1978年に登場以来、大排気量単気筒ロードスポーツ市場で快走を続けたヤマハSR400/500に対し、FT400/500、GB400/500 ツーリストトロフィーシリーズ、CB400SSと次々に刺客を放ったホンダ。実は途中で「CL400」という“スクランブラー”テイストに満ちたモデルも送り込んでいました。今回はCB400SS登場の伏線となった悲運の名車についても取り上げましょう!

CL400カタログ表紙

●中学1年生でも理解できる英文コピーがドドーンと中央に鎮座まします1998年登場時の「CL400」カタログ表紙。「今度はCLで来たか〜」とホンダ広報から送られてきたポジフィルムと資料を眺めつつ、頭の中は8月29日に日本発売されるアップルの初代iMacのことで一杯だったあの頃。あれから四半世紀、今やiMacはディスク用スロットすらない、液晶ディスプレイのデッカイ“板”になってしまいました……。そう考えるとバイクって何十年経とうが、基本的な姿形は変わらないものですね(←当たり前だ!)

 

CB400SSというレジスタンス【前編】はコチラ!

平成になって早々、消える可能性もあった「SR」!?

ビッグシングルロードスポーツ市場の熱いシェア争奪戦において、分水嶺となった1985年。

ヤマハは技術的な面では“退歩”にも思えるドラム式フロントブレーキを「SR400/500」へ装着し、同タイミングでよりスポーティな「SRX400(SRX-4)/SRX600(SRX-6)」もリリースするという驚きの“二刀流”を敢行!

1985_SRX600

●前回はSRXの真横カットしか紹介してなかったので、今回は“顔”が分かる前7:3写真も……。というわけで1985年型「SRX600(SRX-6)」です。608㏄空冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンンは42馬力/6500回転、4.9㎏m/5500回転のパフォーマンスを発揮。乾燥重量は149㎏(車両重量170㎏)、シート高760㎜、燃料タンク容量15ℓ、当時価格は54万8000円。いやもう全てがいちいちカッコいいとしか……(絶句)。1987年型ではフロントホイールが18インチ→17インチ化されフロントブレーキディスクもダブル→大径シングルになるなど、時を置かず、きめ細かい改良が施されていきました

 

対するホンダは2年前に登場してスマッシュヒットを記録した「GB250クラブマン」の兄貴分という触れ込みで同年、「GB400/500 ツーリストトロフィー」シリーズを市場へ投入して覇権を狙うものの大きな盛り上がりを見せることなく、早々に撤退をしてしまいます。

1985年GB400TT

●開発初期のデザインスケッチではサイドカバーに「TT400」との走り書きが……。そちらが正式な車名として世に出る可能性もゼロではなかったホンダ「GB400T.T.」。センタースタンドが標準装備ですので、スポークやリム、チェーンほかの回転系パーツを気軽に磨き上げることもできたのです。う〜ん、なぜ大ヒットしなかったのだろう。当時のビッグシングルファンが求めるものと、少しだけ“芯”がズレていたのかな?

 

最大級の警戒を行っていたホンダGB-T.T.艦隊を駆逐(いやGBの自滅に近いか?)したことで、ヤマハSR&SRX連合軍は安泰……と思いきや、そうではありませんでした。

世はまさにレーサーレプリカ全盛期であり、当時まだ決して大きな“パイ”ではなかったビッグシングルロードスポーツ市場にて珠玉の2台がシェアを食い合うことで主にSRの販売台数は減少していき、1989年の年間販売台数は1500台程度にまでに落ち込んでしまいます。

ちなみに同年の400㏄クラスベストセラーはホンダ「VFR400R(NC30)」で、販売台数は約1万1000台! 

