「今は、もう、作らない、ホンダ〜V4~」(←大きな古時計のメロディで、歌声はもちろん平井 堅さんで)。頬をつたう心の汗とともに始まりました、排気量1.2ℓ超えのホンダV型4気筒パワーユニット搭載車に関する“あれやこれやコラム”。V4 と言えば二輪界の特級伝説である1979年の「NR500」から語り出したいところですが、グッとこらえてラグジュアリーなV4フラッグシップモデルについて再検証してまいりまショウヘイ☆オオタニ!

VFR1200F正面

●2010年型「VFR1200F/DCT」カタログより。ヘッドライトの形状からして「今までにないホンダ車がやってきた!」というワクワク感が全開でしたね〜。そんな超ハイテクノロジーV4マシンと同時並行して新生空冷並列4気筒ビッグバイク「CB1100」も開発していたのですから(デビューは同じ2010年)、ホンダおそるべし……

 

 

XR100モタードという小さな巨人【後編】はコチラ!

 

平成22年、「ゲゲゲの女房」が放映された同時期に降臨!

 

いやはや、もう13年以上前の話なのですか~。

 

ホンダ「VFR1200F」がデビューした2010年は、小惑星探査機「はやぶさ」7年間におよぶ宇宙の旅を終えて地球へ帰還した年でもありますね。

探査機はやぶさ

●どれだけ奇跡的な軌跡だったのかは「探査機はやぶさにおける、日本技術者の変態力」などの動画をご確認ください。映画化も複数(!)されておりますので、ご興味のある方は是非……

 

 

地球と火星の間にある小惑星「イトカワ」の微粒子を回収(世界初の快挙!)するため、波乱万丈に過ぎた旅の軌跡は今思い出しただけで心の汗が顎までつたっていくほど強い印象を残しております……。

 

そんな“はやぶさたん……いやさん”が大気圏に突入して美しくも悲しげな光の筋を描きながら燃え尽きた約3ヵ月前となる3月18日に、日本市場へ向けて発売を開始したのが今回の主役、ホンダ「VFR1200F」だったのです。

落下イメージ

●小惑星探査機「はやぶさ」は、2010年6月13日に地球へ帰還。秒速12㎞という凄まじい速度で大気圏へ突入した機体は空力加熱により発生した約3000℃もの高熱を受けて四散するものの、貴重なサンプルが入っていた搭載カプセルは無事にオーストラリア・ウーメラ砂漠へと落下させ、その運用を終えました。上写真はあくまでイメージですけれど、ちりぢりになった機体はまさしく複数の流れ星となって夜空を照らしたそうです

 

レースの香りが全くしないV4スポーツツアラーとして新登場!

 

当時、八重洲出版モーターサイクリスト編集部のスタッフだった筆者は、ご招待を受けた発表試乗会へイソイソと出掛け、実車をマジマジと観察し、作り込みの美しさにホレボレしつつ、開発者たちによるプレゼンテーションをイマカイマカと待ち構えておりました。

VFR1200F RED

●2010年型ホンダ「VFR1200F」。新開発の1236㏄水冷4ストV型4気筒OHC4バルブエンジンは最高出力111馬力/8500回転、最大トルク11.3㎏m/6000回転(海外仕様は173馬力/13.2㎏m)を発揮! ホンダ市販二輪車として初めてスロットル・バイ・ワイヤを採用し、多種多様な走行条件に応じてライダーの意志に忠実なスロットルコントロールを可能に……。シートはホンダ初となる一体発泡タイプで長時間のライディングでも疲れにくいものとしながら、国内モデル専用のローシートとすることでシート高790㎜を実現していました。車両重量268㎏、燃料タンク容量18ℓ、60㎞/h定地走行燃費は20.5㎞/ℓ。税抜き当時価格は150万円(消費税5%込み価格は157万5000円)!

