「CB400SSのSSとは、Standard Singleの略でシンプルな美しさにこだわったスタイリング、および装備によって、400シングル(400ccの単気筒)のスタンダードをめざすという意味です」とはHonda公式ウェブサイト“ネーミングの由来”にあるとおり。21世紀最初の年となる2001年に、セルモーターすら持たないブランニューモデルが生まれた背景には何があったのでしょうか!?

2002CB400SSカタログ表紙

●2001年11月に発行された「CB400SS」カタログより。表紙では“これでもか!”とばかりシンプルな(キックスタートの)エンジンであることを訴求しまくっております。397㏄空冷4ストローク単気筒OHC4バルブエンジンは最高出力29馬力を7000回転、最大トルク3.2㎏mを5500回転で発生。潤滑方式は圧送式(ドライサンプ)で、オイルタンクはエンジン後方、スイングアームの間へ挟まれるように存在していました。

 

FZR250Rというフィナーレ【後編】はコチラ!

目の上のタンコブ……ヤマハSRを打ち負かしたい!

現在青春を謳歌しているヤングたち(でなくても)は「目の上のタンコブ」ということわざを知っているのでしょうか??? 

アオリ文字としてドドンと使っておきながら少々不安になりましたので補足説明をしておくと、

うっとおしいもの、ジャマなものなどを意味する表現ですね。

ほら、目の上に瘤(こぶ)……“ものもらい”でもいいのですけれど、できてしまうと気になって気になって仕方がないではないですか。できれば早々に消えていってもらいたい……。

ものもらい イラスト

●ものもらい……医学的には麦粒腫(ばくりゅうしゅ)といい、地方によっては「めいぼ」や「めばちこ」とも呼ばれている感染症。本当にうっとうしい〜

 

ホンダにとってあきれるほど長期間、そのような存在であり続けたのが、ヤマハの誇るビッグシングルロードスポーツ「SR400(/500)」だったのです。

1978年SR400

Single RoadsportsなのでSRなんですね。写真の1978年型「SR400」(カラー名はマコマルーン←カワイイ)のエンジンは399㏄空冷4スト単気筒OHC2バルブで最高出力27馬力を7000回転、最大トルク3.0㎏mを6500回転で発生。メインフレームをオイルタンクに使うドライサンプ潤滑方式を採用して乾燥重量は158㎏、シート高810㎜、燃料タンク容量は12ℓで当時価格は31万円ナリ。……まさかこんな“フツー”のモデルが昭和、平成、令和をまたぎ、43年間も愛され続けるバイクになるとは、ノストラダムスも予言できず!?

 

HY戦争前夜、あらゆるジャンルへ積極的に踏み込んでいったヤマハが、当時国内最大排気量の4ストビッグオフローダーとして1976年に登場させたのが「XT500」

1976年ヤマハXT500

●写真は1976年型「XT500」。あえての米国仕様ご紹介です。このタンクのグラフィック構成は2016年型「SR400」でもオマージュされていましたね。いやもうトコトン「いちいちカッコいいヤマハ」ですなぁ……。最低地上高を確保するためクランクケース下にオイルパンを持たないドライサンプ潤滑方式を採用すべき理由が、ひと目で分かる写真でもあります。だからこそ“オイルタンクインフレーム”を開発し、それがSRにも使われたという流れですね。なお、日本仕様は2人乗りが可能でシートベルトとタンデムステップが装備されており37万円という値付け!

 

その499㏄空冷単気筒の心臓を譲り受けたオンロードモデルとして、1978年にリリースされたのが「SR500」でした。

なお、同時に発売された「SR400」は500向けエンジンのボアはそのままに、ストロークをダウンすることで399㏄化されたものです。

1978_SR500

●写真の1978年型「SR500」(カラー名はスターレッド)は499㏄空冷4スト単気筒OHC2バルブエンジンで最高出力32馬力/6500回転、最大トルク3.7㎏m/5500回転で発生。乾燥重量は400と同じ158㎏でシート高810㎜、当時価格は35万円でした。なお500はご覧のとおりテールカウルはなく、代わりにグラブバーが標準装備でハンドル位置も高く設定されていました(400は少し低いコンチネンタルハンドル)。ベース車から分かるとおり開発陣の本命はこの500。400は日本の免許制度に合わせるため“致し方なく”作った側面もあったものの、ショートストローク化によって軽快な吹け上がり感を得るという副次的な効果まで……