1988vfr400r

●嗚呼、SEEDカラー(ガンダムじゃないよ)も懐かしい1989年型ホンダ「VFR400R」! 59馬力/4.0㎏mを生む399㏄水冷V型4気筒エンジンですよ! プロアームですよ! 車重は乾燥164(車両182)㎏ですよ! シート高755㎜ですよ! 当時価格74万9000円ですよ〜! こんなプロスペックマシンが毎月毎月900台強、オーナー様の元へ届けられていったのですよ……。とはいえ、2位ゼファー、3位CB-1とネイキッド組がピタリと追走しており、時代の潮目が変わりつつあったことをランキングが示していました

 

あとビッグシングルではありませんけれど、水冷Vツインエンジンのテイスティモデルとしてホンダ「BROS プロダクト2(ブロス400)」が2800台弱を売り上げてランキングの10位に食い込んでいましたので、

BROS400

●嗚呼、ムズい呼び方も懐かしい1988年型ホンダ「BROS(ブロス)プロダクト・2(ツー)」! 37馬力/3.5㎏mを生む398㏄水冷V型(挟角52度)2気筒エンジンですよ! プロアームですよ! 車重は乾燥164(車両180)㎏ですよ! シート高770㎜ですよ! 当時価格55万9000円ですよ〜! 「ウチはウチなりのやり方でSRXをブッつぶす!」というホンダ開発陣の気概が全身から伝わってきました。ちなみに647㏄エンジンで55馬力/5.7㎏mのほうが「プロダクト・1(ワン)」です。両車とも途中でセミアップハンドル仕様を出したりラジアルタイヤ化などされたりしたものの、1990年モデルが最終型に……合掌

 

SRの1500台そこそこという数字かつ、トップテンから遠く圏外という順位の低さは寂しい限り……。

ヤマハ社内では「もう10年以上も売ってきたのだし、すでに進化版とも言うべきSRXもある。SRシリーズはここいらで幕引きとするべきでは?」と生産終了が真剣に検討されていたそうですから、歴史の綾(あや)というのは本当に不思議なものです。

1988年SR400

●発売開始から10年目となる節目に従来のVMタイプから負圧式BST34キャブレターへ換装し、エアクリーナーボックス大型化、マフラー出口小径化など吸排気系のリファインを中心に細部改良が施された1988年型「SR400」。27馬力/3.0㎏mのエンジン出力や価格(39万9000円)などは変わらず。ここから1991年型までナゾの放置プレイが続きますので、ひょっとしてヤマハ側は1988年型を最後にスススス〜ッとSRをフェードアウトさせることも考えていたのではないか……と勘ぐってしまいます。ちなみに同年の“伝説的ハチハチ”「NSR250R」は2万6996台も生産(販売ではない)されていたのですから!

 

ネイキッドブーム到来とともにレトロ車が大増殖!

ところが……そう、昭和が終わり、平成の元年となった1989年というのは、一連の“名車あれやこれやコラム”でも何度となく取り上げてきたとおりカワサキ「ゼファー」登場の年! 

つまりは巨大なネイキッドブームが巻き起こり、レーサーレプリカブームの終わりが始まった大転換イヤーであります。

かくいう時節に底を打ったSRの販売台数は、1990年、1991年、1992年とV字急回復を見せていきました。

それはそうでしょう。

時代そのものが“最新が最良! 極限の速さを競い合うんだッ!!”というベクトルから、“温故知新、のんびり自分なりのペースを楽しむべ”という方向に激変してしまったのですから、ユーザーは先を争うようにネオレトロなモデルへと飛びついていきました。

ゼファーだ、ゼファー750だ、ゼファー1100だ、GB250クラブマンだ、エストレヤだ、カタナだ、SRV250だ、CB400FOURだ、XJR400だ……。

CB400FOUR

●ホンダ“昔の名前で出ています”シリーズの元祖!? 1997年4月に新生ヨンフォアとして登場した「CB400 FOUR(NC36)」は、お察しのとおり「CB400 SUPER FOUR」の見てくれを全力でレトロ風にした力作でした。いや失礼、外装部品だけでなくフロントホイールは17インチ→18インチ化、ミッション段数もわざわざ6速から5速にするという気合いの入りっぷり。最大トルクだってベースのSFから0.4㎏mも増量していますからね(3.7㎏m→4.1㎏m)。ただし車両重量も大幅増(194㎏→210㎏)。価格は57万9000円とSFよりもお安い設定でしたが翌年型が最終型に……合掌

 

いや待て、そもそもネオレトロどころか1978年から姿を変えていないシーラカンス的なガチレトロバイクがあるじゃないか! 