 

 

そして会場の明かりが落とされて開発キーワードがデカデカとプロジェクターにて映し出された瞬間、筆者は日本海溝より深く感動いたしました。

 

 

「ランチは300㎞先の高原ホテルで」

VFRランチ風景

●2010年型「VFR1200F/DCT」カタログより。高原ホテル……というよりは海沿いのレストランっぽいですが、こちらのロケ地がどこかは聞きそびれました(笑)。ともあれ、筆者のような既婚オッサン……いや配偶者のいるナイスミドル(?)からすれば、いやがおうにも憧れてしまうシチュエーションではありますな。島耕作がライダーだったら絶対に描かれそう (^^ゞ

 

 

~ 家族、恋人や仲間と2人で市街地の自宅から郊外を抜け、高速道路を経て、ワインディングの先にあるレストランで優雅に昼食を……そんな場面、ライフスタイルを想定しました。各シーンにおいて、ライディングそのものの楽しさはもとより、旅先での楽しみを一切阻害しないよう、乗り心地は快適で、リゾート風景にも映える姿であることや、再び家に帰ったときにはパッセンジャーから「楽しかったね、また行きたい」と言ってもらいたいとも考えました。(後略)~

VFR1200Fイメージ

●いやぁ、妄想が広がりまくる開発キーワードではないですか! さっそく会場でマップアプリを使って都庁から半径300㎞の円を描いてみると、全部すっぽり入る都県は(小笠原諸島を除いた)東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、富山県、静岡県、愛知県、福島県(!)。一部入らないけれど大部分が入ったのは新潟県、岐阜県、石川県……だったかな。まぁ、道路のキロ数でいくと大きく変わってくるのですけれど、そんな先までバヒュン!とタンデムランして最愛の人と非日常的な美食をいただく……。ロマンですな!

 

 

配布されたプレスインフォメーションから開発キーワード、そしてその補足文までを長々と引用させていただきましたが、まさに「VFR1200F」はこの目標どおりの仕上がりを誇っていたのです。

 

有機的な美しさをたたえた脱スーパースポーツデザイン

 

やはり真っ先に目を引くのは、新鮮そのものなスタイリングですよね。

VFR1200スケッチ

●デコッパチ(?)なヘッドライトとボディパネルとの透き間にエアインテーク機能を持たせるという斬新な造形が目を引くフロントビュー。ボリューミーなボディ前半分とは対照的に必要最低限な要素で形作られているテール部分がシュッと引き締まった印象を見る者に与えます。駆動方式はメンテナンスフリーのシャフトドライブが採用され、プロペラシャフト内にダンパーや等速ジョイントを配置することにより適度な“遊び感”のある駆動フィーリングを実現していました。ホント、細部の細部に至るまで考え抜かれた高品位パーツが多数おごられているのです……ロマン!

 

 

ちょうどその頃からホンダ(とヤマハ)が積極的に訴求をし始めた“レイヤード(積み重ねるという意味……つまり多層)”構造のフェアリングデザインが採用され、ライダーの快適性とエンジン冷却性能などを高い次元で両立していました。

VFR1200サイドイラスト

●真横から描かれたデザインスケッチを見ると「VFR1200F」の斬新なフォルムがよく分かりますね。世界グランプリマシンとして水冷4ストV型4気筒DOHC8バルブ(!)エンジンを搭載し、1979年に衝撃デビューを果たした「NR500」以降、市販車版も常にレースシーンを背景にしていた“ホンダV4”が完全にスーパースポーツ路線と決別し、スポーツツアラーへと変貌したことが良く分かります。走行風をどう避けてどう活用するかといったエアマネジメントにもコンピュータ解析を駆使した最新の知見が反映されました

 

 

具体的に言えばヘッドライト横にある鋼のようなシルバーパーツの内側からミドルカウル内側へと誘導された走行風は、エアクリーナーボックスへ密度の高い冷えた空気を届けるとともに「VFR」と車名が入れられた銀色の部分から流れ出ていくことで乗り手をエンジン熱から防御

 

そのミドルカウル下部のレイヤード構造による銀色部分とアンダーカウルとの透き間からは、ラジエターとパワーユニットを通過したアチチな熱風を下方に向けて強制的に排出する役割が持たされており、結果的に通常ならカウル側面の上方にドーンと設定されてしまう排熱用の開口部(アウトレット)が不要になるため、ボディサイドに艶めかしくも大きな“面”が広がる官能的な造形が実現できたのです(痛単車化のキャンバスとしても最適!?)。

VFR走り横から撮影

●サイドカウルとロアカウルとはつながっておらず複雑なアールを描く金色のエキゾーストパイプがチラリと見えて、なんとも官能的。巨大なラジエターを通過した熱風はその透き間から出ていくよう導かれており、走行中のライダーを熱害から守ってくれました。ただ、渋滞に巻き込まれてしまうと、やはり股火鉢状態になってしまうのですけれど……それは致し方なし

 

 

