「いいとも~!」と約32年間の長きにわたって世界へ友達の輪を広げてきた「笑っていいとも!」が惜しまれつつ歴史に幕を下ろした2014年3月末日。その数週間後となる同年4月18日にまさかの大復活を遂げたミドルV4マシンが「VFR800F」でした。先代まで培われてきた優れた資質を受け継ぎつつ、変えるべき部分は変えて“エレガント・スポーツ”を標榜する大人のツアラーへ……。その足跡をたどりましょう!
●はい、こちらが最終型となったホンダ「VFR800F」に用意された“INTERCEPTOR”カラーこと「パールグレアホワイト(ストライプ)」です。……まぁ、間違いではないのですけれど、せめて「トリコロール」とかド直球勝負で「インターセプター」とかが色名にチラリとでも入っていたほうが、お好きな皆さんにとっては嬉しかったのではないかなぁ……などと思ってしまいました。国内仕様のVFR750〜800〜1200系はほぼほぼ派手なグラフィックを廃した単色で勝負していたので、塗り分けがされるだけで印象がまるで変わりました!
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「ミドルVFR、復活していいかな?」「いいとも〜!!」
「♬おっ昼休みはぁウキウキ ウォッチング……」
●「友達の友達はみな友達だ。世界に広げよう友達の輪(WA)!」……。いいとも人気勃興期がちょうど多感な中高生時代だったものでクラス全員、妙な土着宗教のようにOKサインを出しまくっていた記憶が……
改めて調べてみて驚きました。
正式名称「森田一義アワー 笑っていいとも!」は1982年10月4日から2014年3月31日という実に約31年6ヵ月もの間、毎週月曜日から金曜日まで粛々と正午から1時間生放送されていたのですね。
もちろん筆者もちゃんと観ていた……と言いたいところなのですが、生まれ育った山口県新南陽市(現周南市)の海沿いは電波の僻地でして思春期を過ごしていたころにはちゃんと映る民放が2つしかなく、なんと「笑っていいとも!」は夕方4時から録画放映されていたのです。
●これがまた、山の上にある住宅街なら北九州方面から飛んでくるテレビ電波が受信できたりするワケですよ。なので標高の高いところに家があるクラスメイトに頼みこんで、機動戦士ガンダムの再放送を数人の有志たちと視聴させてもらっていました……(^^ゞ
マジな話、4時間遅れの(オトナな)事情を完全理解するまでは「はぁ~、東京って夕方の4時からお昼休みなんだ~」とうっすら信じ込んでおりましたからテレビの影響力とは恐ろしいものです(筆者がアホだったから!? ちなみに「オレたちひょうきん族」は1週遅れの土曜日19時から!)。
そんな山口の片田舎で生まれ育ったピュアボーイが18歳で上京し、バイク雑誌屋稼業となり、ヒーヒー言いながら46歳となった2014(平成26)年……。
●当時、毎月4日ごろ、ようやく発売されるモーターサイクリストを心待ちにしつつ、アライステッカーを貼ったヘルメットと「FZ400」風に塗色した自転車とで徳山高校へ通学していたセイシュン時代……。希望しかなかった!?
ついに終焉を迎えた超長寿お昼休み番組もあれば、一度は命脈が尽きたと思われていながら驚きのリボーンを果たしたミドルV4スポーツツアラーもありました、それが「VFR800F」なのです。
「VFR1200F」のエッセンスもしっかり受け継ぎつつ……
●2014年4月18日から税抜き当時価格125万円(消費税8%込み価格は135万円)で発売が開始されたホンダ「VFR800F(RC79)」。エンジン回転数に応じて駆動するバルブ数を(1気筒当たり)4⇔2と切り替える“HYPER VTEC”を搭載した781㏄水冷4ストV型4気筒DOHC4バルブエンジンは、最高出力105馬力/1万250回転、最大トルク7.6㎏m/8500回転のパフォーマンスを発揮。車両重量242㎏、シート高は789㎜と809㎜の2段階で調整可能、燃料タンク容量21ℓ、60㎞/h定地走行燃費は28.7㎞/ℓ。初っ端から写真のヴィクトリーレッドとダークネスブラックメタリックの2色展開というところにも新生V4モデルに対するホンダの気合いを感じたものです(従来型の「VFR(RC46)」は前期も後期も単色時代がほとんどだったもので……)