かくして「SR400/500」は“再発見”され、当のヤマハ発動機自体も驚くほどの爆発的人気を獲得していきます。

何と言っても1996年には約9000台を売り上げたというのですから、ハンパな確変フィーバーではありません(ハンパないって構文はあえて封印)。

1995年SR400Sリミテッドエディション

●1995年6月に登場した「SR400S スペシャルエディション」は職人の手により1日20台分しか仕上げることのできない美麗なボカシの“サンバースト”塗装と、ミラクリエイト塗装が施された2000台の限定車。幸いにして実車を眺めることができたのですけれど、もうタンク表面に宇宙が広がっているような美しさ……。そちらが標準車の42万5000円から1万4000円高の43万9000円で入手できたのですから、文字どおり“瞬殺”で売り切れたと聞いております。なおこちらは、400のみに設定されました

 

渋いイケオジからミセスライダー、免許取り立てのガールズ&ボーイズまで「猫も杓子もSRなのでR(←あ~る:ABC文体 by嵐山光三郎)」なんて世界が到来するなんて、バイクギョーカイ関係者であろうと誰一人想像すらできなかった事態だったのです。

免許イラスト

●SRを購入された女性オーナーも数多く取材させていただきましたが、意外なほど「キックスタートだからこそいいんです!」という方が多くてビックリしました。面倒でも手順を追っていき、最後にガツンと火を入れるまでの過程がタマラナイのだとか……。勉強になりました

 

空前のカスタムブームもビッグシングル人気を後押し!

いやホント、当時はモーターサイクリスト編集部員として雨後のタケノコのように設立されてくるSR関連カスタムショップを数多(あまた)取材しつつ、“クラリスワークス4.0”を泣きながら操作して必死にデータベース作りをしていったもの……。

徹夜イメージ

●当時の出版社は徹夜オーケーな不夜城であることが当たり前。当然、モーターサイクリスト編集部も締め切り時となれば連日徹夜での入稿作業が続きました(今は違いますよ)。当時会社ぐるみで使っていた「マッキントッシュ(今ではMac=マックが正式名称なんですね)」は不安定なところもあり、数時間の作業が一瞬で吹っ飛ぶこともしばしば……(血の涙)

 

時を同じくして並列4気筒ネオレトロネイキッド系カスタマイズも当然ながら大人気でしたし、新たにTW系ビッグスクーター系のカスタムブームまで勃興し始めたころでしたから、誌面内容も自然とそっち寄りになっていきましたね。

ヤマハマジェスティ

●写真の初代ヤマハ「マジェスティ」が登場したのが1995年。当初ビッグスクーターはビジネスマンの通勤特急という趣きでしたが、2000年に登場した2代目マジェスティはナウなヤングの自己主張アイテムとして大ブレイクを果たします。50万円ちょいの車両に150万円を突っ込んでフルカスタムするという猛者がゴロゴロいましたから取材するこちら側も金銭感覚が麻痺していったものです……

 

走行性能をチェックする伊豆箱根でのワインディング取材が大幅に減って、都内近辺の“オサレ”かつ申請すれば撮影も可能なオープンカフェや公園での静的撮影が二次曲線的に増え、モデル事務所やウエアメーカーとの交渉に忙殺されていた日々を懐かしく思います(遠い目)。

営業マン

●バイブルサイズの6穴バインダー手帳とシャープのザウルスを常備して広報車のスケジュールを管理しつつ、ドコモのムーバ片手にモデルや公園の事務所へアポイント取り。そんな「忙しいオレ」に酔いしれていたころもありましたねぇ