そのミドルカウルから躍動的なうねりをもってつながるガソリンタンク部は、シュッと比較的コンパクトにまとまりつつニーグリップもしやすい形状。

 

そこから車体後部へかけてはリヤ周りのボリュームを極限まで削ぎ落とすという、多くのホンダスポーツモデルからモトGPマシン「RC213V」へと通じる“マス集中フォルム”が具現化されているのです。

VFRフルパニア

●この角度から眺めると、レイヤード構造のフェアリングデザインがよく分かりますね。写真の車両はトップボックスに左右のパニアケースにメインスタンドまで装着してある純正オプションテンコ盛り仕様。「VFR1200F」はこのような状態の中古車が流れてくることもままあるそうですから、巡り会ったならソッコーで決断しちゃいましょう!?

 

 

さらにさらに視線を下へ落とせばシャフトドライブを内蔵した片持ちスイングアーム……“プロアーム”が鎮座ましましているではあ~りませんかっ! 

 

後日、何度となく取材で使用した「VFR1200F」の広報車を洗車いたしましたが、水洗い用のモコモコグローブをはめた手でも如実に感じることのできる、ヘッドライトからアッパーカウル~テール~リヤホイールへ至るまでの滑らかさは絶品かつ最高でありました(チェーンをシコシコ磨く苦労もないですし!)。

VFRリヤまわり

●ココココ! こちら側からホイールの透き間を突き抜けて向こう側のリムまで指が届きましたし、タイヤを回転させることなく、ほぼ全周を一気に磨き上げることができるのも片持ちスイングアームのあまり知られていない利点。マスの集中化に寄与するゴツいマフラーもサイレンサーのステンレス部分をササッと吹き上げるだけで光り輝いてくれるので、取材先でも“映える”写真が撮れたことを今、思い出しました

 

 

連綿と続いた“シリンダー開き角90度”とも決別した新生V4!

 

そんな「VFR1200F」ならではの流麗かつ独創的なプロポーションを実現した最大の要因は、やはり完全新設計された1236㏄水冷4ストロークV型4気筒OHC4バルブエンジンであることは間違いのないところ。

 

と、ここまでサラッと読まれて違和感を覚えた人はいらっしゃいますか?

 

該当された方は筆者と同じ感性の持ち主です(嬉しくはないかもしれませんけれど(^^ゞ)。

VFR1200Fエンジン

●2010年型「VFR1200F/DCT」カタログより。いやもう1ページ丸ごとエンジンだけの写真がドーン! それだけの価値があるからこそカタログ製作担当者も燃えたのでしょう。ハイテク満漢全席のエンジンで、筆者が聞き慣れていなかったのが「密閉負圧クランクケース」。オイルポンプと同軸で取り付けたスカベンジポンプによりクランクケースの内側を強制的に負圧にすることで、ピストン運動により起こされるポンプロスを低減するというもの。同時にクランクケース内の余分なオイルが排出されることでクランクシャフトによるオイル攪拌を低減しフリクションを抑える……というモトGPマシンにも採用されている新技術が導入されていたのでした

 

 

そうなのです、最新のV4エンジンなのにOHC……。

 

「そこは当然DOHCじゃないの?」と主要諸元を何度も確認してしまったスペック至上主義ヤロウは、発表会にてこの新世代V4エンジンの各部に込められた開発陣の真意と情熱を知って、会場で静かに赤面したのでした。

 

 

まず、このパワーユニットが目指したのは、徹底的な「リアルワールドでの気持ちよさ」であり、出力特性はスポーツツアラーとしての快適性と扱いやすさを最重要視したものとしながら並列6気筒or4気筒or2気筒でも、水平対向6気筒or2気筒でも、ましてやV型2気筒でもない、V型4気筒ならではのエンジンキャラクターを前面に押し出した独特な鼓動感(開発陣いわく「V4ビート」)の獲得でした。

 

まずはライダーが不快に感じやすいエンジンの1次振動をバランサーを使わず理論上“0”とするため、ホンダの十八番(おはこ)である位相クランクテクノロジーを全注入(詳しい説明はこちら)!