コンセプトは『大人のスポーツバイク ~Elegant Sport ~』
プレスインフォメーションに書かれていたより具体的な例を記しますと『片道150㎞の高速道路を快適に、タンデムでもワインディングを楽しくスポーツできるスポーツツアラー』とのこと。
●「NR」、「CBR1100XXスーパーブラックバード」、そして「VFR1200F/DCT」といった数あるホンダ車の中でも非常に限られたプレミアムモデルにしか採用されていないウインカー内蔵式バックミラーを採用していた「VFR800F」。おかげでたたでさえスッキリしているなボディ側面が超絶スッキリしたものに〜
ン……? 「VFR1200F」のときは『ランチは300㎞先の高原ホテルで』でしたのでスケール感が半分になってしまっていますが、まぁそこには触れないでおきましょう(笑)。
●念のため2010年3月に登場したホンダ「VFR1200F」にも触れておくと、新開発された1236㏄水冷4ストV型4気筒OHC4バルブエンジンは最高出力111馬力/8500回転、最大トルク11.3㎏m/6000回転(海外仕様は173馬力/13.2㎏m)を発揮。ホンダ市販二輪車として初めてスロットル・バイ・ワイヤを採用し、多種多様な走行条件に応じてライダーの意志に忠実なスロットルコントロールを可能にしていました。シートはホンダ初となる一体発泡タイプで長時間のライディングでも疲れにくいものとしながら、国内モデル専用のローシートとすることでシート高790㎜を実現! 車両重量268㎏、燃料タンク容量18ℓ、60㎞/h定地走行燃費は20.5㎞/ℓ。税抜き当時価格は150万円(消費税5%込み価格は157万5000円)でありました
ともあれ、排気量を明記していない「VFR(RC46)」が日本市場で2008年ころラインアップ落ちしてから約6年の歳月を経て、変えるべき部分は変え、残すべき美点は残しつつ見事な生まれ変わりを果たした上で「VFR800F」として再登場してきたのです!
従来のソース(マヨネーズ!?)顔からしょうゆ顔への大変身
ナンと言っても真っ先に目を引くのは一新された外観でしょう。
スタイリングコンセプトはズバリ「大人を魅了するエレガントな佇まい」。
いや、冗談抜きでシュッとして引き締まっていながら、スポーツツアラーらしい多機能ぶりが凝縮された姿かたちだなぁ……、と写真でも実車でも眺めるたびにフムフムと感服したものです……。
バイクの“顔”とも呼べるフロントビューは「VFR1200F」から継承した“X”をモチーフとするものへと刷新され、その実現にはLEDヘッドライトの採用も大きな役割を果たしました。
●白さ際立つLEDヘッドライトの眼光も鋭い「VFR800F」の顔。「VFR1200F」から継承したX型キャラクターをエクステンション(リフレクターの延長部)で構成するというスタイリッシュな造形もナイスで、鼻筋も通っているため非常にカッコいいですね! ……ただ、どうしても「仮面ライダーエグゼイド」やZガンダムの顔やレッドバロンのマーク(ヒゲが……)を想起してしまうのは筆者が変なヤツだからなのでしょうか!?
●これはこれでエグカッコいい「VFR(RC46後期)」のフロントフェイス。ビルトインウインカーもこれはこれでキマってましたね。ただし灯火類の光源にはバルブが使われておりましたので、消費電力はどうしても多め……。その点LED化が進んだ「VFR800F」は、浮いた電力を標準装備されたETC車載器とグリップヒーターへも回すことができたのです
サイドビューを眺めれば新旧の変更点は一目瞭然……!
