考えてもみてください。キレイに4つ並んだ直径50㎜ほどのピストンが混合気の燃焼によって想像を絶する勢いで上下運動させられ、クランクシャフトを1秒間に270回転近く(!)ブン回すことにより、“ウマ45頭分”の仕事量を生み出している……。まさしく異次元感たっぷりな精密機械に心躍らないバイク乗りはいるでしょうか、いやいまい(反語法)!

ニンジャZX-25Rというロマン【前編】はコチラ

ZX-25Rのピストンとバルブ

●写真はニンジャZX-25Rのもの。直径50㎜ピストンの直上で直径18.9㎜の吸気バルブが2本、直径15.9㎜の排気バルブが2本、それらが上下運動して混合気を燃焼室へ送り込み、圧縮させて燃焼、そして排気をエキパイへと送り出す……。かくいう行程をとんでもない速度と正確さでこなしていくのですから想像の範疇を超えています!!

日本のお家芸たるエンジン形式。その最小排気量版!

カワサキの誇るスーパークオーター(死語?)、ニンジャZX-25Rの登場により一躍話題を集めた“250㏄並列4気筒”というエンジン形式。

筆者のような昭和40年代オトコからすれば、そのワードを耳にすると空前絶後のバイクブーム後半、1986年あたりから続々と登場してきた4ストローク250レーサーレプリカ群が真っ先に脳裏へと浮かび上がります。

ヤマハFZR250、ホンダCBR250RR、スズキGSX-R250、カワサキZXR250 etc……。

CBR250RR_1990年式

●「吹っ切れたホンダは恐ろしい」を地でいった1990年式「CBR250RR(MC22)」。先代の「CBR250R(MC19)」からさらに磨きをかけられ45馬力を軽々と発揮する並列4気筒エンジンに低重心アルミフレーム、ガルアーム、前後ラジアルタイヤ、725㎜という低シート高などの要素が絶妙に組み合わされて高い完成度を発揮。取り回しも軽くヒザスリも楽勝(?)で女性ライダーにも大人気〜。当時価格は59万9000円でありました

 

どの車両も今なお人気が非常に高く、往年の輝きっぷりをYouTubeなどで知ったナウなヤングたちが「いつかゼッテー自分のモノにしてやるぅ!」とアルバイトや仕事に燃えている姿も各種SNSで数多く拝見することができて頼もしい限り

アルバイト風景

●40年近く前なら高校生が夏休みに一生懸命働けば最新鋭マシンが手に入ったと聞きますが、今は新車も中古車もやたらと高い……。頑張ってくださいライダー予備軍の皆さん!

 

そんな250㏄4気筒エンジンを搭載したバイク、一番最初はどこのメーカーのどんな車種だったのか? 

全世界に視野を広げると実はあの会社が……!? 

このあたりは私がバイク雑誌編集部員時代に大変お世話になった超博識ライター宮﨑健太郎氏がまとめられた素晴らしいウェブページ(コチラをクリック)がございますので、是非ご覧ください。一読するだけで“250へぇ”は確実なこと請け合いです。

変態的(ほめ言葉)に凄かった1980年代初頭のスズキ

さてさて、世界に冠たるジャパニーズバイクメーカーが生み出した初の量産公道用250インライン4に話を戻しますと、記念すべきパイオニアは1983年3月にスズキが放った「GS250FW」でございました。

GS250FW

●エンジンから飛び出す4本のエキパイを誇示するかのようにハーフフェアリング(ミニフェアリング仕様も存在)にて登場したGS250FW(36馬力/2.3㎏m)。1気筒あたり2バルブだから“GS”(4バルブだとGSXとなるのが当時の〈今は例外あり〉スズキのお約束)で末尾の“W”は水冷であることを表しているとか。フロント16インチホイールが時代ですね。乾燥で158㎏(写真のハーフフェアリング仕様。ミニフェアリングは157㎏)。という車重はちょっと重ためでした。当時価格は47万9000円(ハーフフェアリング仕様。ミニフェアリングは45万9000円)

 

水冷機構を採用した車種すらまだ物珍しく、周りを見渡せば空冷のツインと単気筒が圧倒的な大多数を占めていた軽二輪市場に突然舞い降りた驚異的な存在

そりゃぁもう発売開始と同時に話題沸騰☆人気爆発バックオーダー入りまくりになる……と思いきや非常に静かな滑り出し

それもそのはず。

ほぼ同じ時期に市販車世界初のアルミフレームを採用し、250㏄クラスで前人未踏の45馬力を実現してデビューした同社の2ストロークレーサーレプリカ「RG250Γ」ライダーの視線は一極集中していたのであります。

RG250Γ

●水冷2ストパラツインエンジンは最高出力45馬力、最大トルク3.8㎏mを発揮。市販車世界初のアルミ角パイプ製ダブルクレードルフレーム“AL-BOX”を筆頭とした当時最先端の豪華装備も満載しながら乾燥重量は驚異的な131㎏を実現したRG250Γ。それでいて当時価格46万円なのですから人気の爆発しない理由がありません!