エンジン断面図

●「VFR1200F」のエンジン断面図。「NR500」以来ホンダスポーツV4が続けてきた“Vバンク角90度”の呪縛(?)から解き放たれ、Vバンク角76度を選択しエンジン前後長を短縮。エンジンヘッドもOHC(ユニカムバルブトレイン)を採用することで、とてもコンパクトになっていることが分かります

 

 

エンジン前後長を短縮することにも役立つシリンダー挟み角76度というVバンク角を採用するとともに、28度位相ピンのクランクシャフトを導入することによって1次振動をキャンセルし、V4エンジンならではの不等間隔爆発が生み出す鼓動感「V4ビート」を際立たせているのです。

クランクシャフト

●これが狭角76度のVバンク角ながら、一次振動を理論上“0”にしてくれる「28度位相ピンクランク」! この図を見ただけでとんでもない加工技術と高い精度が必要なことが伝わってきませんか……? これにより、従来のホンダV4エンジンとも異なった、独特な不等間隔爆発による「VFR1200F」ならではの鼓動感が生まれたのです!

シリンダーレイアウト比較

●新生V4エンジンはシリンダーを左右対称にレイアウトすることにより、ピストンの往復運動から生じる左右方向のカップリング振動を理論上“0”にし、V4本来の独特な鼓動を際立たせているのです。そしてリヤバンクのシリンダーヘッド幅を狭くすることが可能となったため(上図版の右側、♯2と♯3が連なっているのがリヤバンクのシリンダー。明らかに左右幅が狭い)車体の跨ぎやすさも向上! つまりV4エンジンの太もも内側にくる部分がスリムになっているということですね

 

 

(S)OHCという表記ゆえに「ショボい」という誤解がまん延

 

そしてそして前述した「なぜDOHCではなくOHCなのか?」という謎への解答は「OHCと言えばOHCだけれども、一般的なOHCではなく特殊なOHC……“ユニカムバルブトレイン”を採用したから」ということになります。

エンジンヘッド

●はい、こちらが主要諸元のスペック上は単に「(S)OHC」と表記されてしまう「ユニカムバルブトレイン」です。確かにカムシャフトは1本……なのですが、一般的な「(S)OHC」はピストン直上の中央……赤丸で囲んだようなところにカムシャフトを配し、吸気バルブと排気バルブをともにロッカーアームで駆動させるのですけれど、写真の“ユニカムは”明らかに違うではないですか! ただ、恥ずかしながら先行リリースでスペック表を見たときの筆者を含め「OHC=ショボい、DOHC=エライ」という狂乱のバイクブームを体験してきたがゆえの頑固な先入観を持って「VFR1200F」を見てしまった人も少なからずいたようですね。マリアナ海溝より深く反省……

 

 

スペック至上主義ヤロウが大好きな「DOHC」とは“ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト”との意味で、シリンダーヘッドの上にカムシャフトが2本あるというエンジンの構造を表すもの。

 

何が凄いのかと言えばハイパワーを生み出すためのエンジン高回転化がしやすい(分かりやすい解説はコチラ!)ということ……なのですけれど、ご想像のとおりエンジンヘッド周りが大きく、重たくなるというデメリットは避けられません。

 

対して“ユニカムバルブトレイン”はカムシャフトこそ1本のみ(つまりSOHC=シングル・オーバー・ヘッド・カムシャフト。Sを略してOHCと表記することも多い)ですが、吸気側バルブをカムシャフト直押しによって駆動させ、排気側バルブはロッカーアームを介して動かすという、一般的なOHCとDOHCのいいとこ取りをしたホンダ独創のテクノロジー! 

 

2002年型の「CRF450R」で初採用されて以来、世界の頂点で戦うホンダ4ストモトクロッサーシリーズで改良に次ぐ改良を重ねられてきた“ユニカム”が(解説はコチラ!)、満を持して公道用量産車へ導入された最初のモデルこそ「VFR1200F」であったのです。

VFR1200F白

●訴求色である赤……「キャンディープロミネンスレッド」と同時に登場したのが目にも眩しい「パールサンビームホワイト」。初代「VFR750F」が採用し、当時話題となった「パールホワイト」のイメージを継承したのだとか。丸いウイングバッジや銀色部分の塗装も含め、全てに気合いが入っていたことは接するごとに伝わってきました。次回で詳しく述べる“DCT”も含め、近年ホンダ車の新技術「初採用!」は「VFR1200F」シリーズであることが多かったのですよ〜

 

 

いいとこ取りだけあって、従来のOHCより高回転までエンジンが回せるのに、DOHCよりはエンジンヘッド周りがググッとコンパクトに……。

 

