モビリティ革命によるCASEやMaaSの潮流の中で、パーソナルモビリティの各カテゴリーにもその波が押し寄せている。一方で、2050年カーボンニュートラルの実現、今後も続く排ガス規制といった動きにも対応すべく、二輪車においてはコミューター(おもに原付一種/二種のスクーター)の電動化が進められている。そうしたなか、高校生の通学/移動課題の深刻さが増している。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
スクールバス運行の経済的な限界
廃校や学区の統合により、児童や生徒の通学環境は年を追うごとに悪化している。菅政権下のこども庁(現こども家庭庁)では、スクールバスの全国的な展開も期待されたが、2023年に大きく報道された鹿児島県薩摩川内市における運行終了問題のように、スクールバスの運行が限界を迎えた地域も少なくない。
その背景には、働き方改革関連法の施行による2024年問題もあり、同様の問題は今後ますます顕在化してくると思われる。少子高齢化で国も地方も財政が厳しいなか、補助金前提で運行されることが多いスクールバスも万全ではない。
バスの運用スタイルはさまざまだが、バス会社に委託して運行するケースでは、生徒減少の影響を受けて厳しい経営状態に陥ることが多い。文科省が示したスクールバスの通学距離基準は小学校4km/中学校6kmだが、義務教育から外れる高校の場合は規定がなく、地域の実情に応じて自治体や各校に委ねられる。近年は自治体による補助金の支出も難しくなっているのだ。
公共サービスとしても機能するスクールバスの運行問題の一方で、親によるマイカー送迎も限界を迎えつつある。若年層の個としての移動は、課題が大きくなるほど需要も増すと思われる。
課題解決のカギを握る電動原付
自転車以外の自走手段は、16歳以上は免許不要で乗れる特定原付か、16歳以上で免許が取れる原付が通学手段の候補となる。前述した薩摩川内市の鹿児島県立川内(せんだい)高校では、スクールバスの利用者に対して、原付通学の条件緩和や入寮希望者の受け入れ等で対応すると連絡した。
特定原付なら片道5km、原付なら片道20km程度が最長通学距離の目安だろう。原付の場合は排ガス規制をクリアできる新基準原付または電動原付が候補となる。ただし多くの自治体が推進するカーボンニュートラルに寄与すること、スクールバスに替わり国や自治体から補助金(車両購入/充電設備設置等)を得ることを考えれば、電動原付に分がありそうだ。
ホンダが取り組む電動原付の優位性。埼玉県秩父市での活用に挑戦!
電動原付スクーター「EM1 e:」を発売するホンダは、3月5日、埼玉県の中山間地にある県立秩父農工科学高等学校で「高校生と考えるカーボンニュートラルと電動モビリティ」と題したイベントを開催した。
県や秩父市も取り組むカーボンニュートラル推進の中で、バイク通学を行う高校生らに電動原付バイクの有用性を知ってもらうものだ。こうした取り組みが高校生の移動課題改善に寄与するかもしれない。
バイク通学許可条件の適否に関わらず、原付免許を持っている生徒が電動原付スクーター・EM1 e:を使っての安全運転講習/試乗会を体験した。
EM1 e:にも採用されている、国内バイクメーカー4社により仕様統一された「ホンダモバイルパワーパックe:」。学校敷地内で充電できれば、片道20km超の通学にも対応できるだろう。
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