 

Y.M.O.(イエローマジックオーケストラ)が結成された年に

……1978(昭和53)年と言えば、現在55歳の筆者が10歳のボクちゃんだったころですからね。

三角乗りイラスト

●「子供用自転車はカッタルイから卒業っちゃ!」とイキって大人の自転車を持ち出しては“三角乗り”(←分からないヤングはググってね)していた幼少期。毎日ワケも分からずワクワクしてました〜

 

のちに高視聴率でオバケ歌番組とも評される「ザ・ベストテン」が放送開始され(同年、ピンク・レディーがUFO・サウスポー・モンスター・透明人間ほかのメガヒットを連発!)、

アイドルのイラスト

●モモエが引退してセイコ、アキナが登場して……。女性アイドルの変遷もリアルタイムで感じることができた歌番組。最近は少ないですね〜

 

サザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でメジャーデビュー、三菱自動車が「ミラージュ」を発売し、『スター・ウォーズ(エピソード4)』が日本初公開された年なわけですから、この文章を読んでいる76.32%くらいの人は生まれていないはず。

とまぁ、そんな太古の昔にデビューした「SR400/500」は、二輪ギョーカイに必ず一定数は発生し続ける(?)マニアック層の支持を得て順調なスタートを切り、キャストホイール化でやらかしたりしながらも着実に地位を確立していきます。

SR400SP

●デビューからたった1年後の1979年に登場した「SR400SP(写真)/500SP」。実は当時、スポークホイールではなくアルミ鋳造製キャストホイールがようやく国内でも認可されるようになり、世はまさに大キャスト時代へ。趨勢にならってSRもキャストホイールを履いた……のですけれど、これが「らしくない」と大ブーイングを招いてしまいます。結局3年後の1982年にはスポークホイールが復活して以降は、SR=スポークという図式が完全に定着。……今見るとキャストSRも十分カッコいいのですけれどね

 

そして時代はHY戦争期へ突入。

ケンカをふっかけてきたヤマハをたたきつぶすべくホンダは、ありとあらゆるジャンルで強力な対抗馬を送り出していきますが、もちろんSR400/500とて例外ではありません

対ヤマハSR、最初の挑戦はフラットトラッカーで!

ただ、単にロードスポーツモデルとしてSRの後追いすることを良しとしなかったのは当時のイケイケホンダらしいところで、1982年6月に登場した「FT400/500」はダートトラック用競技車の雰囲気を散りばめた……正直、奇妙キテレツ(失礼)なスタイリングで戦いの土俵入り。

1982_FT400

●1982年型「FT400」の勇姿。XL系譲りの398㏄[497㏄](※以下[ ]内はFT500の諸元)空冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンは最高出力27馬力 [33馬力] を6500回転、最大トルク3.2㎏m [4.0㎏m] を5000回転で発生し、大容量オイルパンを持つウエットサンプ潤滑方式を採用。乾燥重量は158㎏[159㎏]、シート高790㎜、燃料タンク容量は13ℓで当時価格は42万3000円[42万8000円!]。……う〜ん、何度見てもメフィラス星人のようなヘッドライト周りのデザインには違和感を覚えます

 

もちろん性能は一線級! 

「SRはOHC2バルブでキック始動のみ? ハッ、こちとらはOHC4バルブで当然セルスターター付き! 全域トルクフルでブレーキも強力だし、流行りの角形ヘッドライトやキャストホイールも採用してますよ~!!」と、SRとは全くベクトルの異なる魅力を訴求しまくるものの……。

ホンダFT400真横

●ふーむ、真横から見てみるとヘッドライト周りさえなんとかすれば、意外とアリなデザインに思えてきました。センタースタンドも標準装備ですし(笑)。乗られた経験のある先輩に話を伺うと「スロットルをパカッと開けるだけで、リヤタイヤがババババッと路面を蹴っていく感覚が面白かった」とのこと。フラットトラックでカウンターごっこをして遊ぶくらいなら、最高の相棒となったのでしょうね〜。FTの登場時、公式リリースには「ホンダの400シリーズは、このFT400を含め10機種10タイプとなり、幅広いお客様の要望に応えられる充実したシリーズとなった」とあり、思わず遠い目をしてしまいました……

