確かに便利だけれど
スマホホルダー、愛車に装着してますか? バイクのハンドルに取り付けてスマホを固定する、バイク用スマホホルダーです。付けてる方が圧倒的に多いんじゃないかなあ。便利ですもんね。
何が便利って、グーグルマップ(Google Maps)などの、マップアプリが使えるようになることです。これがナビ代わりになる。目的地へ向かうのに、これほど便利なものはない。しばらくまっすぐ進めとか、まもなく右折だとか、ひと目でわかる。
以前はこれ、高価なバイク専用ナビを購入した方だけの特権だったものが、タダでできちゃう。いや実際にはスマホの購入代金や通信費がかかるのでタダではないんだけど、スマホはひとり一台持つことが当たり前の時代ですから、あとはもうスマホホルダーさえ買っちゃえばそれでOK、道に迷う心配もなくなる、というわけ。
そりゃ、取り付けますよね、スマホホルダー。ツーリングが趣味だというライダーなら、ほぼ100パー装着しているのではないでしょうか。
かくいう僕も、装着しています。愛車のXSR700は、ハンドルまわりがスッキリしていてスタイリッシュで、本当はスマホホルダーなんて取り付けたくなかったのですが、便利さには勝てませんでした。
ただし、スマホ自体は「ここぞ!」というとき以外は、ホルダーに取り付けません。スマホが壊れたら困るからです。
振動でスマホが壊れるという恐ろしい話があるじゃないですか。マップアプリを使えば高価なナビを買わずに済む、というのが大前提だったのに、スマホが壊れて買い替える? だとしたら、むしろ大損ですからね。
昔は紙の地図が頼りだった
ここに古い地図があります。昭文社が1985年に発行を開始した『ツーリングマップ』シリーズ。文庫本よりちょっと大きいB6サイズで、携帯性は抜群。ライダー用の地図として開発されたものです。
昔はこれをタンクバッグに入れてツーリングしていたんですよね。
コンパクトさだけが売りなのではなくて、地図上にライダー向けの「見どころ情報」や「道路交通情報」などのコメントが載っているところがミソだったんです。
古い地図なのに捨てられないのは、思い出が詰まっているから。
ページをめくると、当時の書き込みがあります。赤いボールペンで書き込んだ、メモや日付、目印。昔、ここを走ったんだなあ、ということがわかります。
あるいは、道の歴史。ビーナスラインはこの時代まだ有料道路だった、とか、あの高速道路は未開通だった、などなど、地図上で時の流れを振り返ることができるのです。
紙の地図を頼るのは、今も
『ツーリングマップ』シリーズは、1997年に大きくリニューアルされました。それが現在も発行されているA5判の『ツーリングマップル』シリーズです。
「北海道」から「九州・沖縄」まで、全7巻。ライダーのための役立ちコメントは、年を追うごとに充実。地図上のコメントは、取材ライダーたちが毎年、何十日間も実際に走って調べてきた結果ですから、信頼できるもの。
紙の地図は等高線も記載されているので、慣れてくれば山や谷、平野部などの雰囲気もつかめるようになってきます。神社や寺院、港、工業団地などの地図記号も載っているし、『ツーリングマップル』の場合はガソリンスタンドやコンビニのアイコンも載っています。
これらは、グーグルマップなどのアプリにはない利点ですよね。
『ツーリングマップル』は、『ツーリングマップ』よりもひと回り大きくなりましたが、文字がもう少し大きいと読みやすいのになあ、ということでB5判の『ツーリングマップルR』も発売されています。
『ツーリングマップルR』はリング式ですから、机の上でページを開き、ハンズフリーで眺めることができます。
「今度、どこをどう走ろうかなあ」と、ツーリングのプランを練るのに、とても便利。
とまあ、そんなわけで、マップアプリを使ったツーリングが当たり前になった現代も、僕は「紙の地図」を頼りにバイクで出かけるのです。
旅先の宿で、明日はどこを走ろうか、などとページをめくるのも楽しいものなのです。
マップアプリには従わない
もちろん、マップアプリも使いますよ。せっかくスマホホルダーも買ったんだし。あるものは使わないと、もったいない。
マップアプリをナビ代わりに使って、これは便利だなあと強く感じたのは、リルート機能。
ナビの指示と違うルートにハンドルを向けると、マップアプリはその時点での最良ルートを再計算して表示してきます。
これを利用して、僕はどんどん寄り道を楽しんでしまうのです。つまり、マップアプリの指示には従わない、という使い方。
マップアプリには、目的地に到着するおおよその時間が表示されますから、まだ時間に余裕があるなと判断できたら、気の向くままに寄り道しちゃえばいいのです。
予約した宿に18時までに到着したい、という場合。ナビの指示通りに向かえば16時に到着するとします。だったら、その差の2時間を、自由に使えるじゃないですか。
観光案内の看板を頼りに寄り道してもいいし、道の途中、気になるお店を見かけたら、立ち寄ってもいい。
遅刻の心配は不要です。あとはマップアプリが従順なしもべとなって再計算してくれます。
紙の地図は終わりのない本
最近、友人が病気で長期入院しまして、僕は毎日LINEでやり取りしているのですが、友人いわく、ヒマを持て余して大変とのこと。
スマホばかり見ていると目が疲れるし、病室のテレビを見ていても飽きてしまう。なので友人は日中、好きな読書をしながら時間をつぶしているそうです。ただし本を手にしても、数時間も経てば読み終わってしまうとボヤキます。
入院期間は合計3ヵ月。読書で時間をつぶすとしたら、何冊も必要になるでしょう。
僕だったら地図でも眺めて過ごそうかなと考えています。
地図が一冊あったら、どれだけ脳内で遊べるか。あそこに行った、ここも行った、そのときはこんなことがあったと、昔のツーリングを思い返してもいい。退院したらバイクでどこへ出かけようかと夢想してもいい。
紙の地図は、読み終わるということがない。読む気になればいつまでもページをめくれる、不思議な本です。
マップアプリだと、どれだけ時間がつぶせるでしょうか。その差は、かなり大きそうです。