 

GS250FWは排気量を考えると驚きの4気筒ではありましたが、前年に登場して大ヒットしていたホンダ「VT250F」の35馬力を1馬力だけ上回った慎ましやかな36馬力という最高出力や、絶妙に微妙なスタイリングなどが相まって、イケイケドンドンなメインストリームに乗り損なってしまったところが残念といえば残念でした。

VT250F

●2ストの初代ヤマハRZ250と同じ35馬力を4ストのV型2気筒エンジンで絞り出してきた画期的なモデルとして飛ぶように売れたホンダVT250F(1982年登場時の価格は39万9000円)。250㏄の4ストスポーツといえばVT!という時代は45馬力インライン4レーサーレプリカ軍団が登場するまで長〜く続きました

 

それでもGS250FWを手に入れた人たちの声を集めた雑誌記事を読めば「吹け上がりの軽やかさが印象的」「スクリーンの角度が適切で高速巡航でも非常に楽」などと高評価が続々

スペック至上主義では推し量れない魅力を持つモデルから、日本の250インライン4伝説はスタートしたのです。

GF250S

●GS250FWは1985年3月にひっそり丸目単眼のシンプルなネイキッドモデル「GF250」へフルモデルチェンジ。エンジンは41馬力化されて139㎏という軽量化も実現し、女性ライダーには一定の支持を得たものの3ヵ月後に登場した下で紹介する45馬力モデルに全て持っていかれてしまいます。なりふり構っていられない状況に追い込まれたスズキは1986年4月、同じ2バルブエンジンをさらにチューンアップして45馬力化し、ハーフカウルの「GF250S」(上写真、48万9000円)も追加して逆襲を図りますが失敗。翌年3月には新設計の4バルブエンジンを搭載した45馬力レプリカ「GSX-R250」をデビューさせます……

 

250インライン4の“新章”を切り拓いたヤマハの秘密兵器

以降、スズキが孤軍奮闘するもパワフルな2スト勢とVツインを積んだ4ストの雄、VT250Fが圧倒的な人気を博していた当時、「やっぱり250㏄という排気量で4気筒なんてメインストリームにはなりえないんだよ」なんて妙に上から目線だった田舎の中坊(←筆者)のドギモを抜いたのが、1985年4月に出現したヤマハのスーパーウェポン「FZ250フェーザー」でした。

ヤマハFZ250フェーザー

●エンジンを45度前傾させて低重心化と前後重量配分を最適化させるなど、同じ1985年に登場したFZ750とともにジェネシス(GENESIS:「創世記」の意で、高いパフォーマンス実現のためマン・マシン・インターフェイスを作り込むという設計思想)コンセプトを標榜した「FZ250フェーザー」。レッドゾーンが始まる1万6000回転まで瞬時に吹け上がるエンジンの感覚は、当時としては本当に異次元的なものでした。いや〜しかし、フロントスクリーンの鏡文字車名ロゴといい、ウインカー形状といい、カラーリングといい、いちいちカッコいいヤマハ……

 

4ストながら超高回転域までブン回すことにより2ストレーサーレプリカ群に肩を並べる最高出力45馬力を発生させたエンジンと、今見ても非常にスタイリッシュなデザインとの融合には悪友たちも大騒ぎ。

丸坊主の頭を突っつき合わせて教室にこっそり持ち込んだバイク雑誌を読みあさったことが、昨日のことのように思い出されます。

坊主頭

●免許取得どころではない中学生時代。バイクへの燃えるような渇望は雑誌を読むことでしか昇華できませんでした。同様の嗜好を持つ学友たちとの口プロレス(←要は舌戦)は面白かったなぁ……

 

カタログをせしめようと通学路途中にあった小さなバイク屋へ寄ったら、速攻で購入して慣らし運転を3日で終わらせたご近所でも評判の二輪好きアニキのFZ250フェーザーがちょうどオイル交換を終了したところ。

ようやくレッド(ゾーン)までブチ回せるけぇ、ぶち嬉しいのぅ」とアニキが空ぶかしを始めたとき、マフラーから吐き出された金管楽器のように美しく甲高い音色は今もってハッキリとした記憶として心へ刻み込まれております。