ゆえにマスの集中化が図れるだけでなく、スリムで足着き性のいい車体レイアウト構築にも一役買ったのですから大したものです。

アフリカツインエンジン

●2010年の「VFR1200F」が先鞭をつけた公道用量産車へのユニカムバルブトレイン採用。今やその勢力は拡大する一方で、写真の「CRF1100Lアフリカツイン」シリーズが搭載するエンジンはもちろん、「ゴールドウイング ツアー」、「NT1100」、「ホーク11」、「レブル1100」シリーズ、「XL750トランザルプ」と大排気量人気車のほとんどが“ユニカム”だと言っても過言ではないほど。そしてホンダ公式ウェブサイトの主要諸元では今や「〜OHC(ユニカム)4バルブ〜」と注釈が入るようになりました。「VFR1200F」のデビュー当時、「OHCなんてショボい」と誤解されたことが、よほど腹に据えかねているのでしょうか……!?

 

 

ちなみにバイクの解説によく出てくる「マスの集中化」とは、撒き餌をしたら鱒が一斉に集まってくる……ことではなく、エンジンなどマス(mass=質量・重量)があるものを、できるだけバイクの重心付近に集中させること。

 

そうするとライダーがバイクを取りまわすときや走行中に寝かせ込むことが軽くなったり、加減速やコーナリング中の安定感も高まるのですね。

 

……とまぁ、さすがは2010年に登場した完全新設計のV4フラッグシップツアラー、全身がこれハイテクノロジーなメカニズムの塊でした。

 

それらが全てバイク旅を愛する大人のライダーに向けた“万全のサポート方向”へ構築されていたことに、今、改めて感動しています。

VFR1200F

●写真は2010年型「VFR1200F/DCT」カタログより。筆者も複数回走らせる機会を得たのですけれど、まずエンジンを掛けて軽く空ぶかししただけで、従来のV4エンジンとは異なるパルス感に陶然としました。気負うことなく発進すれば、車重を感じさせない太いトルクがドンドン車速を上げていきます。マフラー内には可変排気バルブが装備されているため、高回転まで回すと音質が明確に荒々しいものへ変化してライダーのやる気もマシマシに! 位相クランクゆえに生み出された独特な不等間隔爆発により、リヤタイヤが路面をしっかりとつかんでいるような感覚が走行中ずっと感じられるため、コーナリングも恐怖心なくこなせていけるのです。秀逸なのが新設計された「6POTキャリパー+コンバインドABS」で、リヤブレーキを踏むだけで適切な制動力がフロントブレーキへも伝達されるから楽チンそのもの。いつしか右手はスロットルを操作することだけに集中……。と、当時の試乗メモにはやたら感動している走り書きが残されていました。そしてDCT版は……!?

 

 

さらにさらにさらに! 同じ2010年、鮮烈デビューからたった約4ヵ月後の7月29日からは二輪車用としては世界初となる有段式自動変速機(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を搭載した「VFR1200F Dual Clutch Transmission」まで登場! 

 

いやもうバイク雑誌業界は大騒ぎとなりましたヨ……。

DCTカタログ

●2010年型「VFR1200F/DCT」カタログより抜粋。ポルシェがレース用として開発し(ポルシェ・ドッペルクップルング=「PDK」)、フォルクスワーゲンとアウディが2003年から「DSG」と銘打って市販車へと導入した「デュアルクラッチトランスミッション(=DCT)」。クルマの世界で一躍大ブームを起こしたこの機構をホンダが世界で初めてバイクへと採用したことは大きなニュースになりました。今や「NC700/750」シリーズや「CRF1000/1100L アフリカツイン」シリーズほか、数多くのモデルで選べるようになり幅広い支持を得ています。その始まりも「VFR1200F」だったのですよ!

 

 

次回は“DCT”の解説とともに、その乗り味や忘れがたき先駆“車”などについても語ってまいりましょう!

 

 

あ、というわけで卓越したハイメカニズムでオーナーを全力で“お・も・て・な・す”、ホンダのV4フラッグシップツアラー「VFR1200F」は、今こそ再注目すべき価値のある1台。レッドバロンの上質な中古車なら、走る、曲がる、止まるといった走行性能に問題ないことは当然、違法改造箇所がなく、必要書類もそろい、パーツやアフターサービスまで心配ご無用! まずはお近くの店舗へ足を運んでみてくださいませ~。

 

 

VFR1200FというV4最高到達点【中編】はコチラ!

 

 

XR100モタードという小さな巨人【後編】はコチラ!

 

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