車体側面には疾走感をイメージさせる上下2本のラインが刻まれており、エッジの立った造形が全体の陰影を際立たせています。
●シャープかつ高級感のあるスタイリングを目指した「VFR800F」のイメージスケッチ。ボディの側面に躍動感を与える上下2本のラインを開発陣は『テーマライン』と名付けたのです
従来型「VFR(RC46)」のキモでもあった左右2本出しのアップマフラーは右出し1本に集約されることで、軽量化のみならずマスの集中化にも大きく寄与しました。
●2004年11月に発売されたウイニングレッドな「VFR(RC46後期)」のサイドビュー。プロアーム+アップマフラーだけに車体右側からだとリヤホイール&タイヤがほぼ丸見え!というエロ(?)カッコよさがウリでした……が、コンセプトがスポーツツアラーなのですから旅に便利なパニアケースを装着してしまえば、そんなのは関係なくなってしまうわけで……。税抜き当時価格は105万円(消費税5%込み価格は101万2500円)。エンジン性能は80馬力/7.0㎏m。車両重量243㎏(この後、ABSが標準装備された2006年型以降は車両重量が251㎏に……)、シート高805㎜、燃料タンク容量22ℓ、60㎞/h定地走行燃費は26.5㎞/ℓ
●2014年型「VFR800F」。カウルから露出しているピボットレスフレームとエンジンカバー、ステッププレートなどの位置関係から、メインフレームをキャリーオーバーしていることは一目瞭然……ですが、こちらから眺められる範囲だけでも、前後ホイール&正立フロントフォークのアウターチューブ形状を変更、ラジアルマウント方式になったフロントブレーキキャリパー、リヤホイール締結ボルト数が4本→5本になっていることなどが分かります。タンク容量は従来型から1ℓしか減っていない21ℓを確保しているのですけれど、黒い樹脂パーツを効果的に使うことで非常に小さく引き締まって見えるのです
まぁ、それによってリヤホイールがマフラーのサイレンサー部によって大きく隠れてしまい、プロアーム採用によるスッキリとした“片持ち感”は大幅に減弱してしまいましたけれど、テールカウルのデザインが先鋭的になったり、パニアケースを取り付けやすくなったり、タンデムライダーへの熱害が減るなどの大きなメリットをもたらしました。
●従来型でパニアケースを使うためには、ケース本体のほかに別売の取り付けステーキットを購入することが不可欠だったのですが、新生「VFR800F」ではそちらが不要に! かつ、脱着がより容易になるような工夫が端々に施されており利便性が大幅にアップしました! なお、写真はマフラーに大幅な改良を受けた2017年1月以降のモデルです
何はともあれ、ホンダ広報からデビュー前に配布された車両写真データをつらつらと眺めていても、カウリングを構成している面のスッキリぶりと車体全体のスリム感は際立っているではありませんか。
「Why~!」と今なら厚切りジェイソンさんよろしく激昂(なぜ)していると「VFR(RC46)」にはあったサイドカウルのデッカイ孔がなくなっていることにふと気付き……、そうなのです。
1998年に登場した「VFR(RC46)」が採用し、2002年に出た後期型にも踏襲された無印VFRのキーテクノロジーとも言えたエンジンの左右に熱交換器を2つ設ける「デュアルラジエターシステム」が廃されていたのです!
●写真は2005年型「VFR」カタログより。上の赤いパニアケース付き車両のサイドカウル開口部分と見比べてみてください。ラジエターの位置が変わったことにより、走行風をどう排出していくか……という概念から大きく変わったことが見てとれます。
つまり、サイドにあったラジエターを(一般的な)フロント側へ移動すると同時に「RVF/RC45」同様の上下2分割配置とすることで冷却性能と、ギュッとスリムな外観とを両立させてきたとは……ナカナカやりおる。
そんな一大変化を実現させつつも、アルミツインチューブ式のメインフレームは継続採用されたというのですから、設計の妙を感じざるを得ません。
重たいデュアルアップマフラーを常に支える任を解かれたシートレールはゴッついスチールパイプ製から肉厚調整も自由自在なアルミダイキャスト製へと変更(こちらだけで従来型比で2㎏の軽量化を実現!)。
●図版の濃いグレー部分が新設計されたシートレール。一見、華奢な印象さえ受けますがヘビー級のパッセンジャーが乗り、トップケース&サイドケースに規定(以上)の荷物を積め込んだとしてもビクともしない強度が確保されているのです。さらに股の下へくる部分をググッと中央へ絞り込むことによって足着き性の向上も実現!
さらにはVFRのアイデンティティーとも言えるプロアーム……つまり片持ちスイングアームも形状が刷新されて剛性バランスを最適化しているのですから、スポーティなライディングからロングツーリングにまで幅広く対応する強靱かつしなやかな骨格に抜かりはありません。
●一定以上となったねじれ方向の入力を“いなす”ように構造設計され、高速巡航時の安定感とワインディング走行時の軽快感を両立するハンドリングを実現したリヤスイングアーム。やはり“プロアーム”と聞くだけで往年のメカ好きオッサンの血はバインバインと騒ぐものでございます!?