FZ250フェーザー青

●野太くも回すほどに「ヒューーーーン!」と高周波音も混ざり合う独特な排気音は絶品でした。“ジェットサウンド”と評する人も多いようですね。騒音や排ガスなどの環境諸規制が今とは比べ物にならないくらい緩かった時代だったからこそ実現できたエキゾーストノートだったのかもしれません。なお、初代FZ250フェーザーの当時価格は49万9000円でした。今でも大切に乗られている方のツイッターは常にチェックしております(笑)

また4メーカーによる熱い250インライン4バトルが見たい!

当然のごとく大ヒットモデルとなったFZ250フェーザーは2年も経たないうちに丸目2眼のフルカウルという生粋の4ストレーサーレプリカスタイルを身にまとった「FZR250」へとメタモルフォーゼ

FZR250

●1986年12月、FZ250フェーザーをベースとしながら見事なレプリカスタイルをまとって登場した「FZR250」(当時価格53万9000円)。2眼ヘッドライトにフルカウル、走行風導入孔、段付きシートといったデザイン的な特徴は、以降の4ストレーサーレプリカの基本フォーマットとなりましたね。令和に生まれたニンジャZX-25Rも、その手法を現代風に解釈しつつ具現化した……とも言えそうです

 

さらに人気が加速していったことで、ホンダをスズキをそしてカワサキまでを同ジャンルへ追従させていくことになります。

1980~1990年代に燃え上がった250インライン4バトルの最後発メーカーだったカワサキが、2020年代に同形式エンジンを復活させることになろうとは、当時の誰ひとりとして想像できなかったことでした。

ニンジャZX-25Rエンジン透視図

●サイドカムチェーン方式、挟み角28度の吸排気バルブ、剛性と放熱性を高い次元で両立させたメッキ処理済みアルミ鋳造シリンダーなどの採用により、コンパクトかつ耐久性に優れたパワーユニットを実現したニンジャZX-25R。昭和に設計された250㏄並列4気筒エンジンとは全てにおいてレベルが違う……。だからこそ、厳しい環境諸規制をクリアして全世界的に販売されているのです

 

かくいうニンジャZX-25Rは登場から3年目となる2023年モデルで大幅なアップグレードを果たし最上級の「RR」グレードも誕生するなど着実な進化を遂げています(※海外仕様。近日発表の日本仕様でも同様の変更がなされる予定)。

ZX-25R SE_2023

●写真はインドネシアで発表された2023年モデル(ABS SE)。やはり新たに追加された大型サイレンサーに目がいきますね。これはこれでスタイリングのバランスがとれているのは凄いことですが、時が経つほどライダーの心情的には「要らないなぁ……」と思うものが付加されていってしまうものです

 

逆説的な言い方になりますけれど、ニンジャZX-25Rが売れれば売れるほど他メーカーの250インライン4復活が近づくのかもしれません。

CBR250RR_2023

●2023年1月13日、ホンダは2023年型「CBR250RR(MC51)」日本仕様について詳細を発表。従来どおりの水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブエンジンながら、執念にも似たブラッシュアップにより新排ガス規制に対応しつつ、さらなるパワーアップを実現! 2017年のデビュー当時は38馬力だった最高出力が、今回ついに42馬力にまで到達。車両重量184㎏のニンジャZX-25R SE比で16㎏も軽い168㎏を実現しており、「カワサキ4気筒がナンボのもんじゃい! クローズドコースのラップタイムなら負けへんで!」度合いがさらに増しております。ここまで来るとホンダの250インライン4復活はないのか……??? いや、期待したいですね〜

 

基本的に厳しくなる一方の環境諸規制へ対応していくためには、さまざまな対策が必要となり、それらはコストアップ……つまり販売価格上昇へ直結していくもの。

バイクは思い立ったときが一番お買い時なのです! 買うのはいつ? 今でしょ!(古い)

全国300店舗超のレッドバロンでもニンジャZX-25Rは新車購入できますので、近くのショップへお話だけでも聞きに行ってみましょう(冷やかしでも大歓迎とか)。

あ、それでも「やっぱり往年の4スト250レーサーレプリカが欲しい!」という初志貫徹ライダーにおかれましては、レッドバロンの販売する譲渡車検付きの中古車なら1980年代のモデルでもアフターサービスの心配はご無用。ぜひお近くの店舗にてイントラネット検索システムで豊富な在庫を確認してみてください!

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事