2025年の10月30日(木)から11月9日(日)にかけて、東京ビッグサイトで開催されたジャパンモビリティショー2025を筆者の視点で振り返ります。
第1回は、カーボンニュートラルの実現に向けて国内二輪メーカーも意欲的な展示を行った水素エンジン搭載モビリティです。前回ショー時に比べて展示各社の車体開発も進み、課題もより明確になっていました。

▲日本の各社は自工会のもと、マルチパスウェイでのカーボンニュートラル実現を目指しています。スズキのブースでは様々な次世代燃料によるカーボンニュートラルへの取り組みが見られました
水素エンジン搭載バイクを展示したのは3社
国内4メーカーの中で水素エンジンを搭載したバイクを展示していたのは、カワサキ、スズキ、ヤマハの3社です。まずはそれぞれの展示車両と関連展示を見てみましょう。
なお、水素を燃料とするパワーユニットというと、燃料電池車(FCV)を思い浮かべる方も多いと思いますが、国内4メーカーからのFCVバイクの展示はありませんでした。本記事での水素エンジンとは、水素を燃料とした内燃機関のみを指していますのでご注意ください。
【ご参考】
●燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)/水素と酸素の化学反応で電気を生み出して、その電気でモーターを回して走行するクルマ
●水素エンジン車(HICEV:Hydrogen Internal Combustion Engine Vehicle)/気体または液体(高難度)の水素を燃焼させて動力を得る内燃機関車(ICE)
カワサキ「水素エンジンモーターサイクル」(モックアップモデル)

▲カワサキの「水素エンジンモーターサイクル」(モックアップモデル)
親会社である川崎重工業が取り組んでいる、水素を「製造(つくる)」「輸送(はこぶ)」「貯蔵(ためる)」「利用(つかう)」という全体フローの展示とともに「水素エンジンモーターサイクル」(モックアップモデル)、モーターサイクル用水素エンジン(モックアップモデル)などを展示しました。

▲水素をインフラとして整備、利用するためのフローが説明されていました

▲液化水素運搬船の説明パネルと模型の展示。カワサキの展示説明はとてもわかりやすく、イメージしやすいものでした
なお、「水素エンジンモーターサイクル」には、国内4メーカーとトヨタ、デンソーなどからなる技術研究組合「HySE(ハイス):技術研究組合 水素小型モビリティ・エンジン研究組合」のデカールが大きく貼られており、HySEからフィードバックされた研究技術が活用されていることがわかります。

▲燃料タンク部には「HySE」の大きなデカールが貼られていました
また、モーターサイクル用水素エンジン(モックアップモデル)と6気筒水素エンジン(モックアップモデル)の展示も目を引いていました。

▲モーターサイクル用水素エンジン(モックアップモデル)
6気筒水素エンジンについては、二輪・四輪に限らず汎用性を持たせたパワーユニットとなっており、船舶や航空機への利用も想定した開発が進められています。

▲高い汎用性を考慮されている6気筒エンジン(モックアップモデル)
スズキ「水素エンジンバーグマン」(二輪技術展示車)

▲前回ショーに引き続き「水素エンジンバーグマン」の各部を熟成させてきたスズキ
スズキは、前回ショーでも話題となった「水素エンジンバーグマン」(二輪技術展示車)の細部をしっかり煮詰めてきました。車体各部の主な変更点について紹介します。
まずは、ホイールベースの短縮です。前回ショー時はベース車両のバーグマン400ABSに比べてずいぶんとリヤホイールが後ろに飛び出ていましたが、今回は水素タンクとエンジンの搭載位置を前寄りに変更し、ホイールベースを短くできました。これにより旋回時の挙動も量産車に近づいたそうです。

▲タンクとエンジンを前にずらしてホイールベースを短縮。ただ、これでもまだ量産車より120mm後ろにあるそうです

▲70MPa(メガパスカル)の高圧水素タンクの容量は前回ショー時と同じく10L。現在の法令では二輪車の水素タンクの容量上限は23Lとなっていて、クルマに比べるととても小さな容量で、これにより既存の水素ステーションでの充填は難しく、法令上の大きな課題となっています
一番大きな変更点はツインインジェクターにしたことです。水素エンジンではバックファイヤーが多いので、各バルブポートのなるべく前側に2個ずつのインジェクターを配置することで筒内流動の調整を容易にし、異常燃焼がなるべく起きないような配置になっています。

▲ベース車両のエンジンは水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒399cc。これをツインインジェクター化して異常燃焼の発生を抑えるよう制御しています
水素は次世代燃料の中でも燃焼速度が速く可燃範囲も広いので、異常燃焼が起きやすいのが難点ですが、それをどうやって調整、制御するのかが車体技術上の課題となっています。
(第2回:ヤマハ編につづく)