 

閑話休題、そんなどんどん“パイ”が大きくなっていく美味しい市場を他メーカーだって見逃すわけにはいきません。

1997年4月にはスズキが本気と書いて“マジ”と読む、超本気なSR400対抗ビッグシングルロードスポーツ「テンプター」を突然新登場させて市場のドギモを抜きます

スズキテンプター

●その名もスズキ「TEMPTER(誘惑する者という意味)」! まさに“直立”した396㏄空冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンが圧倒的な存在感を放っていました。27馬力/3.0㎏mというパフォーマンスも同時期のSR400と全く同じ。ダブル2リーディングタイプのフロントドラムブレーキもド迫力……で、価格は46万9000円でありました。こちらの車両については、次回さらに突っ込んでご紹介する予定です〜

 

ホンダ3度目の挑戦は“スクランブラー”で!

そして翌1998年9月……、ようやく今回の準主役にたどり着きました(汗)、ホンダ「CL400」の登場です! 

CL400

●往年のホンダファンも心躍らせる“CL”ブランドを冠した「CL400」の勇姿。振動を低減させるバランサーを内蔵したキックスタートオンリーの397㏄空冷4サイクル単気筒OHC4バルブ(RFVC)エンジンは最高出力29馬力/7000回転、最大トルク3.5㎏m/5500回転を発揮(オイル供給はドライサンプ方式)。乾燥重量140(車両重量155)㎏で、シート高は795㎜とちょいとお高めの設定。各部に配されたクロームメッキパーツの輝きがシンプルなスタイリングを引き締めます。当時価格は44万8000円でございました

 

GB-T.T.シリーズの戦略的撤退から10余年

相変わらず……どころか、デビュー20周年を迎えようという状態なのに、ますます人気を加速させていくSRに対して一矢報いるべくホンダが採った作戦は、真正面からのぶちかまし……ではなく往年のスクランブラースタイル復活という奇策でした

「CL」というブランドはホンダが1960年代から1970年代にかけて販売していたスクランブラー(オンロードモデルをベースにオフロード走行も考慮した各部変更を施した仕様)のもの。

CL72

●最初のホンダCLは1962年、ドリームCB72スーパースポーツをベースに開発された排気量247㏄の「ドリームCL72スクランブラー」(写真)。左2本出しマフラーがタマランですなぁ……。以降、“CL”は原付一種の「ベンリィCL50」から「ドリームCL450」まで排気量的にも幅広くラインアップが展開されていき、数多くのライダーにとってかけがえのない相棒となりました。そして現在、まさしく令和5年に……新生「CL」がホンダ最新ラインアップに加えられたのです(後述)!

 

具体的にはブロックパターンのタイヤにアップマフラーアップハンドルを採用し、タンクからシートへ連なる流れもアクティブなライディングを邪魔しないなだらかさを持つ……といったところでしょうか。

前年、1997年の第32回東京モーターショーで参考出品されて好評を得たことから市場へ投入されたブランニューモデルは、SRの魅力を徹底的に研究したことがひと目で分かる仕上がり具合でした。

CL400カタログ

●「CL400」カタログより。同時期の「SR400」が乾燥重量153㎏でしたからCLの140㎏というのは確かに誇れる数字です。重量的には不利な左右2本出しアップマフラーを装備しての数値ですからね。フロントブレーキはさすがにドラム式……ではなく、シングルディスクを採用しています(リヤはドラムですが)

 

シンプルなセミダブルクレードルフレームに搭載され、確固とした存在感を放つ空冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンは、オフロード専用モデル「XR400R」用パワーユニットをベースに一般公道での扱いやすさを深く追求したもので、そこから出てくるエキゾーストパイプは優美な曲線を描きつつ途中からクロームメッキも美しい遮熱カバーをまとい、わずかに天を向くキャブトン風サイレンサーへと連なっていきます。

CL400

●「CL400」カタログより。外装部品を取り外したストリップモデルをカタログに使用するというのは、レーサーレプリカならともかくテイスティモデルとしては珍しかったのですけれど、基本骨格のシンプルさをホンダ側としても訴求したかったのでしょう。純正アクセサリーパーツに力を入れていたこともよく分かります。バイク雑誌と組んだカスタム企画も盛んに行われていましたね〜

 

もちろん始動方式はキックオンリー! 