当時最新のバイクトレンドを余すことなく取り入れて……
肝腎かなめのV4エンジンは従来型で高い定評を得ていた“HYPER VTEC”仕様をベースに、最新の技術を導入するアップデートはもちろん、吸排気系のファインチューニングまでが実施されました。
●ミッションへギヤポジション検出機構を追加し、軽量化に効く小型スターターモーターを採用、加えてレアアース不要の高効率発電機を搭載するなど、エレキ系な実力を数段かさ上げしてきたV型4気筒エンジン。……最高出力○馬力向上だ! ゼロヨン加速○%アップだ! サーキットアタックタイム○秒更新だぁ!という絶対性能の凄さよりも、スマホがちゃんと充電できるか、グリップヒーターは満足に働いてくれるのか、といった普段使いの実利こそが優先される世の中になってしまったのですね。いや、分かってはいるのですけれど……なんだかなぁ(加藤あい、いや阿藤快 ※敬称略)!
それにより低中回転域での出力とトルクの向上だけでなく発電能力まで大幅にアップ!
グリップヒーター、電熱ウエア、ナビゲーションシステム、ドライブレコーダー、スマートフォン、レーダー探知機、アクションカメラ、ETC車載器……ライダーの利便性と快適性を充実させるため、近年とみに増え続ける電気式ガジェット群が要求する電力量へ対応可能な起電パワーまでを兼ね備えたのです。
●セパハン、バックステップ、マフラーが往年のバイクカスタム三種の神器なら、今やスマホ対応電源、スマホステー、ドラレコorETC車載機orインカムがナウなカスタム三種の神器!? 旧車(でなくても)発電能力の低い車両に電気式の用品を大量導入すると、バッテリーがすぐ弱くなってしまいますしね……
そしてそしてバイク自体の電脳化も止まりません。
ミドルVFRが姿を消していた約6年間の間に二輪業界全体でも大幅な進化&改良&導入が実施されていったABS(アンチロック・ブレーキ・システム)は、高精度なことは当然となりシステムの小型軽量化を推進する段階へと突入……。
●ホイールの中心近くに歯車のような部分がございますが、そちらが非接触式車輪速センサー。写真は前輪ですけれどもちろん後輪にも備えられ、車体が今どのような状態になっているのかをECUが判断する貴重な情報を常時送り続けているのです。なおホイールはフロントハブ中心部などを砂中子により中空とした『ファインダイキャスト製法』の中空ホイールを採用。リムの形状にも工夫を凝らすことにより、直進時の路面振動をしなやかに受け止める効果まで持たされているのです!
●フロントサスペンションにはφ43㎜の正立タイプを採用し、新たにテンション側を無段階調整できるダンピングアジャスターを追加……好みに合わせた減衰力の調整が簡単にできるようになりました。なお、フロントフォークのアウターチューブはアルミニウムの削り出し+アルマイト仕上げにより質感の高い外観を実現!
新生「VFR800F」もご多分に漏れずABSの作動を制御するモジュレーターをコンパクトに集約し、ブレーキシステム全体として従来型より5㎏もの軽量化を実現したのです!
当然ながらそのABSシステムが備えた最新式の非接触式車輪速センサーは、ウィンカーオートキャンセラーや、TCS(トラクション・コントロール・システム)、
●大ざっぱに言うと常に前後輪をチェックして後輪のスリップ率が所定の値以上になった場合、フィードバック制御で燃料噴射を絞ってリヤタイヤの駆動力を抑制する……というのがトラコンのシステム。滑りやすい路面を走るときも絶大なる安心感を与えてくれます(過信は禁物ですが)。約10年後の今や125㏄スポーツにも採用される装備となりましたねぇ
クイックシフター(Honda二輪車初としてオプション設定)へも活用されていきました。
●これまた昨今は小排気量クラスへの下方展開が著しいクイックシフター。2014年、この「VFR800F」がホンダにとって二輪市販車用クイックシフターの皮切りモデルとなりました(まだシフトアップ操作のみ、なおかつオプション設定でしたけれど……)。今やシフトダウン対応も当たり前のこととなり、一瞬エンジンを吹かしてよりスムーズな変速が激速でできるまで進化した車両も多数!
イタレリツクセリな配慮が行き届いた、まさに貴公子……推せる!