 

超ド級スーパーマニアックなお方以外には完全スルーされてしまい、SRとはがっぷり四つになる間もなく上手投げを決められ、あっさり土俵の外へと突き落とされたカタチに。

しかし、これは生まれた時代が悪かったという面もございます。

なんてったって同じホンダ陣営の400㏄クラスだけでもCBX400Fに同インテグラ(並列4気筒)、VF400F(V型4気筒)、スーパーホークⅢにCB400LC(並列2気筒)、CXユーロ(縦置きV型2気筒)、XL400R(単気筒)などなど……といった、

CX-EURO

●「CXユーロ? 何ソレ?」という方も多いでしょうからご紹介。1982年4月に発売された写真の「CX-EURO」は396㏄水冷4スト縦置きV型2気筒OHV4バルブエンジン(40馬力/3.2㎏m)を搭載したヨーロピアンツアラーで当時価格は49万8000円(乾燥重量209㎏! シート高795㎜)。デザイン的には当時、量産車初のターボチャージャー装着モデルとして話題を集めたホンダ「CX500ターボ」のエッセンスが各所に散りばめられておりました。懐かしのオールアルミ製ブーメラン型コムスターホイールが泣かせます。こちらもまた、HY戦争の狂乱がなければ世に出なかったモデルかもしれません

 

バラエティが富みすぎにも程があるラインアップを誇っていたのですから、見慣れないスタイリングのビッグシングルロード(なのか?)スポーツ、「FT」が陣地を広げる余地はほとんどなかったのでしょう。

実際、山口の片田舎でモーターサイクリスト誌を毎月購入し始めた筆者と、同様な悪友たちとの放課後バイク談議でも、FT400/500の話題が出たことはついぞ記憶にございません

放課後イメージイラスト

●クラブ活動が休みの日には誰からともなく教室に居残って、バイク誌で仕入れた情報をネタに、あ〜でもない、こうでもないと自らの“推し”について熱く語り合ったセイシュンの日々。今思えば、なんと豊潤な時間だったことか……

 

ただ、SR400/500に関しては中学生のクセにキャストホイールのSR400SPにゾッコンとなっていた渋い趣味の悪友Cくんが、ことあるごとにSR愛を語り出そうとするので、CBXやRZ350やXJやインパルスやZ-GPについて口プロレス(←要は舌戦)をしたかったその他大勢は辟易となっていたものです(笑)。

まぁ、そんなことはともかく、FTはSRを攻略するには至りませんでした。

「もう一回!」はトラディショナルな装いでの再挑戦

リベンジの機会は3年後に到来!

1985年7月に「GB400ツーリストトロフィー(以下、T.T.)」が、

GB400TT

●「1960年代に英国で活躍したロードレース仕様車(単気筒エンジン搭載)のスタイルと、最新の技術を活かした中・低速域での力強い乗り味を調和させたものである」とはHondaの公式リリース。金属感も大切にするため前後フェンダーはもちろん、サイドカバーまで鉄製という凝りよう。RFVCが採用された399㏄空冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンは最高出力34馬力/7500回転、最大トルク3.4㎏m/6000回転のパフォーマンスを発揮! 乾燥重量は150㎏でシート高は780㎜。当時価格は43万9000円だったのです

 

その1ヵ月後の8月にはロケットカウルの「GB400T.T. MkⅡ(マークツー)」と、

GB500TTSE

●非常に目立つロケットカウルを装着するとともに、シングルシートを採用したマークⅡ。4000台の限定販売で価格は46万9000円でありました。今でもたま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜に見かけると、ハッとして目が釘付けに……。遠く見えなくなるまで視線で追ってしまいます

 

GB500T.T.」が相次いで発売されたのです。

GB500TT

●これまたシングルシートが採用された500……。498㏄空冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンは最高出力40馬力/7000回転、最大トルク4.2㎏m/5500回転の実力を誇り、乾燥重量は149㎏と400より軽い! シート高は775㎜で当時価格は46万9000円でありました。う〜ん、歴史にタラレバもニラレバもパラレバーもありませんけれど、もしGB400/500シリーズが全車2人乗り仕様だったら、かつ今みたいにビッグバイク免許が教習所で容易に取得できる世の中だったら……と妄想せずにはおれません。なお、こちらのGBシリーズ3台は全車とも燃料タンク容量が17ℓで、60㎞/h定地走行での燃費は45.0㎞/ℓ。ゆえに計算上の満タン航続距離はいずれも765㎞というもの凄さ……。あ、始動方式がセル・キック併用というのも3車で共通!