とはいえ、始動時のみ自動的に圧縮を抜くオートデコンプ機構と信頼性の高いCDI式マグネット点火などが採用されており、「右側のステップを畳んでサイドスタンド状態のバイクにまたがりキックペダルをゆっくり踏み降ろしてピストン上死点を探ってから一番重くなったところでデコンプレバーを握りキーをオンにして軽くなっているペダルを一番上から勢いよくキック!……するもうまく火が入らずシュッ!とペダルが戻ってきて右足にブチ当たり(=ケッチンを食らう)イテテテのテ……〈※始動するまでバイクにまたがるところから繰り返す *慣れればケッチンを喰らうことは減る〉」といったSRでは当たり前の“儀式”が大幅に簡略化されていることも「CL400」のアピールポイントでありました。

CL400金

●CL400に用意された色は写真の金……シエナゴールドメタリックと上で紹介している銀……プレアデスシルバーメタリックというポケットモンスターのゲームボーイ用ソフトのような2色でした。しかし、これにてCL400のカラーリングは打ち止め! ルビー&サファイアといったような塗色も見てみたかったなぁ〜

 

実際、常にしっかり整備がなされている広報車だと筆者の体格(身長178㎝、体重92㎏ ※当時の装備重量)ならば上死点をきっちり探さないまま雑にキックペダルを踏み降ろしても、あきれるほどあっさりエンジンが動き出したものです。

調子に乗って腕でペダルを押し下げてみたら、これまた簡単に「スタタタタタッ……」と始動したのには正直驚きましたけれど。

マッチョイメージ

●筆者は特段にマッチョというわけではないのですけれど、CL400で腕キック(?)をやってみたらエンジンがかかっちゃいました。知り合いのマッチョメカニックはSR500を嬉々として腕キックしていたなぁ……筋肉は全てを解決する!

 

そんなこんなで「SRを撃墜する……とまではいかなくとも、結構いい勝負はするんじゃないのかなぁ?」という外野の勝手な想像とは裏腹に、以降「CL400」はマイナーチェンジどころかカラーチェンジすら行われないという、まさかの放置プレイがスタート

あまつさえ2001年にはエンジン、フレーム、足まわりなどの主要コンポーネントをそっくり受け継いだ「CB400SS」が登場して存在感はさらに希薄となり、平成11年排出ガス規制をクリアすることなくひっそりフェードアウトしてしまいました(2002年までには生産が終了したとのこと)。

想定外の不遇さだった「CL400」のバイクライフを思い返すたび、脳内には“解せぬ”の3文字が飛び交ってしまうのですが、なんと「CL」ブランドは今年の5月から令和の大ヒットモデル、ホンダ「レブル250」のエンジンとフレームなどをうまく活用したスクランブラースタイルの新型車「CL250」として大復活!

CL250

●2023年5月18日から発売されたホンダ「CL250」。10%の消費税込み価格は62万1500円(税抜き本体で56万5000円)。ホンダドリーム店のほか、全国に300店舗以上あるレッドバロンでも購入できますよ!

 

これまでのCLヒストリーを振り返る雑誌やウェブのお約束企画で「CL400」が引っ張り出されて数多くの人の記憶に残っていくとしたら、それに勝る幸せはございません(←誰目線!?)