そんな当時の最新ハイテクノロジー集合体でありながら、一方ではローテク(?)かつ効果絶大な小技も効いているのが「VFR800F」の真骨頂です。
より高度な人車一体ぶりを実現するのに不可欠なライディングポジション最適化に大きく寄与する、好みや体格に合わせてアジャスト(調整)できるシートとハンドルを採用しており、ハンドルはオプションで設定されていた“ハンドルアジャストプレート”を追加することでグリップ位置を上方に13.5㎜、手前に6.5㎜変更できる仕様になっていました。
●左右対になって口をあんぐり開けた宮﨑駿キャラクター……ではありません。税抜き当時価格7000円でオプション設定された「ハンドルアジャストプレート」です。素材はアルミニウム製でキッチリ作られておりますね
また、シートは車体側へ取り付けられているアジャストプレートの位置を車載工具でボルト脱着して変更すれば2段階(789㎜ or 809㎜)の高さ選択が可能となっていたのです。
●工具不要でワンタッチ……ではないものの、追加でなにやらパーツを購入する必要なく、シート高を20㎜変更できる機構を備えていた「VFR800F」。上図にある2つの仕様を乗り比べる機会も得たのですが、ビックリするくらい走りの印象は激変いたしました。自分に適したライディングポジションを実現することは本当に大切です……
モロモロの改良によりスリムになったボディに最適化された各種装備をまとった「VFR800F」は、従来型の最終モデルと比較して車両重量で9㎏もの軽量化を実現!
後日、ホンダ青山本社へ広報車を引き取りにいったときは引き起こし&取りまわしの瞬間から“軽さ”を感じられて感動しましたね~(脳内にあった従来型「VFR」の記憶比)。
セル一発でほどよく調律されたV4ビートがマフラーから吐き出され、輝くメーターの美麗さに感動しながらいざ走りだせば確かに従来の「VFR」より一枚上手に感じられる低速トルク。
●中央にアナログ式回転計を置き、その左右へ液晶ディスプレイを配するという「VFR1200F」や従来型「VFR」にも採用されていたレイアウトを受け継いだ「VFR800F」のインストルメント部分。速度計、時計やツイントリップメーター、外気温計、デジタル燃料計は当然、ギヤポジションとグリップヒーターの作動状況(ON5段階&OFF)の表示までしてくれる多機能ぶりが自慢でした。スロットルを操作するたび弾かれたように動きつつ正確なエンジン回転数を教えてくれるステッピングモーター式タコメーターと反転式液晶に青白く輝く数々の情報を眺めるたびに“未来”を感じたものです
マイルド信号GPが楽しくてしかたなく、いつもより遠回りをして編集部まで戻った記憶がございます。
かくいう市街地走行で特に便利だったのが、新方式のウィンカーオートキャンセラー。
従来のハンドル舵角感知方式とは異なり、前後輪の車輪速差率を感知することで直進、旋回などの状態を判別するという優れモノで、この「VFR800F」が世界で初めて搭載したHonda独自のシステム。
●いやもうコロンブスのタマゴですよ!のウィンカーオートキャンセラー作動概念。車線変更時や右左折終了後に自動的にウィンカー作動を停止させるのに、ABS向けの前後輪センサーを活用するとは……。近年、ハイクラスなモデルではIMU(慣性計測装置=車両の傾きや加速度を検知する)を利用する例もあるようですが、そんなまだまだ高価なパーツを使わなくても一般的になりつつあるABSのシステムを活用しようというアイデアが素晴らしい〜
「ここで(ウィンカーを)止めてほしいなぁ」という意志をうまく汲み上げてくれるカラクリに脱帽……。
とまぁ、一事が万事ライダーへと寄り添う工夫と機構が満載されており、「やるなぁ!」とヘルメットの中で何度となく快哉を叫んだもの。
●晩秋、ロングツーリング取材で「VFR800F」を使用したときはサイコーでしたね〜。ワインディングでは約6500回転を境に4バルブと2バルブが切り替わるハイパーVTECの作動をあえて楽しむためにギヤをチョイスしつつ駆け抜けて、どこまでもニュートラルなハンドリングを堪能。まぁ、従来型比9㎏減とはいえ、並みいるミドルクラスライバルたちと比較すれば重さを感じる242㎏という車重も高速巡航では良い面ばかりで、多少の横風なんぞもろともせず矢のように突き進んでいくではあ〜りませんか。ドリュリュリュリュ〜という特徴的な不等間隔爆発サウンド……V4ビートへ陶然としているうちに旅程が終わってしまったという印象でした。そしてネチネチと洗車し、ピカピカに磨き上げるときにもチョー便利なセンタースタンドも標準装備ですわ〜! 数少ないネガをあえて書けば、クラッチ操作が重かった……。とはいえ、対策してくれる市販パーツも出ているようなので、オーナーになったら調べてみてくださいませ(笑)
約8年6ヵ月間、全力で駆け抜けて広がった「V4の輪」!
