11月2日、衆議院第一議員会館・多目的ホールにおいて二輪業界から公明党オートバイ議員懇話会(以降、懇話会)の国会議員に対して二輪車利用環境改善に関する要望が行われたので、概要とポイント、私感(ライダー視点)も交えつつお伝えしたい。

自工会とAJが懇話会に説明・要望し省庁がその場で回答

政策について要望したのは、オートバイ政治連盟の2名、一般社団法人日本自動車工業会(以降、自工会)の8名と全国オートバイ協同組合連合会(以降、AJ)の11名で、懇話会のメンバーは衆議院議員が6名、参議院議員が8名の出席となった。

そのほか、要望内容に関係する省庁として国土交通省と警察庁が出席し質疑応答に応じた。国民の代表である国会議員の前で、二輪業界が課題の改善について説明・要望をし、その場で関係省庁が回答するということが重要なのだ。

二輪業界から上げられた6つの要望とは?

▲開会の挨拶を行ったオートバイ政治連盟の吉田純一会長


今回、要望された内容は以下の通り。どれも過去数年間(高速料金問題は十数年間…)にわたって要望が続けられているものだ。

【自工会とAJからの共通要望】
1. 二輪車高速道路料金の見直し
  ※最終目標は軽自動車と同じ車両区分を分離すること
2. 2024年度の二輪車定率割引とツーリングプランの実施

【AJからの要望】
3. 2024年度のETC車載器購入に対する助成金の支給
4. 二輪車駐車場の確保と現実的な駐車違反取締りの実施
5. 商品中古車の軽自動車税の免税、軽自動車と二輪車の価格・
  用途の違いに配慮した二輪車への適切な課税
6. 沖縄県における二輪車の第一通行帯走行規制の撤廃

どちらの業界団体も高速道路料金の見直しを筆頭に挙げている。さらに、販売店(バイク屋さん)の集まりであるAJは、ETC車載器の購入助成、駐車場確保のための附置義務条例制定の促しと駐車違反の現実的な取締り、お店に置かれている商品車(売り物)への免税と軽自動車と二輪車の逆転税額の是正、沖縄県の幹線道路でバイクが第一通行帯しか走れないという規制の撤廃についても求めている。

1・2. 二輪車定率割引の利用増加に向けた要望

▲自工会の要望を説明する飛田淳司さん(本田技研工業株式会社)


自工会は高速道路走行時の二輪車定率割引(以降、定率割)について説明と要望を行った。定率割はETC車載器搭載車両が対象で土日祝日に限って1回の走行が100km以上の時に37.5%の割引が受けられるものだ。ツーリングプラン(特定期間・特定路線の中で定額乗り放題)と同様にネットでの申請が必要になる。

【関連記事】
【2023年版】使い方のお得なアイデアも! ツーリングプラン&二輪車定率割引

定率割は2022年から開始され、休日の日帰りツーリングを喚起して地域の観光振興に寄与するために導入された。初年度は約19万件の利用があったが、軽二輪・小型二輪の保有台数の約390万台に対してはわずか6%の利用に留まった。2023年度は継続してデータを蓄積するという目的で条件の見直しは行われなかったが、更なる利用拡大のため以下の要望が出された。

●要望事項①
100kmという走行条件の撤廃または距離の短縮(1回で30km位で!)
●要望事項②
割引率の見直し(休日割引30%と比べてインパクトが小さい!)
●要望事項③
大型連休の飛び石接続(間の平日も割引の対象に!)

自工会は「今の定率割引は使いにくい!」と言いたいわけだ。東京ICから箱根へ行くにも東名または新東名で沼津くらいまで遠回りをしないと割引対象にならない。本当は箱根新道(無料)へと向かえる小田原西ICまでの距離(66.5km)で割引が効いてほしいところだ。

▲東京ICから東名高速などで箱根まで60kmほど。定率割引はこのくらいの距離で使えてほしい


また、休日割引と比べてしまうと定率割はインパクトが少ないというのも正直なところ。自工会はバイクに限っては休日割引30%を引いた料金に定率割の37.5%割引を適用して56.25%とする割引を求めた。