 

先行して1983年12月に発売されていた「GB250クラブマン」のスマッシュヒットを受けた兄貴分として、英国マン島T.T.レースに由来するブリティッシュ・ビッグシングルの面影を色濃く残した端正なスタイリングはとても魅力的。

なおかつ心臓はXR500R直系のRFVC(放射状4バルブ半球型燃焼室)を搭載した大排気量シングルエンジンとくれば、SR兄弟なんぞ一瞬にして忘却の彼方へ追いやるに違いない……、と高校生になって悪友Cくんとも離ればなれになった寂しさを感じつつ筆者は確信したものでした。

駄菓子菓子! 

なんと500のほうは登場した1985年モデルがそのまま最終型となってしまい、400のほうも1987年にスペシャルエディションが追加されたはいいけれど、

GB400SE

●「GB400T.T.スペシャルエディション(特別仕様車)」は2000台限定で46万9000円。ツートーンのニューカラー、前後フェンダーにクロームメッキ、タンク、サイドカバー、シート後部に立体エンブレム、エンジンをガンメタグレーに塗装、前後ホイールリムのバフ仕上げのグレード向上、その他細部の表面処理の質感も向上させながらSTD比でプラス3万円ポッキリというお値打ち価格には驚くしかありません

 

その翌年、1988年のマイナーチェンジで絶版となってしまったではありませんか! 

片やSR兄弟は1985年のマイナーチェンジでスタイルはそのままに細部を改良しつつ、フロントディスクブレーキをドラムブレーキに変更するという“退化”(?)まで遂げて、さらなる懐古調パッケージングを追求。

1985_SR400

●1985年型「SR400」(39万9000円)。フロントホイールが19インチから18インチ化されると同時に、ディスクブレーキをツーリーディング式ドラムブレーキへと変更。もちろんヤマハ社内でも賛否両論があったそうですが、驚くほどの盛り上がりをみせてきたSRのカスタムシーンで、わざわざディスク式をドラム式に変更するという手法が流行しており、「ならばメーカーがキチンとした性能のものを……」という思いもあったとか。研究開発の結果、ディスク式と同等の制動距離を確保しつつ、非常にトラディショナルな外観もGET!

 

するとコレが非常にウケて、SR史上空前のヒット作と称されるまでになったのです。

……当時はまさしくレーサーレプリカ大爆発時代

もの凄い速度で性能が向上し、スタイリングまでコロコロ変化していく最先端マシンは相変わらず絶大な人気を誇っていたのですけれど、「いや~、なんか違うなぁ」と時代の濁流から一歩退いて、真反対の方向を探し始めるライダーもまたジワジワ〜ッと増加

様子見オジサン

●毎年のようにモデルチェンジが行われ、性能は上がりますが価格も正比例していったレプリカ軍団。乗り手の全員が全員、そっちの方向を見ていたわけではないのです。そんな地下水脈が1989年のゼファー登場で一気に噴き出した!?

 

振り幅は大きければ大きいほど心が震えるもの。

セルスターターすらなくキックでしかエンジン(それまたOHC2バルブというシンプルの極み!)をかけられない、“ザ・単車”という趣きを持つSRは、レーサーレプリカの対極に位置する存在として時を経るごとに重要度が増していったのです。

1985_SRX400

●今回、あえて本文では触れていませんが、1985年型でSR400/500が“退化”(?)できたのは、同年の同じ4月に「SRX400(SRX-4 ※写真)」&「SRX600(SRX-6)」が登場してきたことも無縁ではなかったはず。「ビッグシングルで痛快な走りを楽しみたいならコチラをどうぞ」ということですね。4バルブを採用したパワフルなエンジン(始動はキック式のみ (^^ゞ)に前後ディスクブレーキ、スチール製角パイプのダブルクレードルフレーム……。そして何より懐古主義と決別したモダンでスリムなスタイリング! ヤマハ側としてはSRXのデビューを期に、数年後にはSRを引退させようと目論んでいたようですが……

 

ではなぜ、SR同様のポジションへGB-T.T.シリーズが潜り込めなかったのか? 

