キックアームを踏む前に気になったことがひとつ
前回はヤマハ『SR400ファイナルエディション』に乗ったことを報告しましたが、車体を眺めてニタニタしているうちに長くなってしまい【後編】へと続いたのでした。
今回はいよいよ乗ります。まずは、エンジンを始動しましょう。お楽しみの“儀式”とでも言いましょうか、キックスタートです!
ここで気になったことがひとつ。キックアームを踏み降ろす際、きちんとセンタースタンドを立てるべきなのか、サイドスタンドのままでもいいのか……!? メーカーからはどのようなアナウンスがされているのでしょうか。取扱説明書を読んで確認してみます。
ちなみにボクはカワサキ『W1SA』(1971年式)に30年近く乗り続け、ほかにもキック始動オンリーのバイクをこれまで多数所有してきて、キックスタートには慣れています。キック始動は「難しい」とか「たいへん」などと言われがちですが、キャブや点火系など完調なら決してそんなことはありません。カワサキ『650RS』(W3=1974年式)を手で始動してしまうツワモノもボクは知っております。
ハナシを戻しましょう。センタースタンドのある車両は、冷間時ならセンスタをなるべく立ててキック始動するようにしていますが、走った後であれば再始動は比較的容易ですので、サイドスタンドでまたがったままというケースが多い気がします。上の動画はハーレーダビッドソン『FXS ローライダー』でのキックスタートに女性が挑戦したときのものですが、ご覧のとおりハーレーはセンタースタンドを標準装備していません。
キックペダルを踏み降ろすとき、サイドスタンドではなくセンタースタンドを立てるべきなのか……!? メーカーの取扱説明書ではどのように書かれているのか、それでは見てみましょう!!
トリセツでは始動時はセンスタで
エンジン始動方法について、取扱説明書には下記のようにありました。
1.メインスタンドを立てます。
2.メインスイッチをON にし、エンジンストップスイッチを“ONの印”にセットします。
3.ギヤをニュートラルの位置にシフトします。
4.スロットルを完全に閉じます。
5.デコンプレバーを握り続けたまま、キックインジケーターのマークが見えるまで、キックペダルをゆっくり踏みます。
6.デコンプレバーを放し、力強くキックしてエンジンを始動させます。
トリセツでは【1.メインスタンドを立てます。】とありました! 理由等は書かれておらず、サイドスタンドでかけることについても言及されていません。
そして、ポイントは【4.スロットルは全閉のまま。】ではないでしょうか。「5.」のデコンプレバーがあるおかげで、キャブレター時代を含めSRの始動はとてもイージーです。もし始動困難なら、なにかしらの不調をきたしていますので要整備でございます。
説明書には“エンジンが始動しないとき”についても、こう記されておりますので、ココに残しておきましょう。
4〜5回キックし、始動しない場合は次の手順をおこなってください。
メインスイッチを OFF にします。
次にデコンプレバーを握ったまま、スロットルを全開にして4〜5回キックします。
スロットルを完全に閉じます。
デコンプレバーを握り続けたまま、キックインジケーターのマークが見えるまで、キックペダルをゆっくり踏みます。
メインスイッチを ON にします。
そして、デコンプレバーを放し、力強くキックしてエンジンを始動させます。
また、取扱説明書にキック時のフォームなどは触れられていませんが、写真のように車体をまたがずにキックアームを蹴りおろす方法もあります。この場合、よりキックペダルに体重が乗り、力強くアームを踏み込むことができます。
さらに言うと、写真のように左足を使うという手も。
よく回るショートストローク設計
いずれにせよ勢いよくキックアームを最後までしっかりと踏み下ろすことができれば、いとも簡単にエンジンは目覚めてくれます。
単気筒だからといって、ドコドコなんていう大げさな鼓動感はありません。ボア×ストローク:87.0×67.2mmというショートストローク設定が物語るとおり、ゆったり回るのではなくスムーズかつ軽快に回っていきます。
ヤマハらしい応答性に優れるニュートラルなハンドリングも相まって、キビキビ俊敏に走ってくれるのです。
見た目こそSRはクラシカルですが、走りはスポーティ。そもそも“ヤマハスポーツ新時代”を提唱するために生まれたのが1978年の初代で、軽量・スリム・コンパクトさを追求するため、軽快に回って高回転まで伸びる特性を持つ『XT500』のビッグシングルエンジンが心臓部に選ばれたのでした。
ラフなスロットルワークでもエンストしないし、神経質さはありません。3000回転にも達していないうちから早めにシフトアップしても粘り強くトルクを発揮し、歯切れのいい排気音も楽しめます。
7000回転以上まで回るエンジンでありながら、低い回転域を高いギヤを用いてノンビリ走らせることもできるのです。
意のままに操る歓び
最高速は想像している以上に高いものの、シンプルな構成の鉄フレームにソフトな味付けの前後サスを組み合わせ、タイヤも細く、車体は全体の剛性を低めに設定していますから、穏やかに乗るのが気持ち良いです。
人車一体となる喜びはヤマハらしさであり、SRの大きな魅力。長く愛され続ける理由がわかるのでした。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。2回に渡った『SR400ファイナルエディション』試乗レポートはこれでおしまいです。トリセツで確認したSR400のエンジン始動方法は、動画でも紹介していますので、ぜひご覧ください!