レッドバロンが発行するフリーマガジン『R★B』の取材を12年ほど続けています。これまでお会いしたライダーは、10代から80代まで実にさまざま。乗っているバイクも、最新モデルから絶版車まで千差万別です。
そんな取材の中で、今回特に心を動かされたのが、「40歳を過ぎてから二輪免許を取得したライダー」の皆さんでした。(取材した3名の詳しいインタビューは、2026年9月発行の『R★B』で掲載予定です。ぜひお楽しみに!)
「もう若くないから……」
新しいことに挑戦したい気持ちはあっても、年齢や仕事、家庭を理由に一歩を踏み出せない人は少なくありません。しかし今回ご紹介する皆さんは、40代以降に二輪免許を取得し、それぞれのバイクライフを心から楽しんでいました。
では、何が彼らの背中を押したのでしょうか。
ケース1 40年越しの夢を叶えた一美さん

58歳で普通二輪免許を取得した一美さんは、高校時代に原付を運転したときの「自由になれた気持ち」が忘れられなかったそうです。
「いつの日か排気量の大きいバイクに乗りたい。」
そんな夢を胸に抱きながらも、結婚、子育てと忙しい毎日が続き、挑戦する時間はなかなかありませんでした。
転機になったのは、成長したお子さんのひと言でした。
「バイクに乗りたい!」
「じゃあ私も!」
その一言で、約40年越しの夢が動き始めます。
もちろん教習は順風満帆ではありません。教習所では何度も立ちゴケを経験し、「本当に免許が取れるのかな」と不安になったこともあったそうです。それでも諦めずに卒業し、身長153cmでも安心して乗れるエリミネーター250SEと出会いました。
「人生の楽しみが増えました。」
取材中、その言葉がとても印象に残っています。さらに今では、ご家族もライダーとなり、ツーリングという共通の趣味まで生まれました。
40年越しの夢でも、決して遅くはありませんでした。夢は忘れていたように見えても、心の中から消えてはいなかったのです。
ケース2 小柄でも大型クルーザーを乗りこなす、なおさん

「40歳を過ぎてから、自分が大型バイクに乗るなんて思ってもいませんでした。」
そう話すなおさんの表情は、とても楽しそうでした。現在51歳、バイク歴は3年。乗り始めるきっかけになったのは、バイク歴33年のパートナーの存在。
ツーリングへ出かけるたび、後ろに乗せてもらって風を感じるうちに、「自分でも運転してみたい」という気持ちが芽生えます。その思いを胸に教習所へ通い、普通二輪免許を取得。卒業後は、「人とあまり被らない車種が好き」という理由でスズキ・デスペラード400を購入しました。
しかし乗っているうちに、「もっと大きなバイクに乗りたい!」という思いが強くなり、大型二輪免許にも挑戦。そして出会ったのが、ホンダ・ワルキューレでした。
身長155cmという小柄な体格で、大型クルーザーを堂々と乗りこなす姿は本当に格好いいものでした。
取材の最後、「これから免許取得を目指す人へ一言お願いします」とお願いすると、なおさんは迷わずこう答えてくれました。
「“ライダーになりたい”という強い気持ちを持ち続けていたら、きっとなれます。頑張って!」
大型バイクに乗れるかどうかは、体格だけでは決まりません。「乗りたい」という気持ちこそが、一番大きな原動力なのだと感じました。
ケース3 「人生一回!」と48歳で決意した檜垣さん

48歳のとき、沖縄旅行中に偶然目にした一台のアメリカンバイク。その堂々とした姿に目を奪われた檜垣さんは、「かっこいい! 人生一回なんだから、自分でも運転してみよう!」と、その場で心を決めました。
帰宅後、さっそく教習所を探し始めたそうです。
教習所へ通い、免許を取得。ところが、最初に購入したハーレーは想像以上の重量で、取り回しは苦労したそうです。
しかし、それでも諦めませんでした。仕事を終えたあと、毎日のように駐車場で取り回しの練習を繰り返します。重い車体を押し引きすることは、まるで筋力トレーニングのようだったと笑います。
その積み重ねが自信となり、やがて日本各地にロングツーリングへ出かけるようになりました。四国や北海道を走り、日本全国47都道府県を踏破。今では次の夢として、アメリカ・ルート66を走ることを思い描いています(現在、檜垣さんは64歳)。
取材の最後、「バイクに乗りたいと思っている人へ一言お願いします」と尋ねると、返ってきた答えは、とてもシンプルでした。
「人生一回です。やりたいことをやりましょう!!」
48歳で始めたからこそ見えた景色があります。年齢は、挑戦する理由にはなっても、諦める理由にはならない。檜垣さんのバイクライフは、そのことを力強く教えてくれました。
挑戦を諦めない人はカッコいい
3名のライダーに、共通して感じたことがあります。
挑戦した理由は、それぞれ違いました。昔からの夢だった人。後ろに乗って影響を受けた人。一台のバイクに心を奪われた人。
けれども、口をそろえるように話していたのは、「挑戦してよかった」ということでした。
皆さん、教習所では思うようにバイクを扱えず、立ちゴケをしたり、一本橋に苦戦したり、「もう無理かもしれない」と感じたこともあったそうです。さらに40代以降になると、仕事を終えてから教習所へ通ったり、家庭との時間をやりくりしたり、若い頃にはなかった苦労もあります。体力や筋力の衰え(ついでに老眼)を感じながら、それでも少しずつ前へ進んでいる……。
それは、恥ずかしいことではなく、めちゃくちゃカッコいいことなのです。
なんとかして憧れの二輪免許を手にし、自分のバイクで初めて走った日の景色は、その苦労を忘れるほど特別なものだったと言います。
年齢を重ねると、「今さら始めても……」と思ってしまうことがあります。
「仕事が忙しい」
「体力に自信がない」
「家族もいる」
「転んだら恥ずかしい」
そう思う気持ちも、よく分かります。
でも、一歩踏み出した皆さんたちは、笑顔でこう話してくれました。
「挑戦してよかった!」
もしこの文章を読み終えた後「それでもバイクに乗ってみたい」という気持ちが残っているなら、一歩踏み出してみませんか。
きっと教習所では苦労します。恥ずかしい思いだってすると思います。
でも、その先に待っているのは、
今まで知らなかった景色と、新しい自分です。
そう、自分の人生です。挑戦するかどうかを決められるのは、自分だけなのですから。