自分自身の印象、そしてバイクショップのスタッフや周囲のバイク友達などから話を聞いての総括は、

①エンジンが快活すぎたし、セル・キック併用は中途半端な感じ

②マークⅡと500が一人乗り仕様なんて、もったいなさすぎる 

③素の400は250クラブマンに見えてしまう……などなど。

CB250クラブマン

●RFVC+ツインカム! 1983年型「GB250クラブマン」は249㏄空冷4スト単気筒DOHC4バルブエンジンは最高出力30馬力/9500回転、最大トルク2.4㎏m/8000回転というパワフルさが身上で、乾燥重量は130㎏でシート高は780㎜。当時価格は37万9000円。なんと燃料タンク容量は兄貴分のGB400/500T.T.と同じ17ℓ……そしてそして50㎞/h定地走行での燃費が58.0㎞/ℓですので、計算上の満タン航続距離は986㎞にもなるのです!!! 

 

結果的に購入層の絞り込みがぼやけてしまったこともあり、ホンダのビッグシングルロードスポーツは再び撤退を余儀なくされます。

言わずもがなではありますけれど車両の出来自体は素晴らしいものがあったため、生産終了から数年後~そして現在に至るまで、程度良好な中古車の価格が高値で安定しているのは「ナントモハヤ」な感じでございますが……。

「もう一回!」。再々戦は清々しいほどのガチンコ勝負!

すみません、ここまで長らく引っ張って、ようやく今回の主役にたどり着きました。

CB400SS

●2002年に登場した「CB400SS」カタログより。原宿表参道にある“BAKERY CAFE 426 OMOTESANDO”前で今まさにキックスタートでエンジンに火を入れようとしているナウなヤング……。このページ全面を使ったイメージフォトがCB400SSの方向性を指し示していました。フロントタイヤの先に、ちらりと「FTR」が写っているのもいかにもな演出ですね(笑)

 

2001年……21世紀最初の年であり、平成でいったらもう13年デスヨ。

「自民党をぶっ壊す!」との合い言葉とともに小泉政権が発足し、9月11日には米国で同時多発テロが発生した忘れ得ぬ大転換の年

その10月に3度目の正直……とは筆者の勝手な言い草ですけれど、奇をてらわない端正なスタイリング、キックスタートのみのシンプルな単気筒エンジン、なおかつホンダを代表する“CB”ブランドまで背負って登場してきたのが「CB400SS」なのです。

CB400SS

●往年のホンダ車を彷彿させる燃料タンクのカラー&グラフィックに、サイドカバーへしっかりと記載された「CB400」のロゴ。銀色に鈍く輝くキックレバーが「さぁ、蹴れ!」と乗り手を誘っているようです。外観の美しさにもこだわった397㏄空冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンは最高出力29馬力/7000回転、最大トルク3.2㎏m/5500回転を発揮。乾燥重量は139㎏でシート高は790㎜、スリムな燃料タンクの容量は11ℓで60㎞/h定地燃費は39.0㎞/ℓというスペックでした。価格は写真のストライプタイプが46万9000円でソリッドタイプは45万9000円。各部のクロームメッキや表面処理も質感の高いものでしたね〜

 

エンジンはオフロード競技専用モデルだった「XR400R」のものを一般公道向けにモディファイしたもので、1998年に登場したスクランブラー「CL400」(詳しくは次回で述べます)を経て、「CB400SS」にも採用されたというもの。

cl400カタログ

●「ロードスポーツでSRに勝てないなら、スクランブラーではどうだ!?」とホンダ開発陣が考えたかどうかは知りませんが、1998年9月に登場した「CL400」。こちらを語らずに「CB400SS」は語れないので、次回ではしっかり紹介させていただく予定。そして令和の現在、その「CL」ブランドが復活したということに、歴史の巡り合わせの面白さを感じずにはいられない筆者なのです……

 

GB400/500シリーズと同じくRFVC機構を採用しているものの、シリンダーヘッドに誇示されてきた“RFVC”というアルファベットロゴは取り外されて、スッキリとした外観を獲得していました。

