日までの期間、松屋銀座で開催された“「天気の子」展”でお披露目されます。
面白いのがここからの展開!
バイク雑誌はもちろん一般誌、ネット、テレビなどで大きく取り上げられた“夏美のカブ”はライダーを中心に大きな反響を呼び、「乗ってみたい!」との声が高まります。
そこでHondaは2020年4月にサービスを開始した「ホンダGOバイクレンタル」の貸し出し車両として、このピンクのカブを用意するとナウなヤング(死語)を中心に予約が殺到!
ならば……ということで、なんと正式に販売が決定ッ!!
2020年7月23日から同年10月31日までの受注期間限定モデルというカタチで「スーパーカブ50/110 『天気の子』ver.」が発売されたのです。
公式プレスリリースによると両車の販売計画台数は、税込み26万9500円の「50」が500台、同31万3500円の「110」が1500台となっていました。
実際にどのくらいの車両がお客様の手に渡ったのか正確なところは不明ですが、少なくとも筆者が住む関東首都圏では現在でも結構な頻度で見かけますので、日本全国では1000人単位の“夏美”がピンクのスーパーカブを元気よく走らせ「白バイ隊員になろうかしら~!」なんて日々、ココロの中で叫んでいるのかもしれません。
令和のカブブームを巻き起こした要因にも……!?
1958年の初代“C100”登場より、地球の経済活動を支える圧倒的モビリティとして大ヒットを続けてきたホンダ・スーパーカブ(世界生産累計は実に1億台オーバー!)。
しかし、お膝元である日本市場では原付一種の衰退やビジネススクーターの台頭により、影がとても薄くなった時期もありました。
ですが今やCT125ハンターカブが年間1万台以上を売り上げて堂々のクラストップの座につき、クロスカブ50/110、スーパーカブC125も高い人気を維持。
そして本来ビジネス色が強いはずのスーパーカブ50/110までパーソナルユース需要に火が付いて生産が追いつかない状況に……。
そんなカブのコペルニクス的転回に『天気の子』が一役買ったことは間違いありません。
「ねぇ、今から晴れるよ」と、ぐずついてばかりの世相にしおれた心をスッキリさせる名文句や壮大なストーリー、言葉を失うほどの映像美、RADWIMPS楽曲との深いシンクロ率、そしてカブの大暴走(笑)と盛りだくさんの本作。
是非アナタも今一度ご確認ください!