バイクの高速料金是正の落としどころが普通車の1/2(50%)、軽自動車の5/8(62.5%)であるから、それほどおかしな要求ではないと思うのだがどうなるだろうか。

●国交省の回答(要旨)
国交省道路局の松本参事官:国土幹線道路部会でも車種区分の在り方を検討すべきとのご意見を頂いている。2年間で蓄積したデータをしっかり分析し(二輪業界の)意見も伺いながら検討を進めていきたい。

3. いつやるのかわからない? ETC車載器購入助成への要望

▲販売店視点での要望を伝える全国オートバイ協同組合連合会(AJ)の石井大専務理事


AJが単独で要望したものの筆頭は、二輪車用ETC車載器の購入助成キャンペーンについてだ。このキャンペーンは道路会社別(ネクスコ東日本、ネクスコ中日本、ネクスコ西日本、首都高速道路など)に行われていて、実施期間や金額などは各社によってまちまちだ。

▲購入助成キャンペーンはいつ始まるかわからない。居住地のネクスコからのプレスリリースをチェックし、そのタイミングでバイクを購入するのも手


2023年はネクスコ西日本、ネクスコ中日本と続いたが、ネクスコ東日本がなかなか実施されず東日本地域のライダーをやきもきさせた。結局、ネクスコ東日本がキャンペーンを開始したのは10月27日で、北海道・東北の一部の峠道ではすでに降雪があったというタイミングだった。特に、北海道だと冬期保管の契約で販売店にバイクを預けてしまった人もいるだろう時期で、なんともやるせない結果になっていた。

●国交省の回答(要旨)
国交省道路局の松本参事官:北海道も含めて雪の降る時期に差し掛かるということで、二輪車利用環境としてはもっと早い方が望ましいという話がありました。高速道路会社にも伝えながら検討を進めていきたい。

4. 二輪駐車場の確保と現実的な取締り実施の要望

▲自動二輪車の附置義務条例を制定している横浜市の地下駐車場


民間駐車場はともかく、公共駐車場は市区町村の管理だ。では、国会議員に何を要望したかというと、二輪駐車場の附置義務条例の制定を働きかけた。附置義務条例は、駐車場法に基づき国交省が所管するもので、商業施設などにその規模に応じて駐車場の設置台数を定めるものだが、それを条例として制定(または条例改正)するかどうかは各自治体に委ねられている。

2016年に自動二輪車(50cc超)が駐車場法に組み込まれて以来、二輪車駐車場の附置義務条例を制定している自治体は全国にたったの10市しかなく、なかなか進んでいないのが現状だ。

また、駐車場を確保できない地区においては駐車規制から「二輪車を除く」路線を導入するようにも要望している。こちらは主に警視庁・各県警察が道路交通法に基づいて所管するもので地域の事情に合わせて設置されている。「二輪車を除く」(または「二輪を除く」)は駐車禁止の標識の下に補助標識として設置されるもので、その区間においては路上駐車が可能になるが、現在、東京都内にはひとつもないことで知られている。

▲駐車監視員は重点路線など所轄の警察署が定めたガイドラインに従って放置車両確認標章の取付けを行う


また、現実的な取締りへの要望とは、警察庁から警視庁・各県警察に通達されている「地域の実情に応じた自動二輪等に係る駐車環境の整備に向けた継続的な取組の推進について」に関するもので、主に下の2つについて自治体、道路管理者、民間事業者などと連携・協力し、通達の取組結果を年度末報告書等で警察庁に報告することになっている。

①警視庁・各県警察から市区町村に「駐車場の整備に向けた働きかけを推進」する
②警視庁・各県警察は「自動二輪車等に配意した駐車規制の見直しを検討・推進」する

地域の警察署が自ら積極的にバイク駐車場の整備・働きかけに動くというのは難しい。基本的には駐車違反が集中的に多い場所がある(現在はほぼないと思う)とかライダー(バイク利用者)から改善の要望が警察署に届くなど、地域の警察が具体的に動けるだけの理由が必要だろう。

●警察庁の回答(要旨)
この件については、警察庁からの明確な返答はなかった。

5・6の要望については、後編で紹介しよう。

 

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事