その直上には滑らかなティアドロップ形の燃料タンクがあり、セミダブルクレードルフレームの形状に沿った逆台形のサイドカバーが側面を引き締めます。

そして段差のないダブルシート、2本リヤサス、クロームメッキを多用した前後フェンダーやマフラー

CB400SS

●2001年に発売された最初の「CB400SS」ソリッドタイプには写真のプラズマイエローだけでなく、パッションレッドもラインアップ。SR400がマネしてこないような色合いで、より若年層への訴求もねらっていたようですね

 

その姿は……「まんまSRやないか~い!」激おこプンプン丸だったのは、同窓会で久々に再会した悪友Cくんでした。

SR400_2001

●2001年型「SR400」(45万円)には写真のとおりなシルバー3というシブピカなカラーリングも用意されていました。う〜ん、CB-SSとSRを真横どうしで見比べてみれば、Cくんが激怒するほどスタイリングはソックリではない気も……いたしますが(苦笑)

 

彼は高卒就職後にすぐSR愛を成就させ、底値激安で購入した美麗中古のSR400SPで通勤、ツーリング、タンデムツーリング、結婚、大阪単身赴任、カスタム……とSRとともに(バイク)ライフを満喫

1999年をもってSR500が最終型になると聞いて大型二輪免許を取得し、そちらも購入したという筋金入りのSRファンです。

1999_SR500

●そうなのです。1978年以来、400とともに着実な人気を得て継続してきた「SR500」は、写真の1999年型を持って生産が終了してしまいました。これは平成11年排出ガス規制へ適合させるメリットとデメリットを冷静に判断しての決断だったと聞いております。最後を飾ったカラーリングは、とても深い漆黒のなかに様々な小ネタを効かせた“ブラックゴールド”でありました。価格は45万5000円

 

「ワシゃあ宗一郎さんがブチ好きじゃし、メーカーとしてのホンダも尊敬しちょる。けど、今回のCBなんちゃらは、あまりにも露骨すぎんかのう?

Cくんの言いたいことも分かりますが、ライバルを徹底研究して似たような対抗馬をぶつけるというのは、世の中ではよくあること。

TBSの「ザ・ベストテン」にNTVの「ザ・トップテン」、四輪ホンダの「ストリーム」にトヨタの「ウイッシュ」、四輪スズキの「ソリオ」にダイハツ「トール」……。

まぁ、確かに平成以降のバイク業界で、これほどコンセプトやスタイリングなどが似通ったガチライバルというのは珍しいのですけれど。

CB400SS

●2002年に発行された「CB400SS」カタログより。速度計と回転計の大きさやデザインや並び、クロームメッキ加工されたメーターカバーの意匠に至るまで結果的に(?)似通っている両車。「CB400SRじゃん!」とCくんの怒りは収まることを知らず熱弁は続き、中学生時代に気になっていたアノ娘と同窓会で旧交を温めちゃおうかな〜という淡い期待はもろくも消え去りました

 

それだけホンダとしても「3度目(CL400を含めると4度目!?)の挑戦で負けることは許されない。外野が何を言ってきても構わんッ!」という不退転の決意ビッグシングルロードスポーツ市場を奪取しにきたということでしょう。

さて、その顛末は……? 

それは次回のお楽しみということで、よろしくお願いしまぁぁぁぁぁぁぁすっ!(←映画『サマーウォーズ』の主人公、健二くんっぽく)

CB400SSカスタム

●資料をまさぐっていたら、こんな車両も……。何だコレは!?

 

あ、というわけでCB400SSは文句なしのホンダクオリティと、温故知新なスタイリングが高い次元で融合を果たしたミラクルなバイク。もちろん相場は少々過熱気味とはいえ「ゼッタイSR400/500が欲しい!」という思いを貫くもヨシ! 他にも多彩なモデルがそろうビッグシングルロードスポーツは新鮮な驚きをアナタに教えてくれるはず。レッドバロンの良質な中古車なら安心して乗り出せますよ。まずはお近くの店舗でスタッフとご相談を!

CB400SSというレジスタンス【中編】はコチラ!

FZR250Rというフィナーレ【後編】はコチラ!

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事