2025年6月7日(土)〜8日(日)、福島県楢葉町にある天神岬スポーツキャンプ場にて“ナラハキャンプ2025(旧名:焚き火 night & キャンプ in ならは)”が開催された。このキャンプイベントは、2011年3月11日に起きた東日本大震災、またこの地震に端を発する原発事故からの復興を祈願して行われており、今回で7回目となる。

“焚き火 night & キャンプ in ならは”の行われる天神岬スポーツキャンプ場にライダー170人が集まった。

福島県楢葉町の天神岬スポーツキャンプ場にライダー170人が集まった。

焚き火がつなぐライダーの思い

皆さんご存知のとおり、福島県沿岸は東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所のメルトダウンが起きた場所。同イベントの発起人のひとりである渡辺 哲さんも、自宅が爆発を起こした原発から半径20km圏内だったため強制退去を命じられ、長らく避難生活を強いられることになった被災者の1人だ。

“焚き火 night & キャンプ in ならは”の発起人である渡辺哲さん。もちろんライダーでスズキのV-STROM250に乗っている。

“ナラハキャンプ2025”の発起人である渡辺 哲(わたなべ あきら)さん。もちろんライダーでスズキのV-STROM250に乗って旅をしている。

 

また、この“ナラハキャンプ2025”に欠かすことのできない存在が日本を代表する冒険ライダーの賀曽利 隆氏だ。氏は長年昭文社・ツーリングマップルの東北版著者として長年東北の魅力を発信し続けており、3.11後は毎年、茨城県との県境である鵜ノ子岬から青森県の尻屋崎まで海岸線を北上する旅を行って、被災地の現状を見つめ続けることをライフワークとしている。

生涯旅人であり、人生総走行距離200万km(!)を目指して突っ走る冒険ライダー・賀曽利 隆さん。1974年生まれで今年78歳でありながら、年間5万キロの距離を走り続ける。僕の知る中で最もパワフルなライダーだ。

生涯旅人を公言し、人生総走行距離200万km(地球50周!)を目指して爆走中の冒険ライダー・賀曽利 隆(かそり たかし)さん。1947年生まれで今年78歳でありながら、年間5万キロの距離を走り続ける猛者。僕の知る中で最もパワフルなライダーだ。

 

思えば僕と渡辺さんとの出会いも賀曽利さんによってもたらされたものだった。あれは3.11から半年後、当時僕が編集長をしていた『Under400』というバイク雑誌の企画で賀曽利さんと福島県浜通りの状況をレポートした際、賀曽利さんの定宿である四倉よこ川荘に渡辺さんが訪ねてきたのだ。

よこ川荘での宴席にて被災者である渡辺さんからいろいろな話を聞かせてもらったが、「立ち入り制限が厳しくなる前にバイクやクルマを取りに、何度か家に帰ったのですが、窓に丸い穴を見付けた時はショックでした。よく日本人は困難な状況ではお互い助け合うとか、暴動を起こさないなんて美談をメディアで見かけますけど、そんなイメージとの大きなギャップを感じました……」と、空き巣に遭い、テレビなど金目なものが何者かによって持ち去られていた時のことを語る渡辺さんの困惑とも諦めともつかない表情が僕は今でも忘れられない。

その後、賀曽利さんとは『風まかせ』という僕が副編集長をしていた別のバイク雑誌で“焚火日和”という連載企画を立ち上げることになり、その連載にかこつけて再び福島で渡辺さんと再開。今度はよこ川荘の庭先で賀曽利さんと共に焚き火を囲むことになったのだが……、渡辺さんの話によれば、あの時の焚き火が“焚き火 night & キャンプ in ならは”や、今日の“ナラハキャンプ2025”につながっているのだという。

2024年に起きた能登半島地震の復興を願うライダー達も駆けつける。

2024年に起きた能登半島地震の復興を願うライダー達も“ナラハキャンプ2025”に駆けつけた。

ツーリングマップルのブースも設けられ最新の2025年版の販売とともに賀曽利さんのサイン会も開かれた。

昭文社・ツーリングマップルのブースも設けられ最新の2025年版の販売とともに賀曽利さんのサイン会も開かれた。

 

イベントのクライマックスは名物の大焚き火

イベントでは昭文社・ツーリングマップルの編集者である舛木 信太郎さんと賀曽利 隆さんによるトークショーも開催。

イベントでは昭文社・ツーリングマップルの編集者である舛木 信太郎さんと、ツーリングマップル東北の著者である賀曽利 隆さんとのトークショーも開催された。

 

16時からの開会宣言&トークショーイベントが終了すればそこからはフリータイム。各々、近隣施設での入浴やテントサイトでの食事を済ませたりしていると、日が暮れた頃にこのイベントの名物である大焚き火に火が入る。

なにせ名前からして大焚き火である、なんでも軽トラック3台分の流木を集めたとか。

ナラハキャンプ2025の目玉はこの大焚き火。この日のために軽トラック3台分の流木を集めたとか。

 

その後は、この大焚き火をつまみにバイク談義や旅談義に花をさかせ、ひたすらみんなで飲んだくれる。賀曽利さんがこの大焚き火の脇でごろ寝してしまうのも恒例行事。……らしいなのだが、次の日の朝は誰よりも早く起きて旅立っていくのも賀曽利さんだったりする。

会場である天神岬スポーツキャンプ場。高台の岬にあるキャンプ場で太平洋側の眺望がすばらしい。

“ナラハキャンプ2025”の会場である天神岬スポーツキャンプ場。高台の岬にあるキャンプ場で太平洋側の眺望がすばらしい。

翌日は10時のチェックアウトを目指して、三々五々に旅立っていくライダー達。ちなみに次回の予定は、「2026年のSSTR翌週の土日」とのこと。

翌日は10時のチェックアウトを目指して、三々五々に旅立っていくライダー達。すでに次回の予定も決定しており、「2026年度SSTR翌週末」とのこと。ちなみに参加費は2025年の場合、日帰り参加は無料で1泊も1000円と施設を運営する(財)楢葉町振興公社の協力で特別価格が設定されている。敷地内に温泉施設もあるなど条件が整っているのでバイクキャンプデビューにもぴったりだ。

 

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