かくしてリスタートしたハイメカミドルV4「VFR800F」は翌2015年2月に色追加、
●2015年2月13日に追加された新色の「パールグレアホワイト」。従来の赤と黒に加えて3色展開に! この白と赤は今でも街でよく見かけますね〜(筆者が住んでいる横浜だけの話かな!?)。価格は全カラーとも変わらず税抜き当時価格125万円(消費税8%込み価格は135万円)
2017年1月にはマイナーチェンジを受けて完成度をさらにアップ!
●2017年1月16日から発売が開始されたマイチェン(ホンダ公式はフルモデルチェンジと言ってますが……)版では、内部の消音構造を従来の3室構造から2室構造に変更した異形テーパー形状のマフラーを採用して出力向上(最高出力は2馬力アップして107馬力/1万250回転に。最大トルクは0.3㎏mアップの7.9㎏m/8500回転へ)! 排気音も歯切れのいい重厚なサウンドへ変更されました。そしてなんと、またまた新色「デジタルシルバーメタリック」が追加され空前絶後の4色展開に〜! と同時にメインフレーム、フロントブレーキディスクハブ、フロントアクスルホルダーをブラックで統一して精悍さをマシマシ。また、新たに左サイドカウル部に各種端末の電源に使えるアクセサリーソケットが標準装備化され、前後ホイールへ整備に優れたL字エアバルブも新採用。税抜き当時価格は3万円アップして128万円(消費税8%込み価格は138万2400円)に……
2018年11月30日にのニュースリリースではカラーバリエーション変更とETC2.0車載器の標準装備化がアナウンスされ、同2018年12月14日から「ヴィクトリーレッド」が発売開始。
●従来から標準装備されているETC車載器をETC2.0車載器にバージョンア〜〜〜ップ! 税抜き当時価格は3万4000円上がって131万4000円(消費税8%込み価格は141万9120円 ※2019年10月1日以降は消費税が10%になったため144万5400円)に〜!
そしてそして2019年3月には、あのいわゆる“INTERCEPTOR”カラーが追加され、一気呵成に2022年10月末の生産終了まで変更なく駆け抜けていったのです。
●2019年3月8日、「パールグレアホワイト(ストライプ)」という色名で発売が開始されたラストV4ヒーロー! 税抜き当時価格は赤より7万円高い138万4000円(消費税8%込み価格は149万4720円でした。 ※2019年10月1日以降は消費税が10%になったため152万2400円)へ……
……正直言って、2014年の復活時から消費税8%込みの価格だと135万円という高額商品。
その後、装備の数々がグレードアップされたことや消費税が10%へ引き上げられたこともあり、最終型の“INTERCEPTOR”カラーは上記のとおり150万円オーバーという領域にまで達してしまうことになりました。
それでも類いまれなる高い完成度はSNSの力などで広く拡散されて堅実な人気を維持し続け、2022年10月末が期限となる令和2(2020)年度排出ガス規制の影響による生産終了間際には、駆け込み需要も相当なものがあったと聞いております。
「またいつかV4復活してもいいかな?」「ぜひとも〜!!」
新生「VFR800F」が誕生してから約10年……。
唯一無二かつ最終(あくまで“現状”は(^^ゞ……)となったホンダV4エンジンに心酔し、意を決して購入されたオーナー諸兄姉が多いモデルだけに中古車市場へ流れてくる車両は少なめではありますが、よき縁に恵まれた暁には、ぜひ一度は所有してみることを前向きに検討していただければ……と考えております。
●1987年3月に登場した「VFR400R」以来、2022年に消えた「VFR800F」まで約35年8ヵ月……、ホンダV4のキーテクノロジーとして「笑っていいとも!」より長寿を誇った片持ちスイングアーム“プロアーム”はいつかV4エンジンが蘇ったら、ぜひ同時に復活してほしいもの……!
さて次回は「VFR800F」の兄弟車、「VFR800X」を中心に、ここまで取り上げ切れなかったホンダV4モデルについて総ざらいさせていただく予定です。
●この子だって立派なホンダV4モデル……。果たしてここまでたどり着けるのだろうか(苦笑)
あ、というわけで「VFR800F」はホンダが大切に育ててきたV型4気筒エンジンを搭載するマシンの集大成! レッドバロンの上質な中古車に在庫があるのなら最新技術を駆使したメカのメンテナンスやアクシデント遭遇時の修理でも心配はご無用! まずはお近くの店舗まで足を運んで在庫検索のみならず、あらゆるバイクライフに関する質問&相談までしてみてくださいね~!
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