CLからCB……ビッグシングルロードスポーツの定番へ

いやぁ、またまた引っ張り倒してしまいましたが、ようやく今回の主役にたどり着きました(確信犯)。

CB400SS

●2002年10月に登場した「CB400SS」のブラック(ソリッドタイプ=45万9000円)です。チェッカーフラッグをうまくデザインしたタンク上のロゴも若々しい雰囲気。397㏄空冷4サイクル単気筒OHC4バルブエンジンは最高出力29馬力/7000回転、最大トルク3.2㎏m/5500回転。乾燥重量139(車両重量153)㎏でCLよりさらに軽い! シート高は790㎜。タンクにラインの入ったストライプパターンは46万9000円ナリ〜

 

そうなのです。「CB400SS」は、「CL400」と一卵性双生児のような関係性を持つモデルで、キックのみのエンジンスタート方式もスリムなボディもフロント19インチ、リヤ18インチタイヤがもたらす軽快でありつつ落ち着いたハンドリングも「CL400」から受け継いだ美点

さらにこちらは平成11年排出ガス規制にも適合され、地味ながらSR400のファンとは明らかに異なる、よりライトな層の支持を取り付け、いずれも短命だった諸先輩方とは違って長期間にわたるセールスが続けられていくことになりました。

デビュー翌年の2002年には前回チラリと紹介した「CB400SS Urban Cafe」が全国限定100台で登場。

CB400SSカスタム

●「CB400SSアーバンカフェ」。写真は2001年秋の第35回東京モーターショーに出展された仕様で、実際に発売されたモデルには車体中央へ大胆な赤いラインが加えられていました。価格は税抜きで85万9000円……レアです!

 

ロケットカウルアルミロングタンク(!)にシングルシートにセパハン、ショートタイプマフラーなどなど令和5年の現在、冷静な目で眺めてしまうと「よくこんなモデルを出せたなぁ……」と感嘆してしまうほどのこだわりっぷり……。

そんな話題満載な限定車で衆目を集めつつ小まめに新色が追加され、そしてなんと2003年12月に発売が開始された2004年型ではキックペダルを残しつつセルモーターも追加で装備されて利便性を大幅に向上。

CB400SS 2004年型

●2004年型「CB400SS」。“HONDA”と刻印が打たれたクランクケースカバーの上、中央に出っ張りのある丸い物体が新たに追加されたセルモーターです。ホンダ独自の盗難防止機構H・I・S・Sも新たに搭載されるなどキメ細かい改良も加えられた結果、車重は乾燥重量145(車両重量159)㎏と少々重くなりましたが、それでもまだまだ軽量級。「やっぱりセル始動は楽だよね」という現世利益を求める人々には、しっかり支持されていくことになりました(価格は1万円アップのみ!)

 

SR400への強烈な対抗意識をなくしたことで、逆にいい意味での棲み分けができるようになったというのは面白いものですね。

CB400SSセルキック

●2004年型「CB400SS」カタログより。セルモーターが付いたことにより“スタンダード”ではなくなった……ということなのか、キャッチコピーがこのモデルから「The Standard Single」→「The Single Sports」に変化いたしました。使用される写真も惹句もエンジンがキックとセル、どちらでも目覚めることを強く訴求しております。以降、毎年のようにカラーリングチェンジを受け(CLとの待遇の差よ……)気軽に乗れる汎用性の高いシングルスポーツとして一定以上の人気を維持していくのです!

 

さて次回は、かくいう「CB400SS」と「SR400」の終焉へ至る道のり、そして現在の状況と……やっぱりスズキ「テンプター」についても少々(?)語ってしまう予定です。

あ、というわけで「CB400SS」とその前身となった「CL400」は出来映えもバッチリなMade by HONDAの400シングルスポーツ。スズキ「テンプター」ともども、“今”乗れば注目度もバッチリなことは太鼓判です。ただ……あえて始動の“儀式”にこだわり、カスタムパーツの豊富さまで考慮するなら、やっぱりヤマハ「SR400」一択ですね(笑)。自分に合ったモデルはどれなのか、ぜひお近くのレッドバロンスタッフに相談してみてください!

CB400SSというレジスタンス【後編】はコチラ!

CB400SSというレジスタンス【前編】はコチラ!

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